ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

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70星:大火山の最終試練【下弦】

 

「久しぶりの一撃じゃ!存分に味わうが良い!」

 

 ティオは自身の背中に翼を生やし飛び立つと、いつぞやのブレスを想起させる黒い極光を蛇たちに向けて放った。

 放たれた光は、正面に迫っていた蛇を消し飛ばすと薙ぎ払うように次々と蛇を襲って行き、最終的に8匹の蛇を消滅させた。

 

 しかしそれで終わるほど【七大迷宮】は甘くない。

 

 消滅したと思われた8匹の蛇は、まるで再生したかのように再び俺たちの前に現れた。さらに蛇はその数を増やし、今では20匹に至る数がこの空間に存在している。

 

「なんと!?魔石を1つも砕けなかったか...」

「いや、砕けた瞬間は確認できた。ただ倒すだけがクリア条件じゃないのか?」

 

 【千里眼】によって強化されている動体視力で、一瞬露わになった魔石が砕かれた瞬間は確かに確認できた。

 ハジメも見ていたらしく、同じく訝しげに蛇たちを見ていると何かを発見したシアが声を上げた。

 

「皆さん!岩壁が光ってます!」

 

 シアが指差す場所を見ると、小島の壁面にオレンジの輝きをした鉱石が貼り付けられていた。

 その数は8、ティオが消し飛ばした蛇の数と同じだ。

 

「偶然...にしちゃ出来過ぎだな」

「......石の数は...100くらい?」

 

 つまりここの試練は、100体の蛇を倒すことだろう。

 言葉にするだけなら単純だ。だがこの熱気で、不安定な足場で100体を相手にするとなるとかなりの精神力と集中力が必要となるだろう。

 

 しかし、次の瞬間放たれたシアの言葉に少女たちの士気が跳ね上がることとなる。

 

「ハジメ!この試練で頑張ったらデートね!」

「はぁ!?」

 

 ハジメの言葉を聞くより先に飛び出していくシア、正面にいる蛇の額に向けてドリュッケンを叩きつけた。

 『重力魔法』で加速され、『衝撃変換』により更なる破壊力を手に入れた一撃は蛇の魔石を簡単に砕き爆散させた。

 

「くそ...シアのやつ勝手に決めやがって」

「愛されてて良いじゃねぇの...って、どうしたユエ?」

 

 ハジメに軽口を叩いていると、ユエが近づき服の袖を引っ張ってきた。

 

「......私もユミトとデート」

「...分かった、今度は2()()()()でな」

「......ん!」

 

 デートの約束を取り付けたユエは、頬を緩ませ『雷龍』を連続で発動する。

 現れた雷の龍は7体、それぞれ別の蛇を飲み込みその魔石を焼き払い消滅させた。

 

「さてと、女の子に任せっきりなのは性に合わないから...いくか」

「ああ」

 

 こうして俺も戦いに参加するため飛び出す。ここに来るまでに『空力』の練度も高まったため、空中へ難なく着地した。

 そんな俺に襲い掛かってきた蛇は4匹、四方から飲み込まんと襲い掛かってくる蛇たちを、俺は上に跳び回避する。

 その瞬間、蛇たちはぶつかり合いその姿が潰れて1つに混ざっていく。そして混ざったマグマ溜まりから現れた巨大な蛇は、再び俺を飲み込まんと口を開き下から襲い掛かってくる。

 

「せえええの!!!」

 

 俺が蛇の方向を全力で振り抜いた瞬間、ブレンネンは見えないものにぶつかり真下へ衝撃波を発生させた。

 今、俺が行ったのは『空力』で作り出した足場に向けてブレンネンを叩きつけ衝撃波を発生させるというものだ。

 そして俺を襲っていた巨大な蛇は衝撃波の圧力に潰され、その巨体を爆散させた。

 

「いってえええ!おいハジメ!こいつの出力もう少し落としてくれ!」

「分かったよ!......流石にドリュッケンの10倍はやりすぎたか」

 

 今、聞き逃せない部分があった気がするが、今は攻略が先だ。

 各々が得意とする方法で1匹、また1匹と蛇は屠られ岸壁の鉱石が輝き出す。

 

 恐らくこの【グリューエン大火山】で冒険者たちに求められるものは『あらゆる状況でも冷静に対処できる集中力』だろう。

 このコンセプトを考えた解放者には申し訳ないが、俺たちに対してその思惑から外れてしまっていた。

 

 ティオの放つブレスが、蛇たちを薙ぎ払うように消し飛ばし、残り8匹となる。

 

 シアの振るうドリュッケンが蛇の魔石を砕き、残り6匹となる。

 

 ユエが発動した魔法により、蛇に食らいつき焼き払っていき、残り3匹となる。

 

 俺が旋空を振るい、不可視の斬撃が蛇を切り伏せ、残り1匹となった。

 

「これで終わりだ」

 

 そしてハジメがドンナーにより最後の蛇を撃ち抜こうとした瞬間

 

 ハジメの頭上から極光が降り注ぎ、蛇ごとハジメを飲み込んだ。

 

「ハジメエエエエエエエ!!!」

 

 シアは悲鳴のような叫びを上げ、限界まで上げた身体強化を使いハジメへ跳ぶ。そして彼女が抱き抱えたハジメは、ボロボロの姿で辛うじて生きていると言っていい姿だった。

 

「ハジメ!しっかりして!ハジメェ!」

「神水を飲ませろ!」

 

 涙を浮かべ、何度も声をかけるシアへそう指示すると、彼女は大慌てで神水を取り出しハジメに飲ませる。

 ほぼ無意識であるが神水を飲んだことで、傷の修復が始まるがまるで何かが抵抗しているかの様に治りが遅い。

 

「......あの時のユミトと同じ」

「毒か...それより警戒しろ!いつさっきのが来るかもしれねぇ!」

 

 ハジメの介抱をシアに任せ、俺たちは極光が襲い掛かってきても良い様に周囲を警戒する。

 そして、再び頭上から極光が襲い掛かってきた。

 

「上からだ!2人とも防御魔法を頼む!」

「......ん!」

「分かったのじゃ!」

「『聖絶』」

「『嵐空』」

 

 俺が飛び出してブレンネンを構えると、2人によって光のドームと風の壁が大盾を覆う。そして降り注ぐ極光とブレンネンが正面から衝突した。

 

「ぐ...うおおおおおおおおお!!!!」

 

 重い衝撃が襲いかかってくるが、ユエとティオと共に作った3重防御により極光を防ぐことに成功した。背後にいるシアは今にも飛び出さんとしていたが、ティオが諌めたお陰もあり極光が収まるまでの間、被害を出すことなく守ることができた。

 

「......ユミト、大丈夫?」

「ああ、ユエたちのおかげでな...それより!さっきから姿を見せずにちまちまと撃ちやがって!随分臆病者のようだなぁ!」

「...安い挑発だ。しかし、それに乗るのも一興か」

 

 わざとらしく大声で挑発すると、突如何もなかった場所から何かが羽ばたく音がしてきた。

 俺たちはその方角を見ると、そこには純白の竜に乗った赤髪褐色肌の魔人族の男がそこにいた。

 





戦闘描写を書くのが苦手で辛い...

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