ガル学。〜GirlsRevolution〜 作:れもねーどすたんど
『4月6日月曜日!せーの!』
『『『おーはー!』』』
テレビ画面の先には、小太りなお兄さんが赤色のド派手なジャケットを身にまとい、満面の笑みで立っている。アラサーなのにお兄ちゃんというのがピッタリな無邪気な笑顔の彼は進行役らしく、彼の声に続いて周りにいる5、6人ほどの出演者が声高に挨拶を叫ぶ。
いい年してるおっさん芸人がスタジオ中を駆け回り、この服でしかテレビにでてないというほど定着してるタンクトップを来た若手芸人は豪快に何かを叫びちらかして、もはや何言ってるのかわからない。悲しいかな、その異常なテンションに慣れてしまったのだろう。14、5歳といったところの女の子は平然と立ちながらカメラに向かって笑顔で決めポーズ。
朝7時過ぎから始まる生放送番組「おはスタ」。子供番組ならではのこのハイテンションに思わずくすっと笑ってしまう。シーズンごとに細かく模様替えされるスタジオの飾りつけ、今回は桜の形のバルーンで壁が埋め尽くされている。
お兄さんが相変わらずの笑顔で続ける。
『今週もスバにぃ達と一緒に張り切っていこうぜー!』
『そういえばさ、今日は入学式のおはトモのみんなも多いんじゃないかな?』
さっきまで奇声を上げていた若手芸人も真面目に喋ればしっかり聞こえるもので。ただ、カンペを見てる感は否めない。
『おはトモのみんな入学おめでとう!スバにぃもね、おはスタ司会入学したばかりだから張り切っちゃうぞ!...てことで早速このコーナーからいっちゃいましょ!』
『先取り!爆速カレンダー!』
さっきまでおとなしく立っていた女の子は完璧に自分のセリフを言い切ると、カレンダーが貼ってある大きなボードの前までスキップで移動する。6日と書かれた欄には、「?」のついたシールが貼ってある。
『今日はこちら!〈パフォーマーを目指す学校!?徹底調査!聖ガールズスクエア学院!〉』
シールを女の子がめくると、そこには大きな建物の写真がある。初めて見たときには、あの「ハリーポッター」シリーズにでてくるホグワーツ城じゃないだろうかと勘違いしそうな立派さ。規模はホグワーツ城そのものだが、実際はもっと明るいクリーム色のレンガ造りの建物で、レトロさの中に“オシャレ”を見出している。さまざまな音符の形の装飾も施されている校門もオシャレという言葉がフィットする。
『実は、私もこの学院を卒業してるんだ!』
『え~そうなの!?でねでね、今日はね、この学院も今日入学式があるんだ!なんと!学院の前の通りをね、ライブ映像で見れちゃいます!』
スバにぃの声に周りのメンバーが『お~』と反応。
『Let's check it out!』
スタジオの中央にあるモニターにすうっとカメラが寄っていくと、出演者のイラストが描かれていたモニターの画面が切り替わり桜並木が映しだされる。
奇麗な桜並木、満開は少し過ぎてひらひらと桜の花びらが落ちていくのがまた風情というやつなのか。ピンクのカーペットの上をまだ完全には着こなせていない少しぶかっとしている制服を着て、意気揚々と歩いている女の子がたくさん。これからの学院生活に胸を躍らせているのだろう。画面の右下のワイプで顔を切り抜かれてる女の子も『なつかしいな...』なんてつぶやきながら目を細めて思い出に浸ってるようだ。
と、その女の子の瞳孔が開いた。いきなりそんな表情になるもんだから、ワイプもそのまんま彼女を映し続ける。彼女の目線の先のモニターには、歩いてる女の子たちの中に一人全力で走ってる子が混ざって映っている。驚くのも無理はないだろう。
人を搔い潜り全力ダッシュする女の子は画面の下から上へ一瞬で見えなくなっていった。
女の子が上へはけた途端、テレビ画面が動かなくなった。
というか、私が止めた。
入学の日は何回でも鮮明に思い出せるんだよな。サクラ道を走ったときの息のしんどさとか、桜のカーペットを踏んだ感触とか、テンションの上がり方とか。だけど、なんやかんや言ってまだ一年ちょっとしか経ってないのに、ものすごい昔に感じるんよ。
私は思い出に浸りながらテレビを消した。