もしエレジアが白ひげ海賊団の縄張りだったら   作:座右の銘は天衣無縫

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第二楽章

とある日

何ヶ月かぶりにエレジアに白ひげ海賊団の母船、モビー・ディック号が着港した

 

それと同時に王城から駆けていく紅白に別れた髪色の女性を、住人達は微笑ましいものを見るかの様に見送る

 

船から荷物を下ろしている船員達に声をかけながら船を降りて、行きつけの店へと向かう白ひげに猛スピードで迫っていく

それを確認した船員の1人が大声で周りに知らせた

 

「おおーい、ウタちゃんが来たぞー!!」

 

その瞬間、船員達のテンションが上がる

すっかり白ひげ海賊団のアイドル的な存在に収まったウタは、手を振って声をかけてくる船員達に

 

「ちょっとごめん、また後で!」

 

と答えて走っていく

 

ああ、いつものかぁ。と船員達が納得して見送っていく

ウタの向かう先にいるのは白ひげ

ウタの姿を見た瞬間に顔を顰めた

 

タッ、と音を立ててウタが飛び上がる

それを見て周りの船員は今度はどんな頼み方をするのかと注目する

因みにトトカルチョまで行われている

くるり、と空中で一回転したウタは

 

「今までよくも知ってて黙ってたなキィーーーーーーック!!!」

 

『ええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!???』

 

まさかのライダーキックを繰り出した

それを見た船員達は完全に予想外の展開に大声で驚く

 

「何してんだ。」

 

それを軽々と片手で止められ、足を掴まれてぶらぶらと逆さまにされる

 

「だって白ひげのオジサン、知ってたでしょ!?

エレジアの悲劇の事実!!」

 

「バカ野郎、こんな所で大声で言う事じゃねェだろうが。

何のために赤髪の小僧が全部持ってったと思ってる。」

 

ペイ、と軽く放り投げられたウタは空中で体勢を整えて綺麗に着地した

 

「というか!

皆も知ってたよね!?」

 

振り向いて船員達を睨みつけるウタに船員達は揃って顔を晒して下手くそな口笛を吹く

その様子にやっぱり、と怒りながらウタは白ひげの方に向き直る

 

「ゴードンさんから全部聞いたよ。

それに歌も免許皆伝!

これでもう一人前だよね?

だから船に乗せて。」

 

「クソ生意気な……

一人前かどうかは俺が決める事だ。

今夜、いつもの場所で歌って証明してみせろ。

宴を今までにないくらい盛り上げたんなら一人前と認めてやる。」

 

「それって……!

やったーーー!!!

白ひげのオジサンありがとー!

早速ゴードンさんに知らせてくる!

音楽家の皆を集めてもらわないと!」

 

白ひげの言葉に大喜びして城へと戻っていくウタを見てから白ひげは歩き出した

その横にマルコがついて話し始める

 

「親父、良かったのかよい。」

 

「あァ、別に構わん。

そもそも一人前と認めるとは言ったが、船に乗せるとは一言たりとも言ってねェぜ、俺ァ。」

 

「うわ、汚ねぇ。」

 

「グララララララララ!!

汚くてナンボの海賊よ!

まあ、十中八九一人前と認める事にはならァ。

だがその先、船に乗せるかどうかはアイツ次第だ。」

 

「……全く、親父は素直じゃねぇよい。

それよか、親父。

今夜宴やるってんなら昼間は酒は抑えてくれよい。

船医の言う事は聞くもんだよい。」

 

「うるせェ。

オメェが船医なら俺ァ船長だ。

好きな時に好きな酒飲むだけだ、何が悪い?」

 

全くこれだから、と頭に手を当てるマルコを連れて白ひげはエレジアの街の中に入っていった。

 

 

 

 

「ゴードンさん、ゴードンさん、ゴードンさん!!!

やったよ!

白ひげのオジサンが入団テストしてくれるって!!

今夜、いつもの広場で歌が開くから、私の歌を聞かせろって!!

だから皆集めて!

ベストメンバーで最高の曲を聞かせてあげたいの!!」

 

それを聞いたゴードンは最初は驚いた様子だったが、すぐに嬉しそうに笑顔になった

 

「そうか……分かった!

今のエレジアで最高の歌を聞かせようじゃないか。

何を歌うかはもう決めてあるのかい?」

 

「勿論!

まずはやっぱり『ビンクスの酒』でしょ、それから」

 

楽しそうな顔で次々と歌う曲をあげていく

その様子を見守りながら、ゴードンは机の中から書類を取り出し、今エレジアにいる音楽家達をリストアップしていく

 

しかし、今は運悪く腕のある音楽家達のほとんどは島の外に出てしまっている

残っているのもウタのあげている海賊に似合う陽気な曲とは全く別のジャンルを専門にしている音楽家ばかり

それより下のレベルになってしまうと、ウタの歌唱力が強すぎて合わせられなくなってしまう

 

「そうだ!

前々から曲作ってたんだけど、それ一曲歌おうかな。

……あ、でも、いきなりこれやってって言うのも他の音楽家の人達にはキツいかな?」

 

加えてウタの書いた新曲か……

 

「……そうだね、特に今島にいる音楽家達は元々は全く別のジャンルをやってきた人達ばかりだ。

彼らにいきなり専門外の曲を奏でて貰うというのも、な。」

 

それを聞いたウタは少し残念そうに笑った

 

「あー、やっぱりそうだよね。

うん、じゃあアカペラでやってみるよ。

大丈夫!

私の歌なら」

 

「いや、私がやろう。

ピアノだけになるだろうが、無いよりは幾分か良いはずだ。

それに、君を教えてきた私なら君の書いた曲にも即興で合わせるくらいは出来るさ。

さあ、その曲の楽譜を見せてくれ。」

 

それを聞いた瞬間、ウタの後ろに結った髪がピンと跳ね上がり、途端に心底嬉しそうに笑った

 

「うん、私の部屋にあるから今すぐ持ってくる!」

 

そう言って騒がしく部屋から駆け出していった

書類をしまって席を立つ

部屋に置かれたピアノに目を向けてそこに歩いていく

 

「さて、私も錆を落とさなければな。」

 

この数年間、ウタを教え、復興に力を入れ、と本気で曲を奏でる時間はなかった

ほぼ間違いなく腕は錆び付いてしまっているだろう

 

難しいが名曲である楽譜を適当に選び、ピアノの前に座る

確認するかのように軽く何度か鍵盤を押して音を出した後、何年かぶりに思い切りピアノを弾き始めた

 

 

 

 

 

部屋の中から歌うと決めた楽譜を探すのに手間取ったウタは10分ほどたってからゴードンの部屋に戻ってきた

だが、部屋に入る前に中からピアノの音が聞こえてきた

ゴードンが弾いているのだろうか

けど、今まで一緒にいてこんな綺麗な音色は聞いた事が無かった

 

ノックする事なくゆっくりと扉を開く

扉で遮られていた曲がもっとはっきりと聞こえて来る

それだけで広く綺麗な草原を爽やかな風が通り抜ける光景を幻視した

 

この曲自体は知っている

牧畜で栄えたとある島を訪れた音楽家によって作られたという曲

何もなく永遠に続きそうな草原に流れるゆったりとした雰囲気と、そこを通り抜ける強い風

その2つのテンポの異なる物を曲に表しているのだ

 

「……すごい。」

 

ポツリ、とウタが声を漏らすとそれでゴードンは気付いたのかピアノを弾くのを止めてしまった

 

「ウタ、戻って来てたのか。

君に合わせるために錆を落としていたんだ。

取り敢えず納得できるくらいにはなったかな。」

 

「え、いやいやいや!

まだ上があるの!?

私の方が尻込みしちゃいそうなんだけど!」

 

「こんなのは昔とった技術とあとは経験だよ。

君には技術は教えきったから、あとは経験だね。

そればかりは教えられない、君自身が積み重ねていかねばならないものだ。

それに、私自身この曲のモデルとなった場所を訪れたことがあるという事もあるし、君自身がこの曲についてしっかり理解しているという事もある。

君が極めれば誰に対しても見たことも聞いたこともない情景を思い浮かべさせる事は出来る様になるはずだ。」

 

「えぇ〜〜、本当に?

出来る様になる?」

 

「出来るとも。

さぁ、君が書いた曲を見せてくれ。

初めての曲だからね、練習せねば。」

 

そう言われてウタは楽譜を手渡す

それをじっくりと読み込んでいくゴードンを見ながら、やっぱり音楽の国の王様って凄いんだなぁ、と改めて感じいっていた

 

 

 

 

 

 

 

そしてその日の夜

街の中心にある広場に白ひげ海賊団の船員達と様の住人達は集まっていた

半円状の階段になった座席と、その中心にあるステージ

ステージの上には一台のピアノとマイクが置いてあった

 

そのステージの上にウタとゴードンが現れると、その途端に船員達から歓声とヤジがあがる

 

「ウタちゃぁーーーん!!」

 

「ゴードン、顔が怖ェぞ!

緊張で強張ってんのか!?」

 

それに対して2人はただ笑うだけ

そしてゴードンがピアノの椅子に座り、ウタはマイクスタンドの前に立った

 

ゴードンがピアノを弾き始める

その軽快な聞き慣れた音楽に船員達も歌う準備を始めた

 

「一曲目!

皆で歌おう『ビンクスの酒』!!」

 

ウタが曲名を告げれば一気に会場が盛り上がり始める

 

 

♪ヨホホホ〜 ヨ〜ホホ〜ホ〜

ヨホホホ〜 ヨ〜ホホ〜ホ〜

ヨホホホ〜 ヨ〜ホホ〜ホ〜

ヨホホホ〜 ヨ〜ホホ〜ホ〜

 

ビンクスの酒を 届けに行くよ

海風 気まかせ 波まかせ

潮の向こうで 夕陽が騒ぐ

空にゃ 輪をかく 鳥の唄

 

 

船員も住人も入り混じった歌声の中でもウタの声はよく通り、存在感を残す

負けじと船員達が声を張り上げて歌うが、それでもウタの声をかき消す事はできない

その声自体が歌に出てくる波を越える船のようで、ゴードンはその情景を見た

 

それに驚きながらもすぐに納得できた

何せ赤子の時からシャンクスの船に乗っていたのだ

その経験が歌に生きている

間違いなくシャンクス達との航海はウタの中では大事な記憶なのだろう

 

やがて歌が終わり、まだ一曲目だというのに大きな歓声が上がった

 

その歓声を受けてウタは笑顔で手を振って答える

 

「ありがとーー!!

それじゃあ、次の曲行こう!」

 

そして船乗りの陽気な歌を中心に次々と歌を歌っていく

観客達は一緒に歌うこともあれば、圧倒的な歌唱力に黙って聞いているだけの時もあった

一曲終わるごとに大歓声が上がる

そして最後の曲

 

「それじゃあ、少し名残惜しい気はするけど最後の曲。

これはね、私が自分で作った曲なんだ。

聞いてください『memories』」

 

 

♪小さな頃には 宝の地図が

頭の中に 浮かんでいて

いつでも 探した キセキの場所を

知らない 誰かに 負けないよに

 

今では ほこりだらけの毎日

いつの日か すべての

時に身を委せるだけ

 

もしも世界が 変わるのなら

誰も知らない 頃の私に

連れていって 思い出が 色褪せないように

 

 

ゴードンは初めてこの曲の楽譜を目にした時にすぐに気づいた

これはウタが真実を知る前のやるせない、ぶつけようの無い気持ちを込めた歌なのだと

ここで歌ったのは恐らく曲の供養のため

 

真実を知り、もう歌う事は無いだろうと考えたウタはこの曲を供養するために、この場で過去の自分に別れを告げるために、この曲を選んだのだと

 

白ひげ海賊団の事情を知っている船員のうちの何人かはそれを察したのか涙を見せている

ついでに周りから確かにいい曲だけどそんな泣くほど…?と若干引かれている

 

そして最後の曲が終わってウタが一礼すると大歓声が上がった

 

『アンコール!! アンコール!!』

 

当たり前のようにアンコールの声が鳴り響くが、ウタはそれを一旦手で制した

 

「アンコールありがとう!

でもちょっと待ってね!!

実は今日の宴は私の白ひげ海賊団の入団テストだったんだ!

 

白ひげのオジサン!

答えを聞かせて!!」

 

ウタのその言葉に会場の視線が一気に白ひげに集まる

視線を受けながらも白ひげは持っていたジョッキを呷り、酒を飲み干した

 

「……確かにいい歌だった。

思えばあのクソガキが今や一人前の音楽家か……」

 

「一人前って……!

じゃあ、私」

 

「まァ、待て。

俺の言った事を良く思い出してみな。」

 

ウタの言葉を遮ってニヤニヤと笑いながらそう言う白ひげに訝しみながら、ウタは今朝の会話を思い出す

確か、あの時は……宴を今までにないくらい盛り上げたら一人前と認めるって……

そして思い至る

 

「……言ってない。

船に乗せるとは……言ってない?」

 

ギギギギギ、という音が聞こえそうな感じでウタは白ひげの方を向いた

 

「あァ、その通りだ。

俺ァ、船に乗せるとは言ってねェ。」

 

「な……」

 

ウタが思いっきり怒声を浴びせようとしたところで、先に会場中からブーイングが上がった

 

「親父ィ!!

そりゃねェだろ!!」

 

「ウタちゃんが可愛そうだろうがァ!!」

 

「ウチの酒、もう売らねェぞ!?」

 

船員も住人も関係なく反論の声が上がり、逆に当の本人のウタが置いていかれる事になった

 

「うるせェ!!

まだ話の途中だろうが!!

 

乗せるとは言ってねェが、乗せねェとも言ってねェ。

息子達!!

新たな家族を迎える覚悟はあるかァ!?」

 

白ひげの一喝で会場は静まり返る

だが続けて放たれたその言葉を理解した船員達はすぐにもう一度声を上げた

 

「当たり前だァ!!」

 

「新しい家族だ!

末の妹だ!!」

 

「赤髪ィ!?

知ったことかァ!!

ウタちゃんはもう俺らの家族だ!!」

 

ウタを歓迎する言葉があちこちで上がり、やっと事態を理解したウタはその場に崩れ落ちてしまう

 

「全く……人が悪いよ白ひげのオジサン。

心臓に悪いって。」

 

1人で呟くと、そのまま大の字にステージ上に仰向けになった

 

「あーー、疲れた!」

 

そう言って笑うと、すぐに飛び起きた

 

「じゃあ、アンコールも兼ねて!

白ひげ海賊団新入りの音楽家!

ウタ!

歌います!!」

 

そう言った途端、ステージ上に船員達が上がってくる

 

「なら俺らも一緒に歌わせろォ!!」

 

「新たな家族を迎えるんだ!!

歌って騒いで祝うぞ!!」

 

船員達にもみくちゃにされ、大笑いして、上手く歌が歌えなかったが、宴が終わるその時までウタは歌い続けた




劇場版の歌はまだ使えないので暫くは歴代OP、ED使用予定
memoriesは初代EDだけど、歌詞見たら予想以上にウタにマッチしてて驚いたわ

因みになぜかトットムジカだけは使用許可が下りている模様
ありがたいけど何故?

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