前回まで同様にメイド長が扉をノックする前に、クロモトさんが飛び出してきて俺を抱きしめようとしたが今回は…………
「おぉ〜来てくれ――『おぉ〜カイト坊! 暫く見ない内に……アレ? 小さくなった?――ってか、このお腹に当たる柔らかい感触は…………』――あぁ〜俺知ーらん」
父上が迎えようとしたのを無視し、今俺の頭をワシワシと撫でているつもりのクロモトさん。しかし現実は……隣のミクも顔を青くして、言葉にできず、状況を見守るだけになっている。
「…………」
「カイ……ッヒッ!? あ……アァア…………」
これがただのメイドであったなら「クロモト様、お止め下さい。私はカイト様では御座いません」と頬を赤らめ返事していたかもしれない。クロモトさんは性格はアレだが、外見は悪くないから……しかし今回の相手は厳格なるメイド長にして、ミクを影の護衛として鍛え上げた王国最恐メイドのメイド長……彼女だと気づくやクロモトさんの顔から血の気が引き、その顔が絶望へと変わっていく。
そしてニコリと笑ったメイド長は次の瞬間…………
「――グッ、ゲフッ!? あばぁぁぁぁぁ!! がっ…………」
下からの左の掌打の打ち上げが顎に入ると同時に、膝による男の急所の蹴り上げ……状態が浮いたところを空いていた右手で手首を掴み、捻りながらの一本背負いで床に叩きつけ、その反動に合わせて腕を引き、クロモトさんの身体を引き上げたところ(合気)に0距離当身で廊下の壁に吹き飛ばした。当身と同時に首に肘打ちを決めていたのも俺は見逃さなかった。
クロモトさんは白目をむき、壁からズルズルと滑り落ちる様に崩れ落ち、旅立たれてしまったようだ……メイド長恐るべし…………ブルブル。身体が震えてしまったよ。
そして何も無かった様に中に案内され、俺とミクは席に着いた。
「さてカイトよ、ここに呼ばれた理由は分かっておるな?」
「はい全て。それとクロモトさんはあのままで良いのですか父上?」
何度も同じ説明を聞くのに飽きた為、全て分かっている事にして、こちらの返答などどうでもいいかの如く話を続けようとした父上を止め、もはや会話をスムーズに運ぶようになってしまっていた。
「その内目覚める……いや、アレは流石にまずそうか。ミク――『嫌デス★』――メイド長」
「はぁ……仕方ありませんね……あっ、呼吸してない」
「クロモトさぁぁぁぁん!?」
その後、なんとか息を吹き返したクロモトさんも席に着き会議が始まる。
「三途の川で手を振る親父が見えたぜ……まだ、こっちには来るんじゃねぇってさ」
「「アハハ…………」」
会議は順当に進み、今回も過去同様にA級ライセンス持ちのクロモトさんと影の護衛のミクの三人で巨乳減少の原因調査を冒険者として極秘にしてくる事となった。
「い、いつからご存知だったのですか? 少なくともこれまで一度も幸運な事に影の護衛としてカイト様の前で動いた事は無かったはずです」
部屋へと戻る途中、私はカイト様に先程疑問に思った事を聞いてみた。しかしカイト様はニコリと笑い「まだ、秘密☆」と教えては下さらなかった。
今回カイトは過去に逆行して、これから起こる事の知識を持っている事を伝えていません。なるべく一番最初の冒険と同じ状況で進めようとしたからである。
要はカイトのみ攻略本片手にRPGを進めていく感覚と思って貰えれば良いでしょう。
マ「最狂……最凶……最強……」
メイド長:以後、メ「そんな貴方には最恐育を……」
マ「――ピッ!?」
メ「ウフフフフ、ジョウダンですよ?」
マ「…………」ガクガクブルブル