リコリス・リコイル 竜胆の花は彼岸の花に何を見る? 作:タロ芋
今思えば、あの日からこの女とは変な関係が続いていたのかもしれない。
殺し殺されという血なまぐさい関係だと言うのに。
「君の名前はなんて言うの?」
ふと、何度目かも分からない襲撃を行い斬り掛かる。
そんな時にコイツは不意に聞いてきた。
「……名前?」
銃撃をかわし、脚に僅かに力を貯めて肉薄。
袈裟斬りをかわされ、刀を手の中で逆手に持ち替えて切り上げる。
体を僅かに横へとずらして避けられるが、構わずに蹴りを放てば当たる瞬間に後方へとバックステップ。
それに対して空いた手に握られていた投擲用のナイフを3本を指の間に挟み、手首のスナップで投げつける。
だが、ナイフは全て正確無比な射撃で撃ち落とされ少しの間だけ沈黙が訪れた。
数刻ほど考え、リッパーは質問の意図を測ろうとしたが分からず答えた。
「リッパー……そう呼ばれている」
「何それ人の名前じゃなくない? 君も
「知らん。俺は目覚めときには既にこう呼ばれていた」
他には
リッパーのその声に撫子は何処か不服そうなのか眉根を寄せていた。
これがおかしくなったところだ。なぜ律儀に答える?
「はー……なんかやる気無くしちゃった」
そう言い、撫子は銃を下ろす。
「何のつもりだリコリス……?」
怪訝な顔でリッパーは刀を構え直し、油断なく見据えて言う。
これもだ。無視して攻撃すればいいのに。
「リコリスじゃないよ!」
「わひゃあ!?」
ギュンッ! 音として表すならそんなふうにリッパーの視界を埋めるように映れば悲鳴を上げて尻もちを着く。
そんな彼を見下ろすように立ち、撫子は胸をそった言い放った。
「この日は暇? 暇だよね!」
「おい、人の話を聞け!」
「どうせ君この後帰ったって嫌いな上司に怒られるだけなんだからいいでしょ、別に?
この前みたいにお姉さんお膝の上で泣きたくないでしょ?」
「ぐぬぅ……!!」
苦虫を百匹ほどまとめて嚙み潰したかのような渋面を作る。自分自身にとっての忌々しい過去を思い出してしまう。
そうだ。あの日、あの時。この女にあの醜態を見られて以来、頭を撫でられて以来、自分はおかしくなってしまった。
「じゃあ、この日の昼前にハチ公前ね!! じゃ、バイバーイ!」
「おいっ! 待て!! まだ行くなんて……足速いなアイツ」
何で、自分は
翌日、リッパーは制服ではなく数少ない私服でハチ公の前に来ていた。
リリベルの本部を出る時、二三言交わす程度の間柄の警備員には酷く驚かれたが彼本人はさほど気にするようなことでは無い。
「…………人が多い」
ハチ公前は待ち合わせ場所としてよく使われ、今日も人混みがたくさんだった。
リッパーは整った眉を寄せ、早くも帰りたくなってきたがそれだと何故か負けたような気持ちになるので我慢することにする。
肩から下げた竹刀袋を背負い直し、リッパーは何度目かも分からないため息を零しながら歩みを進めれば漸く件の人物を見つけた。
「おい」
「ん? おー、思ってたよりも早かったね……って、そう来る〜?」
「……なんだその目は」
撫子の"マジかこいつ? "という目にリッパーは僅かに眉根を寄せれば、彼女はため息を零しながら言う。
「君さぁ、流石にその格好とソレはダメでしょ?」
撫子は無遠慮にリッパーの頭からつま先を見て、やれやれと首を横に振るう。
リッパーは言われた通りに来てやったというのに勝手にダメ出しをされ軽くイラッときたが、冷静に流してやることにした。肩にかかる紐を握る力が強まってような気もするがきっと気のせいだろう。
「まぁ、この際その格好はよしとしよう。問題なのは……なんでポン刀持ってきてんのさッ!」
「…………?」
「うっわ、心底不思議そうな顔してるよこの子! 絶対抜かないでね!」
「ふん。無意味に抜くわけないだろう。……お前のその衣装は自前なのか?」
「衣装って言うのやめてよねー。どうよ、このオシャレっぷり?」
「動きにくくないのか?」
「お仕事じゃないのでカンケ―ないのです! じゃあ、服屋さんに行くよ!」
「勝手に行ってこい」
「私じゃなくて君のだよ!!」
撫子はそう言い、リッパーの手を握れば歩き出す。
現在の撫子はリコリスの赤い制服ではなく、頭に帽子をかぶり白のブラウスに下を黒のズボンという洒落た格好だ。
それに対してリッパーはというと上にはでかでかと"金剛力士"と書かれたTシャツに下は白のラインの走った黒いジャージに″如来坐像″というお洒落なんて知らねーと言わんばかりのThe部屋着であった。
これには流石の撫子も激怒した。予定を変更し、目の前の瞳孔に光の点ってないどころか開き気味のレイプ目常時ダウナーのショタを徹底的に着せ替えてやろうと。
撫子には不細工な相手は苦手である。されど、可愛いものには人一倍敏感であった。
撫子は唯の超天才最強完全無敵の超人リコリスである。妹分に尊敬されたいし、美少女や美少年のような可愛いショタやロリが大好きだ。
されど、人一倍オシャレには敏感であった。断じてショタを自分好みに着せ替え出来るぜひゃっほぅなどと思ってないのだ。
と、何処ぞの牧人みたいなことを思いながら撫子は鼻息荒く行きつけの服屋へと急ぐのだった。
当のリッパー本人は『なんでこいつはテンション高いんだ?』と若干の困惑を隠せなかったが。
「これとかどう?」
「わからん」
「これはー?」
「無駄にベルトがあるが意味あるのか?」
「なんでだろうね?」
「……俺に聞くな」
「どう?」
「何故こんなに穴が空いてる?」
「ダメージジーンズだからねー。ほらほら、これとかどう?」
「……ヒラヒラしてる。落ち着かん」
「試しにスカート着せてみたけど思った以上に似合ってるわね。それに手慣れてたし……着た事あるの?」
「クソ上司がスるときに『こうした方がさらに盛り上がる』って着させられなことが何度かある。どうせ最後は脱ぐのに理解できん」
「!!?」
突然のカミングアウトに撫子は驚いたようにリッパーの顔を見る。だが、当の本人はよくわかっていないのか僅かに首を傾げるのみだ。
スるというのはつまりそういう事か?
その上司はなんてやつだ。YesショタNOタッチを知らんのか?
「……おい、なぜ頭を撫でる?」
「なんというか、この世の不条理を嘆いているところかな……」
「意味がわからん……」
思わず抱きしめ、撫子が頭を撫でることをリッパーは困惑を隠せないが抵抗はせずに好きにさせる。
ここで騒いで無駄にことを大きくするより、終わるのをじっと待つほうがストレスは少なく済むからだ。
理由としてはそれもあるが、なによりも。
(……優しい手つき)
押さえつけるような激しい力加減ではなく、寧ろ、こちらを慈しむような穏やかな力加減。
嫌い……ではない。寧ろ───
そこまで思った瞬間、咄嗟にリッパーは撫子の手を払う。
「あっ……ゴメン。馴れ馴れしかったかな?」
「…………さっさと会計を済まるぞ」
短く会話を切り、リッパーは試着室を出ていく。
忘れろ。あんなものは気の迷いだ。だって、自分は──―
「化け物だ」
言い聞かせるよう、リッパ―は呟く。
その背を撫子は払われた手を胸元で抱きながら見つめていた。
「うん、やっぱりあんなダッサイ服よりこっちのがよっぽど似合うね! さっすが私!!」
「…………落ち着かん」
会計を済ませ、部屋ぎスタイルから着替えて頭には帽子、シャツにアウター、短パンとなったリッパ―を見てしきりに写真を撮ってほめる撫子。
基本制服のリッパ―にとってこうした着飾ることを目的とした衣服には経験がほとんどなく落ち着かない様子だ。
そんな折、
くぅ~……
という可愛らしい腹の音が聞こえてきた。
「あ……その、これは、ちがっ……!!」
音を出した自分の腹部を抑え、耳まで顔を主に染めたリッパーが弁明をする。
「ふふ、そろそろいい時間だしご飯にしよっか?」
「…………ッ〜別にいい。俺にはコレがある」
「? なにそれ」
リッパーはまだ顔を赤くしながらバッグの中から飾り気のない銀の包装紙に包まれた長方形の物体を取り出した。
撫子は見慣れない物体に首を傾げて尋ねれば、どこか自慢げにリッパーは物体のことを教える。
「これはリリベルの戦闘糧食だ。これ一つで一日に必要な栄養素やカロリーの大半を補うことが出来る。
それに長期保存が可能だし、なによりも嵩張らず手早く食える」
「へー。で、味は?」
「あ、味?」
「うん。美味しいのソレ?」
撫子に言われ、リッパーは目を点にしてしまう。
リッパーにとってというよりも、リリレベル食事など単に栄養補給程度の作業にしか思っておらず味など二の次三の次だ。
「か、考えたこと無かった……」
「ふーん。じゃ、ちょっと味見しよ」
「あ、おい勝手にとるな!」
「イージャン1個くらい!」
リッパーの手からひったくり、撫子は吠えるリッパーをなだめながら包装紙を破いて現れた物体にかぶりつく。
ガリッという硬質な音の後にバキリという割れる音。
「んー…………ん、んん、んんん〜…………?」
初めは何ともなかったのだな、咀嚼する度に口内からはゴリッ、ガリッ……という音と共に撫子の表情が曇っていく。
きちんと30回噛んだ後に嚥下すれば、ありありと"不味い"と言った様子の表情を浮かべて撫子は残りの分を離れたゴミ箱に投げ入れた。
「何これ……食べた瞬間に口の中の水分全部持ってかれるし、噛めば噛むほど旨みなんて出てこないし、食感のせいで石ころとか壁を食べてる気分だよ。
よく君はこんなの食べれるよね……超まずい。こんなの毎日食べてるなんて心配なるよお姉さんは」
「そ、そんなにか……?」
あまりの酷評にリッパーは狼狽えた。
確かに彼女の言うとおり無駄に硬いし、食べれば口の中がパサついて飲み込むのにも一苦労。かと言って味もいい訳でもないがそんなに気にすることか?
慣れれば結構美味しいんだが……、そんなことを思うが無味無臭の固形物など一般的な感性からしたら不味いのだが、生まれてこの方まともな食事などとったことのないリッパ―は気が付かなかった。
「じゃあお姉さんが本当のご飯を食べさせてあげる!」
「お待ち」
「ありがと~」
「……なだこれは……?」
カウンター席に横並びで座り、目の死んだ店主の置いた物体を一目見てリッパ―は聞いてみた。
底の深い皿にはぐつぐつと煮えたぎる粘度の高い液体。鼻を突くような香辛料の香り。
液体の中には四角形に切られた小さな物体や、何かのひき肉が沈んでいる。
「麻婆豆腐だよ~。ここのはめっちゃ絶品でさぁ~。休みの日はよく来て食べてるんだよね~」
撫子は笑い、レンゲでその麻婆豆腐なる物体を掬い口へと運べば……
「ッッッッッッ……!! ふぅぅぅぅ────!!! ハグッ……ハグッ……!! ハァッ……!」
にじみ出る汗、爛とした目、不気味な笑い。それでもレンゲが止まらなかった。
端的に言えばきもかった。
え、これほんとに食い物? 兵器だったりしない……?
短い間沈黙し、麻婆豆腐を見つめていたら……
「怖いのかね少年?」
「は?」
そんな声が聞こえてきた。
思わずリッパ―は顔を上げて声の主をにらみつけた。
視線の先には頭にタオルを巻き、鍛え抜かれた肉体をおそらくこの店の制服に身を包んだ先ほど料理を運んできた店主の男だった。
死んだ目に無駄にイケボで店主は言う。
「君は今、岐路に立たされている。ここでおとなしく尻尾を巻いて逃げるか。果敢に立ち向かい、見事この麻婆豆腐を平らげ凱旋するかという選択肢に。
むろん強制はしないとも。だが、ここでおめおめと逃げ帰れば君はこの麻婆豆腐にすら勝てない臆病者となるだろう……」
「お前、今この俺を弱者といったのか……?」
「おや、違うというのかね?」
その言葉にリッパ―は激怒した。自分は最強だ。今までだってどんな敵も屠ってきた。これまでもこれからも。
それがこんな麻婆豆腐なんてものに敗北するだと? ふざけるな。そんなことなどあっていいはずがない。
現にこうして隣にいるやつが食っているのだ。ならば、自分にできぬ道理などない!!!
「吠えずらを書かせてやる!!」
レンゲを手に取りリッパ―が吠える。
小さな挑戦者が奮起したのを見て店主の男は笑う。
「では見させてもらうとしよう」
「いくぞ!!」
奮い立たせるように叫びながらレンゲを握り、リッパーはグツグツと煮立つ麻婆豆腐を掬いあげれば口の中へ─────
「くちがいだい……」
「ふぅ~食べたたべた~」
お腹をさすり、道を歩く撫子とその後ろをトボトボと歩くリッパ―。
その小さな唇は赤くなっており、歩みもどこか頼りない。
「いったいなんなんだアレは……明らかにまともな辛さじゃなかったぞ……?
それをなんで何杯も食べれてるんだ……」
「最初は無理だっけの慣れてけば癖になるんだよね。あそこの麻婆って。
寧ろ君が完食できたことに驚いたね〜」
「……お前、最初から食えないと思ってたのにアレを俺に出したのか…………?」
「…………フッ」
「ブッコロ」
竹刀袋の封を解き、リッパーは表情筋1つ動かさず。だが、内心は怒髪天を衝きにっくきコンチクショウを三枚に下ろしてやろうとする。
「わー! ごめんごめん! 謝るから! 良いとこ連れていくから! ね?」
ガチの殺気を感じ取ったのか、即座に撫子は平謝りを続けどーにかしてリッパーを宥め、彼女のセリフにリッパーは聞き返す。
「…………いい所?」
「うん! 私のお気に入りの場所だよ! きっと気にいるから!!」
だから物騒なものは下ろそうや、言外に語ればリッパーは少し逡巡した後に鯉口を切っていたのを戻して竹刀袋の封を閉じた。
一応の命の危機を去ったことに撫子は安堵し、ため息をこぼして懐から棒状の何かを取りだした。
「とりあえずこれ、お詫びね」
「……なんだこれは?」
「飴だよ〜。私がわざわざ外国から仕入れて貰ってるやつ! 口直しにどーぞ」
リッパーは渡されたそれを尋ねれば、撫子の説明を行う。
何度か訝しげな視線を彼女と飴に行ったり来たりしながらリッパーはおっかなびっくりと飴の包装を解き、何度か匂いを嗅ぐ。
独特な甘い匂いが鼻腔をくすぐり、先程食べた劇物とは違い今度はまともそうなモノにひとまず安堵してリッパーはその小さな口に飴を入れた。
「……変な味だな」
甘いは甘いが、なんというか薬品のような甘さだ。
今の今までこうした甘味を食べたことの無いリッパーにとって何だか新鮮な気持ちになった。
「ここがお前の言ってたいい所か?」
薄暗い空間にいくつも見える水の注がれた容器。
申し訳程度の光源が照らし、リッパーは小さな魚の泳ぐ水槽を覗きながら尋ねる。
「そうだよ~。綺麗で気に入ってるんだー」
「よく来るのか?」
聞けば、撫子はポーチから安っぽいデザインのプラスチックのカードを取り出した。
「年パスを作るくらいにはね〜。君もどう?」
「いらん」
取り付く暇もない、と言った様子のリッパーに撫子は肩を竦めながら彼の手を引いて館内を歩む。
「……なんでこいつらはこんなに色が鮮やかなんだ?」
「え、考えたこともなかったなぁ……」
「こうなったのなら合理的な理由があるはずだろう?」
「え、え〜……素人だからお姉さん分からないかな〜」
カラフルな魚を眺め、パンフレットにのってる情報を見ながらリッパーは質問する。
その問いかけに撫子は困惑気味に答えるしかなかった。
「この細長いのは……」
「チンアナゴだね〜。こうやって驚かしたら砂の中に引っ込むんだ〜」
「おー……」
撫子がガラスを小突けばチンアナゴたちが砂の中へと潜っていく。
リッパーは思わず声を上げ、興味深そうに観察する。
年相応の反応に撫子は微笑ましく思いながら次のコーナーへと進んだ。
「クエ? クエェエェ!!」
「クェエア!!」
「…………」
「なんだか凄く威嚇されてるね〜」
ペンギンたちに吠えられ、なんとも言えない顔のリッパー。それを見てベンチに座りケラケラと笑う撫子。
そんな折、
「おい、リコリス」
不意にリッパーが声をかける。
「ん、なぁにー?」
「お前はなんなんだ?」
「どーしたのさ急に〜」
近づき、見下ろすような形で撫子を射抜くリッパー。
見上げる形だが、その飄々としたような微笑みは消えず余計にリッパーを苛立たせる。
「お前は認めるのは実に……実に癪だが俺よりも……ほんの少しだけ強い。
あの時もお前は俺に銃弾を撃てば良かったくせにしなかった。挙句には何度も俺を殺せるはずだったが、その尽くを見逃した。
俺はお前を殺そうとしてるのにだ」
理解できなかった。殺し殺される。そんな関係だと言うのに、何故こうも違う?
なぜ、自分のような存在に笑いかける?
なぜ、殺意ではなく、友好を向けてくる?
理解できない。納得できない。認識できない。
自分の知識の中に撫子のような存在はいなかった。
「俺はお前が分からない」
だから、知りたい。
初めての感情だ。今まで他人に意識を向けたこともなかった。
全て自分にとってどうでもいい路肩の石程度の有象無象でしか無かった。
リッパーは純粋に目の前に自分を見つめみる深紅の瞳の存在に尋ねた。
「だから、教えろ」
「それって私に興味があるってこと?」
「……あぁ」
「チンアナゴよりも?」
「あぁ」
「ペンギンよりもー?」
「茶化すな」
「んふふ、ごめーんー! そっかー、知りたいのかー!」
なにが嬉しいのか撫子はふにゃふにゃと笑う。
「じゃあ、まずは私の名前ね!」
ベンチから立ち上がればリッパーの傍をとおりすぎれば、向き直して胸元に手を当てる。
「私の名前は常夏 撫子! 好きなものは可愛いものを愛でることに辛いもの!
そんでもってリコリスで最強やらせてもらってるね。
そ・れ・と」
撫子はゆっくりとリッパーへ近づき、その手を握る。
「私も君のことが知りないんだ」
「……俺の?」
「そう。名前も知りたいし。好きなこと、嫌いなこと。趣味とか色々ね」
「……リッパー」
「それは君の二つ名みたいなものでしょ?」
「だが、俺はこれしか表す記号はない」
「じゃあ、私が君の名前をつけてもいい?」
「名前を?」
「うん」
膝を折り、目線を合わせて真剣味を帯びた目で撫子は頷く。
「……好きにしろ」
「うん。君にピッタリの名前考えてあげるね! じゃあインスピレーションを得るために今日は遊びまくるぞー! おー!」
「お、おー?」
立ち上がれば撫子は片手を上げて言えば、真似するようにリッパーも片手を緩くあげるのだった。