裏のある天使と前向きな少女   作:はちみつレモン

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今回は後半は桔梗sideになります。


過小評価

「それ本当?」

「多分な。学校側のトラブルなんて一度も言ってなかったから恐らく生徒間トラブルで間違いないと思う。機材トラブルとか言わない限りクラスポイントが関係しているから振り込めないって言った方が妥当じゃないかって思うんだが。」

「確かに辻褄があうけど何で私を呼んだの?」

 

俺は食堂で一之瀬と相談したいことがあったので声をかけていた。

今回は俺から呼んだこともあり好きなものを頼んでいいといったことと情報交換をする名目で呼んだこともある。

 

「いや。前にCクラスとの小競り合いみたいなの起こったんだろ?小柴から聞いたけど。あれって解決したか聞きたくてな。」

「あ〜。だから私なんだ。うん。解決はしたよ。」

「結局どうなったんだ?」

「結局両方お咎めなし。途中からCクラス側が引いちゃって。」

「なるほどなぁ。まぁ、BクラスよりDクラスの方が狙いやすいからな。」

「……つまりDクラスとCクラスのトラブルってこと?」

「恐らくな。聞いたところ上級生は全く関係なし。Bクラスは多分何もなさそうだしAクラスは他のクラスにちょっかいかけれるほどの余裕は今はないからな。集団ってよりも個が強いDの方が狙いやすいってことだろ。俺でもそうするし……図書館にいたら分かるんじゃないか?誰を狙うかは。」

「…須藤くんってことかな。」

「多分な。今回の状況的にはあいつ的にはお遊びなんだろうけど野球部内ではそんな兆候はなかった。俺が鈍いだけかもしれないけど。」

 

兆候は俺が思うかぎり限りやき野球部内ではなかった筈だ。まぁ野球部内では一年は俺が取り仕切っているので、迂闊に手が出せない可能性はあるが。

 

「まぁ確認したいことはこれくらこれくらいにして、そっちは?なんか相談したいことって?」

「ちょっと恋愛事絡みで。友達から告白されたから相談に乗って欲しいなぁって。」

「……あ〜なるほどな。断るつもりなのか。」

「分かっちゃう?」

「なんとなくな。恋愛初心者なら普通だろ。それじゃあその返答になるとは思うけど、素直に自分の気持ちを伝えるのが一番自分にとっても相手にとってもいいとは思うぞ。」

 

その言葉に一之瀬ははぁと俺でもわかるくらいため息を吐く。

 

「やっぱりそうするしかないのかな?」

「もしかして人を傷つけるのが怖いとか思ってないか?」

「う、うん。」

「その考え方から変えないと今後苦労するぞ。」

「……えっ?」

 

多分考え方の問題だと思うけど一之瀬は人を傷つけるのを嫌がるタイプか。

それは相手にとっても失礼だし、何より一之瀬自身を傷つけることになる。せっかく有益な情報をくれたのだ。しっかり答えてやろう。

 

「自分の幸せを願えない奴は他人を幸せにはできない。俺はこう考えてる。他人のことを考えるのは確かに大切だよ。でも幾ら何でも全部引き受けたら自分のためにも相手のためにもならない。だからこそ損をすることもあるし他人を傷つけることもある。特に恋愛事はそうだろ。好きでもない相手と付き合って長い間続くかって言われても続かないだろ?」

「そうだけど…」

「それに我慢だけしてたらいつかは限界がくる。自分を押し殺すといずれ周辺でも伝播する。特にリーダーはな。特に一之瀬みたいなタイプは他人のことばかり気にしすぎていて自分は押し殺すタイプだろ?」

「なんでそんなこと言いきれるの?」

「いや。桔梗がそういうタイプだから。あいつも疑いたくもなるような善人枠だし。」

「……あっ。」

 

少しだけ怒ったようにしていたが俺の言葉に一之瀬はすぐに納得したらしい。

一之瀬と同じくらいに善人扱いされ、そして悪い噂を流れる原因を俺が抑えている桔梗は本当に今の所敵がない。

別に交友関係が悪くなったり本性をばれても逃すつもりはないがそれでも桔梗があそこまで弱みを吐けないので一之瀬も同じだろう。

 

「桔梗もそうだったけど本当に悩みって話さないし、自由な時間なんて取れることが少ない。だからこそ桔梗のことを理解してもらえる時間を作ってあげたんだよ。最初は思っていた以上に戸惑っていたけどな。でもそういった人間が一番危ないってことは分かってたからな。だからこそ桔梗にはとことんこれからも甘えさせてあげようって思ってるからな。」

 

多分俺が誰かと恋人関係にならないのはこれが一番大きいんだろうな。

今の所桔梗と佐藤に好意を抱いている自覚があるが桔梗との繋がりはとても大きい。佐藤から今告白されても大切なのは代わりはないが告白に関しては正直悩むことになるだろう。でも桔梗は恋愛の距離感は少しおかしいところがあるがそれでも多分断る選択肢はない。

優先順位的にも真っ先に桔梗を上げることが前提であり、それでも佐藤に悩むくらいには大事に思っているんだろう。

 

「一之瀬はそいつをどう思っているのか。まずはそこからだ。友達のままいたいんなら正直なことを言うべきだとは思う。そいつは勇気を出して告白したんだろ?それも俺とは違ってちゃんと答えも出してる。傷つくのを覚悟で告白したんだ。……ちゃんと自分の言葉で答えてやるのが一番の優しさだと思うぞ。」

 

俺は久しぶりに食べるラーメンをすすり手を合わせる。恋相談とは知らなかったこともありラーメン食べながらいうことでもなかったなとは思う。

 

「そうだね。うん。せっかく伝えてくれたのだからちゃんと答えてみる。」

「あぁ。そうしてあげろ。」

「でも、前も思ったんだけど有原くんって相手を乗せるの上手いよね。……中間考査もやられちゃったし。」

「そうだな。でも本当のことしか言ってないからよくタチが悪いって言われるんだよなぁ。……嘘をつくのはちょっと苦手。」

 

あの時から結構感情は分かりやすい方だから嘘はつけない体質である。

そういうところは桔梗と真逆だよなぁと思いつつ時間を見ると昼休みは残り10分。そして一之瀬のお盆には半分以上乗せられた料理。

……これ食べきれるのか?多いと言われるスペシャル定食だぞ?

 

「ん。それでいいのか?お前の食材結構残ってるけど残り休み時間10分だぞ?」

「えっ?あっ!有原くん手伝って!?」

「お前口付けただろうが……ちゃんと頼んだものは食べろよ。」

「うぅ。私は気にしないのに。」

「俺が気にするんだよ。遅れても待ってるから急げよ。」

 

そしてすごい勢いでご飯類を掻き込んでいく一之瀬を横目に水を飲む。

でもなんで俺の周りにはこう似たタイプが集まるんだと苦笑してしまった。

 

「……って感じだな。」

「あ〜多分白波さんのことだね。」

「ん?さんってことはもしかして女?」

 

と帰ってきてから桔梗に言われ詳細を話しているうちに一之瀬の告白した相手が女子なのは予想外だった。

 

 

桔梗side

 

有原孝介

同居人であり、好きな人であり、恋心が完全にバレているだろう相手に今日も甘えてしまっている。今日も私の話を聞いてくれる。ストレス発散の目的で最初は通っていたのがいつのまにか寛いでいた心を許してしまった人。孝介くんは承認要求どころか私が失ったものを埋めてくれた。

孝介くんは基本的に私に何もしない。私の好きなことをやらせてくれる。買い物に行きたいといえば着いてきてくれるし甘いものが食べたいといえば甘いものを食べに一緒に着いてきてくれる。私の思うままに一緒にいるときは私の我儘を出来るだけ叶えてくれる。

でも孝介くんはクラスではそうではない。厳しく、堀北には罵倒を繰り出すことも多い。だからこそ私のクラスでは人気はでないだろうと思っていた。私だけの孝介くんでいられると。

 

「桔梗ちゃん。有原くんのこと良かったら紹介してくれないかな?」

 

佐藤さんからその一言を聞くまでは。クラスの中でも孝介くんの忠告を受け授業態度を変化させていた女子が1人だけの時点で気付くべきだったと後悔した。後悔してしまったのだ。そして私には関係のないこの気持ちに気づいてしまったのだ。私のことを甘やかしてくれる孝介くんという立場を譲りたくはなかった。昔みたいに吐き気やストレスで髪をむしることもいつの間にかしないようになっていた。本当の私を受け入れてくれることが私にとっての癒しだった。もう私は孝介くんの優しさに既に堕とされていたのだと。手放したくない。青春なんてもの私には関係ないものだと思ってた。

 

「有原くんは誰にも紹介はできないかな。私のだから。」

 

その一言で佐藤さんは驚いたように私を見る。有原くんと私が学校で話しているところは見せたことはない。だけど今私が有原くんを知っている。

 

「はぁ。桔梗ちゃんがライバルかぁ。もしかしてもう付き合ってるのかな?」

「付き合ってはないけど、有原くんの寮には毎日お邪魔してるかな?料理も一緒に食べてるし。」

 

すると佐藤さんは少しだけ息を呑む。ここまで進んでいたらいつ恋人になってもおかしくはないと私でも思うのに…。

佐藤さんは諦めてなかった。牽制を入れても折れることはなかった。

 

「そっか厳しいけど……負けないから。」

「私こそ。」

 

女と女の戦い。そして佐藤さんは話した翌日には孝介くんと接触していた。告白まではいかなかったが、それでも有原くんとの距離は詰められたらしい。お昼を一緒にとることや勉強会にも参加するようになった。孝介くんも告白されることを分かっているようだった。そして薄々私の気持ちに気づいているようである。

私は無理矢理であったが孝介くんの寮に泊まるようになった。孝介くんに断れる可能性はあったが、孝介くんは呆れながらもベッドを譲ってくれただけでも嬉しくなってしまうほど彼に惹かれてしまった。

 

 

「桔梗?」

 

名前を呼ばれただけで心臓が跳ねる。最近名前を呼ばれるようになっただけで身体が熱くなりその声に返す。未だに慣れてはいないが幸福感で包まれている。

 

「孝介くん。どうしたの?」

「桔梗!鍋。焦げてる!!」

「あっ!ご、ごめん。」

「別に失敗は誰にでもあるから別にいいけど怪我はないか?」

「大丈夫。本当に心配しすぎだよ。」

 

焦げ臭い匂いが蔓延していることから孝介くんが気づいた。普段の生活ならしなかったであろう失敗は孝介くんと暮らし始めてから増えている。でも悪い気はしない。心配している人がくれるから。

 

「疲れてるなら外食にするか?プライベートは余裕あるし。」

「ううん。大丈夫!!ごめんね。食材を無駄にしちゃって。」

「別にそれくらいはいいけど。……狭くなるけど手伝おうか?」

「それじゃあお願いしようかな。ピーラーは使えたよね?じゃがいもの皮剥いてもらっていい?」

「了解。手伝って欲しいときは言えよ?」

「大丈夫だよ。」

 

今日も台所は渡すつもりはない。でも、狭くて他の人が入ったら窮屈だと思ってしまうけど孝介くんは別だ。焦げた食材を流しまた最初から作り始める。以前なら一人の時が楽だったのに孝介くんがいればどんなことでも楽しめるような気がしている。だからこそ不安なのだ。私は苦痛を知っているから。

人に付き合うことがどれだけ苦痛なのかを。

 

「ねぇ。そういえば孝介くんは好きなものとかないの?」

「ん?料理か?」

「料理もそうだけど……私ばかり普段は甘えてしまっているでしょ?だから今度は私がお礼をしたいから。」

「お礼?つーかお礼をするのはこっちだろ?桔梗が食事も家事もやってくれてるし。」

「私は好きでやってるし。それにたとえ偶然とはいえクラスメイトを救ってもらったし。」

「同じことだよ。甘えさせるというよりも俺も頼られることが好きなんだよ。相談事に乗ることとかが好きだから。……でも、お礼か。正直俺もお礼っていうよりもこれからも側にいてほしいっていうのが本音かな。」

 

本当にずるい。私の欲しい言葉をさらっと言える孝介くんは何もなさげに告げてくる。

孝介くんが嘘が苦手なのは知っているから今回もそう思っているのだろう。

 

「それに、桔梗は俺のことを過剰評価しすぎなんだよ。俺は桔梗よりもできないことが多いからな。」

 

いつも聞く過剰評価という声に内心そんなことはないと言いたいが、有無を言わせない独特な雰囲気をだす。この時だけはどこか悲しそうな、どこか諦めたような。どこか悔しそうに語る。

でも、間違いなく今のところ一番優秀なのは私は孝介くんだと思う。贔屓をしているかもしれないが、孝介くんの交友関係は異常としか言いきれる。運とは言え先輩と距離が近く、他のクラスには大きな交友関係を気付いておりすでにクラスのリーダーとの交友関係を結んでいる。洞察力は言わずもがな、今学校の趣旨を理解しているのは恐らく孝介くんだろう。そして全てのことを最低限度ではあるができる。運動は言うまでもないないが洞察力や相手を乗せる能力。そして家事にしろ苦手という料理すらある程度はできる。

でも、嫌味にしか普通なら聞こえないはずの孝介くんの言葉は何故か重いのだ。……孝介くんは正直世間知らずであり、自己評価が低いのが私にとって思う欠点だとは思う。後は人によって優しくしたり厳しくしたり態度を変えるし、ある程度女子の人気を集めているが……私とを見ていると諦める人が多いから心配してないけど……。それでも、何でそんなに自己評価が低いのかを聞こうとした時だった。

そしてカレーを盛り付け始める孝介くんに一歩踏み出そうとした時だった。私のスマートフォンからお気に入りの着信音がなる。

 

「どうした?」

「須藤くんから電話だ。」

「……やっぱりか。」

 

そして呆れたようにしている孝介くん。

『やっぱり』ということは予測していたのだろうか?一度頷き電話に出るように促す孝介くん。

私が電話に出ると須藤くんから少し相談に乗って欲しいとの声。綾小路くんも来るとのことなので恐らく二人きりになることはないだろう。もちろん返事は了承。孝介くんが特別であるのは分かっているが私は承認欲求がなくなったわけではなく、クラスメイトの羨望を集めることをやめるわけではない。そして孝介くんはそのことを分かっていて受け入れてくれている。

でも……本当に今日は厄日でしかない。デートも代わりに提案してくれたいつもの二人きりの食事もできないことになるなんて。

 

「はぁ。桔梗。何かあったら今回は一之瀬を頼れ。あいつには既に情報提供を頼んであるから。」

「えっ?」

「俺は部活でこれから忙しい時期に入るから余り時間は取れない。多分予想は当たっているし、一之瀬には恩を売ってある。多分協力してくれるはずだから。」

「……うん。」

「それと、待ってるから。」

 

どこまで予測していたのかは分からない。でも孝介くんは何かを知っている。やっぱり過剰評価どころかまだ底を見せていない孝介くんに背筋が冷たくなる。

もしあの時敵対していたら。その時私はこの学校に卒業までいられたのだろうか?

多分いられたとは思う。孝介くんは友達には優しいけど、他人にはとことん厳しい。でもその厳しさにも優しさがあるのだから。

そして多分私は甘やかせられる。とことんダメにされる。多分この世界線じゃなくても私は孝介くんがいるかぎり、孝介くんを好きになるだろうから。

 

「行ってらっしゃい桔梗。」

 

いつもとは反対の優しい声。私はその一言に心からの笑顔で応える。

 

「うん。行ってきます!!」

 

そして綾小路くんの部屋に向かう。

終わったのは結局2時間経った後だったが、帰ったら何も食べずに孝介くんは待っていてくれて、二人っきりの食事は温めなおした食事を味わうことになった。




一応アンケートは明日の21時までにします。
麻耶は流石にスポット当たる回を出したいけど、それでもまだ出せない。
それゆえに書いていて難しいなぁとは思いました。

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