裏のある天使と前向きな少女 作:はちみつレモン
「孝介くんこっち!!」
「桔梗早いって。」
桔梗に手を引かれ、練習試合が終わった数時間後にはショッピングモールに引っ張られていた。
今日は朝から機嫌がよく、そして如何にも楽しみだったのか丸分かりだ。
こういった桔梗を見るのは俺自身も初である。まぁ俺自身、少し楽しみであるのだが。
まぁ、友達を含めた時でも放課後や休日は部活優先していたのも原因だろうけど、それでも櫛田桔梗という人間の能力がうちのクラスでも頭一つ抜けていることを表している。
クラストップカーストの地位を維持しており休日放課後も引っ張りだこだからなぁ。
暫く手を引かれていると既に約束場所には二人組の男女が隣のベンチに座りながらひっそりと待っていた。
「お待たせ!!ごめんね。待たせちゃった?」
「いや、俺たちも今来たところだ。」
クラスメイトの綾小路が告げる。というよりも至って地味な服装が似合うのは少し苦笑いしてしまうが。その綾小路が俺の容姿を見て少し不思議に思ったのか
「なんで有原は制服なんだ?」
「部活終わりだよ。午前試合だったし。」
「そういえば部活で活躍しているって言ってたけど…有原ってそこまで優秀なのか?」
「ん?一応野球部でレギュラーにはなってるぞ。万単位でプライベートポイントもらえてるし、多少はクラスポイントにも含まれていると思うぞ。明らかにクラスポイントが他のクラスと比べて上がり幅は大きいからな。」
なんとか俺は言葉を返す。実際調べていたことは確かだが、あまり知られたくはない。
実際俺は綾小路はよく分からない。というよりも感情がかなり読みにくい。
「……調べてたんだ。」
「まぁな、堀北に中間考査の模擬テストの説明するために調べていたんだよ。まぁ平均点が大きく上がったCクラス以外は正直変わらんしな。それにプライベートポイントの貸し借りが一番面倒な問題だったんだよ。今は軽井沢相手に桔梗が返済している。その分の金銭は絶対に避けたいところだった。それがわかってるから平田も何も言ってこないんだろ。つーか学校の話は面倒だし行こうぜ。全員いるし。」
「えっ?佐倉が来てないんじゃないのか?」
「そこにいるけど。」
すぐ後ろを指差すとすると佐倉は少し驚いたようにしている。気づかれないようにしていたのか服が完全に同化している。
すると綾小路と桔梗も少し驚いたようにしていた。
「ごめんね。影薄くて。こんにちは。」
「いや、存在自体は感じていたからな。」
「それ、フォローになってないよ。綾小路くん。」
「とりあえず行こうぜ。確かショッピングモールの電気屋でいいよな?」
「うん。一応そこで修理もお願いすることはできるって言ってたよ。」
とりあえず、話を逸らすために適当に話題を振る。
まぁ、話の内容は適当でいい。というよりもこの服装で目立たないって。
ピンク色のジャージにマスクとメガネは流石に不審者としか見えない。
しばらく話を振りながら歩くと電気屋が見える。どうやら目的地に到着したらしい。桔梗が中を見ている間俺と綾小路は佐倉を探る。
「そういえば、佐倉ってカメラが好きなのか?」
「うん。変かな?」
「いや、別に少し意外だなって思って。趣味は人それぞれだしいいんじゃね。」
「あぁ。むしろいい趣味なんじゃないか。」
悲観的な佐倉につい突っ込んでしまう。普通に聞いただけで悲観的に捉えられるとは思いもしてなかったのもあるが。
フォローに回っている。主にこの綾小路にも地雷は少し多そうなのは気になるところだが。
電気屋に着くと真っ先に感じたのは視線だった。
去年起こした事件から俺は人の視線にはとことん鋭い。だからこそ真っ先に気づいた。
とても嫌な視線が自分を目掛けていると。
そうして店舗の一番奥に入るとそこには修理受付の担当のフロアにいる店員がこちらを見ていた。
それもある一人を見定めるように。
「……」
やっぱりこいつも気づいている方の人間だ。しっかりと佐倉の方を見ている。
人の目線というのは不思議なことでいつ誰が何を見ているかとか基本的には分かる。
視線はほぼ見定めるようなそんな嫌な視線はジト目で見ている。
まぁ時々桔梗を見ているのも丸わかりだけど。つーか口説き始めたし。
てかアイドルの名前のライブはさすがに女性にするか?
アイドルの話題で幅広いトークで櫛田にアプローチをかけて、桔梗は嫌がるそぶりを見せないことから、相手は好感触を感じているのだろうが俺には分かる。多分一時間や二時間どころではならない愚痴を聞くハメになるだろう。
「とりあえずカメラだろ。佐倉持って来てるんなら出してしまえ。」
「えっ?う、うん。」
とりあえず遮り俺はとりあえず佐倉にカメラを出すように促す。
大体どういう状況か分かっただけでもいい。
対処方法なんてすぐに思いつくことだし。
「おそらく電源の系のトラブルだろうな。落下して中身の部品の形状が変わったか、破損だろ。」
「えっ?」
「桔梗から理由は聞いてる。破損系ならおそらくこの会社なら三週間くらいで直るはずじゃなかったか?保証書こみなら無料でやってくれるはずだろ。保証書持って来てるか?」
「う、うん。」
「綾小路。これって俺の名前で書いても良かったか?」
「法的な問題はなかったはずだけど。……有原が書くのか?」
「店員の目線気になって仕方ないだろ。女子にはきついはずだし俺が書いた方がいいだろ。」
と簡単に書き慣れた文字を書いている。住所や連絡も全部書き終えると俺はそれを店員に提出する。綾小路はその間何か探し物をしているのかカメラをよく見ていた。
そして俺だけ先に店を出ようとすると桔梗が呆れるようにしていた。
「本当にそういうところに機敏だよね。」
「視線鬱陶しかったし、女性にはきついだろ。……たとえ見られてるのが慣れているとしてもな。」
「…やっぱりお見通しだった?」
「そりゃ。あんだけ話す隙間がなかったらな。それにあれは好意とかではなくてどちらかといえば執着心から来る視線だ。特に佐倉にとったらかなりしんどかっただろうな。」
「そうだね。やっぱり確定でいいのかな?」
「間違いないと思う。まぁ、これで佐倉にも繋がりが取れたし、ここが俺の引き際かな。後は桔梗に任せる。……後は普通に楽しもうぜ。……あっちも終わったらしいしな。」
俺は小さく指差す先には綾小路と佐倉の二人が並んでいる。
どうやら買い物袋は持ってないので下見なのだろうか。
まぁ何の下見なのかは大体予想つくけど……俺は最後まで静観といこうか。
「そういえば、有原くんありがとう。助かりました。」
電気屋が終わり佐倉がジュースを奢ってくれるとのことで俺たちはテラスで飲み物を飲んでいた。
「ん?別に気にすることないぞ。大体男手がある場合ってそういうことを期待している時って思っているし。つーか敬語いらないだろ。これでも同じクラスメイトだろうが。」
「えっ?」
「うん。それは私も思ってた。良かったら普通に話してくれないかな?」
「意識してなかったんですけど。変ですか?」
不思議と首をかしげると俺は少しだけ苦笑いをしてしまう。
「変っていうよりも、何か企んでいるとかそういったことを考えてしまうからかな。」
「どういうことですか?」
「俺の家そこそこ金持ちだから、昔からそういった奴がいるってことだよ。」
実際元々交友関係が狭い理由はそこにある。
財閥とも呼べる俺の会社の資金を目的としたことが結構あるのだ。裏金とかも一応親父も気をつけてはいるがある程度おかしい時はあるし。
「敬語は目上の人とか先生とかには効果的だけど、同じクラスメイトに言われるとどこか不信感を覚えることになる場合がある。まぁ気にしない人が多数だけどな。だけど、俺はやっぱり気になる。そういった時って嫌な予感がするからな。」
「嫌な予感って。例えば?」
「金銭と貸し借りとかな。軽井沢がプライベートポイントを借りる時もそうだっただろ?」
「あぁ、そういえばそうだな。」
綾小路も納得したらしい。プライベートポイントを借りる時少しばかり口調が丁寧になっていたのは覚えていたらしい。
「わざわざ同じクラスの奴にも気を回すのも結構疲れるだろ?だから俺の前ではあまり敬語を使って欲しくないかな。」
「気を回すことが疲れるって。お前が好き勝手にしてるだけじゃないのか?」
「ん?桔梗に聞けば分かるけど、俺結構抑えてるほうだぞ。それに事実を言っているだけだ。口が悪いのは元からだし、ある程度自分の実力も理解しているから注意できるんだろ?」
「まぁ、須藤が有原に苦手意識を持ってるのは事実だろうしな。」
「そゆこと。抑えてなければ俺は須藤も堀北も関わってすらない。自分の好き勝手にやるなら、俺は野球部内でしか交友関係を完結してたぞ。」
実際俺は4月までは野球部内でしか交友関係を結んでいなかった。誰も俺のことをクラスで認知はほぼしてなかっただろうししていたとしてもうざい奴だと思われていたはずだ、
「そうなんですか?でも櫛田さんとは仲いいですよね?」
「唯一関係をぶっ壊せるとするなら桔梗かBクラスの一之瀬だったからな。今回は桔梗が関わってきたからこそある程度クラスでも会話が増えてるだろ?ぶっちゃけ今この学校で信頼しているのは桔梗くらいだし。」
「えっ?」
「この学園で信頼なんてできるわけないんだよ。当然それは野球部の仲間や先輩であってもだ。この学校はAクラスで卒業しないと思っている奴はいくらでもいるけど俺はそうでもない。ある程度基盤を持ってるから将来の進路はぶっちゃけ自分でなんとかなるからなぁ。」
俺は元々そういうことよりも、離れたところで野球をするためにこの学校に来たのだ。勉強とかもしないとはいけないけど大学は経営学になるだろうしある程度の大学にはすでにもう行ける程度には勉強してあるのだ。
「じゃあ何で櫛田を信頼してるんだ?」
「ん?桔梗も同じだから。桔梗もどちらかといえばAクラスを目指すというよりも、今のこのクラスでどのような学校生活を送るかっていうのを考えてるしな。桔梗も同じで基盤はしっかりとれているから、お互いに行きたい進路には自分の力でいけるのがわかりきっている。だからこそお互いに無駄な干渉がない。まぁ多少は桔梗はAクラスには興味はあるかもしれないけど、だからといってAクラスを目指そうと強要することもないしな。」
「…まぁ、それに私は孝介くんに恩があるからね。……私の全部を見られちゃったし、それを受け入れてくれた。だからこそ私は孝介くんのことが好きだからね。」
「えっ?」
「ぶっ!」
俺はその桔梗の言葉にむせてしまう。堂々告白してくるのは少しだけ驚いてしまう。
「孝介くんは学生の時は恋人は作らないって知ってるから。孝介くんも気づいてるだろうし今更だよ。」
「そういえば桔梗には話したか?」
「ううん。でも作る気ないんだよね?それに私も彼氏は作るつもりはないし。」
「……あぁ。なるほど。お前本当によく考えたな。」
「……どういうことだ?」
綾小路はどういうことか分からないだろうけどこれは桔梗は俺のことをよく理解してくれている。
お互いに残酷で、最低だからこそ、その価値が生まれている。本当に似たもの同士なんだと理解してしまう。
そのステータスが特にこの学園では大切なものだということに気づいているのだと。