リコリス・リベリオン   作:千束の笑顔が大好き

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 最終話見ました。


 いやあ、よかった。よかったよホント……!


Keep your friends close and your enemies closer.

 ────────────

 

 

 四人が逃げ込んだ先は、かつては盛況したであろう大型スーパーの跡地だった。

 廃墟である。

 打ち捨てられてからかなりの年月が経っているのか、床や天井のタイルはヒビ割れ、ところどころ剥げかけている。あちこちに堆積した瓦礫は、おそらくこの剥げたタイルだろう。

 天井に嵌め込まれた蛍光灯はまばらで、当然ながらどれも明かりを灯してはいなかった。陳列棚やレジはどれも埃を被っていて、だからこの売り場に足を踏み入れた時、千束が最初に感じたのは息苦しさだった。

 

「はい、そのスーパーに避難しています。四人とも、目立った傷はありません」

 

 物陰にしゃがみ込むウォールナットの隣で、同じように姿勢を低くしたたきなが、インカムに手を当ててそう話す。

 相手はミカである。定時連絡で、これまでの経緯と現在の対応を伝えているのだ。

 

「判った、気をつけて行動してくれ」

 

 オープン・チャンネルで届いてくるミカの言葉は、千束や大暉のインカムにも届いている。

 

 待機姿勢で銃を構えた千束は、窓から外の様子を窺った。

 窓ガラスのすぐ向こうは背の高い植え込みがあるため、姿勢を低くしてさえいれば外からこちらを発見するのは難しいだろう。

 店の外に一台のバンと、そこから出て来た男達の姿が見えた。

 全員が、その手に突撃銃を抱えている。

 

「ひぃ、ふぅ、みぃ……五人かぁ」

「ま、対処出来ない数じゃないな」

 

 一つ向こうの柱に背を預けた大暉が、デバイスを操作しながらそう呟いた。

 

「フリージア、どうだ?」

「建物の正面にドローンがあるわ」

 

 応えるフリージアの言葉は、しかしデバイスのスピーカーからではなく、千束達が耳に突っ込んだインカムから聞こえてくる。

 

「高速道路の高架下ね」

「つねに監視されてるわけか……フリージア、とりあえず正面のドローンを落とせ。多少の時間は稼げるだろ」

 

 大暉の指示に、

 

「了解」

 

 フリージアが即答する。次に彼女が『口』を『開』くまで、五秒とかからなかった。

 

「終わったわ」

「よし……囲まれる前に移動した方がいいな」

「だね。裏口?」

「それしかねえだろ」

 

 立ち上がった大暉が、一足早く陳列棚の方へ向かう。

 

「おっけー」

 

 窓から離れて、千束はウォールナット達の方へと近寄る。

 

「ハッカさん」

 

 声をかけると、タブレットを操作していた着ぐるみの顔がこちらに向けられた。

 

「とりあえず裏口を目指しましょう。私に付いて来てください」

「判った」

 

 通路を挟んだ陳列棚の物陰に隠れた大暉が、バックヤードへと繋がる通用口の方を確認する。

 こちらを振り返ると、小さく頷いた。

 状況、クリア。

 彼の合図に、立ち上がった千束が先行して物陰の間を移動する。すぐ後ろをウォールナットが付いてくる格好だ。

 最後にたきなが黄色いスーツケースを重そうに引きずりながら通路を渡る……その寸前で、大暉が突然声を張り上げた。

 

「たきな、伏せろ!」

 

 反射的に、たきなはスーツケースの陰に身を隠す。

 直後、連続する銃声が店内に轟くと同時に、横殴りの銃弾の雨がたきなを襲った。

 死の雨だ。

 雇われた傭兵達が入り込んだのである。

 

「四人を発見! 銃を持ってる!!」

 

 男が喚く先は、無線機ごしの仲間へ向かってだろうか。

 棚で視界が遮られるために何人がこのフロアにいるかまでは判らないが、どちらにしろ千束のやることは決まっている。

 相手を無力化する。それだけだ。

 そこからの動きは速かった。

 

「大暉! ハッカさんお願い!!」

「それしかねぇか……了解!」

 

 大暉にウォールナットを託すのは、丸腰の彼を前線に出すよりは、この場で護衛対象の側にいてもらった方がいいだろうという判断からだ。

 通用口に面した壁沿いに通路を走る千束は、銃声がやんだタイミングで棚に足をかけ、よいしょとばかりに跳躍する。

 突撃銃をぶっ放している傭兵は二人。赤いキャップと長い髪を束ねた男だ。

 銃を斜めに構えて銃口と目線を直線化し、照準を合わせる。

 まずは一発、撃ち込んだ。

 

「ぐあっ!?」

 

 あらぬ方向から飛来した赤い弾丸は、長髪の男の脚に命中した。

 続いて二発、タクティカル・ベストを着込んだ上半身にお見舞いする。

 だが、血は噴き出さない。代わりに咲くのは赤い花だ。

 プラスチックを加工したゴム弾が、着弾時にその弾頭を細かく砕くのだ。そのインパクトは、超至近距離であればバットで思い切りぶん殴られたような痛みに匹敵する。

 そんな弾丸を三発ともまともに受けて、長髪の傭兵は激痛に顔を歪めさせる。

 その隙に、スーツケースの陰に仰向けになるたきなが、上体をひねって遮蔽物から顔を出し、発砲する。

 弾丸は男の腕をかすめると、二人の傭兵が物陰に隠れるのが見えた。たきなのは実弾だから、きっとかすめた腕からは鮮血が垂れているに違いない。

 

「たきな! そっちは頼める!?」

「何とかやってみます!」

「じゃよろしく!」

 

 フロアを相棒に任せ、千束は退路を確保するために一人バックヤードへと向かう。

 その直後、

 

「ちょ、ま……え!? 盾に使うのはナシだ!!」

「あ、おい! 下手に立つな! 撃たれんぞ!!」

 

 動揺に声を上擦らせるウォールナットと、それを引き止めようとする大暉の言い合いが聞こえてきた。

 予想外の事態に、思わず千束も口を挟む。

 

「ちょ、駄目ですって!!」

「ボクよりもケースだ! 大事なものだって言っただろー!?」

「たきな! それ何か駄目らしいよ!?」

「無理言わないでください!」

 

 それもそうだ。

 だが時間との勝負である以上、ここで千束がフロアに引き返すのは悪手だ。あまり悠長に構えてはいられない。

 それにあちらには大暉がいる。『もしも』の場合は、きっと彼がうまくやってくれるはずだ。

 だから、

 

「とにかく、そっちはそっちで頑張って!」

 

 私は私に出来ることをやる。

 

 細い廊下を抜けた先は、従業員用の通路だ。片方は壁面になっていて、もう片方の壁面にはいくつものドアが並んでいる。

 通路奥に置かれた台車の陰に、イヤーガードを付けた傭兵が見えた。

 廊下の陰からその様子を盗み見た千束は、向こうがこちらに気づいたタイミングで素早く身を隠す。

 案の定、一続きの轟音のような銃声が響くと、無数の銃弾が千束の顔があったあたりの壁を撃ちつけ、次々とコンクリートに弾痕を穿ってゆく。

 銃声がやんだタイミングこそ、反撃の合図である。

 廊下からもう一度様子を確認した時、傭兵の手には突撃銃ではなく、掌ほどの大きさの楕円形の物体が握られていた。

 そのまま、慣れた手つきで物体上部のピンを引き抜く。

 手榴弾である。

 通路へ飛び出した千束は数メートルの距離を一気に詰めると、

 

「とおっ!」

 

 投擲(とうてき)寸前のそれを右の手刀で叩き落とす。

 相手が取るよりも早く近くの部屋へと蹴り入れると、動揺してガラ空きになった相手の肩口に、追い打ちをかけるように左の肘を突き入れた。

 

「はい残念でしたあッ!」

 

 そのままベストのストラップを引っ掴むと、思い切り手前に引っ張る。バランスを崩した相手であれば、千束であっても男一人投げ飛ばすのはわけないのだ。

 投げた先は、さっき千束が手榴弾を蹴り入れた部屋の真ん前である。

 

「ぐあっ!!」

 

 どんぴしゃ、のタイミングで起こった爆発でドアが廊下側へと吹き飛ばされ、男はひしゃげたドアと壁に挟まれて沈黙した。

 

 よし、まず一人。

 

 その時だ。

 フロアの傭兵達を切り抜けたのか、ウォールナットを先導する大暉とスーツケースを引くたきなの三人が千束が出て来たのと同じ廊下から通路へ姿を現した。

 こちらを見た大暉が、しかしその目を見開かせる。

 途端に、ざっ、という足音がした。

 千束の背後からだ。

 

「もらったぁ!!」

 

 男の喚きに、しかし千束は慌てることなく背後を振り返る。

 彼女の目が銃口を捉えた直後、相手の突撃銃が火を吹いた。

 だが男の顔に浮かぶのは安堵ではなく、戦慄だった。

 それもそうだ。

 相手が撃った弾丸は、全て標的であるはずの千束に当たることなく、その周辺のコンクリートの床を、壁を撃ち抜いてゆくのだ。

 どれだけ照準し直しても、どれだけ発砲しても、そのことごとくは彼女の躯に穴を穿つことは叶わない。

 最小限の動きだけで、全ての弾を避けているのである。

 ぎりっ、と相手が歯嚙みしたのが判った。

 

 千束はC.A.R.システムのエクステンデッド・ポジションの構えをとると、そのまま相手に向かって歩きだす。

 傭兵は焦燥を隠すことなく立て続けに発砲を続けるが、轟く銃声と雨のような弾丸の中を、千束は迷うことなく突き進んでゆく。

 その移動の最中、三発、相手に撃ち込んだ。

 着弾したゴム弾が三つの赤い花を咲かせると、男は激痛に苦悶しつつ獲物を手放してしまう。

 そのまま仰向けに倒れた男へ、千束は追い打ちをかけるように容赦なく弾丸を叩き込んだ。

 男が完全に意識を失ったのを確認すると、空の弾倉を入れ換える。

 

 すぐ横は、フロアへ繋がる通用口である。

 そこへ向かって三回引鉄を引けば、ちょうど姿を現したキャップを被った傭兵に着弾する。

 

「がぁあッ!?」

 

 さらに一歩踏み込みつつ引き上げた右脚の足刀蹴りで相手から獲物を落とさせると、三発の弾丸と蹴りによってバランスを崩した躯がくずおれる。

 だが意識を刈り取るまでには至らなかったようだ。警戒のため銃口は逸らさないが、しかし千束はそこであることに気づいた。

 千束に蹴られた右肩のあたりを庇うように手で押さえているのだ。

 見ると、その手の下には血に濡れたシャツと痛ましい銃創がある。

 おそらく、たきなの反撃にあって出来た傷だろう。

 

「……ふう」

 

 息をついて、銃を仕舞う。それから背負った鞄を下ろすと、中からワセリンの瓶とガムテープを取り出す。

 

「手当てする」

「な、なにを……、ぅぐっ!」

「血ぃ出てるでしょー?」

 

 サングラスごしに怪訝そうな視線をこちらに送る男に、しゃがみ込んだ千束は作業を始めることにした。

 

「敵の増援が来る前に脱出しましょう!」

 

 背後から焦り混じりの声は、たきなだ。

 

「少し待って」

「……囲まれますよ」

「死んじゃうでしょ」

 

 肩口には太い血管が走っている。そこが傷つけられたとあれば、早急な処置を施さねば命にかかわる危険性があるのだ。

 

「逃げ遅れたらどうするんですか!」

 

 その言葉に、

 

「やらせてやれ」

 

 なだめるように、大暉の言葉が重なる。

 

「これが千束のやり方だ。それから……」

 

 その声が、だんだんと近づいて来る。そしてある一点で止まると、ごそごそと物音がし始めた。

 見ると、腰のポーチから消毒液と包帯を取り出してもう一人の腕の傷の処置を始めている。

 

「俺のな」

「大暉……」

 

 自然と、その名を呼ぶ口元が笑みになる。

 

「石蕗さんまで……?」

「脱出ルートはまだ敵にマークされていないな」

 

 ウォールナットだ。タブレットで退路を確認しているらしい。

 

「今ならまだ行けるぞ」

「しかし……」

 

 それでも食い下がろうとするたきなに、千束は一度処置の手を止めてから振り向いた。

 そして、笑みを浮かべて見せる。

 

「私達もすぐ追いかけるから。たきなはハッカさん連れて先に行ってて」

 

 千束の目をじっと見つめて、渋々といった様子でたきなは頷いた。

 

「……行きましょう」

 

 たきなの合図で、二人の足音が遠ざかってゆく。

 キャップの男が口を開いたのは、タクティカル・ベストを脱がせてシャツをまくり上げた時だった。

 

「何の真似だ……?」

「見て判らない? 応急処置」

「やめろ……、からかっているのか……!」

「じゃあ死にたいのか?」

 

 もう一人を処置する大暉が声を飛ばせば、いや、と観念したように呟いた。

 

「今日、夕飯は誰と?」

「……家族だ」

「いいねえ。私も、大切な人と食べるつもり」

「大切な人……?」

 

 問い返す男に千束は笑みを浮かべると、同じように処置を続ける青年の方を向くことで応える。

 

「そいつか?」

「うん。ナイショだよー?」

「言うかよ……」

「よぉし終わった。……おいこら、いつまで寝てんだ。起きろ」

 

 そんな二人の囁きなど気にするそぶりもなく、そう言って大暉が軽く頬をぶつと、気絶していたもう一人の男が意識を取り戻した。

 

「なに……?」

 

 キャップの男の驚愕もよそに、もう一人は大暉の顔を見た途端身構えるが、腕の傷の様子を確認するとすぐにおとなしくなった。

 

「私が撃った人は大丈夫」

「……ゴム弾か」

「せいかぁい」

 

 あらかた処置を終えたところで、ふいにキャップの男が千束の肩に手を置いた。

 

「……もういい、行けよ」

「平気なの?」

「おかげさまでな……」

「ん、判った。ちゃんと鉄分摂れよ~」

 

 言われたとおり道具を仕舞って、立ち上がる。

 

「大暉。行こ?」

「おう」

 

 応えて立ち上がる大暉とたきな達の後を追おうとしたところで、

 

「そっちはやめろ!」

 

 キャップの男の声が追いすがった。

 

「……うちのハッカーのドローンが見ている」

「平気だよ。それならさっき大暉が落としてくれたし」

 

 ね、と問いかければ、ああ、と頷きが返ってくる。

 だが、

 

「ドローンはまだある。待ち伏せされてるぞ」

「え……?」

「……まさか!」

 

 気がついた時には、二人は同時に走り出していた。

 廊下を駆け抜け、突き当たりを半ば激突の勢いで折れ曲がる。

 

「糞っタレ! どうして気がつかなかった!!」

 

 隣を走る大暉の、それは自分自身に対する叱責である。

 ドローンのことだ。

 たしかに、店の前で監視していたのも、逃走車両の制御権を奪ったのもドローンだった。

 敵は、とにかくドローンから状況を窺っていたのだ。

 ならば、

 そのどちらも破壊された相手が、さらなる一手を打ってこないわけがないではないか!

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! とにかく二人を止めなきゃ!」

 

 でなければ、

 裏口から外に出た途端、何らかのアクシデントが起こる。

 それも、よくない方向で。

 

「たきな!」

 

 裏口へと繋がる搬入口に躍り出た時、千束は声を張り上げた。二人の姿を見つけたからだ。

 呼ばれたたきなが、困惑の顔でこちらを振り返る。

 一人だけ先を歩くウォールナットが、すでにドアノブへと手をかけていた。

 

「出るな!!」

 

 大暉が続ける。

 だが、手遅れだった。

 たきなはその場に踏みとどまったが、ウォールナットは二人の制止も間に合わずドアを開け、外に出てしまう。

 直後、

 たぁーん、と長く尾を曳く銃声が響いた。

 

 ウォールナットが止まる。

 足元に、胸元に抱えていたタブレットが落ちた。

 中央に大きな穴を開けて、そこから放射状に砕けていた。

 

 ウォールナットは、呆然と自身の躯を見下ろす。わずかにこちらに身を開いたその胸には、タブレットに開いたのと同じくらいの大きさの穴があった。

 その周りの綿やら生地やらをじわじわと染め上げてゆくのは、真っ赤な血だ。

 

 何が起きたのか明白だった。

 だからこそ、続く出来事も一瞬だった。

 

 響きわたる銃声とともにウォールナットの『右目』が炸裂すると、銃弾の雨が容赦なく一人の着ぐるみに向かって叩きつけられてゆく。

 腕を、腹を、肩を、胸を……次々と弾丸が襲いかかる。被弾の衝撃で全身から鮮血を噴き出して、それはまるでデタラメに踊り狂う人形のようだ。

 

 銃声がやむと同時に、一度大きくふらついたウォールナットは垂直に崩れ落ちた。

 溢れ出る血が、『彼』の倒れた灰色のコンクリートを赤く染めてゆく。血の絨毯である。

 

 それ以上の追撃はこなかった。

 

「ウォールナット!?」

 

 たきながインカムに手を当てつつ駆け寄るが、ウォールナットは身動き一つとらない。

 

「失敗です……護衛対象は死亡です……!」

 

 誰の目から見ても、死んでいるのは明らかだ。

 

「すぐに緊急車両が到着する。遺体と荷物を回収して、現場を離脱しろ」

「了解……ッ!」

 

 インカムから届くミカの声とたきなの返事を聞きながら、千束は重い足取りで搬入口へと歩いてゆく。

 眼下に広がるのは、さっきまで生きて、喋っていた人間の屍体(したい)である。

 

「そんな……」

 

 ぽつり、とこぼした。

 いつもの自分なら絶対に出さないような、弱々しい声で。

 先ほどのたきなの言葉が脳裏をよぎる。

 

 ……敵の増援が来る前に脱出しましょう!

 ……逃げ遅れたらどうするんですか!

 

 やはりあの時、たきなの言葉におとなしく付いて行けばよかったのだろうか。

 あの傭兵達を治療することなく。

 もしもそうだったなら、ウォールナットは撃たれずに済んだのだろうか。

 ……死なずに済んだのだろうか。

 

「私…………」

 

 …………間違ってたのかな、そう言おうとした。

 だが彼女がその言葉を口にするより早く、肩に手を置かれた。

 大きな、暖かい手だ。

 振り仰げば、そこには彼女が最も信頼を置くパートナーがすぐ傍まで来ていた。

 

「大暉……」

 

 青年はじっと千束の瞳を見つめると、ゆっくりと首を振る。

 そして、

 

「お前は何も間違っちゃいない」

 

 そう言った。

 まるで千束の考えていることが判っているかのように、その言葉は驚くほど正確に彼女の心境を捉えていた。

 

「でも……」

「でもも何もねえよ」

 

 じゃあ、と大暉は続ける。

 

「あいつらを見捨てろ、っつったところで、素直に()っとくか?」

 

 それは、たぶん……、

 

「……しない」

「だろ? そういうこった」

「うん」

「判ったか?」

「ありがと」

「よし」

 

 ぽん、と背中を押された。

 

 それからウォールナットを倉庫の中まで連れ込んで、大暉がスーツケースを屋内に運び入れる。

 

 

 

 手配された車がやって来たのは、それから数分後だった。

 

 

 

 ─────────────

 

 

 聞こえるのは唸るエンジン音と、こもったサイレンの音だけである。

 

 救急車の車内だ。

 黄色いスーツケースは後部座席にシートベルトで固定し、目の前のストレッチャーにはウォールナットの遺体が仰向けに載せられている。

 無惨な姿だった。

 あまりにも。

 

 物言わぬ屍と化した天才ハッカーを前に、千束は無意識のうちに隣に座る大暉の肩にもたれかかっていた。

 大暉は特に何を言うでもなく、寄りかかられたのとは反対側の手を伸ばして、彼女の白金の髪を優しく撫でてくれる。

 

「すみません」

 

 思い詰めたように、たきなが口を開く。

 

「私が護衛対象を先に行かせてしまったばかりに……」

「たきなのせいじゃない」

 

 ましてや、

 

「……誰かのせいでもないよ」

 

「ねえ、大暉」

 

 ふいに、思い出した。

 

「……ん?」

「フリージアは、あの人が言ってたドローンには気づかなかったのかな?」

 

 こちらを待ち伏せしていた機体のことだ。衛星のネットワークに入り込んで対象のGPS信号から現在地を割り出すことなど、『彼女』にかかれば造作もない。

 千束は、そのことを訊いているのである。

 

「気づいてたわ」

 

 女声のAIが、インカムを通して応える。

 

「なんで教えてくれなかったのさ」

「訊かれなかったからよ」

 

 これだ、と千束は思う。

 いかに人間臭い受け答えをしていたとしても、あくまで『彼女』は人工知能であり機械なのだ。人間のように融通が利くわけではない。

 だから、

 

「そっか……」

 

 これ以上『彼女』に何か言うわけにはいかない。

 誰のせいでもない、そう言ったのだから。

 

 車内を、再び静寂が包み込む。

 三人の中で一番ハッチ側に座っていた大暉がおもむろに立ち上がり、運転席の方へと向かう。彼の姿を目で追えば、手にした携帯の画面を運転手の視界に入るように構えて……あれは目的地を教えているのだろうか、何やら小声でやりとりしているようだった。

 それからストレッチャーの方を振り向くと、

 

「よし、もういいぞ」

 

 そう言った。

 

 え……?

 どういうこと?

 

 わけが判らずにぽかんとする千束に、

 

「やれやれ、ようやくか」

 

 やけに耳に残る『声』が応えたのは、その時だった。

 機械まじりの、その声。

 決して聞くはずのない、その声!

 

「え?」

「ん?」

 

 突然、ストレッチャーの上に寝かされたウォールナットの遺体が、むくり、と起き上がる。

 動かないはずの屍体が動いたのだ!

 

「ち、千束さん……、これ……」

 

 目を見開かせて、たきなが千束の膝を叩く。

 

「しっ、知らない知らない! 私知らないよ!?」

 

 千束の方も、目の前の異常事態に目を釘付けにしながら、たきなに抱きついた。

 

 起き上がった着ぐるみは、そのままリスの頭を模した自身の被り物に手をかけると、思いっきり引っこ抜く。

 

「……ぷっはあッ!!」

 

 きゅぽん、と小気味いい音を響かせると、汗しぶきを飛ばしながら亜麻色の髪が広がった。

 姿を現した相手に、千束は素っ頓狂な声をあげる。

 

「へぇあッ!?」

()っつぅ!」

 

 熱に紅潮した頬を手で仰ぎつつ、『彼女』は運転席に向かって声をかける。

 そう。

『彼』ではない。

『彼女』だ。

 

「大暉ぃ、ビールちょーらーい!」

「あいよ」

 

 応えた大暉が、いっさい不思議がることもなく手にしたビールを着ぐるみの女へ放り投げた。

 キャッチし、プルタブを開ける。溢れる泡に慌てて口をつけるその姿は、店で見るいつもの『彼女』と全く同じだ。

 

「ミズキ!? え、あ、な、なな、なんで!?」

 

 思考が追いつかない。

 どうなってんの?

 何がどうなってんの!?

 

「落ち着け千束」

 

 そんな彼女を思考の渦から引きずり戻したのは、耳馴染みある渋いバリトンだった。

 見ると、運転席から救急隊員がマスクをずらして顔を覗かせている。

 

「ゔぇえっ、先生!?」

 

 思わぬところから現れたミカに、千束の頭は余計にこんがらがった。

 

「んぐ、んぐ……っかぁぁぁあぁあッ! あ、これ防弾。派手に血が出るのがミソね。マジクッソ重いけど!」

 

 アルコールという名のガソリンを補給したミズキは、愉快に笑いながら自身の胸を叩く。すると彼女の言ったとおり、着ぐるみに開いた穴から赤い液体がぴゅーぴゅーと噴き出した。血糊だろう。

 おずおずと、たきなが手を挙げた。

 

「あの……ウォールナットさん本人は?」

「そうだよ! どこ行った!?」

 

 二人の疑問に、

 

「ここだよ」

 

 後部座席の脇に立つ大暉が、握った拳でごんごんとシートに収まった黄色いスーツケースを叩いて見せる。

 ウォールナットの全てが入っているという、あのスーツケースだ。

 

「おい、あまり強く叩かないでくれ。かなり響くんだよ」

 

 機械混じりの抗議の声は、ついさっきミズキが脱いだ着ぐるみの頭部から聞こえてきた。

 

「追手から逃げ切る一番の手段は、『死んだ』と思わせること。そうすれば、それ以上捜索されないからな」

 

 がちゃん、と重い音をたてて、スーツケースが内側から開かれる。

 機械まじりの音声に重なって、いくらか幼さの残る声が耳に届く。

 中から現れたのは、小柄な少女だった。

 ずいぶんと幼いように見える。一〇歳前後、と言ったところだろうか。

 長い金髪はいくらか癖っ毛で、ところどころハネている。長いこと髪を切っていないのか前髪も伸び放題で、だから黒いカチューシャは視界を確保するためであって、お洒落に気を(つか)っているというわけでもなさそうだった。

 

「ん? ……おっと、真っ暗だな」

 

 ゴーグルを着けているせいでよく見えていないのか、立ち上がった途端に少女の躯がフラついた。

 その肩を、脇にいた大暉が支えてバランスをとってやる。

 

「おいおい、ヨタってるぞ」

「ああ、すまんすまん」

 

 軽口をたたきながら、少女はゴーグルを外す。

 (あお)い瞳に、あどけなさの残る顔つきはいくらか西洋風だ。

 彼女こそ、天才ハッカー・ウォールナットの正体だったのだ。

 

「……では、わざと撃たれたと?」

 

 たきなの問いに、ウォールナットは頷いて見せる。

 それから傍の大暉を通りこして、運転席に収まるミカの方を向いた。

 

「彼のアイデアだ」

「あーぁあ、最後はハリウッド並みの大爆発を用意してたのにぃ~。無駄になったか~」

「ありゃ流石に演出過剰だろ。ま、予算が浮いたと思えばいいんじゃねぇの? 店の資金に足そうぜ」

「だな。早く終わって良かったじゃないか」

「お前達も、想定外の事態にきちんと対処して、見事だった」

「ちょ、ちょちょ……ちょっとまって!」

 

 ようやく、千束も判ってきた。

 

「色々訊きたいことあるけど……つまりその、予定通りで……誰も死んでない、てこと?」

「そういうこと」

 

 大暉が答えた。

 

「全部作戦のうち、てわけさ」

 

 途端に、全身の力が抜けてゆく。

 張り詰めていた緊張の糸が切れたのだ。

 

「よかったぁあ~、みんな無事で……!」

「この子めっちゃ金払いイイから、命懸けちゃったよ!」

 

 なにしろ、事前に支払われていた金額は報酬の三倍なのだ。

 張り切って逃走ルートの確保に動いているとばかり思っていたが、まさかこんなことになっていたとは。

 

「もぉお~、死なせちゃったと思ったしぃ……あーもう! よかったぁあ! 無事でよかったホント! ホントぉ~!!」

 

 座席から降りて着ぐるみの頭をつんつんと突っつくウォールナットに、安心しきった千束はたまらず抱きついた。

 泣きたいわけじゃないのに、勝手に涙が溢れてくる。

 車内が和やかな空気に変わってゆく中でただ一人、たきなだけがその視線を落としていたことに、この時千束は気づかなかった。

 

 

 

 ────────────

 

 

 逃走用に用意されていたホンダ・トゥデイは、クリーナーに処理してもらうことにした。

 海から引き揚げた車体から回収されたトランクがリコリコに届いたのは、つい一時間ほど前だ。

 防水加工の施されたトランクの中に収まっていたおかげで、愛用の拳銃が水没しなかったのは不幸中の幸いといったところか。

 

 ともあれ、

 午後七時から営業を再開するため準備をしていた大暉達は、開店まで残り一五分を切ったところで小休憩を取っていた。

 

「……なあ、いい加減機嫌治せよ」

 

 カウンターに頬杖を突いて、大暉は机の上に突っ伏している千束に声をかける。

 だが、応える様子はない。

 完璧に拗ねてしまっていた。

 

「そんなずるずる引きずるタイプじゃねえだろ?」

「いつ?」

「……ん?」

「いつ来たの、連絡」

「ゆうべ」

 

 それも、日付が変わった深夜だ。当の千束が、たきなへ渡す映画の選定中に寝落ちた、あの夜である。

 今にして思えば、かなりギリギリの連絡だった。

 リコリコ側にはすでに依頼を出し、計画について綿密な打ち合わせをしていたというから、あのタイミングで大暉を『仕掛け人』側へ引き込むというのは向こうとしてもイレギュラーだったのだろう。

 とにかく、その時彼が受けた依頼はこうだ。

 

 国外逃亡を図るボクが確実に『死ねる』よう、サポートしてほしい。

 

 何のこっちゃ、だ。だがミカから話を聞いて、だいたいの事情を察したわけである。

 

「……知ってたなら、教えてくれたっていいじゃん」

 

 突っ伏したまま、千束の顔がこちらを向く。

 見事なまでの(ふく)れっ(つら)である。

 

「……いちおう私、パートナーなんですけど?」

「口止めされてたんだよ。……悪かった」

 

 そんな千束の頭に手を乗せると、彼女の唇がわずかに笑みになるのが見えた。

 

「今度何か奢ってやるからさ」

「何でも?」

「何でも」

「……美味しいスイーツ食べたい」

「判った」

「ショッピングにも付き合って」

「はいよ」

「それから映画も」

「はいはい。映画ね」

「あと……水族館行こ」

「こないだ行ったばっかだろ……まあ、しゃあねぇか」

「……よし、許す」

「そりゃよかった」

「だいたい事前に話したところでさ、あんた芝居下手じゃん」

 

 座敷で晩酌中のミズキが、ビール片手にこちらを振り返る。

 

「むしろ、たきなといっしょに自然なリアクションしてもらった方が助かるのよ。……ほぉら、こーゆーふうにぃ~!」

 

 得意気な笑みとともに手にした携帯には、ネタバラシを受けて安心しきった千束が、お世辞にも美少女とは言い難い形相で泣きじゃくっている写真が表示されていた。

 

「あ~!? ちょ、なに撮ってんの!?」

 

 弾かれたように立ち上がった千束が、大慌てでミズキへと駆け寄る。彼女の携帯を取ろうとして、ミズキにあしらわれている格好だ。

 

「いつ撮ったのそれ! ちょ、ミ~ズ~キ~!! 消~し~て~よぉ~!!」

「大暉も見な~。千束、すんごい顔してるわよ~」

「……おお、こりゃ凄いな」

 

 追いすがるように立ち上がった大暉が、じゃれつく千束の背後からミズキの画面を覗き込む。

 

「ミズキ、後でそれこっちに送れや」

「はいはぁ~い!」

「わーわーわーわーッ!! ちょ、大暉は見ちゃ駄目だって!!」

 

 わちゃわちゃとし始める三人の背後から、絞り出すような声が聞こえた。

 

「……やっぱり『いのちだいじに』って方針、無理がありませんか?」

 

 たきなだ。お盆を両手に、その視線は鋭くこちらを射抜いている。

 

「あの時、きちんと三人で動いていれば、今回のような結果にはならなかったはずです」

「でも、そうされたら私が困ったんだよね~」

 

 ミズキの応えに、大暉も頷いた。

 つまるところ大暉が受けた依頼は、千束とたきなの二人には『護衛任務』という体で事態にあたってもらい、その道中で何らかの要因により護衛対象であるウォールナットの死を演出してほしい、ということだったのだ。

 そのため、意図的に千束とたきなが別行動をとるように動く必要があった。

 トランクをあえて手放したのも、それが理由だ。戦力を分散させるためである。

 

「目の前で人が死ぬの()っとけないでしょ」

 

 千束の言葉に、しかしたきなは納得いっていないようだった。

 

「私達リコリスは殺人が許可されています! 敵の心配なんて……」

 

 遮るように、

 

「許可されてるから、何だ?」

 

 大暉が言葉を割り込ませる。

 

「だったら殺してもいいって?」

「当然です。そのためのマーダー・ライセンスですよ? 社会に(あだ)なす者を殺すのが役目でしょう!」

「そいつぁ違うな」

 

 その鋭い語気に、びくり、とたきなが肩を震わせる。

 

「勘違いしてるみたいだから言っとくが、俺達は制裁者(パニッシャー)じゃねえ。人を裁く権利なんか持っちゃいねぇし、持つべきじゃねえんだ」

「ですが……」

「いいかたきな、お前の論理で行くと、俺達ゃ万引き犯まで殺して回らなきゃならないんだぜ」

「それとこれとは違います!」

「違わないね。理由はどうであれ、社会に害となる犯罪者って意味じゃ、どっちも同じことさ」

「……詭弁(きべん)ですね」

「だが事実だ」

 

 ()めつけるたきなに臆することなく、大暉は言葉を続けようとする。

 だが、

 

「はぁいはい、二人ともそこまで!」

 

 ぱん、と千束が両手を叩いて注目させる。

 

「あの人達も、今回は敵だっただけだよ。誰も死ななくて、よかったよかった」

「……そういう話じゃないと思います」

「こら、三人とももうやめろ。私達も騙すような作戦をして悪かった」

 

 ミカだ。言いながら、カウンターに載せるのは、三色の団子である。抹茶、小豆、きなこと透明な細長い三つの筒にそれぞれ入れられた、リコリコのメニューの中でもオーソドックスなものだ。

 それを、再びカウンターに着いた千束の前に置く。

 

「あぁ~! 先生、甘いもので買収するつもりぃ~?」

「いらないか?」

「んじゃ俺がもらっていいか?」

「うぅん! 千束が食べますぅ~!!」

 

 猫撫で声で言うが早いか、千束はさっそく小豆に手を出した。

 

「はむ……大暉~、座敷に座布団出してきて~」

「はいはい。……あ、マスター。千束のと同じやつ、後で俺にもよろしく」

「あいよ」

 

 座布団が入っている押入れは、二階席の真下の座敷席のすぐ隣である。入口からは目隠しになっていて、だから店の奥まで行かなければそこに押入れがあることすら判らないだろう。

 とは言え、大暉が一番に用のあるのは押入れの中に仕舞われた座布団ではない。

 中段を仕切りにした上……そこに鎮座する機材に収まった小柄な少女である。

 

「よお、暇か?」

「ネットワークの設定はあらかた済ませたからな。暇と言えば暇だ」

 

 ゆるやかに湾曲した特殊な椅子に座って、キーボードを操作していたウォールナットの手が止まる。

 

「お前も入るかー?」

()()。俺とお前じゃタッパに差があり過ぎるっての」

 

 仮に入れたとしても、その時は姿勢がとんでもないことになっているに違いない。

 大暉には、このスペースは前後に狭過ぎる。

 

「……五年ぶりか?」

 

 ふいに、少女はそう言った。

 

「もうそんなになるか」

「あれ以来逢ってないからな」

「あんたはちっとも変わらないな」

「そう言うお前は、あの頃に比べれば少しは成長したみたいだな」

「成長期なもんでね」

「それはボクへの当てつけと取っていいのか?」

「冗談だよ。……久しぶりだな。あン時ゃ世話になった」

「ボクの方こそ、助かった。またよろしく頼むよ、バッド・ウルフ。それともリベリオンと呼んだ方がいいかな?」

「……好きにしろや」

 

 応えた、その時だ。

 

「んんッ!?」

 

 突然、上擦った声が背後から。

 振り返ると、団子の串を咥えながら驚愕の顔を浮かべる千束の姿があった。

 その赤い瞳は、襖の奥のウォールナットに向けられている。

 

「え……、ちょ、何でいるの!?」

「ウチでしばらく(かくま)うことになったんだよ」

「そうなの~!? うわぁ、座敷童(ざしきわらし)か何かかと思ったぁ~!」

「つか、串咥えたまんま動くな。危ないだろが」

 

 近づいて来る千束の口から串を引っこ抜いて、その額を軽くはたく。

 

「うへぇ、ごめぇ~ん」

 

 千束は叩かれた額をさすりながら、ちらり、と押入れの中のウォールナットの方を向く。

 

「それでキミ、ここに住むの?」

「お前らの仕事を手伝う条件でな。言っとくけど格安なんだからな?」

「じゃ、今日から仲間だね。名前は?」

「ウォールナッ……」

「ちょーちょちょちょ! そいつは死んだんでしょ? 本当の名前を教えなさ~い」

 

 珍しくまともなことを言うじゃないか、と大暉は思う。

 たしかに、ウォールナットは今日、死んだ。屍人の名前で呼ぶのは、感覚的な問題ではあるが気持ち悪いものがあるのだ。

 別の呼称が欲しいのも、また事実だった。

 それを理解したのかどうかは判らないが、金髪の少女は少し考える素振りを見せてから、やがて口を開いた。

 

「……クルミ」

「ぷっ……! 日本語になっただけじゃん!」

 

 でも、と身を乗り出した千束が、椅子に収まるウォールナット……もといクルミに抱きつく。

 

「そっちの方がよく似合ってるよ! よろしくクルミ!」

「よろしく千束。それから……」

「大暉な」

 

 余計なことを口走る前に、先回りしてやった。

 

「……大暉も」

「おう」

 

 そして最初に千束に言われたとおり、大暉は押入れの下から座布団を取り出す。

 

「出といでよ、いっしょにお団子食べよ? ほら、たきなも……」

 

 千束とほとんど同じタイミングで腰をあげた大暉が振り返った直後、

 

「あいたぁッ!?」

 

 背後から飛来してきた青いゴムが、クルミの額へ吸い込まれるようにクリーン・ヒットした。

 

「……え?」

「え……?」

「……何やってんだ?」

 

 二人の視線の先には、右腕を前に突き出して人差し指だけを伸ばした奇妙な格好のたきなが、呆然とこちらを見つめていた。




 これにて原作第二話、終了です。


 次回から第三話へと入っていくんですが、ちょっとリアルが忙しくなってきたため、いちおうの目安である木曜日の更新が不定期になると思います。
 その時は、今回みたいに書き上がり次第別日に投稿するかと。


 お気に入り登録、感想、評価などいただけますとモチベーションに繋がりますので、なにとぞよろしくお願いします。


 あ、そうそう。今後の参考までに、最後にアンケートにお付き合いいただければ幸いです。

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