エレジアの不響和音 作:匿名P
「キールさん!」
キールが船に戻ってくるとウタが心配そうに近寄る
「大丈夫。これで安心して出港できる」
「船を出してくれ」
キールがそう言うと船はドレスローザを出港した
「んー疲れたぁ…寝てるね」
ウタがそう言うと部屋に入って行った
「うん。しっかり休みな」
「おやすみ」
「こんなにきれいな
キールが見上げた空には無数の星が輝いていた
「確かに…きれいだな」
「…(あの時もこんな星空だったか)」
キールの中にいつまでも忘れられない記憶がよみがえる
50年前____
「これあげる」
「なにこれ?」
幼いキールが女の子に指輪をつけてもらう
「私の宝物。だから無くさないでよ?」
もらった指輪はよく見ると小さく
「宝物?これが?」
キールは指輪を不思議そうに見つめる
「そう、お母さんからもらったんだ。だから絶対無くさないでよ?」
「わかった。絶対無くさない!大事に持ってるから」
「ウフフ、じゃあ明日ね」
女の子はキールに微笑むと軽く手を振り、振り返ると歩き出した
「うん!また明日!」
女の子が見えなくなるまで手を振っていた
その女の子は次の日来なかった。その次の日も、その次の日も…それでもキールは待ち続けた。いつか必ず帰ってくると信じて
〜〜〜
「どこにいるんだ…」
キールは指輪を取り出すとそう言った。真っ暗闇の中では夜空の星と指輪が光っている
「それいつ貰ったんだ?」
そばにいたゴードンが真っ暗闇の中輝く指輪を見る
「今から50年前だな」
「そんなに前なのか!」
「時間の流れは早いものだよ…あの日のことが昨日のようだからね」
「諦めないところがすごいな」
「必ず返すと約束したんだ。約束は死んでも守る」
「力になれることがあれば言ってくれ。全力でサポートするからな」
「あぁそうさせてもらうよ。とは言えアテがないからな…」
「最後に会ったのはどこなんだ?」
「私もわからないんだ。最後会った場所がどこの島なのか…思い出が詰まった島なのにな」
「そんな大事な島なのに名前がわからないってどういうことだ?」
「私はその島の人間に買われ、奴隷としてやってきたんだ。だからわかりもしなかった」
「…そうなのか。すまないな」
バツが悪そうにゴードンが言う
「ゴードンが気にする事はない」
「あの子と会えたのは奇跡だった。ただあの子も私と同じ奴隷として送られたんだろう。首輪がついていた」
「どうやって会ったんだ?」
「私はある日奴隷として暮らす日々に嫌気が察して、抜け出したんだ。道に迷いながらなんとかたどり着いたのが森だった。そこで休んでいたらあの子が来た」
〜〜〜
「何してるの?」
幼いキールが木にもたれかかって休んでいると前から女の子がやってくる
「休んでる」
「こんなところにいたら危ないよ」
「いいんだよ。あんなところに戻るくらいだったらここで死んだ方がマシだよ」
「そんなこと言わないで…」
女の子が悲しそうな顔をするのでキールが戸惑う
「泣くなよ。死ぬって決まったわけじゃないんだし」
「ほんと!?じゃあこれあげる!」
女の子はポケットから花を取り出すとキールにあげた
「何これ?」
「プレゼント。じゃあまた明日」
女の子はそう言うとキールに背中を向けて帰って行った
その女の子は次の日もキールのいる森にやってきた。その次の日も、いつしか女の子が来るのが当たり前になっていた
〜〜〜
「私は彼女が来るのがいつしか嬉しくなっていた」
「そんな彼女から託されたものを無くすわけが無い」
「キールの大事な人か…」
「…辛気臭い話をしてしまったね。私はそろそろ寝るよ」
キールは笑うと指輪をしまいゴードンにそう言って部屋に入って行った
______
「おはよう。あれ?キールさんは?」
ウタが起きて部屋から出てくるとゴードンがいたがキールはいなかった
「キールならまだ寝てるんじゃないか?」
ウタがキールの部屋で耳を立てるとスヤスヤと寝息が聞こえる
「ほんとだ。珍しいね」
「彼は昨日戦ってたんだ。疲れるのも当然だろう」
「それもそうだね。…いつも頼りっぱなしだけど」
「それでもキールは嫌な顔をしない。彼は迷惑だと思っていないと思うよ」
「それは私も思うけど…キールさんばかりに危ないことさせたくないよ」
ウタが心配そうな顔をして言う
「彼が選んだ道だ。私たちが口を出してはいけないよ」
「おはよう。もう起きていたのか」
キールが部屋から出てくる
「おはよう。疲れは取れた?」
「あぁおかげでばっちりだよ」
「よかったぁ」
ウタが安心した表情で言う
「心配させてしまったかい?」
「いや、そんなことはないよ。だけどキールさんにいつも頼ってばかりだから…」
「ハハハ、なんだそんなことか?気にしなくていいよ。嫌だとも思ってないし、もっと頼ってくれていいよ」
キールはウタの心配そうな表情を笑い飛ばした
「ありがとう」
ウタもキールの笑顔を見て笑顔になる
「これから海底を通るそうだ。海底は急激に冷えるから上着を着ておいた方がいい」
帰りはマリージョアを通ることはできないので海賊達が通る海底を通る必要があった
「海底?どういうこと?」
ウタが頭にハテナを浮かべている
「行きはマリージョアを通っただろう。それは海軍の船に乗っていたから通れたんだ。だけど、帰りは海軍の船じゃないからマリージョアの下、つまり海底を通る必要があるんだ」
「そうなんだー海にも色々あるんだね」
「そうだよ。海は広いんだ。(ただ魚人島か…厄介なのがいなければいいが)」
キールは新聞で魚人により支配されていた村があることを知っているため、魚人は嫌いじゃないが気性の荒い奴がいると思っていた
「海底…楽しみ!!」
ウタは目を輝かせている
「…あはは、そうだね(頼むぞ…もうこれ以上暴れたくない)」
キールの心からの願いは届くのか?
明日休みだー