ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか 作:クノスペ
ついに本編10話まで行きました。
実はこの作品はそこまで続ける気がなくやる気が無くなったら適当なタイミングで人知れず消えるつもりでした。
ですがこの作品を楽しんでくれている皆様のおかげでこうして続けることができています。
長ったらしくて申し訳ございません。それでは本編です。
『起きなさいオリオン。今ならまだ間に合うわ』
『早く起きるんだオリオン。手遅れになってしまうぞ。』
『私たちはいつだって貴方を見守ってる』
『私たちはいつだって汝を信じている』
『『さぁ、起きて友を助けるんだ』』
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水の流れる音がする。
吹き抜ける冷気が頬を撫でる。
体に鈍い痛みを覚えながら、俺の意識は覚醒していく。
「くそっ...近くにハジメはいないか...」
俺は周囲を見渡したが、人がいた痕跡は確認できなかった。
もしかしたらまだ流されている可能性を考え、所持品を確認した後、服が濡れていることも気にせず探索を始めた。サポーターから奪い取ったリュックには応急処置用の包帯、緑光石を加工して作ったランタン、休憩する際にクラスメイト全員に配るために用意していた、水筒と干し肉といった携帯食が入っていた。
よし、普通に食ってもいっても1週間ぐらいは持ちそうだ...
そして、川沿いに暫く進んでゆくと『あるもの』を発見した。
それは、地面に刻まれた魔法陣だった。
そして魔法陣の中心には燃えた後のように黒いシミが付いており消えて時間がそこまで経っていないのか煙が立ち昇っていた。
そんなものがある理由はただ一つ、ここに誰かがいたからである。
俺は周囲に何か反応が無いか意識を集中させた。すると、俺の索敵できる範囲ギリギリの位置に1つの反応があった。
それは何かを見ていた。
それは何かを狙っている。
急げ、手遅れになるぞ。
頭の中で警鐘が何度もなる。
胸騒ぎが収まらない。
1秒でも良い、早く辿り着いてくれ。
そうして辿り着いた先で俺の目に写っていたものは。
左腕を失い、夥しい量の血を流すハジメと、
ハジメの腕を貪る熊の魔物だった。
「っ!!!!ハジメエエエエエエエエエエエエ!!!!」
俺は叫びを上げ魔物に向かい矢を放った。しかし、反射的に叫んでしまったことが悪かった。
俺の声に反応した魔物は俺の方を向いたことで矢は魔物の額へ直撃した。
しかし、魔物の頭蓋骨は想像以上に硬く、矢は突き刺さることなく弾かれてしまった。
「ちっ!」
しくじった!そう思った俺は即座に短剣と包帯を取り出すとハジメと魔物の間に立った。
「ハジメ!これで腕を縛るんだ!」
「弓人...腕が...腕がぁぁぁ...」
「今は話してる余裕はない!お前は後ろの壁に『錬成』で穴を開けて入るんだ!」
「『錬成』...そうだ...『錬成』!『錬成』!!『れんせええええ』!!!」
ハジメは半狂乱になりながら壁に穴を開けていく。それを、確認した俺は、短剣を構え魔物と対峙する。
魔物は食事の邪魔をされたことに苛立ちを覚え、目の前の男を次の標的に定めた。
暫く睨み合いが続いた後、先に仕掛けたのは俺からであった。
「注意が必要な部位はあの長い爪...あの巨体...だが熊と同じ骨格なら急所も同じはず!」
俺は全速力で魔物に近づいていく。
魔物は決して目を離すことなく姿勢を低くして待ち構える。
「3...2...1...今だ!」
魔物は俺が肉薄するのに合わせてその長い爪を振り下ろす。
俺は爪が当たる直前に横に跳び紙一重で躱す。
その瞬間、剛風が吹き荒れ、俺の右腕に1本の爪痕がつき鮮血が噴き出す。
「何!?距離を見誤った!?...いや、固有の能力か...」
俺は目の前の魔物から距離を取り、何度か掌を閉じたり開いたりする。
「...よし、神経は繋がってる...まだいけるな」
掌の状態を確認するとともに、ハジメがいた場所を一瞬だけ目を向ける。
そこには人一人が這いつくばれば入れそうな穴が空いており、かなりの深さになっていた。
「今やるべきことはハジメの治療。コイツは撃退するだけで十分」
俺は再び、魔物に向かい走りだす。今度は左右に移動しながら近づいていく。魔物は変わらず姿勢を低くして待ち構える。
そして爪を振り下ろしてくると、俺は先程より大きく回避した。
再び剛風が吹き荒れるが、今度は回避することができた。
その瞬間、俺は魔物の眼前に飛びつき、短剣を魔物の右目に突き立てた。
「グルゥアアアアア!!!」
とてつもない痛みに絶叫とともに暴れ始める魔物。
俺はそのまま短剣から手を離しハジメが作ったであろう穴に向かって走り出す。そしてその穴に向かい頭から滑り込み入った。
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ランタンを取り出し、暫く匍匐前進で進んでいると、その先にはハジメがいた。
「っ!ハジメ!しっかりしろ!ハジメ!」
俺は無理矢理ハジメの隣に移動すると、声を掛けながら脈をはかる。
脈はある...錬成の多用による
ハジメが気を失っているうちにハジメの応急処置をしようと切断された左腕を見ると、そこには、切断された断面の肉が盛り上がって傷が塞いでいた。
「馬鹿な...いくらなんでも早すぎる...」
ハジメの腕に疑問を持っているとハジメの頬や口元に水滴が落ちてきた。
俺はもしやと考え、怪我のしていない左手でその水滴を溜め、そして口に含んだ。そしてそれを嚥下すると、魔物によってつけられた傷が修復され始めた。
「これは、もしかしてポーション?...いや、この回復量はエリクサーレベルだぞ...」
これは使える、そう考えた俺は水滴がハジメの口に入るようハジメの位置を動かすと。ハジメが起きるまで入り口に視線を向けて、外への警戒を強めた。