“世界の歌姫”のやり直し   作:ぷに凝

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『山賊ヒグマ①』の冒頭に繋がります。


軍法会議①

【海軍戦闘記録】

“東の海”『クゾンサ島』にて、バスターコール発令。

目標は、本島にて観測された謎の“巨大生物”。

砲撃開始から数十分後、巨大生物は消失。『クゾンサ島』で生存が確認されたのは、1名の少女のみ。

 

「つまりこうだ」

 

...全部、思い出した。

 

私はまるで、世界の時間が止まったかのような感覚に陥る。

 

この何もない島には...ついさっきまで人が住み、国が栄えていた。

 

「君は、この島に停泊していた船の船内で“歌の魔王”トット・ムジカを解放し、島内の全ての生命、および国家を脅かした。見ての通り、この一帯は更地になっている。世界政府として、この脅威を放っておくわけにはいかない」

 

しかし、一夜にして国は滅ぼされた。魔王“トット・ムジカ”によって。

 

「ーーーー」

 

私が、トット・ムジカを解放した。

 

「そんなの、嘘」

「謎の“巨大生物”が確認されたというのは、複数の海兵が証言していることだ。事実は動かない」

 

...だとしたら。

 

「ルフィ、は」

「?」

「私の近くにいた、男の子は...」

「...」

 

 

 

「少なくともこの島で確認されているのは、無数の死体と...君という1人の生存者だけだ」

 

 

...。

 

ああ。

 

そうか。

 

私は...死んでも同じ過ちを繰り返したらしい。

 

ルフィが死んだ。

 

マキノさんも死んだ。

 

 

私が、皆を殺した。

 

 

 

 

私も死ぬべきだ。

 

 

 

 

「私を、殺してください」

「...ふむ」

 

目の前が真っ暗になる。

 

「おい、ウタ!落ち着け...!」

「もう私が、生きてる意味なんてないよ」

 

一度死んで、それでもまだ会いたかった人がいた。

 

奇跡が起きて、私はやり直しを許された。

 

そしてその人を今度は私自身の手で殺したんだ。

 

こんな人間に、生きている価値はない。

 

「生きるんじゃ!ウタ!命を捨ててはいかん!」

「...なんで!!?だって、もう皆は...!ルフィは...っ!!」

 

 

「ルフィは生きておる」

 

 

「...え?」

「マキノもそうじゃ。大丈夫、お前は誰も殺しとらん」

「...で、でも。この島には死体があるって...更地になったって...」

 

それは、まさに私が以前滅ぼした“エレジア”の惨状そのものだ。

 

「そう、まさにそこじゃ。ウタ、お前さんにいくつか質問がある」

「...!」

 

“ワシがこれからお前さんに、いくつかの質問をする。お前はその全てに“いいえ”と答えるんじゃ。そして...絶対にワシの側を離れるな”

 

「ウタ、お前は魔王を...トット・ムジカを解放した時のことを覚えておるか」

「...い、いいえ」

「トット・ムジカを解放したのは、お前の意志か」

「...いい、え」

「お前に、世界政府や国家への反逆心はあるか」

「いいえ...」

 

「...ガープ。何の真似だ。言葉など何の意味も持たない。いくらでも取り繕えるぞ。そんなもので罪を逃れるつもりなら...」

 

「最後じゃ。バスターコールは、お前さんに向けられたものだったか?」

「...え?」

「どうなんじゃ」

「...い、いいえ」

 

...正直、覚えていない。

 

私の最後の記憶は、ルフィが殺されそうになって、心の底から怒りが込み上げたあの瞬間で終わってる。

 

あの瞬間に、私がトット・ムジカを解放したと言われても...私はそれを否定できない。

 

「そうか。それが全てじゃ」

「...何が言いたい」

「この島を滅ぼしたのはウタでも、トット・ムジカでもないという事よ。なぁ?CP(サイファーポール)

「...」

「え...」

 

島を滅ぼしたのは、私じゃ、ない?

 

それじゃあ、誰が...。

 

「...ガープ。貴様の身内贔屓は目に余る」

「...」

「知らないとでも思ったか?そこの娘は、1年以上前から貴様の故郷に滞在していることくらい調査済みだ。聞くが、1年やそこらで人の本質が見えるものだろうか?事実だけを語るなら、トット・ムジカは確かにこの島で“確認”され、後にはその娘以外誰も残っていない...!!自然と、大量虐殺の容疑者は絞られると思うが?」

 

きゅうっ、と胸が締まる。私が大量虐殺犯なのは事実だ。

 

「随分頑張って調べたようじゃのう。だが、事実だけを語れと言うなら...バスターコールは、どうやらこの娘がこの島に着く前から始まっておったようじゃがのう?」

「...え?」

「...何のことだ」

「ぶわっはっはっは!身内贔屓はお互い様のようじゃな!」

「...少し喋りすぎだな。中将ガープ」

 

私には、二人のやり取りの意味がわからない。だけど、なんとなく...白スーツの人の歯切れが悪くなってる気がする。

 

「安心せい、何も無罪放免で見逃せと言うつもりはないわ。だが、この場で結論を急ぐ必要もなかろう。さっきも聞いた通り、この娘に世界政府への反逆心など一欠片もありはせん。じっくりと見定めるがいいわ。この娘の良心をな」

「...さぁな、私は何も聞かなかったが」

「ほお?そうかい。耳が悪いんじゃなァ....だが、お前さんは確か耳が良かったな!そうじゃろう...クザン!」

 

白スーツの人の後ろから...背が高く、なんだかすごいオーラを感じる人が姿を表す。

 

その人は頭をポリポリとかきながら、苦笑いを浮かべていた。

 

「あらら...俺に振ります?まァ、確かにちゃんと聞いてたけどさ。世界政府や国家への反逆心はない、って」

 

「...“青キジ”...!」

「よっ。お邪魔してるぜ」

「貴様の差し金か...?ガープ...!」

「ぶわっはっはっは!!何のことやらじゃなあ!!...だが、これでもう貴様らの独断ではこの場は動かせんぞ。大将ってのァ “天竜人”の直属の部下!お前さんらと立場は対等じゃ。そうじゃろう?」

「はいはい、思い通りに動かされますよ。え〜、んじゃ海軍大将“青キジ”の権限により、ここに宣言させてもらう」

 

青キジさんは、ぴっと人差し指を立てて、その指先を白スーツの人に向けた。

 

「歌の魔王トット・ムジカを解放した少女、ウタの処遇は...えー、アレだ。“軍法会議”にて決定しまァす!」

 

「...だっけ?ガープさん」

「“軍法会議”だと...!?」

 

 

...翌日。

 

 

偉大なる航路(グランドライン)・マリンフォード】

 

海軍本部元帥・センゴクは執務室にて顰め面で報告書を読んでいた。

 

“東の海”でのトット・ムジカの覚醒。およびその実行犯である少女と、これを庇い立てをする中将ガープと大将“青キジ”。

 

そして、青キジがその場で宣言した“軍法会議”。

 

「...どうしてこうも面倒事を呼び込むのだ...!あの男は...!」

 

わなわなと拳が震え、脳裏に大爆笑する悪友の姿が思い浮かぶ。

 

トット・ムジカの存在は、センゴクも噂話程度に聞いたことはあった。太古の昔、音楽の島エレジアに封印された楽譜と、特殊な悪魔の実の掛け合わせによってのみ降誕する魔王だと。

 

「それが何故“東の海”に...!まさかこれもガープの仕業じゃあるまいな...」

 

場合によっては、センゴクですらガープの擁護はできない。それを覚悟しつつセンゴクは会議室へと向かう。

 

しかし、立ち上がった瞬間に執務室の扉が叩かれ、嘆息しながら「入れ」と返し、再び席に着く。

 

「元帥殿!ご報告します!」

「なんだ」

 

入ってきたのは、手の上に電々虫を乗せた海兵。彼は緊張した様子で、その“報告”を告げた。

 

 

「“三大将”、お見えになりました!」




大将の権限や軍法会議あたりの設定はオリジナルです。
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