リコリス・リコイル 竜胆の花は彼岸の花に何を見る?   作:タロ芋

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どれだけ確認しても誤字脱字が出てしまう。それは何故なのだろうか?と思いながら初投稿です


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『これは予想外でしたね』

 

「墨田区周辺は何本も川に囲まれてて、都心を水上バスで色んなところに渋滞を気にせず移動できるんです!」

 

 移動に水道バスを選択し、千束が松下と共に広がる街並みを見ている後ろで律刃は壁に背を預け、たきなはその横で周囲を警戒していた。

 

「……今のところ周囲に敵影はありません」

 

「狙撃手も今のところ5キロ圏内には見えねーな」

 

「……あの、律刃さん」

 

「なんだ?」

 

「……いえ、なんでもありません」

 

「そうか」

 

 たきなは抱いた疑問を問おうとしたが、途中で止めてしまう。聞くのが怖かったというのもあった。

 

 千束の心臓のこと。律刃の腕と目のことが。

 

『……やっぱり折れてしまってますね』

 

「折れてないのを見た事があるんですか?」

 

『いえ、東京に来るのは初めてで。娘と約束してたんです。……「一緒に見上げよう。首が痛くなるまで」って。あの世で土産話ができる』

 

「まだまだ始まったばかりですよ〜!」

 

 千束は言う。観光は始まったばかり。ならば、思う存分に見て回るとしよう。

 

 

 

 

「相変わらずすげー人」

 

「全然進みませんね……」

 

 仲見世通り、人混みの中で揉まれながら律刃は呟きたきなは言う。

 

「浅草での1番の観光スポットだからね。っとと……」

 

「よっと。大丈夫か?」

 

「うわっ、ちょ、だ、大丈夫だから!!」

 

「いいってことよ。たきなも人混みに流されるなよ」

 

「は、はい!」

 

 松下を囲うように動く3人。たたらを踏む千束の腰へと手を回しながら律刃はたきなへと声をかける。

 千束は顔を赤くしていたが、律刃はそれには気が付かず松下へ僅かに眉を伏せながら謝罪した。

 

「申し訳ありません松下さん。このように人混みの中を移動することになってしまい」

 

『いいですよ。こうして人が多いと観光をしている、と思えますからね』

 

「そう思っていただけるのなら幸いです」

 

 松下の言葉に淡く笑い、律刃は頭を軽く下げた。

 松下の言う通り、観光地だというのに人がいなければ寂しく感じられる。だからこその言葉なのだろう。

 

「じゃあ、次は五重塔にいきましょう!」

 

 そして、参拝を終え一同は場所を移動し近くでやってきたお祭りにも参加する。

 屋台ではこの前のリベンジとばかりに千束が射的で景品を獲得しまくり、阿波踊りを見たりもした。

 

 お面屋では千束が買ってきたひょっとこの面を松下につけて写真を撮り、ついでとばかりに律刃の分もと般若のお面を渡され軽く引き攣ったりしたのは余談だろう。

 

 

 

「これだけ動いても問題のない人工心臓とほぼラグのない動きを可能とする義手と義眼ねぇ……。DA技術開発局のサーバーを覗いてみたいな」

 

 ドローンから送信された映像を見つめ、クルミは感想を述べる。

 画面の中には激しい運動をして息一つ切れてない千束と、飴細工職人の動きを一目見ただけで完全にトレースした律刃が映っていた。

 

「覗いても無駄だよ。DAの技術じゃないんだ」

 

「フッ、やっぱりコレかぁ?」

 

 ミカの言葉にクルミは笑い、画面を拡大。千束の首から下げられたチャームが映し出される。

 

「噂のアラン機関」

 

「君には秘密は通じないか……」

 

「つまり、命と引き換えに世界への使命を与えられた……。2人の使命はなんだい?」

 

 その問いかけにミカは憮然とした様子で告げる。

 

「それは2人が決めることだ」

 

 

 

『あれが延空木ですね』

 

「11月には完成らしいです」

 

 再び水上バスへと乗った一行。その視線はたまたま見つけた新しい電波塔へと向かっていた。

 かつて電波塔事件で折れたものとは別に建造された新しい日本の平和の象徴だ。

 

『設計に知り合いが関わっているんです』

 

「ええ!? 凄い!」

 

『そう。彼は未来にすごいものを残している』

 

「じゃあ、完成したら見に来てくださいね! また、ご案内しますよ!!」

 

『…………ええ。またお願いします。君は素晴らしいガイドだからね』

 

 千束へと向き、松下は告げる。

 その言葉は頑張った千束にとって何よりのご褒美なのだろう。事実、はにかむように千束は笑っていた。

 

『今日は暑いですね。ちょっと、中で休ませてもらいます』

 

「なら、俺が運びますが宜しいですか?」

 

『ええ、お願いします律刃さん』

 

「これも仕事の一貫ですよ」

 

 車椅子のハンドルを握り、松下を室内へと運んでいく。

 2人の背中を見送り、たきなは椅子に座る千束へ自販機で買ったジュースを手渡した。

 

「どうぞ」

 

「ありがとー」

 

「喜んでもらえてるみたいですね」

 

「私、いいガイドだって! 才能あるかもー?」

 

「依頼者の警護が優先ですよ?」

 

「……そうだね。そうだった」

 

 千束は僅かに体の力を抜いて寛ぎ、そのようすをじっとたきなが見つめる。

 

「なになに? 私がどうかした?」

 

「……今朝のこと本当ですか?」

 

「ああ、胸の事ね。本当だよ。鼓動なくてビックリしたけど。凄いのよーコレ!」

 

「……律刃さんの腕と目は?」

 

「んー、それについては私の口からは言えないかなー。けど、普通に生身と変わんないくらい凄いからね律刃のは。触ってみればびっくりすると思うよ」

 

「……」

 

「ちょ、ちょ、ちょーい! いきなり何しようとしてんのさ!?」

 

「いえ、触って確かめてみようかと」

 

「だからって公衆の面前で乳を揉むな! というか触っていいって言ったのは律刃の腕ね!!」

 

「俺がどうした?」

 

「「わっ!?」」

 

 突然聞こえてきた声。千束とたきなは驚いて抱き合えば、自分たちを胡乱げな目で見てる律刃がそこには立っていた。

 

「って、律刃かぁ。驚かせないでよー。松下さんは?」

 

「自分のことはいいからお前らと話してくるといいだってさ」

 

 律刃はそう言い、近くの自販機で缶ジュースを買って封を開けて1口飲む。

 

「んで、俺がなんだって?」

 

「たきなが私の胸のことや律刃の腕と目のことが気になるんだってー」

 

「なんだそんな事か。ミカさんかミズキに聞いてなかったのか?」

 

「いえ、まったくなにも聞いてません」

 

「……まーた報連相が出来てないのかー。まぁ隠すようなことでもないか」

 

「お陰でたきなに乳を揉まれかけたよ」

 

 意地の悪い笑みを浮かべ、千束が言えばたきなは申し訳なさそうに眉を下げる。

 そのさまを見ながら律刃は景色を見ていると、とある存在に気がついた。

 

「……なんだアイツ」

 

 バイクがずっとこの船を尾けているのだ。そのまま律刃は観察を続けていれば。

 

『3人とも聞こえているか?』

 

 耳のインカムからクルミの声が聞こえてきた。3人は即座にインカムへと手を当て、律刃が問う。

 

「何だクルミ。あのバイクのことか?」

 

『なんだ分かっているのか?』

 

「尾いてきてることだけはな」

 

『なら話は早い。その尾行している奴だが正体が判明した。名前はジン。その静かな仕事ぶりからサイレント・ジンと呼ばれてるベテランの殺し屋だ』

 

「「「!」」」

 

 クルミからの報告に、素早く目配せを行い気を引きしめる。

 

「サイレント・ジンか。面倒なのが来たな……」

 

 リリベルにいた頃、データベースの中にその存在の名があった。実際に会ったことは無いが閲覧した記録から律刃は一筋縄では行かない相手と理解する。

 

「たきなは到着次第松下さんを頼む」

 

「了解しました」

 

「気をつけてねたきな。あと、できる限り松下さんには気づかれないように」

 

 たきなは松下を迎えに行き、たきながいない間も2人は情報を聞くことに専念をした。

 

『……サイレント』

 

『なんだ、知り合いがミカ?』

 

『15年前、警備会社で共に裏の仕事をしていた。私がリコリスの訓練教官にスカウトされる前だ』

 

『どんなやつだ?』

 

『"本物"だ。サイレント……その名の通り、確かに声を聞いたことは無いな』

 

 そして、水上バスから降りた3人は移動中も警戒を弛めることない。

 ミカの話では相手はベテランの殺し屋。油断などできようはずも無い。

 

『今はドローンとミズキが追跡中だ。……上から見えないな────あ』

 

「どうした?」

 

『ドローンを破壊された。オマケにミズキの追跡もバレてるみたいだな。予定変更だ』

 

『3人とも聞こえてるな。作戦変更だ』

 

『依頼人を避難させて1人が打って出るんだ。予備のドローンとミズキでジンを見つけ次第攻勢に出る』

 

『そっちが美術館に出るところで車を回すよ』

 

「わかった」

 

「了解、ジンは俺が相手をする。千束とたきなは松下さんを頼む」

 

「りょーかい」

 

『了解しました』

 

 律刃は2人に指示を出し、その場から離れようとする。

 

『どうされましたか?』

 

「少し野暮用ができたので俺はここを離れることになりました。最後までお付き合いができず申し訳ありません」

 

『いえいえ、こちらこそ。どうかお気をつけて』

 

「では、失礼します」

 

 松下に謝罪し、律刃は人混みの間を縫うように移動する。

 その背中を見送り、千束は胸元へ手を置き案じるように呟いた。

 

「…………気をつけてね律刃」

 

 

 

 

「ミカさん、装備は?」

 

『地点Cのロッカーだ。暗証番号は962』

 

「了解。場所はアソコか……遠いな」

 

 送られてきた座標を見て僅かに舌を打つ。しかし、文句を言っても仕方ないために足を動かした。

 

 目的地に到着し、律刃はロッカーの管理をしている端末に触れ暗証番号を入力。そうすれば自動的にロッカーの鍵が外れその扉を開く。

 ロッカーの中にはボストンバッグと長方形のケースが入っており、周囲を確認した後にそれらを手に取り近くの関係者以外立ち入り禁止の部屋へとはいれば中身を確認する。

 

 バッグの中には普段使っている投擲用のナイフの入ったホルスターに防弾仕様のスーツ。ケースの中には刀ではなく金属製の棒が入っていた。

 

 着ていた普通のスーツを脱ぎ、バッグの中のスーツへと着替えベルトへホルスターを取りつける。棒を手に取れば、ズシリとした重さを感じ何度か手首の動きで回転させた後に棒の両端部分を捻った。

 

 すると、丁度3等分するような長さの部分が外れ、1本の棒がワイヤーによって繋がれた三節棍へと姿を変える。

 

「……よりにもよって三節棍(これ)かぁ。使いにくいんだよなぁ」

 

 微妙な顔をしながらも三節棍を元の形にもどし、ケースへと納めればインカムからミカの声が入る。

 

『聞こえるか、律刃』

 

「なんですかミカさん?」

 

『ミズキと連絡が取れなくなった』

 

「ッ!」

 

『落ち着け、まだ死んだと決まったわけではない。恐らくジンは仕掛けてくる。たきなが依頼人を千束に任せたからそちらに合流するはずだ』

 

「了解、合流次第打って出ます」

 

 ケースを手に持ち、律刃は千束から貰っていた般若の仮面を付ける。




律刃
基本的に近接武器ならなんでも扱える。

千束
一応律刃から素手での格闘術も習ってはいる。

たきな
近接戦もできるようにしようか迷っている

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