ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか 作:クノスペ
「おいおい...どうなってんだこりゃあ」
「ここも、過去のトータスなのかな?」
ハジメと香織は、あのクリオネの魔物から逃げるため激流に飲まれた後。仲間と合流するためにも、弓人とユエと同じようにこの大迷宮の攻略を再開していた。
そして2人は、過去トータスで何があったかを知ることとなる。
1つは、大海原での宗教戦争
1つは、客船で行われた終戦パーティでの人間族の裏切り
この2つに共通していたものは、『神』が関わっていた事だ。
しかし、深部へ続くであろう魔法陣に近づいた瞬間。先程2つと違い周囲にノイズが走りながら周囲が変化した。
「こんな街...座学や王宮の図書館でも聞いたとこねぇぞ?」
「私も...それに、街の人たち...何かに
香織の言葉を聞いて、ハジメは外に出歩いている人たちを見る。
確かに、周囲を過剰気味に確認していたり、外に遊びに行こうとする子供を大慌てで家に連れ戻している。
そして、先ほどの人たちのように『神』を盲信的に崇拝している訳ではなさそうだ。
この迷宮の製作者である【メルジーヌ】は俺たちに何を伝えたいのか分からず首を傾げていると、再びノイズが走り場面が変わる。
「ここは、工場か?」
「燃えてる...酷い...」
そこには、闇が嗤っていた。
地獄の炎を思わせる緋色の輝き、逃げ惑う民衆、それを見て悦ぶ『悪』
目を背けたくなる様な光景だったが、ハジメたちの背後から『悪』と対峙する者たちが現れた。
「ほいっと!」
「ぐあああっ!?」
まず現れたのは、桃色の髪が特徴のまだ幼さの残る少女だ。
少女は複数の刃が取り付けられた投擲武器をブーメランの様に投げ、敵の胸部を切り裂いた。
「アリーゼ!3番倉庫、押さえた!」
「そのまま4番まで制圧!イスカとマリューに指示!ライラは先の区画、押さえて!」
「ほいほいほいっと!
「敵ごと火の手を氷漬け!火災も襲撃も止める!
桃髪の少女へ指示を出すのは、赤髪が特徴的な少女。
その声に対して即座に答え動いているところを見るに、かなりの信頼を寄せている様だ。
「輝夜、リオン!敵の本命任せた!」
「ほんとうに、人使いの荒い団長さん...乗り遅れないようにしてくださいませ、エルフ様」
「抜かすな、輝夜。―行きます」
その瞬間、『風』が吹いた。
敵陣へ飛び出したのは、着物を着た和風の少女と覆面と外套を身につけたエルフの少女だった。
和風の少女は刀を、エルフの少女は木刀を使い多くの敵を屠っていく。
「凄い...」
「けど...これは本当に昔のトータスなのか?」
人間とエルフが...よく見ると狼の亜人の少女も、手を取り協力して戦っている。
そんなハジメの疑問に、『ある人物』が登場したことによりこれが過去のトータスではないと知る。
「お、おのれええええええ!」
「あれは魔剣!?アリーゼ!」
「あ、危ない!」
物陰から怒気を撒き散らし、紅蓮の長剣を赤髪の少女の方角へ薙ぎ払おうとしている男、それを見て香織は咄嗟に障壁を展開し守ろうとした瞬間
1本の矢が、長剣を持つ男の肩を貫いた。
「ぎゃあ!?」
「たく...避難が完了するまで押さえ気味って言ったろうが!調子に乗って突っ込んでんじゃねぇよ!」
そうやって叫ぶ
「ゆ、弓人くん!?」
「お前、何やってんだ...っ!?」
ハジメは弓人?に近づき肩を掴もうとしたが、そのまますり抜けてしまう。
さらに訳が分からなくなり、弓人?の顔をよく見ると、高校生である彼に比べて幾つか年をとっているように見えた。
「あら?心配してくれるの?けど大丈夫!清く美しい私には、悪者の攻撃なんて効かないんだから!フフーン!」
「お前この前、
「あ、あれは忘れて欲しいと言ったはずだ!あと料理に関しても昔に比べたら上手く「カレー」...すみません」
緊迫感の欠片もない会話に、敵の残党は隙だと感じたのか逃げ出そうとするが、後ろを向いたと同時に男は敵の片足を射抜き動きを止めていた。
「もうすぐシャクティたち【ガネーシャ・ファミリア】が来るから、さっさと終わらせるぞ」
「そうね!けど、自己紹介はやらせてもらうわ!」
「はぁ...勝手にしろ」
男はどこか諦めを含んだ表情で、アリーゼと呼ばれた彼女の自己紹介を促した。
そしてアリーゼは、自信満々に...というか若干ドヤ顔で自己紹介を始めた。
「弱気を助け、強きを挫く!たまにはどっちもこらしめる!差別も区別もない自由平等、全ては正なる天秤の赴くまま!」
アリーゼの言葉と共に、1人...また1人と彼女の下へ並ぶ少女たち。
エルフが、人間族が、獣人が、アリーゼの言葉にどこか誇らしげに頷いていたり、呆れながらも笑みを浮かべている。
「願うは秩序、想うは笑顔!その背に宿すは正義の剣と正義の翼!」
そしてハジメは理解した。
この世界は過去のトータスではなく、アイツが前世生きていた世界だと。
「私たちが【アストレア・ファミリア】よ!!」
「俺を含めるな!俺は【アルテミス・ファミリア】だ!」
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「弓人くんの...前世?」
「ああ、昔あいつが言っていた【オラリオ】っていう街に特徴が似てる」
最初に見た時に見た、あの巨大な建造物が『バベル』と言われるものなのだろう。
「じゃあ...あの人が前世の弓人くん?」
「恐らくな...にしても変わってなさすぎだろ...」
そんなことを言っていると、再び周囲にノイズが走り場面が変わる。
場面が変わると、【アストレア・ファミリア】の者たちはおらず、前世の弓人と猫の獣人の少女が街を歩いていた。
「アタランテ、避難者は全員無事だったか?」
「勿論、■■■■の方もその感じだと大丈夫そうだな」
「おう、相手含めて死者は0だ。
「ふふ、やはり汝は優しいな」
「そうか?」
アタランテが言ったはずの
その後も会話の中で何度か名前が出るが、全て聞き取ることができなかったため、合流した後からに直接聞けばいいと結論をつけていると
「それで、先日の襲撃で4度目となったが...奴らの目的は分かったのか?」
「ああ、シャクティの調べによると魔石製品に使われる『撃鉄装置』がなくなっていたらしい」
「撃鉄...それはたしか、魔石灯に使われる物では?」
「だな。魔石製品の殆どに使われる心臓部...『スイッチ』と思えば良い。...にしても何に使うんだか」
魔石灯...つまり明かりだろうか
そんな物に使う『スイッチ』を集めて何ができるのか、この世界の工業技術を知らないハジメと香織は話について行けていないでいると
「あ〜〜〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜っ!!」
なんとも情けない男の声が周囲に響いた。