もしエレジアが白ひげ海賊団の縄張りだったら   作:座右の銘は天衣無縫

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第一楽章

白ひげ海賊団がエレジア島を訪れてから数日

 

昼間はカンコンカンコンと何かを作る音が響き、夜は島のどこかで大騒ぎをする海賊達をウタは王城の一室からじっと見ていた

ゴードンの歌のレッスンを受けながら

自室で曲を作りながら

夜寂しくなった時に歌を口ずさみながら

 

昼間はボロボロでバランスの悪い家を作ったり、やけに綺麗な家を作りながら笑い合って

夜は夜で大声で歌を歌っている彼らを見ていると、どうしてもシャンクス達が頭に浮かぶ

 

気晴らしに外に出れば、鬱陶しいくらいに絡んできて

部屋にこもっていても一部の人は、一緒に飯を食おうぜ、だったり、一緒に宴をしよう、と突撃してくることもある

その姿に赤髪海賊団の皆が重なる

 

憎みたいのに憎めなくて

無視したいのに、どうやってもズカズカと心の中に入ってきて

苦しくて辛いのに、でも何故か巻き込まれては笑ってしまって

船長の白ひげを親父と慕う姿に、父親であるシャンクスを思い出して羨ましいような憎いような、悲しいような懐かしいような良く分からない気持ちになってしまう

 

その内、島のボロボロだった景色は綺麗になっていった

少しずつ人が新しく暮らし始め、活気が戻ってくる

城も直してコンサートホールや野外フェス会場などもすっかり綺麗になった

そうなった時にはもう、ウタは白ひげ海賊団にすっかり絆されてしまっていた

 

まだ思うところは幾らでもあるけど、少なくとも彼らは海賊だけど良い人だと分かったから

シャンクス達の事を思い出して彼らの前では上手く歌えない事も多かったけど、それでも彼らはやんややんやと盛り上げて、一緒に歌ってくれる

 

マルコに捕まって空を飛んだり、サッチの料理に目を輝かせたり、ジョズの肩に乗って島中走り回ったり、船員達から冒険の話を沢山聞いたりしていた

 

そんなある日、ウタはある決意を固めた

 

「ねえ、ゴードンさん。

私が白ひげ海賊団の船に乗りたいって言ったら……怒る?」

 

いつもの歌のレッスン中、休憩の最中にそう切り出したウタにゴードンは驚きのあまりピアノの鍵盤を勢いよく叩き、その勢いで落ちてきた蓋に指を挟まれた

 

「わっ!?

大丈夫!?

すぐに手当てしないと!」

 

「いや、大丈夫。

大丈夫だ。

それより、白ひげの船に乗りたいって?」

 

驚いて駆け寄ってくるウタに大丈夫だと伝えながら、ゴードンは痛む指を今は忘れて聞き直した

 

「うん、そう。

ずっと考えてたの。

新聞を見ても、白ひげ海賊団の人達から聞いてもシャンクス達があんな事をするとは思えなかった。

だから直接聞きに行きたい。

今まで育ててくれたゴードンさんには裏切るみたいな形になっちゃうけど……でもどうしても知りたいんだ。」

 

「……私は……君が本気でそう思うのなら止めはしない。

だが、君はまだ幼い。

もう少し待っても……」

 

ウタの気持ちは理解できるが、シャンクスと白ひげとの約束があるゴードンはまだ教えることがあるが故に、もう少し教える時間が欲しいと引き伸ばしにかかる

 

「シャンクスの船には赤ちゃんの時から乗ってたんだよ?」

 

「そ……そうだったね。」

 

だがすぐにウタに論破されて、必死に次の言い訳を考えた

 

「…………っ船に乗せるかどうかはニューゲートさんが決める事だ!

彼に認めて貰えば私からは何も言う事は無いよ。」

 

「ああ、それは確かに。

うん、じゃあ今度来た時に話してみるね。」

 

咄嗟に思いついたのは自分が先に白ひげに事の次第を伝えて、断ってもらうというもの

思いついた瞬間に焦りながら口に出したため、早口になってしまったが、ウタは特に疑問に思う事なくそれを了承した

それに内心安堵しながら、その気持ちを表情に出さないようにゴードンは話を変える

 

「じゃあ、一旦この話は終わりにしてそろそろレッスンを再開しよう。」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけなんだが……」

 

『オメェが断れよ。

優柔不断で情に流されやすい所は変わらねェな。

そんなんで真実を伝えられるのか?』

 

「返す言葉もない……」

 

その日の夜

電伝虫で白ひげと連絡を取ったゴードンは部屋で正座しながら白ひげと話していた

 

『まあ、分かった。

こっちも積極的にガキを預かりたいとは思わねェ。

断ってやる。

だが、お前も腹を決めろ。

あの小娘が……そうだな17だ。

17歳になるまでにお前の口から真実を伝えろ。

 

小娘が決意を決めたってのに、大の大人がいつまでもウジウジしてるんじゃねェ。

分かったな?』

 

有無を言わせないその語気に優柔不断なゴードンとはいえ首を縦に振らざるを得なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、ガキンチョ。

オメェ、ウチの船に乗りてェって?」

 

「うん、そう!

よろしくお願いします!

雑用でも何でもします!

あ、でも戦いは自信ないから出さないでね?」

 

「勝手に話を進めんじゃねェよ。

悪いがまだ若すぎんだ。

せめて18になってから出直しな。」

 

そのつれない言葉に、ウタだけでなくウタと仲のいい船員達からもブーイングが上がる

 

「ええぇ〜〜〜親父ィ、せっかくの美声の持ち主の音楽家だぜ?」

 

「楽しい航海には良い音楽家が必要でしょうよォ!」

 

「!

やっぱり皆もそう思うよね!?

ね!?」

 

「ゼハハハハハハハハ!!

その通りだぜ親父ィ!

ケチ臭ェ事言わねェで乗せてやろうぜ!?

俺なんかコイツよりガキの頃から乗ってたじゃねぇか!」

 

ティーチを筆頭に船員達がウタと肩を組んで、白ひげに抗議する

 

「じゃあ、誰か代わりに船を下りろ。」

 

「さぁて、仕事だ仕事。」

 

「サッチー!

いつものパイ焼いてくれよ、パイ!」

 

「味方じゃないの!?」

 

白ひげの一言で肩を組んでいた船員達はすぐに手のひら返して解散した

それに怒りながらウタが声を上げるも誰も彼も知らんぷりだ

 

「まあ、そういう事だ。

今は諦めるんだな。」

 

「ぬぐぐぐぐぐぐ……!

……はぁ、分かった。

今回は諦めるよ。

でも、エレジアに来るたびに頼みに行くからね!」

 

「やめろよ?」

 

今後、モビー・ディック号がエレジアの港に来るたびにウタが頼み込みに行く様子が見られたとか

 

 

 

 

 

 

 

そうして数年後

ゴードンのつきっきりのレッスンの甲斐あって、ウタの歌の実力はみるみる上がり、ついにゴードンから教える事は何もなくなった

 

この時、ウタは16歳

白ひげに決められた期限の1年前

全てを教えきったゴードンは漸く腹を決めた

 

「ウタ、おめでとう。

もう私から教えられる事は何もない。

 

そして……君を一人前の音楽家と認め、真実を明かす……!」

 

「え、なに?

いきなりどうしたのゴードンさん。」

 

「あの日のことだ。

シャンクスが君を置いて行った日、本当は何があったのかを!

君は知る権利があるし、知る義務もある!

そして、私も君にその真実を伝える義務がある!」

 

「……あの日、やっぱり何か……

私に伝えたことじゃない何かがあったんだね……」

 

何となく分かっていた

シャンクス達が極悪非道の行いをして逃げて行った事よりも

私をこの島に置いていかざるを得ない何かがあったのだと、その原因が私自身にあるのも、何となく分かっていたのだ

 

「教えて。

私は……それを知らなくちゃならない。」

 

「うむ。

あの日、君が島を去ると聞いて多くの住人達が集まった。

覚えているかな。

最後に、と様々な歌を歌ってもらったんだ。

 

だが、そこにある楽譜が紛れ込んだ。

それが『トットムジカ』

ウタウタの実の能力者がその歌を歌うことで現れる古代の魔王。

 

それはこの城の地下に封印されていたのだが、君の歌声に惹かれたのか、はたまた長い年月で封印が解けてしまっていたのか、誰にも気付かれることなく君に近づき、そして……」

 

「歌ったんだね、私が、その歌を。」

 

「そうだ。

そして魔王は復活した。

君を取り込み、島を襲った。

だが幸いにもまだ君が幼く、すぐに意識を失ってしまったことで力の源を失ったトットムジカは弱体化し、シャンクスに倒された。

 

シャンクスは君があの惨状を生み出した事を知れば気を病むと考え、全ての罪を被ったのだ。

君を置いていったのは、私が君を世界一の歌手に育てるため。

 

今まで騙していてすまなかった。

私の事は幾らでも恨んでくれて構わない!

だが、シャンクスは!

彼は最後まで君のためを思って動いていた!

間違いなく彼は君の父親だ!」

 

それを聞いたウタはその場に崩れ落ちた。

 

「ウタ!?」

 

すぐにゴードンが駆け寄る

ウタは泣いていた

 

「ううん、大丈夫。

嬉しいんだ。

本当は私が悪かったのに、エレジア王国にいた皆に謝らなくちゃいけないのに……!!

シャンクスが私を愛してくれてたってだけで嬉しくて嬉しくて……!

 

ねぇ、エレジア王国の皆は許してくれるかな゛あ゛……!?

こんな私を……!

許じでぐれるかなあ゛!?」

 

「許す……!

許すとも……!

本来なら『トットムジカ』は国王である私が責任もって管理すべきものだったのだ。

誰が悪いというのならば、私が悪いのだ…!

君は悪くない……!」

 

ウタの涙に誘われたのかゴードンも涙を流し始める

しばらくの間、王城には2人の泣き声が響き渡っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

ウタが目覚めたのはいつもの自分の部屋だった

 

昨日のことは夢だったのかと一瞬考え、すぐにその考えを振り払った

アレは真実だ

今後一生、私が背負っていかないといけない真実なのだと

その事実に心がずしりと重くなる

でも、その重さもシャンクスが自分を愛してくれていたという事実が軽くしてくれた

 

結果若干のプラス

心はウキウキだ

 

「でも、それはそれとしてなんかムカつく。

よし、海でシャンクスにあったらぶん殴ろう。

どうして本当の事を話してくれなかったんだって。」

 

そして言うのだ

心からのごめんなさいとありがとうを

 

その為には白ひげ海賊団の船に乗っ……て……

あれ、これ白ひげのオジサンも知ってたよね?

というか知ってなきゃおかしい

 

「よし、次来た時白ひげのオジサンにも一発ビンタをあげる事にきーめた!

船員の皆も知ってたらちょっと殴らないと気が収まらない。」

 

ふん、と鼻息荒くウタは決心を固めた




映像電伝虫の映像を見てない&海賊をあまり恨んでいなかったで罪悪感大幅減少
少なくとも拗らせる事は無くなった

感想、高評価くだちい
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