もしエレジアが白ひげ海賊団の縄張りだったら 作:座右の銘は天衣無縫
ウタが白ひげ海賊団に迎えられてから数日
特別扱いは一切しねェ、という白ひげの言葉があり、ウタも新人として荷運びや雑用を手伝わされていた
ずっと歌の練習ばかりしていたウタは体力こそあるが、力は足りない
周りの船員が軽々と幾つもの箱を船に運び入れている中でウタは一つ一つゆっくりと運ぶしか無かった
船のルールを叩き込まれ、雑用として料理や洗濯などをこなしていく
夕食時にはほぼ毎日、歌をリクエストされ、船員達で持ち回りで歌いながら夕食をかき込む
まだ航海に出てすらいないのに、ウタは毎日くたくたになってベッドに沈んでいた
シャンクスの船にいた頃は、皆の手伝いとして色々な事をやってはいたが、幼かったし、シャンクス達から可愛がられていたウタはあまり重労働を振られる事は無かった
甘やかされてたんだなぁ、と思いながら眠る毎日
船員達のじゃれあいだという軽い喧嘩はどう見ても本気で殺し合っているようにしか見えなかった
明らかに自分だけがこの船で圧倒的に弱いという現実に、ウタも暇があれば体を鍛えようとする
だが、刀は重くてまともに振れない
銃は下手ではないが上手くもない
仕方ない、と一旦諦めてナイフを武器にする事にした
ウタウタの能力も鍛えようとしても、一曲歌って船員達をウタワールドに入れれば、すぐに限界が来てしまう
どうにかしたいと周りに相談しても
「は?
どうやったら強くなれるか?
そんな事より、まずは初の航海を無事に終える事に集中した方がいいぞ。
新世界の天気は特にメチャクチャだ。
普段通る航路だって完全に安全とは口が割けても言えねェ。
良いかウタ、死にたくなけりゃまずは目の前のことに集中しろ。
実力は後から勝手についてくる。
航海を楽に終えられるようになってから本格的に鍛えても遅くはねェんだからよ。」
と返答され、誰に聞いても似たような事しか言わない
そうかなぁ、と思うのはウタの記憶にある航海は全部楽しいものだったからだ
確かに嵐が来たり、巨大な渦潮に巻き込まれそうになったりする事はあったが、毎回シャンクス達は冗談を飛ばしながら乗り越えてたのだ
だからなんとなくではあるが、航海とはそこまで厳しいものではないんじゃないかという甘い考えが頭にあったのだ
そうして仕事の合間に筋トレをしたり、ナイフを振ってみたりと自分なりに鍛えて日々を過ごしていたウタだったが、ついに旅立つ時が来た
ゴードンとウタの2人は前エレジア王国の生き残りであった事からこのエレジア島の復興のシンボルだった
それ故に島民からは別れを惜しまれ、多くの見送りが港に集まった
「ウタちゃーーーん!!」
「元気でねーーー!!!」
「また戻って来いよォーー!!」
集まった島民達の声に手を振って答える
島民達の先頭にいるのは今までずっと歌を教えてくれたゴードンだ
「皆ァーー!!
行ってくるねーーー!」
そして船の錨が上がって、帆が風を受け始める
ゆっくりと花は港から離れていった
島が見えなくなるまでウタはずっと手を振り続けていた
「よォし、ウタ。
お前さんは一応料理は出来るからな。
今のところは4番隊の預かりになる。」
そう話しながら手早く料理を続けているのは4番隊隊長兼料理長のサッチだ
「だが、いきなり料理は任せられねェ。
まずは下拵えを手伝いな。
というわけで、このジャガイモの皮剥き頼むぞ。」
そう言われると同時にウタの目の前の机に山ほどのジャガイモが置かれた
「え、これ全部?」
「全部だ。
チンタラやるなよ。
そりゃ全部昼に使うからな。
急げよ。」
昼って……今は朝の10時くらいでしょ?
そこから蒸すなり煮るなりするんだから……
マズい
頭の中で計算を終わらせると同時に急いでナイフを持って皮を剥いていく
「4番隊はコックの集まりである様に、ウチはその役職ごとに何番隊に入るかが決まってる。
1番隊は船医、2番隊は遊撃隊って具合にな。
番号のついた隊にいる奴らは少なからず戦闘が出来る奴らばっかりだな。
完全に非戦闘員の奴らは纏めて番外隊って呼んでる。
船はこの本船であるモビー・ディックを含めて4隻あってな、その船に乗ってる中で1番番号の若い隊の隊長が船長代理をやってる。
今の所、音楽家の隊はねェから、いつかお前が新しい隊の隊長になるかもな。」
そんなウタを尻目にサッチは手際良く料理を作りながらウタに白ひげ海賊団のことについて語っている
他のキッチンにいる船員達を見ても、パッパッと作業を進めている
「へー。
どれくらい人数がいるの?」
「1つの隊につき、大体100人位いるから全部で1600人位か。」
「それと、傘下の海賊が43あるぜ。
それぞれの船員が大体100から多けりゃ2000はいるからな。
傘下も含めりゃ5万人を超えてくるぞ。」
「5万!?」
予想よりも遥かに大きい数に驚いたウタは手を止めて船員達の方を向く
「ほら、手は止めんなよ。
驚く度に手ェ止めてちゃいつまで経っても終わらねェよ。」
サッチに注意されて、慌てて皮むきに戻る
「そういや赤髪のトコは少数精鋭だったな。
そりゃ驚きもするか。」
「けど、四皇の中じゃ特に多い方ってわけじゃねぇんだよな。
ビッグマムの所は10万は下らんだろうし、カイドウの野郎の所も傘下を含めりゃ5万より少ねェって事ァねェだろう。」
「むしろ赤髪の所がおかしいんだよ。
なんで傘下含めて5千にも満たねェってのに俺らとタメ張れてんだ。」
「それな。」
そして話の流れで知ったのはシャンクス達が白ひげ海賊団の船員達から見ても強いという事
突然知ったその事実に嬉しくてニヤケそうになる顔を必死で抑える
「んん〜?
嬉しそうだな、ウタちゃん。
やっぱ父親の事は気になるかぁ?」
「え!?
ぜ、全然そんな事無いから!」
その顔を船員に見られ、突っ込まれるが照れ隠しで咄嗟に否定する
だが、誰がどう見ても知らなかった大好きな父親の一面を知れて喜んでる顔だ
「そう言うなよ!
じゃあ、知ってるか赤髪の目にある3本の傷!
実はあれ付けたのウチの船員なんだぜ。」
「え、嘘ォ!?
誰!?」
さらにぶっ込まれる衝撃の事実
それにすぐに食らいつくウタだが、流石にサッチが止めた
「おい、流石にそりゃあ本人から話すことだろうが。
余計なこと言ってる暇あんなら今夜の皿洗いはテメェ1人にやらせんぞ。」
「あ、そっすね。
すまんウタちゃん今の忘れてくれ。」
「無理無理無理。
そこまで言われて忘れられるわけないじゃん!」
「だよねー。」
すぐに口を滑らせた船員が無かったことにしようとするが、流石に簡単に流せる様なことでは無かった
その為、サッチが大きくため息を吐き、口を滑らせた船員に拳骨を落とした
「本当に余計なことしやがって。
……2番隊のティーチだよ。
言っとくが海賊同士の争いだ。
俺たちと赤髪海賊団は仲の良い分類にゃ含まれるが、それでも別の海賊団。
戦う時もある。
基本、じゃれあいも兼ねた喧嘩みたいな感じだが、それでもやるときゃ本気だ。
だからこそ傷が残ることもある。
事実、俺たちの方にもアイツらから受けた傷が残ってる奴もいる。
喧嘩が終わりゃあ、相当な深手を負わねェ限りは水に流すのが暗黙のルールだ。
複雑な思いがあるのは分かってっから追求するなとは言わねェがよ、責めるような真似はしねェでやってくれ。」
ティーチ
ウタも知っているし特に記憶に残っている船員だ
なにせよくちょっかいをかけてくる船員の1人だったし、フランクで凄く付き合いやすかった相手だ
その事実はウタの心の中に大きな存在として残った
だが、すぐにそんな事に思考を割いている暇は無くなった
昼食を目前にして、いきなり天候が荒れ始めた
かなり大きい船のはずのモビー・ディック号も大きく揺れ、キッチンの中で料理を行なっていたウタはいきなりの揺れに体勢を崩してしまう
その時に持っていたナイフで自分の指を切ってしまったり、鍋に突っ込みそうになってサッチに受け止められたり、材料を運ぶ船員にぶつかりそうになって咄嗟に避けたら思いっきりすっ転んでしまったりと振り回されていた
最終的には流石に危ないからデッキで他の奴らの手伝いをして来いと、キッチンから追い出された
その後は雨風に打たれながら船員に混じって帆を畳んだり、ロープを張ったりしていたが、雨に濡れた床に足を滑らせ転び、そのまま船体が斜めになっていたために思いっきり滑って手すりの隙間から海に落ちそうになってしまう
空中に放り出されたところをマルコが捕まえて事なきを得たが、ここでも危ないからと今度は船内の掃除の作業をふられる事になった
予想以上に役立たずな自分に落ち込みながら、船内の掃除をしていく
廊下が狭い事や部屋の中の家具は固定してある事からバランスを崩してもすぐに物や壁に捕まることが出来た為に、ここではなんとか掃除をすることが出来たが、それでも他の慣れてる船員達と比べたら遅い
やがて昼前には嵐を抜け、今度はからりと晴れた天気になった
晴れすぎて夏以上に暑い
突然変わった天候に順応できず、かなりの汗をかきながら昼食を食べる
この暑さを予期していたのか、昼食は食べやすい冷やしたメニューだった
それに気付いたウタはその知識と気遣いに驚きながら昼食を終えた
再度キッチンに戻るが火を使っているだけあり、キッチンは特に暑い
だらだらと汗をかきながら、今度はニンジンの皮を剥いていく
見かねたサッチから首回りに巻くようの氷嚢を貰って適度に水分補給をしながら仕事をこなしていく
何とか山ほどあったニンジンの皮剥きを終わらせた
「お疲れさん、ウタちゃん。
一旦休憩にしよう。」
「うん、そーする。」
暑さは収まり、ちょうど良い気温になった
ふう、と一息つき、キッチンの外にあった箱の上に座り込む
安定した良い気候なため、デッキの上では釣りを楽しむ船員達の姿が見える
頬を撫でる涼しい風が心地よい
「ほれ、飲みな。
俺特製のジュースだ。」
「わ、ありがとう!」
少し経ってキッチンから出てきたサッチから鮮やかな色のジュースを受け取る
口に含めば、果物の甘さが広がり体に染み渡る
「あーー!
サッチの野郎がウタちゃんにコナかけてんぞ!!」
「んだとォ!?
俺たちのアイドルに手ェ出してんじゃねェぞ隊長ォ!」
やがてそれを見た船員達が大騒ぎしながら集まってきた
更にその騒ぎに気付いた船員達が野次馬となって集まってくる
特に絡んできた船員がサッチに捕まり、ヘッドロックをかけられる
その様子に周りはやんややんやと盛り上がり、ヤジを飛ばす
それが可笑しくていつの間にか笑ってしまっていた
やがて夜がやってきた
夕食を食べて、本領発揮とばかりに歌う
夕食後は数人の船員と共に皿洗いを行う
その後は数少ない女の船員と共にシャワーを浴びて、後は寝るだけだ
女性専用の寝室
まだ船の揺れに慣れていないウタは、ベッドの柔らかさを捨ててハンモックに横になった
横になるとすぐに眠気がやって来て、数分もしないうちに寝付いてしまった
こうしてウタの白ひげ海賊団での初航海の1日目は終わった
航海は進む
天気や海流はめまぐるしく変化していく
跳ねるような波に空中から落ちる感覚で悲鳴をあげ、雷が降り注げばビビりまくり、大雨が降れば船内に溜まった水をかき出し、突然の吹雪に風邪をひきそうになる
過酷だが、エレジアにいては味わえなかった新鮮な経験を楽しむ
船の仕事で足を引っ張ってしまうことが多いのに落ち込み、ほぼ毎日起こるバカ騒ぎに笑う
夜の見張りではあくびをしながら周囲に注意し、昼間に見張り台に登っては水平線の向こうを見渡す
そうして航海を続けること数週間
ようやく島へと辿り着いた
そこは秋島
大地の実りに溢れた長閑な島だった
「航海って、大変だね……」
「だから言ったろうよ。
荒波に揉まれるだけで船乗りは強くなる。
強くなりてェならまずはそこからだ。」
すっかり揺れる足元に慣れた頃についた島
揺れない大地ってこんな感じだったっけ、と戸惑いながら初航海を終えたウタは感想を口にする
それを聞いた船員がケラケラと笑いながら答える
更にマルコが近寄って来てウタが心の底で抱えていた事に対して言及する
「仕事が上手くできなかったのを気にしてたみたいだが、船酔いしないだけ新入りとしちゃ上出来だったよい。
大抵の新入りの初航海は初めにあった様な大嵐だとか跳ねる海流だとかでゲロまみれになる事から始まるんだよい。
そういう奴らは大抵、最初の数回の航海では使いもんにならねェもんだよい。」
「マルコはああ言ってるけど、海軍や他の海賊団、海王類と遭遇しなかっただけ、今回の航海はかなり良い方だったんだぜ。
まァ、今のウタを戦場には出さねェと思うけどな!」
「わざわざ上げて落とす様な事言ってんじゃねェよい。」
マルコの言葉に元気をもらった直後にティーチからそう言われてまたちょっとへこむ
だけど、それは知ってた事だ
何せシャンクスの船に乗ってた頃は戦いがあれば問答無用で船室に入れられて終わるまでは出られなかったのだから
どうにかしてウタウタの能力を戦闘に使えないかなぁ、と考えを巡らし始めるウタだった
そしてその日の夜
航海を終えた白ひげ海賊団は久し振りの新鮮な食材と海の様子を心配する必要のない陸という事があって簡単な宴が開かれる
そこで主役となるのはウタだ
船員達と島の住人が集まった広場の中心
そこにウタが現れれば、船員達が歓声を上げる
対してウタのことを知らない住人は新入りが入って来てたのかと思うだけだ
そして曲が始まる
ある程度楽器を嗜んでいる船員達がBGMを奏で、ウタが歌う
その歌声はウタの歌声を初めて聞く島民達の心をがっしりと掴み、引き込んでいく
後に語られる海賊とは別の、歌姫としてのウタの伝説はここから始まる事となった
トットムジカってクソ強い分かなりの縛りがありそう
例えば形態変化のスピードはウタワールドに引き込んだ人数とそいつらが持つ悪感情の強さに依存するとか
トットムジカの曲自体ではウタワールドに引き込まないとか
ウタワールドに誰もいない場合は現実世界からの攻撃だけで倒せるとか
じゃなかったらシャンクスがトットムジカを倒せた理由が思いつかない
感想、評価お待ちしてます
ウタの技を一から作るの楽しい
映画見た感じ凡庸性めちゃくちゃ高そうで色々な事出来そうだからな