ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか 作:クノスペ
俺は今、息を潜め岩陰に隠れている。
目の先には尾を二つ持つ狼のような魔物だ。
魔物は俺の存在に気づいていない。俺は矢を1本取り出し弓を引き絞る。
「ストック解放」
「解放数2、2節詠唱破棄」
「【オリオン・オルコス】」
一閃
白く輝く1本の矢は、魔物の首に吸い込まれ、そこから上を消失させた。
今行ったものが、俺のスキルの1つ【
俺は仕留めた魔物を川まで持っていくとハジメに新しく作ってもらった短剣を使い皮を剥ぎ解体していく。
そして、爪や皮、少量の肉を持ち、残りを廃棄して仮拠点へと戻っていった。
「ハジメ、調子はどうだ?」
「おかえり、うん、やっと形になってきたよ」
ハジメが言った強くなれる方法、それは現代兵器の作成だった。
錬成の訓練を行い、練度を高める。言葉にすれば簡単だが、ハジメは片腕だ。
現代兵器のような細かいパーツの多い武器を作るには、1ミリのズレも許されない精密さと、集中力が必要だ。
最初の頃は何度も失敗して、俺が鉱石の採集に出かけていた。
鉱石の知識のない俺は、洞窟内にある石を片っ端から集めた。
そのため、ただの石などがほとんどだったが、ハジメの鍛錬の賜物か、【鉱物系鑑定】の技能を手に入れることができた。
そして、この洞窟内で最も硬度のある『タウル鉱石』で構築した銃身と弾丸。
そして、燃焼すると爆発する性質を持つ『燃焼石』を粉末状にして圧縮したことにより。
ハジメがこの洞窟で生き残るための武器が完成した。
「これが僕の今作れる最高傑作...大型リボルバー『ドンナー』だよ。ありがとう、弓人がいてくれたからこれを作ることができた。」
「気にするな、俺もここでならステイタスを上げることが出来たからな、修練として丁度いい」
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三星弓人 Lv.5
力: I : 0 → I : 32
耐久: I : 0 → I : 15
器用: I : 0 → I : 23
俊敏: I : 0 → I : 24
魔力: I : 0 → I : 18
頑健: E
対魔力: G
千里眼: H
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そう、王宮の訓練では1度も増えることの無かった俺のステイタスがついに上昇したのだ。だがそれは、Lv5の俺のステイタスが上がるほどの【
「なるほどな、確かにこのデカさなら破壊力には期待できる...けど、その分反動がデカいはずだ。」
「うん、恐らく今の僕じゃあ使いこなせない。だからもう一つの方法を使う。」
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今、ハジメの目の前には俺が獲って来た魔物の肉と、神水がある。
ハジメは、魔物の肉を食うつもりだ。
当然俺は止めた、それは余りにも分の悪い賭けだからだ。
まず、魔物の肉には毒がある。文献によると喰らったものは皆体が破壊され死亡している。ハジメはその毒を神水によって中和するつもりのようだ。
しかし、毒が神水の回復力を上回っていたらアウト、仮に回復力が勝ったとしても強くならなかったら意味がない、そして一番最悪なのは毒と回復が同時に発生することだ。
「ハジメ...本当にやるんだな?」
「うん...馬鹿なことだとは分かってる...けど...これしか道がないんだ...」
「.....はぁ〜、分かったよ...この頑固者」
「ははは...約束するよ、絶対に死なないって」
意を決して、肉にかぶりつくハジメ、何度か吐き出しそうになるが神水で無理やり流し込んでいく。
暫くして、『それ』は訪れた。
「うっ!?あぁあ!!!があ゛あ゛!!!」
「くそっ!足りなかったか!?ハジメ!これを飲むんだ!」
俺は即座に、石で作られた試験管に入った神水をハジメに飲ませる。
飲ませた瞬間は、痛みが引いたのか落ち着くがすぐに痛みで暴れ始める。
ハジメの体から何かが壊れる音がする。
その直後神水によって修復される。
くそっ!よりによって1番のはずれを引きやがった!
「ハジメ!意識をしっかり保つんだ!じゃないと先に心が死ぬぞ!」
「あ゛あ゛ぁ゛が!!!ぐ、ぎぎ、があぁぁ!!」
「お前はこれを食ってでも果たしたいことがあるんだろ!?死なねぇって約束しただろうが!!!」
俺は懸命に声をかける、少しでもハジメの意識が頭から離れられる様に
「僕は...りたい...」
「何だ!エリクサーが欲しいのか!?」
「僕は!日本に帰りたい!!!」
「あぁ!!!帰ろう!!!日本に!!!」
何分だろうか...何時間だろうか...
痛みにより、叫びのたうち回っていたハジメの動きがだんだんと小さくなって来た。
「っ!?ハジメ!?死ぬな!ハジメ!」
「だい...じょうぶ...もう...痛くない...」
毒の破壊と神水の再生の勝負は再生の勝利だったらしい。
そして、ハジメの体にはとてつもない変化が起きていた。
彼の日本人特有の黒髪は過剰なストレスにより白髪へと
彼の肉体はひと回り大きく筋肉質へと
そして、洞窟にいる魔物のように赤黒い血管のような線が浮き出ていた。
「良かった...生きてて本当に良かった...」
「ごめん...でも、弓人が声を掛けてくれてたから...僕は生きてる」
共に生きていたことに喜びを覚えながら
当初の目的だった、ハジメのステータスの変化を確認するため、ハジメのステータスカードを見た。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:8
天職:錬成師
筋力:100
体力:300
耐性:100
敏捷:200
魔力:300
魔耐:300
技能:錬成・魔力操作・胃酸強化・纏雷・言語理解
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「こいつは...想像以上の結果だな...」
「うん...でもこれなら、僕も戦える」
ステータスの予想以上の上昇に驚きながら、俺たちは確信する。
これならいける
「ステータスどころか技能も増えてるな、なんだ?この魔力操作は?」
「もしかして、今感じてるこの変な感覚かも...ちょっと使ってみるね」
ハジメはそう言うと、目を閉じて意識を集中させる。すると、ハジメの体に再び赤黒い線が浮かび上がって来た。
「おっ、おっ、おぉ~?」
「なんだよ...その間抜けな声は...」
ハジメの何とも締まらない声に呆れていると、彼は地面に右手をついた。
すると詠唱をしてないのにも関わらず地面が盛り上がってきた。
「うお!ハジメ、お前いつの間に詠唱破棄なんてできるようになったんだ?」
「恐らく...これが魔力操作の力なんだと思う...」
ハジメは他に、自身に電気を纏わりつかせる『纏雷』を披露してくれた。
「確かにこの方法は良いが...魔物の肉を食うたびにあんなのになるのは...」
「それは大丈夫だと思う、ここにある『胃酸強化』のおかげで、ほらっ」
ハジメはいきなりそんなことを言うと、手元にあった肉を食べ始めた。
俺は急いで神水を取り出し、いつでも対処できるように構えた。
10秒...1分...10分...特にハジメに変化はない
「ね?大丈夫で...って痛ぁ!」
「こんの、馬鹿野郎!石の時といいもう少し警戒しろ!」
「ご...ごめん...」
心配させたハジメに拳骨を食らわせて怒ると、流石に悪いと思ったのか、申し訳なさそうに謝罪して来た。
「まぁ...これで魔物の肉を食っても大丈夫って分かったんだ。また俺が新しい魔物を獲ってくるから、少し体を休ませてろ」
「待って弓人!次からは僕に...いや、俺にやらせてくれ!」
「ハジメ...お前...」
「もう、守られてるだけの『南雲ハジメ』は嫌なんだ!だから...やらせてくれ!」
ハジメは、真っ直ぐな目で俺を見つめてくる。そこには、決して譲らない強い意志を感じさせた。
「...分かったよ、けど!暫くは俺の指示に従って貰うし、ちょっとでもヤバいと思ったらすぐに横槍を入れる!良いな!」
「っ!ああっ!」
今回は、ようやく主人公のステイタス強化が入りました。
個人的なイメージなのですが
ハジメたちが落ちた洞窟ってダンまちのダンジョンだと深層レベルだと思うので、今回からステイタス強化を入れ始めました。
実際は違うかもしれませんが、自分の解釈だとこうなのでこのまま行こうと思います。