ガル学。〜GirlsRevolution〜 作:れもねーどすたんど
私の足はいつのまにか、かけ足から全力疾走に変わっていた。
道の両サイドには大きな桜の木がピンクに染まっている。ひらひらと舞い降りる桜がたまに顔に当たってくるのが少し嫌だ。でも、これから私が足を置いていく地面がきれいにピンクに染まっているのが、レッドカーペットの上を走ってるのを許されてる感じでたまらなく気持ちよくて、顔に当たるのが嫌なことなどある意味どうでもいい。この時期ならではの気持っちい風、英語では“ブリーズ”って言うんだっけ。それもまた気持ちよさを助長している。
誰かを追い越すたびに、その誰かが少しびっくりしている雰囲気と視線を感じる。でもそんなことは私にとって今重要なことじゃない。とにかく前へ、前へ走って、1秒でも早く自分の目で見たい。
私の足が止まった。
「ふわあぁぁ」
目の前の光景への感動に吐息のつもりが声に漏れる。ずっと走ってきたから息は苦しいし、少しぜいぜいしてるんだけど、この光景見るために走ってきたんだから、そんな疲れは一時的に感じてないに等しい。
「ここが、聖ガールズスクエア学院――!」
私のイメージよりもずうっと大きかった。何度もカタログでもネットでも校舎の写真は見たし、ここに入るためのオーディションで建物の中に入ったこともある。でもいざここでの生活を目の前にして見る校舎は、期待が膨らむ分、大きくそびえたっている。レンガ造りの壁、中央には時計と、その下に校章が大きく掲げられている。
この建物は教会?お城?とにかくすごい。お庭には噴水や花壇も見える。あの大きな校章、私のバッグにも同じものがついている。それがうれしくてたまらない。
聖ガールズスクエア学院、通称ガル学。2016年開校とまだまだ新しい。しかし、今では日本中のパフォーマーを目指す女の子の憧れの聖地となっている。特に“ガールズアリーナ”と呼ばれているステージには一度は立つことを夢見るものである。実際、去年の七夕には、私の周りにいる子がこぞって“ガールズアリーナに立てますように。”とお願い事を書いていた。ガールズアリーナは、ガル学の生徒で結成されるユニットの中で、毎年一組だけ立てるステージである。超満員のステージでパフォーマンスする子たちの姿を全国の女の子は憧れる。私もその憧れる一人だ。
だけど、ガル学にみんなが入れるわけでもなく。全国に点在するガールズスタジオという場所で練習を重ね、学院に入るためのオーディションに受からなければならない。
で、私はそのオーディションを“主席”で受かったわけですよ。一位通過。実は今日入学式で代表の挨拶も任されてたり。
主席とかって、こう、ピシッとして、すごく余裕があって、みんなにすげぇって言われるみたいな感じじゃん?そんなイメージもってここに来たんだけど...
それよりも…
走ってきたために起きていたぜいぜいも少し収まって、それと同時に一定のテンポを刻み始めた心臓に手をあてて。
今のワクワクとドキドキを素直に表現しよ。それが楽しいから。この学院はそれができるから。
「よしっ」
心の中で言ったつもりがまたもや漏れてしまった言葉を心に噛みしめて、学院に向かって一歩踏み出した。代表挨拶の原稿を頭でリピートさせながら。
『新入生の小川ヨウカです!よろしくお願いします!』