ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

116 / 119

皆さんクリスマスに予定はあるでしょうか?
作者はターフに夢を賭ける予定があります



79星:彼の正義

 

『いやぁ、急に後ろからタックルされてさぁ〜。びっくりしちゃったよ』

 

 ハジメと香織は、あの男が神ということに疑いを持ってしまう。

 気弱そうな笑みを浮かべるこの男は、髪もボサボサで威厳も全くない。

 

『大丈夫ですか、神様?お怪我は?』

『大丈夫だよ、可愛い女の子。僕の財布を取り戻してくれてありがとね』

 

 アーディから財布を受け取ると、その神は自身の名を名乗った。

 

『俺はエレン。君たちは?そっちの子は【ガネーシャ・ファミリア】って聞こえたけど...』

 

 エレンと名乗る神に名を尋ねられ、アリーゼは自信満々に、リオンは少し考えてから自身の名を名乗る。

 

『私はアリーゼ・ローヴェル!【アストレア・ファミリア】の団長よ!』

『...リオンと名乗らせてもらっています。アリーゼと同じく【アストレア・ファミリア】です』

正義の女神(アストレア)...君たちもかい?』

 

 エレンが弓人?とアタランテに視線を向けると、2人は否定しながら自身の名と【ファミリア】を名乗った。

 

『いや、俺は【アルテミス・ファミリア】団長の■■■■だ』

『同じく【アルテミス・ファミリア】所属、副団長のアタランテだ』

『へぇ、そっちは純潔の女神(アルテミス)...なるほど、な〜るほど』

 

 そんな光景を見ていたハジメと香織は、彼等が言った【仕える神】に興味を示した。

 

「ハジメくん、弓人くん達が言ってた神様の名前って...」

「ガネーシャはインド神話、アストレアとアルテミスはギリシャ神話に出てくる神だな。けど『エレン』なんて神聞いたことねぇぞ」

 

 オタクであるハジメと、そんな彼と仲良くなるためにアニメや漫画の知識を蓄えた香織は『エレン』という神がいたか記憶を総動員させるが、どの神話にも該当しなかった。

 

 そんな2人を他所に、エレンは1人1人の顔を見てリオンに視線を止めた。

 

『エルフの君、面白いなぁ』

『私が...?』

『うん、潔癖で高潔。しかし確たる答えを持たない...そんな雛鳥のような君が、こんな時代に、どんな風に染まり【答え】を出すのか、興味が尽きないよ』

 

 悪意もなく、興味深く彼女を見るエレン。

 リオンはそんな視線に居心地悪くしていると、アリーゼがリオンを抱き寄せ男神を睨み始めた。

 

『なんだかその言い方、いやらしいわ!リオン、きっとこの神様も『フヒヒ』とか笑い出す変態よ!』

『あ、やめて。本気で傷つくからやめて!俺そーいうモブ神とは違うからぁん!』

『神様はみんなそう言いますよね!』

『ぐふぅ!ボーイッシュ元気っ子だと思ったら...さては君、天然だなぁ?』

 

 美少女達からの口撃に、エレンは涙目になりながら体をくの字に曲げる。

 そんな情けない姿を見て、リオンは肩透かしを受けていた。

 

『お前らその辺にしとけ、こんなんでも神様なんだから...』

『まったくだよ、もう少し俺に優しく...えっ待って、今こんなんって言った?』

『まぁいいじゃないですか、そんなこと』

『おっと良いのかい?それ以上俺をいじめると、良い歳した男神が公衆の面前で泣き叫ぶことになるよ?』

 

 少女たち以上に雑な扱いをする弓人?に、エレンは自分を人質にするという新しい脅し方をした。

 流石に男の号泣する姿という見苦しいものを見たくない弓人?はエレンに謝罪をする。

 

『すみません、謝るので泣くのだけはやめてください』

『なら...お詫びとして1つ俺の質問に答えてほしい』

『質問?』

 

 すると、エレンは先ほどまでの空気を霧散させ。その閉じていた目を薄く開き質問した。

 

『君にとって【正義】とは?』

『......なんで俺に聞くんですか?』

『そうだね...この中で、君だけが君なりの答えを見つけているから...かな』

 

 そんなエレンに対して、弓人?は頭を掻きながら質問に答え始めた。

 

『そうですね...俺にとっての【正義】は、【誰かの為に動くこと】...ですかね』

『なんで、そう思うんだい?』

『人間って...結局は自分本位な生き物じゃないですか。自分が楽をしたいため〜とか、自分だけでも生き残りたい〜とか』

 

 弓人?の言葉を、エレンは静かに聞く。アリーゼたちも、彼の言葉に聞き入っていた。

 

『そんな中でも、『誰かを愛したい』とか『誰かを守りたい、助けたい』とか考えれることって凄いことだと思うんですよね』

『へぇ...『愛したい』も、君にとっては凄いことなんだ』

『だって、『愛したい』ってその人と『一緒に生きたい』ってことじゃないですか。例えそれが偽善であったとしても、自分本位な生き物が他の人にそう思えるって凄くないですか?』

 

 そして、弓人?はまるで少年のような笑みを浮かべながら言った。

 

『まぁ...あれです、こいつらは『みんなの笑顔』を守る為に戦ってるので、俺は『こいつらの笑顔』を守るため戦います』

『なるほど...うん、参考になったよ。ありがとう...じゃあ、またね』

 

 そう言って離れていくエレン。その方向の先にはハジメと香織がいて、2人をすり抜ける直前、その男神は呟いた。

 

『彼のそれは、『繋がりを失いたくない』というものから来てる...もし、守りたい彼女たちから拒絶された時、彼はどうなっちゃうんだろうなぁ...』

 

 その言葉を聞いた瞬間、ハジメの脳裏には『あの光景』が浮かんだ。

 

―仲間が守れるなら、その仲間たちから拒絶されたとしても俺は構わない

 

 あの時の寂しそうな背中と何か関係があるのだろうか

 

 その答えは、この後見せつけられた光景で知ることになるが

 

 ハジメと香織...いや、弓人以外の全員がこの過去を見たことを後悔することになる。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。