裏のある天使と前向きな少女   作:はちみつレモン

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勉強会にて

授業終了のチャイムがなる。俺は軽く肩を回したあと背もたれに体重を預ける。

授業中の雰囲気がまともになり授業も聞きやすくなりノートもしっかりとることができたこともあり普通の学校生活が送れている。

一応勉強会もあることだからその前に何か食べてから行こうかと席を立つ。

面倒臭いなぁ。本当に。

部活がしたいという気持ちをぐっと堪える。あのメンバーでまともなのは数人ということが辛いところだろう。

そして教室からでて購買に向かおうとするとドアを背もたれにして誰かを待っているのか、一人の女子生徒がいる。勉強会だろうか?大変だなぁと他人事だと思った矢先、その女子は俺の方を

 

「ねぇ、有原くん。」

 

そんな考えをしていた時声をかけられる。それが滅多に話さない。それに加えて女子で確か軽井沢たちのグループの女子だ。確か佐藤だったはずだ。

 

「どうした?今から櫛田さんに勉強会誘われているんだけど?」

「ちょっと顔貸してくれない?ここではちょっと話しづらいから。」

 

…そういえば佐藤と話したとか言っていたなぁ。あいつ。こういうことか。

まぁ断わることもできるけどさすがに気持ちを知っておいて話を聞からはないというのはさすがに佐藤の気持ちを無下にしてしまうのだが。いろいろと厄介なことになりそうである。

 

「と言ってもなぁ。生憎結構待ち人いるから待たせるのもおかしいし。」

「それじゃあいつ空いてるの?」

「一応部活自体は当分ないんだけど……まぁ少しだけの時間でいいなら屋上で話聞くけど。」

「……本当?」

 

すると顔をばぁっと明るくなる佐藤に俺はさすがに断れないよなぁと軽くため息を吐く。

元々恋愛感情には気付きやすいこともあるからこういった場面の対応っていうものがよく取れるのである。

そして屋上に上がるとまだ夕日が見えないので告白という流れではないとは思うけど。

 

「ちょっと変なこと聞くけどさ。有原くんって付き合っている人いる?」

「今はいないぞ。それがどうした?」

「ふぅん。そうなんだ。それなら彼女は募集中ってこと?」

「まぁ。そうだけど。」

 

すると嬉しそうにする佐藤に俺は苦笑してしまう。これで嘘だったらかなり演技が上手いだろう。

でもほとんど佐藤と話したり接したりする機会は少なかった方だ。特に佐藤は前半は結構授業態度など酷かったが水泳の時以来ほとんど改善が見られていた生徒だった。それなのになぜという疑問が残る。

 

「友達からでいいからさ。電話番号交換してよ。」

「別にいいけど。なんで俺?あんまり話したことないだろ?」

「水泳の時もみんなは須藤くんと高円寺くんに次いで三位だったでしょ?殆ど変わらなかったし、水泳の時から少し気になっていて、話そうと思って放課後後をつけてたんだけど、野球を楽しそうにしている有原くんが格好良かったから。」

「……そんなに楽しそうだったか?」

「うん。クラスとは違って生き生きしてたように見えたの。そこから試合を見てたりして。野球には興味なかったけど。」

 

そっち関係なら関わりがあるのか。確かに最近野球離れとか進んでいるしなぁ。

もじもじしている佐藤を見ると見た目と反対に思ったより純情なやつなのかもと感じてしまう。

 

「クラスじゃさ平田くんが一番だと思っていたけど、軽井沢さんの彼氏だからどうしようもないじゃない。だからと言って有原くんが平田くん以下なんて思ってないからね。」

「いや、普通にイケメンではないからな。俺。別に気を使わなくて大丈夫だから。」

「違うの。……そういうわけじゃなくて。」

「分かってる。」

 

俺が言葉にすると佐藤がこっちを見る。本当に空まわりっていうのは告白や好きなやつでは多いことも。

空まわりして結局告白できなかったことなんて中学時代の時に何度も体験しているのだ。

 

「分かっているから心配しないでいいって。悪い意地悪な質問しちゃったな。ごめんな。ほれこれ電話番号。」

「もしかして有原くんってこういうこと慣れてる?」

「慣れてるほうだけど。中学ではある程度人気はあったからな。」

「へぇ~そうなんだ。」

「ついでにここではこんな感じだけどな。まぁ櫛田さんからも女たらしって言われてるし。」

「あのさ。桔梗ちゃんと付き合ってないんだよね?」

「付き合ってないし、櫛田さんは多分誰とも付き合わないと思うぞ?だからこそ俺の寮に来てまで駄弁っているわけだし。」

「えっ?」

「あいつは元々人と仲良くするのが目的で恋人とかそういうのは求めてないから俺の部屋で飯を食ったりしているんだよ。俺がそういう気がないって気づいているから寮でのんびりしてるわけだから。だからある程度の下ネタをスルーしている。池や山内にそうそう仲良くできる女子ってお前と櫛田くらいだろ?」

 

櫛田は多分間違っていなければ落としている。でも今は絶対にそれ以上の進展はないと言い切れるのだ。

櫛田は甘えなれていないが自分に厳しい。だからこそ引け目になるのだ。その素の姿が。

あいつは自分に自信がないのだ。全て高レベルであるにも関わらず。

もしあいつが恋愛に熱心だったらまずこの状況すら作らせない。櫛田桔梗という人間は独占欲も強いがその分一つ間違えると周囲すら取り込む爆弾になる。俺みたいに。

だからこそお互いに信用できているのでだろう。お互いに無害で居心地がいいのだから。

 

「もうそろそろ行かないとな。悪い時間そんなにとれなくて。」

「ねぇ?少しだけ後一つだけ聞いていいかな?」

 

すると佐藤が俺に少しだけ申し訳なさそうにする。そんな中で俺は佐藤の質問に答えるのだった。

 

 

 

「ってことで参加させてもらうね。」

「というわけで佐藤も参加ってことで。」

「あなたね。」

「誰かを加えてはいけないって言われなかったしな。別にいいだろ。佐藤も結構危ない方だし。」

 

図書館にきて勉強会チームと合流すると、元々聞いていたメンバーに加え沖谷が参加していた。実際佐藤の点数は正直にまずいのである。櫛田も黙っているが少しばかりどういう意図なのか理解してくれるはず……ないか。

多分告白を受けたとかそんな感じだと勘違いしているんだと思うけど。まぁ後からフォローいれとこうか。

 

「それにまず俺は勉強会参加するとは言っても教える側だろ?堀北や櫛田と比べて点数は低いけど勉強会には慣れてるし。こいつらだって俺に教わるの嫌だろ?」

「まぁな。てかお前ってそんなに点数高かったか?」

「俺、前の小テストは70は取れてるけど?」

 

基本的なところを抑えたらあのテストは正直簡単すぎる。最後の三問以外は。櫛田たちは80以上だから優等生組みとは違いは出るが比較的点数は高い方に入るだろう。

 

「それにお前らに一番伝えないと行けないけど先輩曰く赤点は32点じゃなくてクラス平均の半分の点から小数点繰り上げらしいからな。クラスが頑張ったぶんだけ平均点は上がる。」

「えっ?それ本当?」

「あぁ。一応Bクラスの浜田の方に平均点の確認したから間違えないだろうな。だからこそできるだけ40点以上とるのがこの試験で赤点回避するうえで大切だな。」

「……それじゃあより厳しくしないといけないわね。」

「まぁ。俺は沖谷と佐藤教えるか。そっちの方が赤点回避の効率がいいだろうし。」

「えっ?いいのかしら?」

 

堀北は驚いたようにしている。どうやら全員を教えるとはいかないのだろう。

意外にもそこらへんはちゃんとしているらしい。

 

「元々三人教えるつもりだったんだろ?綾小路と堀北、俺と櫛田で交代ずつで教えた方がいい。途中参加の二人教える成績的にはこっちの効率がいいだろ。ついでにプリント作ってきたからまずそれ解いてくれ。分からないところを把握したいから。」

「うん。分かった。」

「ついでに櫛田さんの分もあるから。三人分あるから櫛田はできるだけ詳しく公式も書いて欲しい。」

「うん。いいけど。有原くんは?」

「俺は分からないところの状況を把握して問題作成かな。櫛田の方が早いと思うし答えは作ってあるから。」

「うん。分かったよ。」

 

問題を3人は解き始める。今日はこれだけで何が苦手で何が得意なのか今後のために分かっておきたい。

どうせ今回のテストは全員が高得点を取れる可能性はあるのだから。

しばらくこっちは無言の時間が続く。俺も次にやる問題を考えながら作成していく。

すると開始早々問題がおこった。

 

「貴方たちを否定するつもりはないけれど、あまりに無知、無能すぎるわ。こんな問題も解けなくて将来どうしていくのか、想像するだけでゾッとするわね。」

「っせえな、お前には関係ねぇだろ。」

 

机を叩く音で俺たちもそっち側を見る。どうやらまた揉め事らしい。

俺と櫛田が顔を見合わせやっぱりこうなったかと頭をかかえる。

 

「確かに私には関係ないことよ。貴方たちがどれだけ苦しもうと影響は無いから。ただ憐れんでいるだけ。今までずっとつらいことから逃げてきたんでしょうね。」

「言いたいこと言いやがって。勉強なんざ将来何の役にも立たねぇんだよ。」

「それは興味深い話だわ。根拠を知りたいわね。」

「こんな問題解けなくても、俺は苦労したことなんざねぇ。教科書に噛り付いてるくらいならバスケでプロ目指したほうがよっぽど役に立つ。」

「それは違うわね。こういった問題を解けることが生活にも変化を及ぼす。勉強していればもっと苦労しなかった可能性がある。バスケットにしても同じ道理ね。貴方は自分の都合の良いルールでバスケットに取り組んできたんじゃないかしら。本当に苦しい部分には勉強同様背を向けて逃げてきたんじゃない? 練習にも真摯に取り組んでいるようには思えない。何より、周囲の和を乱すような性格の貴方を私ならレギュラーにはしないわ。」

「ーーっ!」

 

これに関しては堀北に同意だ。勉強が部活に関わらないわけではない。日々の授業態度、成績、性格。それが積み重なっての部活動だ。

勉強もスポーツも基礎が大事であり苦しくても結果を出すためには前を向いて歩かないといけない。

 

「バスケットでプロを目指す? そんな幼稚な夢が簡単に叶うとでも思ってるのかしら。貴方のようにすぐ投げ出す人間は、絶対にプロになんてなれない。尤も、仮にプロになれたとしても納得のいく年収がもらえるとは思えない。そんな現実味の無い職業を志す時点で、貴方は愚か者よ」

「テメェ……!」

「今すぐ学校を辞めてもらえないかしら? そしてバスケットのプロなんてくだらない夢は捨てて、バイトでもしながら惨めに暮らすことね」

「ハッ……上等だよ。やめてやるこんなもん。わざわざ部活を休んで来てやったのに、完全に時間の無駄だったぜ」

「どっちも間違っているんだよ。」

 

途中まで堀北の意見は正しいと思っていたがそれでもたった一言余計なんだ。

俺の言葉に全員が俺の方を向き堀北は口を出す。

 

「何よ。間違ったこといったかしら?」

「勉強も部活も基礎が大切だし苦しくても投げ出さないのは当然だ。実際プロなんてなれる可能性なんてかなり少ない。その中でも一軍として活躍できるのはかなり少ない。バスケはベンチ入りを含めても12人か15人しか1チームにいない。野球よりももっとシビアだ。でもな、夢をバカにするのも間違いだ。野球だってそうだ。野球人口の1%も満たない。その狭き門を潜ろうとしてんだ。並みの努力じゃ入れないたった1%未満のために努力する。それが当たり前の世界なんだ。」

 

俺のその言葉に全員が声を出せずにいる。櫛田も同じく黙り込んでいた。

プロ。口にするには簡単だがそれでも高い壁がある。それになれる可能性があるのはこの学校でも今は俺くらいだろう。

 

「スポーツでプロになれる選手はかなり少ない。試合に出れる選手は尚更。試合に出られるチャンスをものにし、実力があり、運が良かった人だけが活躍できる。怪我で引退だってある。…ファンサービスやイメージを高めるためにスポンサーや新聞記者とのやりとりだってある。性格やイメージがよければファンから応援されやすくなる。今はスポーツ選手の態度や生活も変わってくる。それが仕事でスポーツをするってことだよ。お前は他人の気持ちを考えたことがあるか?他人が努力してきたことだって分からないだろ?……だからこそ劣等生なんて言われるんだろ。協調性もない、人を知ることもしないてめぇに人の夢をバカにする権利はないんだよ。」

 

俺の言葉に誰も答えない。たった数%の為に夢を追いかける人がいるのだ。その叶えた人が子供たちにまた夢を与える。それがプロって言う仕事なのだと。

 

「沖谷、佐藤、櫛田さん手止まってるぞ。手動かせ。」

「えっ?うん。」

 

そうして勉強会に戻る三人を眺めながら俺も作業に戻る。

その中で結局須藤たちは一度はもう一度やる気になったものの毒舌に耐えきれずに帰り、俺たちは反対に目標のところまでは進めるという全く別の問題になった。

 

 

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