もしエレジアが白ひげ海賊団の縄張りだったら 作:座右の銘は天衣無縫
「ねぇ、あの武器や体が黒くなるのってなに?」
ウタがそう口にしたのは、ある程度航海に慣れてきた頃
とある海賊団を倒した後の事だった
その戦闘中に目にした光景
敵の中でも特に強そうな1人が持っていた斧を黒くして襲い掛かって来たかと思えば、同じく薙刀を黒くした白ひげによって斧ごとぶった斬られていたのだ
「ああ、あれは武装色の覇気っていう奴だ。
人間誰もが持つ力でな。
体や武器に纏わせる事で自然系の能力者にも攻撃を通せるんだ。
更に覇気の密度を高めれば、ああやって黒く硬くなり、更に極めると攻撃そのものの破壊力が段違いに高まるんだよ。」
「加えて言えば、新世界でも名を馳せる様な実力者はこの力を持っている事が多い。
後は、側からだと目に見える形では実感できないけど見聞色の覇気ってのもある。
こっちは人の気配を感じる能力でな。
高めれば次の行動を、極めれば数秒先の未来を見る事が出来るらしい。」
別の船員が補足する様な形で教えてくれる
その内容に若干怪しみながらウタは話を続けた
「本当にそんな事出来るの?」
「さぁな、流石に未来が見えるってのは本人じゃなきゃ分からんと思うし……
隊長達なら出来るか?」
「前、俺が隊長達に同じこと聞いたことあるけど、親父を除けばマルコ隊長位しか出来ないってさ。
その2人も疲れるからやりたくねェ、だとよ。
武装色の方は、ホラおでんさんとイゾウ隊長がいたから隊長クラスは皆出来るらしいけど。」
話している最中に全く知らない人の名前が出てきた
自然とウタはそのおでんさん、という人について聞く
「おでんさん、って?」
「昔2番隊の隊長やってたオヤジの弟分だよい。
ワノ国ってトコの出身でな、そのワノ国が武装色の覇気の扱いについて知ってることが多いんで、教えて貰ったんだよい。
航海の途中で他の船に出張したら、そのまま国に帰っちまったんだ。
イゾウは元々おでんさんの部下でな。
家臣として成長する為に、つって船に残ったんだよい。
そのおでんさんがワノ国で死んじまったモンだから今も2番隊の隊長の座は空いてるんだよい。」
「ゼハハハハ、本当におでんさんは強かったんだぜ。
何せ今より若かった親父と普通に張り合えるんだもんな。」
まあ、それでも親父の方が強かったんだけどな、と言うティーチ
ワノ国、というのは聞いた事がある
ゴードン曰く、鎖国を行なっている国だが、たまに現れるワノ国出身者を通じてさまざまな文化が外に流れているのだと
閉じられた国であるが故の独特な文化は、音楽にも現れており、異質にすら思える音楽があるのだとか
「ま、今となっちゃ懐かしい話だよい。
いつかワノ国に行ってカイドウの奴をぶちのめしたいが、四皇同士、気軽に全面戦争ってわけにもいかねェ。」
そう語るマルコの顔は苦々しく、何も知らないウタですら本当にカイドウのいるワノ国に行きたいのだと分かった
「で、覇気か?
興味あるんだったら教えてやってもいいよい。
面倒だから何人か纏めてになるけどな。」
それを聞いて悩む
数回の戦闘を経て、まだまだウタウタの能力を向上させる目処は幾つか立っていた
全部が全部成功するとも思わないが、きっかけとしては十分だろう
「ん〜〜、折角だけど今はまだ良いや。
今は能力を鍛えたいかな。」
何せ能力のルールをある程度理解したおかげで試行錯誤が止められないのだ
船の仕事に、歌の作成、作った歌に能力を乗せて確認、修正、再確認、実戦とやる事が多い
その上でまた覇気という新たな力を手にしたら、それはそれでまた新しく歌を作ってしまいそうだし
「まァ、構わねェよい。
俺も能力者だから分かるが、能力と覇気のどっちも未熟な時にどっちを優先して鍛えるかつったら能力だしな。
何せ能力はできる事が多い。
結構な確率で能力者になりゃ戦い方を変える必要もある。
覇気ってのは自分の力を信じなきゃ上手く扱えねェ。
培ってきた戦い方を捨てりゃここぞという時には頼れなくなる。
それは自信の喪失にも繋がるんだよい。
覇気は能力の威力を高めるのにも使える。
だから覇気を覚えたとしても、その戦い方はそれまでの延長線上にしかないんだよい。
だからその判断は間違っちゃいねェ。
強くなりてェんなら、安心して、だが駆け足で自分のスタイルを作っていけよい。
なんせ新世界は覇気の使い手なんざ幾らでもいるからな。
早いとこ上がってこなきゃ安心して戦闘も出来ねェしな。」
へぇ、と聞き耳を立てていたその場の誰もが納得した
能力者かつ優れた覇気高いであるが故に、白ひげ海賊団一番隊隊長を任されているマルコの言葉だ
説得力が違った
「つっても絶対にってわけじゃない。
どっちが効率的でリスクが少ないかってだけの話だよい。
実際、優れた覇気使いが能力者になっても覇気は揺るがねェことの方が多い。
ま、結局のところはやりたいようにやるのが1番だよい。
俺らはあくまでもアドバイスするだけ。
他人に示された道より、自分で選んだ道のほうが自信持てるだろ?」
「うわ、格好つけた。」
「真面目な話してむず痒かったんだろ。」
「折角普通に尊敬できそうだったのに。
最後の一言が余計だったな。」
なー、と顔を見合わせてそんな事を言う船員達にマルコがキレた
ごう、と青い炎を見に纏ってポキポキと指を鳴らす
「よォし!
お前らまだ元気そうだから今から稽古つけてやるよい!」
「やべェ、キレた!」
「逃げろー!」
完全に心当たりしかない船員達が一目散に逃げ出し、それ以外はその様子にまたバカやってると笑う
日常茶飯事ではあるものの、比較的規模の大きい兄弟喧嘩が始まった
白ひげ海賊団での日常はウタにとって赤髪海賊団にいた時のことを思い出させるものだったが、一つだけ明らかに違うものがあった
船に訪れる人達の人数だ
白ひげ海賊団は傘下を含めれば5万を超える大船団
故に時々、傘下の船の船長達がやってくる事もあれば、普段は別の船に乗ってる別の隊の人達が来る事もある
何日、何週間、何ヶ月か乗ってる間に知り合いと呼べるような人たちは増えていくし、一方的に知られている事は段々と当たり前になってきた
誰も彼も気のいい人達ばかりで白ひげ海賊団の末っ子となったウタは可愛がられていた
そんなある日の事
とある海賊団との戦いの最中、急激に天候が悪化した
偉大なる航路ではよくある事とはいえ、優れた腕の航海士だろうが気象予報士だろうが、その天気を正確に読む事は不可能だ
みるみるうちに海は荒れ狂い、風は逆巻く
戦闘から少し離れていた船員がいち早く気づいた
「親父ィ!!
サイクロンだ!
戦闘なんかしてる場合じゃねェ!!
向こうに乗ってるやつ呼び戻して逃げねェと!!」
「すぐに撤退だ!!
船に残ってる奴は準備しろォ!!」
そう言うと白ひげは自信の武器、『むら雲切』に能力を使って振動のエネルギーを纏わせる
更に覇気を上乗せして威力を底上げ、見聞色で自分の息子である船員達のいない位置を探し出した
「ッオオオオラアアァァァァ!!」
そこへ向けて思い切り衝撃波を飛ばして敵船をぶち壊した
それに気づき、敵味方関係なく戦闘の手を止める
「野郎共ォォ!!
サイクロンだ、逃げるぞ!
船に戻れェ!!」
その僅かなタイミングを狙って白ひげが号令を出せば、敵船に乗っていた船員達が一目散に踵を返して大慌てでモビー・ディック号に戻ってくる
船を壊された敵船の船員達も乗ってくるが、片っ端から袋叩きにされてのされていき、武装解除した上で縛り上げられる
そんな中でウタはモビー・ディックの船上で慌ただしく船を急いで動かすための準備をしている
サイクロンの風に吸い込まれないように帆を上げて、船員総出で必死にオールで漕ぐ必要がある
運の悪いことにサイクロンが発生している地点と船が近いのだ
もう少し離れていれば、サイクロンから逆に離れる風を捕まえられたかもしれないが
帆を上げるために、マストに登っているその最中
ウタの体に突然紐が絡まった
敵の船員の1人だ
恐らくは能力者なのだろう、半壊になりサイクロンの中心に引き摺り込まれつつある船上で何か叫びながらロープを伸ばしている
「野郎ォ……!
道連れにする気か!」
もう助からないと悟ったのだろう
最後の足掻きとばかりに誰かを引き摺り下ろそうとしたところでマストに上がる目立つ紅白の髪色のウタに狙いを定めたのだ
「ウチの船員に…!
何しようってんだテメェ!!」
白ひげが拳に能力を乗せて敵に向けて放つ
狙い違わず、その敵ごと船を粉々にしたが、それより一瞬早くロープが引っ張られてウタが空中に放り投げられる
マルコが助けに行こうとするが、周りにいた船員達に止められる
「離せよい!
助けに行かねェと!!」
「無理だ隊長!!
アンタまでサイクロンに飲み込まれちまう!!」
それを見ていた白ひげが再度、薙刀を構える
先ほどよりもずっと強く能力と武装色の覇気、そして覇王色の覇気を乗っけたその刃は、振動のエネルギーが可視化した透明な膜すら見えない
ただ、刃が黒く染め上げられただけだ
だが、そこに込められたエネルギー量は段違い、その場にいた誰もが刃にエネルギーが圧縮されているのだと理解した
「……って、ヤベェ!!
全員、衝撃に備えろォォ!!」
その事実に言葉を失っていた船員達だが、いち早く次に起こる事に気づいたマルコが声を張り上げた
そして次の瞬間、薙刀が振るわれる
一瞬遅れてから空間が歪み、バカみたいなエネルギーが放たれた
完全に形になったサイクロンを歪ませ、一瞬拮抗したかのように見えた後、サイクロンは黒雲ごと跡形もなく消え去っていた
余波だけでモビー・ディック号の甲板のあちこちに亀裂が走り、手すりがバキバキに壊れる
たった一撃で白ひげはサイクロンを消し去ったのだ
「っ……流石に老体にゃ応えやがる……!
マルコォ!
捜索隊を編成しろ!
見聞色で追ってたが、サイクロンは飲み込まれる前に何とか消したが、流石に余波で飛ばされた。
方向はあっちだ。
アレも腐っても赤髪の娘、運は悪かねェ、むしろかなり良いはずだ。
この方向の先にある島を探せ!」
「り……了解だよい!
航海士チーム!
海図とログポーズを持って来い!
まずは今いる位置を大体で良いから出さねェと話にならねェ!
戦闘員チーム!
負傷者の手当と捕囚の監視、それと船を動かす準備をしろ!
それから電伝虫で傘下の海賊のある場所を片っ端から聞いて来い!
暇なようなら手伝わせろよい!
動け!!」
白ひげの命令にマルコがすぐに肉付けした具体的な指示を出す
それに従って船員達は慌ただしく動き始めた
「……親父、平気かよい?」
周りに船員がいなくなったタイミングを見計らってマルコが声をかける
それに対して白ひげは軽く手を振って問題ないと表しながら答える
「グララララ、俺の心配よりもウタの心配をしてやんな。
流石にキツいが問題はねェ。
一晩寝りゃあすぐ取れる程度の疲れしかねェよ。」
「本当だな?
船医としちゃ、今からでも親父の検査をしてェところだが……今は信じるよい。」
渋々納得したマルコは腕を組みながら、白ひげの指した方向を見る
空は憎らしいほどに青かった
その頃、ウタは空の上を飛んでいた
「何これ何これ何これェェェェェーー!!!??」
どうなったのかは分かる
敵のロープに捕まってサイクロンに飲まれそうになった瞬間、今まで感じたことのないほどの衝撃を感じたかと思えば、気づけば空の上を旅するハメになっていたのだ
恐らくは少しだけ気絶していた
「どうしよう!?」
僅かに考えている間にもドンドン飛ばされている
このままじゃ海に落ちるか、運良く島に落ちても潰されて血溜まりになるかしかない
今の状況に対応するには、マルコみたいに飛べるのが1番だ
「ぶっつけ本番で作るしかない……!」
イメージするのはマルコの能力
トリトリの実、モデル不死鳥
青く煌めく炎を纏う幻想的な鳥
その炎は決して無闇に人を傷つけない
飛ばした炎に当たれば衝撃を出すが、それよりもあの炎に傷を癒やされたイメージの方が強い
「戦闘能力は今はいらない……!
炎の翼で空を飛ぶ、それだけ……!」
イメージするままに歌うしかない
「即興新曲『不死鳥の譚詩曲』……!!」
ウタが歌い始めると共に周りに音符が浮かび上がる
やがてその音符が青い炎になり、炎が固まって鳥の形をとる
「小さい…!」
だが、大きさが足りない
精々燕レベルの大きさしかない
「ならいっぱい出す!」
歌い続ける
音符が青い炎の鳥と変わっていく
だが、その鳥を作れば作るほどウタの体に疲労が溜まっていく
それを無視して次々に鳥を作り出す
やがて青い炎に包まれたウタの速度が落ちていく
霞む目で炎の隙間から辺りを見れば運のいい事に島が見えた
そこに下りるように鳥を動かす
意識が消えればこの鳥も無くなってしまう
死に物狂いで意識を保ち、なんとか島の外縁部の崖の上に降りることが出来た
それを認識した瞬間、地面に体を横たわらせる感覚と共にウタの意識は無くなった
はい、少し間が開きました
エース加入前になんかやっとかないとな、と思ったので
漫画版エピソードオブAは読んだので最低限の準備は完了
できれば小説版を読みたかったけど使ってるマンガアプリには無かったもんだから
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