エレジアの不響和音 作:匿名P
時間はすぐに過ぎ去りライブ当日を迎えた
「えー!キールさんいないの!?」
「今回は外で見させてもらうよ」
キールの衝撃発言。ボディガードがウタのそばにいないのは前代未聞
「君のライブを1人のファンとして見てみたい」
「うーん…わかった。今回だけだよ」
「わかってる。わがままは今回だけだ」
「じゃあ次私の
「もちろん」
「ウタ、そろそろ時間だ」
ゴードンが戻ってくるなりそう言う
「うん。キールさんちゃんと見ててよ」
「あぁ、わかってる」
ウタはキールに笑顔を向けると会場へと向かった
______
「キール?何してるんだ」
キールが一際高い丘に座ってライブ会場を見ていると後ろからレイリーがやってきた
「ウタのステージは誰にも邪魔できない。これは事実だ。しかし、これを邪魔できる生物がいる。わかるか?」
「何の話をしてるんだ?」
レイリーにはキールの言っていることが分からない
「
レイリーにはキールの顔が見えないが、キールから憎悪の感情が出ているのがわかる
「まさか…!?殺る気か天竜人を!?」
「ウタのライブを邪魔すればの話だ。何もしなければ私も何もしない」
「正気か!?天竜人を殺れば間違いなく死ぬぞ!あの子にも被害が出る!いいことは無いはずだ!」
「落ち着けよ、レイリー。何もしなければ手出しはしない」
「お前はあの子に一生返せない借りを作る気か!」
「…!?」
「お前が天竜人を殺り、彼女を守れば彼女は感謝するだろう。だが、その後お前は確実に殺される。天竜人を殺せば世界が黙っちゃいない。そうなれば、彼女も世界から冷たい目で見られる。お前は彼女に負の遺産を残すのか?」
「……ありがとうな。多少落ち着いた。でも、私にとってウタは家族であり、宝だ。彼女のステージを邪魔するやつは許しはしない。それに私は何があろうとクズ共を許しはしない」
キールの決意は既に固い。レイリーがどうこう言って変わるものではなかった
「………そうか」
レイリーはキールの隣に腰掛ける
「家族なら彼女の成長を暖かく見守ってやれ。彼女がどうにもできない時に助けてやれ。お前が手を汚すのはできる限りの手を尽くしたあとでいいだろう」
「…そうだな」
「おっ、始まったんじゃないか?」
レイリーの言葉通りライブは始まった。ウタの歌声が2人にも届いている
「…輝いてるな」
「だからどうしても守りたいのか?」
レイリーの言葉にキールは頷く
「日陰で生きてきた私にとってウタは眩しかった。だが、彼女も辛かったんだ。誰にも向き合いたくない過去があるんだ。それでも彼女はそれに負けなかった」
ウタの歌声によってライブの照明が色鮮やかに変わる
「でも、まだウタは成長できる。だから彼女のことをいつまでも見守ってあげたい」
「それに彼女には私のような人生を歩んでもらいたくは無い。彼女が自分のしたいことをできるように私は全力でサポートする。これが私の最後の役割だ」
「立派じゃないか。あいつが聞いたら驚くだろうな」
「あの人は死ぬ間際、私に「自分のしたいことをして死ねよ」と言った。自分のしたいことを見つけるのに時間がだいぶかかってしまった。けど、後悔はしていない」
「あいつがそう言ったのか…!?何があるかわからないものだな」
レイリーは笑いながら言う
「さっき自分のようにはさせたくないって言ってたが、何があったんだ?」
「私は気に入った人間はすぐに買い取る。ゴミのような行いをする
「
「私自身も色んなところをタライ回しにされ、その挙句捨てられた。そこであの人と出会った。あの人と会わなければ今ここにはいない。それに
「…」
レイリーは黙ってキールの話を聞いている。2人の目線の先にあるライブ会場は眩しいくらいに輝いている
「あの子には話さないのか?」
「ウタには刺激が強すぎる。今更気を遣われるのもごめんだ」
「それもそうか…若くして世界の汚点を見尽くし、更には自分の身を持って体験までしてる」
「でも、今のお前には帰る場所がある」
レイリーの言葉にキールがレイリーの方をむく。するとレイリーはライブ会場を指さした
「
レイリーの一言に突き動かされたかのようにキールは立ち上がった
「色々ありがとな。
キールはそう言うとライブ会場へ戻って行った
「
レイリーは笑みを浮かべながら酒を飲んだ
「キール!戻って来たのか!?」
キールが戻るとゴードンが大きな声をあげた
「声が大きい」
「すまん…」
「…!?」
ウタは声のした方を見るとキールがいたためびっくりしたが、キールに笑顔でウインクをすると前を向いた
「ただいま」
そう言うキールの表情は穏やかだった
ヒナも弱くないんだけどね…相手が悪すぎた