ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

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すみません、ぶっちゃけます
最近モチベが下がってます
一応、話の流れは何となく決めているので
身勝手なんですが当分はだらだらと投稿していこうと思います


76星:第4の迷宮

 

 【メルジーヌ海底遺跡】が存在する場所は、一面海原で遺跡と言えるものは何一つ見当たらなかった。

 ミレディから『月』と『グリューエンの証』が場所を導くという言葉を信じて夜まで待っていると、証であるペンダントが輝き始める。

 それに気づいたハジメがペンダントを掲げると、一直線に光を放ち場所を示した。

 

 実にファンタジーらしい光景に、ハジメは満足気に頷いているが、俺は違うものを思い出していた。

 

「...リテ・ラトバリタ・ウルス アリアロス・バル・ネトリール」

「おい、それは海底の遺跡じゃなくて天空の城だろうが...」

「けど...なんか分かるかも...」

 

 日本人なら誰もが知っているあの映画のシーンを思い出している俺たち地球組に対して、ユエたちトータス組は訳がわからず首を傾げていた。

 何はともあれ、光が示す方向に行けば良いだろうと考え。俺たち潜水艇に乗り込み移動を開始した。

 

 光が指し示した場所は、一面岩壁に囲まれて遺跡らしきものは見つからない。

 そう思っていると、ペンダントの光が壁の一点に当たり、音を立てて左右に開き始めた。

 

「...こりゃ探しても見つからない訳だ」

「仮に分かったとしても、潜水艇みたいなもんがないと近づくこともできねぇ」

 

 奥に進んでいくと、突如浮遊感に襲われその後落下し始めた。

 

「全員近くにあるもんに捕まれ!」

 

 俺の言葉に全員が反応して近くの椅子や壁にしがみつくように捕まる。

 その瞬間、潜水艇が地面にぶつかり轟音と共に衝撃が俺たちを襲った。

 そんな中、俺たちの中で特に頑丈な訳ではない香織は呻き声を上げていた。

 

「香織さん、大丈夫か?」

「う、うん。大丈夫」

 

 潜水艇から外の様子を確認すると、海中ではなく洞窟のような空間であった。

 周囲に魔物の気配が無いことが分かったため、俺たちは警戒しながら船外へ出た。

 

 外は大きな反球体の空間で、俺たちが落ちたであろう天井はどういう原理か分からないが水が揺蕩っており水滴1つ落ちることなく波打っていた。

 ハジメが潜水艇を宝物庫に収納したことを確認して、攻略を開始...する前に俺はユエに呼びかけた。

 

「頼んだユエ」

「......ん、任せて」

 

 俺の言葉に即座に反応して、ユエは障壁を展開した。

 

 その直後、頭上から圧縮された水流が俺たちを襲ってきた。

 水流は人体に当たれば容易に風穴を開ける勢いだが、ユエの展開した障壁は意に介さず防ぎきった。

 

「きゃあ!?」

 

 初めての大迷宮攻略となる香織は、この突然の出来事に反応できず思わず悲鳴を上げよろめき。それをハジメは腰に腕を回して支えた。

 

「ご、ごめんなさい」

「いや、気にするな」

 

 いつもなら赤面しそうな場面だが、香織の表情は優れない。そしてユエを一瞥するとその表情をさらに暗くした。

 

 劣等感

 

 それが今香織の感じているものの正体だ。

 

 天之河たちといた頃は、回復や防御でそれなりに活躍していたが。俺たちに同行してからは、アンカジ国民の治癒と火山から帰還した俺とティオの回復くらいしかやっていない。

 

 そして今使われたユエの結界は、自分の魔法と比べるのも烏滸がましいほどの差が自分は足手まといにしかならないのでは?と考えてしまった。

 

「大丈夫か?」

「えっ?あっ...うん、大丈夫だよ」

「...そうか」

 

 無理矢理笑顔を貼り付け誤魔化した香織を見て、ハジメは一瞬目を細めるが特に何も言わず攻略を再開した。

 

 その後、水流の元凶であったフジツボの魔物や、ヒトデや海蛇といった海洋生物の魔物が襲いかかって来て、そのことごとくを倒していく中1つ気づいたことがある。

 

「こいつら...弱くね?」

 

 俺の呟きに、香織以外の全員が同意した。

 

 大迷宮の魔物は、単体なら強力、複数なら厄介、最終試練は強力かつ厄介というものが一貫していた。

 

 しかしここにいる魔物は、地上にいる魔物と大差ないレベルだ。

 

 オルクスの様にまだ本番の大迷宮では無い可能性も考えながら進んでいると

 

 開けた空間に入った瞬間、半透明なゼリーの様なものが入り口を塞いだ。

 

「私がやります!」

 

 ほぼ反射的に、最後尾にいたシアがドリュケンでその壁を殴りつける。

 その瞬間、表面のゼリーが飛び散りその飛沫がシアの胸元に張り付いた。

 

「ひゃあ!何これ気持ち悪い!」

 

 反射的に手でゼリーを落とそうとするが、ゼリーが付着している服が煙を出しながら溶け始めたのを見て慌てて止める。

 

「シア殿!」

 

 咄嗟にティオが火属性の魔法を使い、シアが火傷しないよう調整してゼリーを焼き尽くす。どうやら皮膚にも付着していた様で、彼女の胸元が赤くなっていた。

 

「また来るぞ!ユエは障壁!ティオはさっきみたいに魔法で焼け!」

「......ん!」

「任せよ!」

 

 ゼリーの壁から距離を置くと、今度は天井から複数の触手が襲いかかり、それに対してユエが障壁を貼り触手を防ぎ、ティオが火炎で焼き払う。

 このままいけるかと一瞬考えたが、どうやらあのゼリーは魔法すら溶かす様で火の勢いが失い障壁がじわじわと溶かされ始めた。

 

「ハジメ、こいつの魔石はどこにある?」

「...無い」

「魔石が無いって...それじゃあ、あれは魔物じゃないの!?」

「分からん...強いて言うなら、あのゼリー全部が魔石だ...んで」

 

 ハジメが言葉を続けようととした瞬間、周囲に飛び散っていたゼリーが集まり始めクリオネの様な形状になり始め。こいつが魔物の姿かと思った瞬間、天井だけでなく壁からも触手が生え始めた。

 

「...部屋全体に反応がある」

「香織!お前も障壁を展開しろ!」

「えっ!?わ、分かった!『全ての敵意と悪意を拒絶する...』」

 

 香織が障壁を展開すると同時に、全ての触手が俺たちを襲ってきた。

 障壁の維持をやめ攻撃に参加したユエを含め、香織以外の全員でクリオネと触手の破壊を開始するが、飛び散ったゼリーが集まり始め即座に再生するため決定打にならない。

 

「くそっ...やるしかねぇか」

 

 ハジメがそう呟くと、空間庫からパイルバンカーを取り出し全員に聞こえる様に叫んだ。

 

「地面の下に空間がある!こいつで開けるから一旦引くぞ!どこに繋がっているか分からねぇから覚悟決めろよ!」

 

 全員がその言葉に頷くと、ハジメは迷わずパイルバンカーを地面に叩きつけ起動した。

 発射された杭が地面を割り轟音と共に貫通する。下の空間は激流の海中であり水中での【スキル】や【発展スキル】を持っていない俺は飲まれ流されてしまう。

 孤立するわけにはいかないため、俺はどうにか近くにいたユエに手を伸ばしユエもそれに気づいたのかその手を掴んだ。

 

 そのまま俺とユエは激流に身を任せ流されていった。

 


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