ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか 作:クノスペ
「カオリお姉ちゃん。ママのいたいの治る?」
「うん、お姉ちゃんに任せて」
レミアの足を診断しながら、ミュウちゃんに笑いかける香織。
その間に俺たちは、ここまでの経緯を簡単に説明をしていると、香織の診断も完了したようだ。
「レミアさん。結論から言うとあなたの足は治りますよ」
「ほ、本当ですか?」
「ただ後遺症なく治療するのに何日かに分けて癒す必要があるので、それまで不便だと思いますが安心してください」
「ありがとうございます...この子の事といい、どうお礼すればいいのやら...」
「ふふ、良いんですよ。ミュウちゃんのお母さんなんですから」
そして香織は治療を開始した。
ミュウちゃんは今まで甘えることができなかった分くっついて離れようとせず、レミアも愛する娘が帰ってきたこともあり慈しむように頭を撫でている。
「あっ、そういえば...何故『パパ』と呼ばれているんですか?」
「パパはパパなの!」
「ミュウ?どういうことなの?」
「ミュウちゃん、飴ちゃんあげるからこっちおいで」
「わーいなの!」
ミュウちゃんがいると話が進まないと感じたため、ミュウちゃんのお気に入りの飴を取り出しこちらへ呼ぶ。
そしてミュウちゃんが飴に夢中になっている間に『パパ』の事についても説明した。
「そうだったのですか...ミュウ。ハジメさんを困らせたらめっよ」
「で、でも!パパはパパだから...」
「ミュウ」
「う〜...なんでいじわるいうの?」
優しく、けれどはっきりと注意されたミュウちゃんは頬を膨らませいじけてしまう。それを見たレミアは困ったようにため息をしてハジメに頭を下げた。
「全くこの子は...ごめんなさいハジメさん。ご迷惑をお掛けして」
「謝らないでください。俺は気にしてないので」
「けど、こんなおばさんと夫婦なんて噂が立ったら嫌でしょう?」
「おばさんだなんて、十分お若いですし美人だと思いますよ?」
「び、美人だなんてお上手なんですから...」
何気なく返したハジメの言葉に、レミアは頬を薄く染めた。
最近のハジメはシアに続き香織にも揶揄われていることがあるため、女性に対する耐性ができ照れたり恥ずかしがることが減ってきている。それについては良いことだと思うのだが...
「ハジメ?」
「ハジメくん?」
こいつらの前で言うべきじゃなかったな。
「いでででで!シ、シア!?香織さん!?」
「ハジメ、私には綺麗とか全然言ってくれないのに何で初めて会ったレミアさんには言うのかな?」
「ハジメくん?何レミアさんを口説いてるの?実は年上好きなの?一目惚れなの?」
「ま、待ってくれ!あれはあくまで一般的な意見であって!いやマジで離してください!」
ハジメの肩をそれぞれ掴んだシアと香織は、
そんなハジメはまるで浮気がバレた間男のように狼狽えながら弁明を始めた。
そしてレミアさんは、香織の言った『年上好き』と『一目惚れ』に反応したようで
「そ、そんな!一目惚れだなんて。けどミュウにも父親がいた方が...いや、駄目よ私!亡くなったあの人を蔑ろにするなんて...けどハジメさんの腕...逞しくて、男らしくて...」
と言った感じに悶々としていた。
うん、巻き添えを食らう前に逃げよう。
「...魚食いたいし、晩飯の材料買いに行くか」
「......ん、私も行く」
「妾も行こうかの...この場にいると嫌な予感がするのでな」
「お買い物なの?ミュウも行くの!」
修羅場から避難するため、気配を消しながら外出する俺たち。
そして買い物を済ませミュウちゃんの家に戻ると、修羅場は終了しており、とてつもなく疲弊したハジメ、レミアをライバル視するシアと香織、そして未だに悶々としているレミアがいた。
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「とりあえず...魚買ってきたから飯にしよう」
「よろしければ私が調理しましょうか?」
「いえいえ、俺が作るんで安静にしておいてください。ミュウちゃん、ご飯作る場所はどこかな?」
「こっちなの!」
良かれと思い提案したであろうレミアさんに断りをいれ、ミュウちゃんの案内でキッチンに行こうとしたところ。シアが困惑気味に問いかけてきた。
「あのユミトさん。炭は料理とは言いませんよ?」
「俺はどこの料理下手エルフだよ。とりあえず待ってろ」
流石に
トータスに電気やガスなど通っていないが、そこら辺はオラリオと大差無いため問題ない。
そしてしばらくして料理が完成したので、ハジメたちの下へ持っていき食卓を囲んだ。
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「......美味しかった」
「だな、まさか異世界で鍋が食えるとは」
「そりゃ出汁取って食材ぶち込んで煮るだけだからな」
「土鍋で炊いたご飯も美味しかった...」
やはり大人数での食事で鍋は楽で助かる。
食後の茶を飲みながらまったりしていると、レミアがある提案をしてきた。
「エリセンに暫く滞在すると聞きましたので、よろしければ我が家をご利用ください」
「そこまでしなくても、俺たちは適当に宿を探しますので」
「いえ、これくらいさせてください。ミュウも喜びますので」
すると、お腹いっぱいになり船を漕いでいたミュウちゃんがハジメの下へと近づいていく。
「パパぁ...一緒がいいの...」
「ミュウ...」
「ママとパパと一緒に寝たいの...」
「ミュウ!?」
その瞬間、再び
俺たち3人はそれを少し離れた位置で眺めながら、茶を啜る。
「ハジメの奴、遂に未亡人まで落としたな」
「......節操なし?」
「いやユエ殿。ユミト殿たちの国には『英雄色を好む』という言葉があるそうじゃ、きっとそれじゃろう」
最終的に、ハジメ、ミュウちゃん、レミアに加え、シアと香織とリビングで寝る事になったそうだ。その際、ハジメの意見は全て却下されたらしい。