ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

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弓人のブレンネンとシアのドリュッケンに付与してある『衝撃変換』の性能差は

シア → インパクトダイアルくらい
弓人 → リジェクトダイアルくらい

これくらいのイメージでお願いします


本編です


70星:大火山の最終試練【上弦】

 

 俺たちは50層ほどの場所にいる...多分

 はっきりとしない理由は、現在進行形でマグマの川を鉱石の小舟に乗り流されているからだ。

 

「ユミト殿...妾たちは鉱石の採取に来たはずでは?」

「ああ、決して水晶の頭蓋骨を取りに来たわけじゃないから安心しろ」

「......ユミトは何を言ってるの?」

 

 あのアグレッシブな考古学者のことを考えていると、この状況を生み出した犯人であるハジメが申し訳なさそうに頭を下げてくる。

 

「すまん、暑さにやられて判断が鈍った俺のミスだ」

「けどハジメのおかげで静因石が大量に手に入った。だから気にすんな」

 

 俺たちがマグマの川下りをすることになった理由は、静因石の取り方にあった。

 この火山に流れているマグマは魔力を帯びているらしく、静因石の鎮静効果によって不自然な流れ方をしていた。

 

 それに気づいたハジメは、マグマの流れが強く抑制されている場所を探し出し、大量の静因石の確保に成功した。

 

 しかし、そこにあった静因石が無くなると言うことは、そこを抑えていたものが無くなるという訳なため、大量のマグマが噴き出してきた。

 咄嗟の判断で、鉱石の小舟を作り。全員が小船に乗り込んだ辺りでマグマの川下りが始まり、現在に至るという訳だ。

 

「あっ、ハジメ。またトンネルだよ」

「そろそろ麓辺りじゃ、何かあるかもしれんのう」

 

 シアが指差す方角を見ると、マグマの川が壁に開いた大穴へと続いていた。

 現在に至るまで、下層へ落ちるたびにトンネルへと入っているため、階段を利用するよりショートカットになるはずだ。

 

 ティオの忠告に頷き、俺たちは大穴へと入っていく。

 しばらく緩やかな流れに乗っていると、次第に速度が上がっていく。

 川の先を急いで確認すると、斜面が段々と急になっていき最終的には滝のようになっているのが確認できた。

 

「......ティオ、手伝って!」

「任された!全員どこかに捕まっておれ!」

 

 そしてついに、俺たちが乗っている小舟が滝へと投げ飛ばされそうになった瞬間

 

「「『来翔』!」」

 

 ティオとユエ、2人同時に発動する風系の魔法がひっくり返りそうになっている小舟を支え、緩やかに落下していく。

 2人に礼をしようとした所に、大量の気配と風を切る音がこちらに近づいて来るのを探知した。

 

「弓人!」

「分かってる!反対側は任せろ!」

「ハジメ!私はどうすれば良い?」

「シアは魔法の維持で動けない2人を守ってやってくれ!」

「分かった!」

 

 そして俺たちに襲いかかって来た奴らは、マグマの翼を持つコウモリ...その群れであった。

 こいつらは1匹自体の強さはそこまでなのだが、とにかく数が多い。

 コウモリの群れは見事な統率力により、まるで黒い龍となって俺たちに襲いかかって来た。

 普通であればその物量に呑まれ全滅は必至だが、生憎俺たちは普通ではない。

 

「『放たれしは必中、我が矢の届かぬ獣はあらじ』」

「【オリオン・オルコス】」

 

 前方から襲いかかってくる群れに対し、ティオの翼を貫いた時に使った大矢を取り出し【魔法】を放つ。

 

 放たれた白く輝く矢は、前方の群れを尽く貫き絶命させる。

 

「こっちも負けてられねぇな!」

 

 ハジメは後方から襲いかかってくる群れに対し、メツェライを腰だめに構えトリガーを引く。

 独特な発射音とともに弾幕が張られ、コウモリの群れを1匹逃さず粉砕していった。

 

「うむ...あの2人の殲滅力には目を見張るものがあるのう」

「流石ハジメ!」

「......ユミトもお疲れ」

 

 コウモリの群れを全滅し終わった辺りで、落下していた小舟もマグマの川に無事着地でき、この川下りも終わりが見えて来た。

 

 そこは、巨大なマグマ溜まりの空間だった。

 直径にすると3キロほどはあるだろうか、地面はマグマに満たされておりマグマの海と言っても過言ではない。

 中心部分には10メートルほど迫り上がった岩の小島があり、マグマのドームが覆っているため、俺たちの視線はそこへ注がれた。

 

「......あそこが住処?」

「恐らくな...だとすると、最終試練もあるはずだ」

 

 警戒しながら中央の島へ近づいていくと

 『それ』は襲いかかって来た。

 

「むっ!?任せよ!」

 

 咄嗟にティオが魔法で防御したお陰で、俺は襲ってきた正体を確認することができた。

 『それ』は宙に浮いていたマグマだった。

 マグマは弾丸のような速度で降り注いできており、このままだとこの小舟で立ち往生する羽目になりそうだ。

 

「全員近くの足場へ散開しろ!」

 

 蜘蛛の子を散らすように小舟から離れると、俺たちが乗っていた小船はマグマの豪雨に呑まれ沈んでいった。

 別々の足場へ着地した俺たちに対して、マグマの豪雨は絶えず襲ってくる。

 各々対処していると、ハジメが『空力』を使い中心の島へと近づこうとした。

 

 そんなハジメに対して、マグマの海からマグマで作られた巨大な蛇が現れ、ハジメを飲み込まんと襲いかかった。

 

「弓人旋空」

 

 その瞬間、蛇の首から上が不可視の斬撃により斬り飛ばされた。

 それにより、ハジメは蛇からの強襲を回避でき俺のいる足場へと着地することに成功した。

 

「助かった!」

「礼は後だ!まずはこいつらをやるぞ!」

 

 斬り飛ばした蛇は、その巨躯をマグマに沈めたと思った瞬間、何事もなかったかのようにその姿を俺たちの前に現した。

 さらに蛇は、その数を増やし俺たちの前には10匹ほど現れ睨みつけて来た。

 

「さてと、こいつらの弱点分かるか?」

「多分オアシスの奴と同じタイプだと思うが...マグマが邪魔で核が見えねぇ」

「全身を吹き飛ばすか、運良く核を壊すか...か」

 

 俺は旋空を鞘に収め、ブレンネンを構える。他のメンバーもハジメからの『念話』で聞き各々構える。

 

 こうして【グリューエン大火山】最後の試練が俺たちに襲いかかって来た。

 そこにいる1人の悪意に、俺たちはまだ気づいていない。

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