裏のある天使と前向きな少女 作:はちみつレモン
ポイント管理
中間考査が終わり、明日から六月なので五月最後の練習試合。スコアは3−0。9回表ツーアウトランナーなしの場面。
「孝介。」
俺は鋭い打球を横っ飛びでボールに食らいつき打球をグラブで捕球すると素早く立ち上がり一塁にワンバウンドで送球する。
ファーストとの際どいタイミング。一応余裕があるがそれでもここでアウトになって欲しいところだ。
その願いが通じたのかファーストの塁審の右手が上がる。
「アウト。ゲームセット。」
すると小さく息を吐く。アウトになって少しだけホッとしてしまう。
野球には調子というものに作用されるスポーツであり特にバッティングは影響が出やすい。
今あえて調子を落としていることもあり守備や走塁での活躍が基本になってくる。
すると外野の工藤先輩や竹内先輩が頭を叩いてくる。
「ナイスプレー孝介!!相変わらずすげぇな。」
「いや。今日ノーヒットですし打撃では迷惑掛けてしまったんで。助かりました。」
「最近バッティングは調子悪いよな。お前。まぁバントや四球で出てるからいいが。」
「それを抜きにしても守備でポイント稼げるからな。お前。スタメンじゃなくても全然守備固めや代走で使えるだろ。」
「まぁそうですけど。試合は出てこそでしょ。まぁ宮根先輩もバッティングでは俺より上手なんで守備では負けないようにしないと。」
「いや。そうすると投手陣から苦情がでるからな。宮根はファーストコンバットの可能性が高いみたいだぞ。」
野球においても実力主義。でも試合で出られるだけありがたい。
部員は1年は8人2年9人3年7人の計24人の部活で20人のまずはベンチ入りメンバーを目指す。そのうち僅かなチャンスをものにして試合に出れる9人を目指さないといけないのだ。
整列を終え真っ先に整備用のブラシを取りに向かう。と同級生組も整備に来ているらしい。
「……ふぅ。」
「どうした?孝介。」
「ん?ちょっと疲れた。全く体が思う通りに動かないんだよなぁ。」
「お前だけ試合に引っ張りだこだからな。」
「まぁ、ショートであれだけの守備範囲があればそうなるだろ。つーか足相変わらず早いよな。お前。」
「身体能力だけは高いから。」
「お前って100m何秒くらいで走れる?」
「ん?…11秒くらいかな平均。調子良ければ10秒後半くらい」
「早いなぁ。相変わらず。」
羨ましいのか諦められたのか正直分からないが明らかに別格であることは自分でも分かることだった。
足と守備に不調はない。俺の持ち味であり守備範囲の広さと反射神経でショートを守ることができるのだ。
「孝介。お前明日はオフだよな?」
「ん?一応な。桔梗と出かけるつもりだけど。」
「櫛田と?」
「うん。桔梗と。カフェに行きたいんだとよ。ついでにショッピングモールの方は行ったことないから一緒についてきてもらう予定。」
「お前本当に付き合ってないんだよな?ずっと最近二人でいるだろ?それともあのいつも応援しているギャルと付き合っているのか?」
「ギャルって……あぁ。佐藤のことか。佐藤は……今桔梗と同じくらい大切な人かな?正直野球を毎試合見に来るしそのあとミーティングがあるって話しているからからこそあまり話せないけど、まぁ桔梗の恋のライバルってところか?」
「さらっと好意があることを暴露するなよ。」
「ほとんど誰が見ても好意を持ってるってまる分かりだろ?でも応援してくれるってこういう調子が悪い時本当に助かるんだよな。それに何も言わないことも。」
佐藤はよく野球観戦に来てくれるが基本的に帰りを待つことはない。
一応、待っていても何もできないからっていうことがあり、最近はよく学校でそういう話を振ってくる。
佐藤も中間の間に野球は勉強したのかルールは大体理解しているようだったし。
「佐藤とは出かけないのかよ。」
「あいつプライベートポイントは持ってないだろ。友達の関係なのに奢るっておかしいし。つーかプライベートポイントで余裕あるのって俺の知り合いじゃ桔梗くらいしかいないだろ?だから野球部で集まってもいいけど、Aの葛城はそれに厳しいって聞くし。」
クラスの特徴は大体頭に入っている。その中でもAクラスの保守派の葛城はかなり厳しく他のクラスの交流はあまりよいとは考えてないとは聞いている。最近の昼食で集まる際幾度か出てないことが多くなったのだ。Aクラスの宮本と菊池はこういった会合に出れないこともある。
ついでに野球部内ではもう桔梗のことは突っ込まれない。当然のごとく俺の彼女扱いとなっている。というよりもう誰に桔梗と付き合ってないと答えても信じてもらえないだろう。
「正直争っているからチーム内でも亀裂が生むことがあるし、ポイント制度でレギュラーになったら恩恵がでかいのも目標になるのはいいけれど、システムを考えたらあんまり好きじゃないな。この学校。」
「気持ちは分かるけど。チームスポーツやってたら協力が当たり前だからな。」
Bクラスの矢野の言葉に苦笑してしまう。Bクラスはクラス団結が強いこともありBクラスの松山と矢野、小柴は協力という言葉が一番合っているクラスである。
野球やサッカーなどは基本的には自分だけというのができない。だからこそ協力という言葉が一番しっくりくる。野球は一人が強くても勝てるわけではないのだから。
「そういや明日ってポイント配布日だよな。いいよなぁ。孝介は。」
「嫌味かよ。こっちはクラスポイント全くないんだから。」
「お前俺たちのクラスから五万まきあげておいて何言ってんだ。プライベートポイントはお前の方が持ってるだろ。」
Cクラスはどちらかといえば欲に忠実。ポイントの話題などはCクラスの宮城と松井が多いのだ。
「確かにそうだけど部活動頼みで安定したプライベートポイントがないと怖いぞ?ショートって故障も多いし。」
「故障ね。……お前そういうのとは無関係そうだけど。」
「……故障だけは避けようがないだろ。」
唯一怖いのは故障だ。俺は野球は高校までって決めているがそれでも故障で終えるのは避けたいところである。
「でも俺たちの代ではどっちにしろ孝介次第だろ。守備の要でピッチャーも出来るんだろ。」
「スタミナ持たないけどな。ショートやってたら一回が限界だし高校レベルにはほど遠いって。」
「スタミナ持たないってお前誰よりもスタミナあるのにな。」
「確かに運動量は桁違いだからだろうな。」
と言いながらグラウンド整備を行う。今日も野球部は平和である。
……裏でトラブルが起こっているとある部活とは違って。
「……ん?あれ?桔梗。確か今日ポイント配布の日だよな。」
「うん。そうだけど。」
「俺の残高先月と同じ19万9325円のままなんだけど。桔梗って振り込まれてる?」
「えっ?……どこから突っ込んだらいいのか分からないけど。皆に女王様気取りの借金払い終わってまだそれだけ残ってるの?」
会話の端々に悪口が含まれているのは当然なのでもはや何も気にならないようになっていた。
「正直男子だからあんまり使うことないしな。桔梗と割り勘してたらこうなるって。それよりも桔梗こそ大丈夫か?」
「厳しいかな。前と同じペースで使ったら来月にはポイントなくなるから。」
「それなら今月は生活費は俺が払おうか?コスメとか女子ってお金かかるだろ?」
「……ううん。やめとく。孝介くんとは公平でいたいから。金銭関係でトラブルで喧嘩なんてしたくないし。」
こういったところはしっかりしてるよな。こいつ。だからこそ信用しているのもあるのだけど。
「…それと、今日の放課後のことなんだけど。」
「一応様子見かな。せっかく楽しみにしてたけどこうなったら仕方ないか。」
「はぁ。本当に最悪。」
少しばかり桔梗が落ち込んでるように見える。でも桔梗は俺が奢ると言っても断ることはわかっていた。根はしっかり者であるために一度決めたら曲げないことも。だからある程度妥協点を告げると少しは持ち直す。
「今日の晩飯何食べたい?それくらいなら奢っていいだろ。」
「…何でもいい。孝介くんと家で2人で食べたい。」
「了解。じゃあいつも通り桔梗が作ってくれるか?俺も手伝うから。」
「……うん。」
本当にショックだったのかかなりいじけてる。ちゃんと表情を俺の前では隠さないようになったのはいいもののなんか子供っぽいなぁと思ったのは桔梗にはいえない。
多分今日は愚痴を大量にこぼすだろうなぁと苦笑してしまうのであった。
「あっ!おはよう。有原くん!!プライベートポイントって」
「ん?やっぱり振り込まれてなかったのか。一応野球部全員は振り込まれてないらしいけど。」
「そうなの?」
「確認は取れたから多分学校側のトラブルか個人的なトラブルが関係してるって先輩が言ってた。」
「……すごいね。交友関係。」
「部活してたら普通じゃないか?」
するとクラスでも中心人物である平田が近づいてくる。
「それ本当かい?」
「ん?ほれ。」
俺は野球部の連絡を取り合いを見せる。
一応許可は取っていることもあり、トラブルにはならないと思うけど。
「ついでに桔梗にも確認とってもらったから。」
「桔梗ちゃん?」
「一之瀬とか女子の友達に確認取ってもらったから。」
「そういうことじゃなくて名前でいつから呼び始めたの?」
なるほど。そっちか。そういえば二日前までは学校では普通に苗字だったからな。
ついでに名前で呼ばなかった理由は桔梗が慣れておらずすぐに顔が真っ赤になりにやけてしまうので少しなれる期間がかかっただけだ。
「中間考査の結果が出たあたりかな。まぁ今はそのことは置いといてプライベートポイントは一年だけのトラブルであり全クラス支給がされていないということだ。」
「なるほど。それなら先生の話を待つしかないね。」
「あの先生がちゃんと話せばな。」
「本当に孝介くん。茶柱先生のこと嫌いなんだね。」
多分嫌なのは母親とかぶるからだろう。
堀北にしろ担任にしろイライラするのは。
多分だけど佐藤が気になっているのは佐藤には悪いけど父さんと多少かぶるところがあるからだろうな。
「お〜い。席につけ。HR始まるぞ。」
と担任がやってくる。クールビューティと言えればいいが単純に嫌いな茶柱先生が入ってくる。そして着席すると真っ先声を上げたのは池だった。
「佐枝ちゃん先生!俺たち今月もポイント0だったんですか!?朝チェックしたら1円も振り込まれてなかったんだけど!」
「なるほど。それで落ち着かないわけか。」
「俺たちこの1ヶ月、死ぬほど頑張りましたよ。中間テストだって乗り切ったし……なのに0のままなんてあんまりじゃないですかね! 遅刻や欠席、私語だって俺ら全くしてなかったはずだし!」
それは当たり前の行為なんだよっと突っ込んだら負けみたいな事を告げる。
「そう結論を急ぐな。説明してやるから、ひとまず話を聞け。確かにお前たちは今までとは見違えるほど頑張った。それは私も認めている。お前たちが実感を持っているように、学校側も当然それを理解している。」
先生の言葉を生徒たちは黙って聞いていた。それほどまで今プライベートポイントの需要は高いのだ。
「ではまず、今月のポイントを発表する。」
茶柱先生はそう言うと、手にした紙を黒板に広げた。紙には今月のクラスポイントが各クラス毎に記載されている。
ほぼ全てのクラスが先月の値にプラス100近く加算されており、Aクラスは1014ポイントと、入学時の値を上回っている。
……そういや何人か部活でベンチ入りしてる人多いんだったな。そしてDクラスも同じように146クラスポイント、それも1番の伸び幅であり当然プラス判定だ。
「え?なに、146って……俺たちプラスになったってこと!?やったぜ。」
「喜ぶのは早いぞと言いたいところだがクラスでここまで伸ばせたのは学校側は評価している。今回は中間テストを乗り切った1年へのご褒美として各クラスに最低100ポイント近く支給されることになっているがそれ以外でもクラスポイント稼いでいる生徒がいると言うことだ。一部の生徒は気づいているんじゃないか?残りのクラスポイントはほぼいや。その生徒のお陰でDクラスは赤点もゼロ人だったのだからな。」
「…マジ?つまり桔梗ちゃんが?」
やりやがった。即ちこのクラスポイントの殆どを俺が稼いだということになる。
「……なるほど。櫛田さんが出すのは不自然だったけど貴方が過去問を持ってきたのなら納得がいくわ。」
堀北が納得したようにしている。桔梗も理解していると思うので否定はできないだろう。
「……誰にもいうなよ。目立つのは元々嫌いなんだよ。」
「あら、もう遅いんじゃない?櫛田さんは部活をしていないことは明確。即ち貴方しか現状クラスポイントを稼げるチャンスはないのよ。他のクラスに過去問を売ったのは納得いかないけど。」
なんかまた面倒事に巻き込まれたような気がする。それに偶然見つけただけであり、俺の実力ではない。この場合堀北に誰が過去問を見つけたのかバレるのが問題なのだ。まぁもう隠していてもしょうがない。
「それじゃなんでプライベートポイント支払われてないんですか?」
「今回、少しトラブルがあってな……1年生のポイント支給が遅れている。お前たちには悪いが少し待っていてくれ。」
トラブル?なんかものすごく嫌な予感がする。トラブルと言っても機材トラブルならすぐに機材トラブルだと告げる筈だ。
「私にはどうすることも出来ん。トラブルが解消次第ポイントは支給されるはずだから我慢してくれ。尤も、ポイントが残っていれば、だがな。」
俺はため息を吐く。いつひと時もこのクラスでは安堵の時はなさそうだ。
すいません少しアンケートについてつけ加えます。
一応アンケートでメインヒロインを桔梗にする場合ですが。
サブヒロインより強いがメインヒロインよりちょっと弱いヒロインという扱いになります。
ニセコイでいう小野寺小咲枠みたいな感じです
メインヒロイン投票
-
桔梗だけに変更
-
今のまま