オラァも青春したかっただぁ……
今回は日常回的な。話は進まないけど、主人公への解像度を上げるための回。ピンクのあの子が登場します。
よくある青春アニメのオープニングに、学校の屋上で何かしらをしているシーンが登場するのは十八番だ。
フェンスにもたれかかって雑談をしていたり、主人公が空を見上げていたりとシチュエーションのバリエーションが豊富で扱いやすいのだと思う。
青い空に吹き抜ける風。青春を体現したかのような爽やかさを持つ学校の屋上は、正に青春に夢を見る少年少女にとっての希望の光。
そして今も「私も高校に入ったらこんなことしてみたい!」といった感じの小中学生が年中無休で量産されていることであろう。かくいう俺もそんな夢見る少年の一人だった。
しかし、そんなことができるのはアニメの中だけ。現実では、学校の屋上なんて開放されていない学校がほとんどだ。
ウッキウキで入った高校。しかしそこに待ち受けるのは青春なんてものではなく、ただひたすらに課題。あぁ悲しきかな。
だがしかし、俺が通っているのは自由な校風が売りの神山高校だ。そこらの都立高校とは一味も二味も違う。
無論、屋上だって開放されている。
「ふんふふっふふーんっ」
鼻歌と共に階段を一段とばしで登っていく。今日はとても気分が良い。誰かにこの気持ちを共有したいくらいだ。
「ふふんふんふん―――っと到着!」
やがて階段が終わると、目の前にそびえるは鉄製の扉。
ドアノブに手を掛け、ぐっと力を込めて押す。中途半端に錆びた鉄がキィキィと悲鳴を上げる。
ある程度扉を押し出すとふっと力が抜け、大きな音を立てながら扉がひらいた。
空を見あげれば視界に広がる青一色。屋上日和の快晴だ。いや屋上日和ってなんだ?
「瑞希!おはよう!」
「お、来た来た。小夏おはよー……ってもうお昼だけどね」
そう言ってころころと笑ってみせるのは、中学からの後輩の暁山瑞希。ピンク色の髪をサイドテールにして纒めている可愛らしい少女だ。
「そう、お昼時だ!昼食を食べよう!今日も弁当作ってきたぞ!」
「あー、いいけど今日風強いし、食べるんだったら中にしない?」
瑞希の言うとおり、今日は風が強い。今朝、家を出た瞬間に前髪が自我を持ち出すくらいには風が強い。
そんな状況下で食事をとったらどうなるのか。それは勿論、弁当の内容物が風に攫われ、下手すれば道行く人々の頭もしくは顔面へ直撃することになるだろう。そのような事態は誇り高き神校生として、絶対に避けなければならない。
「確かに!じゃあ中で食べるか!」
「そうしよそうしよ〜……って言いたいところなんだけど―――」
「早速食堂へレッツゴぐえー!?」
「ちょっっっと待ったぁ!聞いてよ!」
俺が瑞希に背を向け、開きっぱなしの扉へ駆け出したその瞬間、背後から瑞希の右ラリアットが俺の首に炸裂した。なんで?死んじゃうよ?
「ゲッホゲホ……う、後ろからの攻撃は反則だぞ……」
「あっごめん。ちょっとやりすぎちゃった」
えへへ……とバツが悪そうに笑う瑞希。普通に笑いごとじゃ済まないが許そう。寛大な心を持つことはいい男になるための必須事項だ。
「やりすぎちゃったのレベルじゃないんだが!?……いや、まぁいい。急にどうしたんだ?」
「別に大したことじゃないんだけどね?小夏っていつもお弁当作ってきてくれて、有無を言わさず食べさせてくるじゃん?」
「……え?もしや嫌々食べていたのか?……そうか、土下座で勘弁してくれないだろうか」
俺はまふゆにふさわしい男になるための努力の一環として、料理の練習をしている。そのため、学校での昼食は基本的に自作の弁当なのだが、俺が作った弁当を瑞希に一口食べさせてみたところ
『えっ美味しっ。日向こんなの作れるの?』
と大絶賛をいただいた。褒められて調子に乗った俺は、次の日から瑞希の分の弁当まで作って学校にもって来ていたのだが……嫌だったのだろうか。だとしたら申し訳がない。土下座で許してもらえるだろうか?かくなるうえは焼き土下座……
「わー!違う違う!小夏のお弁当はすっごく美味しいよ?毎日学校来てるのだって小夏のお弁当が楽しみだからだし」
「本当か?じゃあなんでいきなり俺のことを殺そうとしたんだ?」
「えーっとね、さっき呼び止めたのは小夏っていつもボクの分までお弁当作ってくれてるけどさ、それが小夏の負担になってないか急に不安になっちゃって」
それと、あんな高火力放つつもりはなかったんだって……と付け足す瑞希。
「なんだそんなことか」
瑞希のあまりに見当違いな発言を聞いて、少し拍子抜けした気分になった。
「そ、そんなことって……ボク、かなーり真剣に悩んでたんですけどー?」
怪訝そうな顔をする瑞希。言ってしまうと、瑞希は一度悩みだすとめちゃくちゃに面倒くさいタイプだ。周りに迷惑をかけたくないがゆえに1人で悩み事を抱え込んで、どんどんと追い詰められていってしまう。そんな優しくて面倒くさい人間が暁山瑞希なのだ。そんな彼女だから、ここはしっかりと言ってやらねば納得しないだろう。
「なに、別に気にすることもないぞ。俺は俺がやりたくて瑞希の弁当作ってるんだからな。やりたくないことは絶対に進んでやろうとは思わない人間だぞ俺は。瑞希もわかっているだろう?」
「確かにそうだけど……本当に大丈夫?」
っかー!面倒くさいやつだなぁ全く!お前そんなんだから友達が少ないんだぞ!俺と類と白石と……結構いるな。いやだが面倒くさいことに変わりはない!
「俺がいいって言ったらいい!瑞希は俺の餌付けを甘んじて受け入れればいいんだ!」
「うーん……そこまで言うんだったら……」
やっと俺の言うことを信じる気になった瑞希。しかしその表情はまだ少し納得がいっていないようなものだった。
「まぁなんだ、瑞希が納得しないようならこれからはもう弁当作ってこないってこともできるぞ」
「えー!?それは困るなぁ……」
「だろう?ならば黙って俺の弁当を食べるのが道理というものだ!」
「……分かったよ。それじゃ、これからも小夏のご厚意に甘えさせてもらっちゃいまーす」
ようやく納得した様子の瑞希を見て、少し安心する。だが……
「いや、切り替え早すぎるだろ」
「それがボクの良いところでしょ?」
悪びれもせずにはにかんでみせる瑞希。確かに彼女の切り替えの早さは長所かもしれない。にしても早すぎないか?
「はいはい……話も済んだのだから、さっさと食堂に向かうぞ。そろそろ前髪がもげそうだ」
「はーいっ」
俺の後ろをぴょこぴょことした足取りで付いてくる瑞希はまぁ可愛らしかった。
◆
「ごちそうさまでした。あ~美味しかった〜。やっぱり小夏のお弁当すっごく美味しいよ!」
「そうか!それはよかった!やはり、美味しいと言ってもらえると作った甲斐があったと思えるな!」
お昼休みももうじき終わる。俺と瑞希は食堂の中で二人、俺の作った弁当を食べ終わった頃だった。
「ほんとほんと。さっきも言ったけど、小夏のお弁当がなかったら毎日学校になんて来れてないよ〜。フッフッフッ……小夏くんのおかげでボクの毎日登校連続記録は更新され続けているのだよ……」
昼休みの直前に学校に来て俺の弁当を食ったら即帰宅。それ毎日のように繰り返すことを毎日登校と言っていいのか疑問に思うところだが、俺がそれをとやかく言う筋合いもないだろう。
「あぁ、そうだな」
「えぇ〜、反応それだけ?いつもの小夏ならもうちょっとツッコんでくれるのに」
「いやはや、首が痛くてどうにも調子が出ないもんで」
「うっ……ほんとごめん」
してやったり、だな。
少し原作との相違点が出てきましたね。瑞希が毎日学校に来ています。これによって物語が大幅に改変されることはないと思いますが。
ちなみにプロローグでは主人公が寝坊していますが、そういう日には普通に学食を食べます。瑞希も学食です。
バーが伸びてたのでバク宙しました。腰やっちまった……
ちょっと伸びるの早すぎやぁしませんかねぇ……いやめちゃくちゃありがたいです。本当にありがとうございます。
というわけで、評価してくださった神々のお名前を僭越ながら紹介させていただきます。
ラキロキ 様
らてまる 様
10評価ありがとうございます!希少価値の高い10評価、拙作に付けていただけるとは……恐縮です!
.y. 様
遠悠 様
イワシ【キリッ】 様
カワキ 様
十魔 様
9評価ありがとうございます!実質最高評価!それなのに5名も!本当にありがとうございます!
お話の着地点、みつけました。完結できます(完結できるとはいっていない)
拙作のことを少しでも良いな、と思っていたただけた方がいらっしゃったら、感想、評価、お気に入り登録の方をしていただけると作者の励みになります。
ところでスパダリは
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ええんちゃう?
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いやーちょっとね……
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きっしょ、しねば?