ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

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なぁ...読者の諸君...
作者はいつ絶望すると思う...?

何度もチェックした作品に誤字が見つかった時...
...違う

渾身の出来だと思ったものがあまり見られなかった時...
...違う

拙い文章のため、理解されず指摘された時...
...違う!!!

...話のネタが切れた時さ...


10星:奈落の底で光る星 【下弦】

 

 

 暫くしていると、ハジメが意識を取り戻したのか、うめき声とともに体を動かし始めた。

 

「うぅ...ここは...」

「よう、気が付いたか。ハジメ」

「えっ...弓人...?僕は...って痛!?」

「気をつけろ、今お前は血を流しすぎてる。いつ貧血で倒れてもおかしくないんだ。」

 

 ハジメは自身の作った穴の低い天井に頭を打ち、『錬成』によって天井を高くしようと手を伸ばしたが、片腕がないことに気づいた。

 

「えっ...?なんで...腕が...」

「...っすまなかった...俺が...もっと早く辿り着いてたら...」

「大丈夫だよ...弓人が助けに来てくれただけで僕は...」

 

 俺の謝罪に対して、返事をしようとしたハジメに突如、無くなったはずの左腕から激痛が生じた。

 

「痛っ...ぐっ...があ゛ぁ゛あ゛!」

「ハジメ!?くそっ!幻肢痛ってやつか...」

 

 無くなったはずの部位から痛みが出るとされる幻肢痛、本来は鏡などを使い痛みを和らげたり、リハビリをするのだがそんな物は存在しない。

 医療知識に乏しい俺が頭を悩ませていると、痛みがマシになったのかハジメが話しかけてきた。

 

「なんで腕が?...血だって止まってるし..」

「腕が治ってるのと血が止まってる理由は恐らく、そこから落ちてる水滴だ」

「これが....もしかして....」

 

 何かを思いついたハジメは、ふらつきながら水滴が落ちてくる方向へ向かって錬成し始めた。

 まるで花の香りに誘われる虫のように、何かに取り憑かれたようにゆっくりと、しかし確実に向かっていく。それに対して俺は何も言わずついていく。

 

 錬成して、魔力が尽きそうになると水滴を飲む。

 これをどれだけ繰り返しただろうか。

 水滴だったものが小さいながら水流へと変わり始めた頃

 石壁と同化するように『それ』はあった。

 

「こ...これは...」

「おそらく...こいつが水源だな...」

 

 それは、バスケットボールほどの大きさのある青い鉱石だった。

 それは、アクアマリンの青をもっと濃くして発光させた、言葉で表現するならばそのような言葉でしか表せない美しい雰囲気の石だった。

 その神秘的な光景に俺たちは、思わず息を呑んだ。

 そしてハジメは、まるで惹きつけられるように、手を伸ばし直接口をつけた。

 

「っておい!水が大丈夫だったからってこれが大丈夫だってまだ決まった訳じゃないんだぞ!?」

「ご、ごめん...けどやっぱりだ...さっきまであった痛みや倦怠感が無くなっている...」

 

 この鉱石の名は【神結晶】

 大地の魔力が、数千年という時間を掛け結晶化した、歴史上でも伝説とされた秘宝である。

 そしてこれから採取できる液体を【神水】といい、どのような怪我や病気を治すことができ、不死の霊薬ともされている。

 

「これがあれば、とりあえず死ぬことはない...か...」

「ハジメ、ここを錬成して貰えるか?ここを仮拠点にしたい。」

「う、うん...分かった」

 

 こうしてハジメの錬成のお陰もあり、簡易的な休憩スペースが完成した。

 

「ハジメ、今俺たちが取れる行動は簡単に分ければ3つだ」

「1つ目は、このまま助けを待つ...けどこれは一番無しだ。理由は外だと俺たちは死亡扱いで報告されるだろう...助けが来る確率は絶望的だ。」

 

 それに対して、ハジメは無言で頷く。

 

「2つ目は、2人で共に脱出のため行動する。出来たらこれが一番なんだが...おすすめはしないな。」

「それは...僕が弱いからだよね...」

「...あぁ、そうだ...ここの魔物はベヒモスと比較にならない強さだ。お前を守りながらはおそらく無理だ。」

 

 俺はハジメの俯きながら吐き出した言葉に、否定せず肯定した。守ってやるとは言葉にするだけなら簡単だが、それを実行できる力が俺にはない。

 

「それで...最後の行動は...?」

「3つ目、これが一番現実的だ。それはハジメにはここで残ってもらい、俺が脱出のルートを探す。そしてルートを確保できたら一度戻り、速攻で脱出する。」

「嫌だ!!!お願い!!!見捨てないで!!!」

 

 俺が3つ目の提案した瞬間、ハジメはこの世の終わりのような顔をして必死に懇願し始めた。

 当然であろう、クラスメイトの裏切りにより、腕を失い、死に直面したのだ。救ってくれた友が帰ってくるとはいえ、一時の間、再び孤独になることは彼には耐えられなかった。

 

「落ち着け!見捨るわけないだろ!脱出ルートが確保できたらすぐに戻ってくる!」

「でも!!!でも!!!!」

「甘ったれるな!!!!今は選んでいる時間がねぇんだよ!!!!」

「ひっ...」

「俺だって友達をこんな所に置き去りにしたくねぇよ!!けどな!!お前を守れるほど俺は強くねぇんだよ!!!」

「......僕が弓人に守られなくて良いくらい強くなれば良いんだよね....」

「何?」

「準備して欲しいものがあるんだ...一つ...僕が強くなる方法がある...」

 

 

 


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