ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

21 / 119
13星:脱出のタイムリミット

 

 これは、ハジメが爪熊に勝利し、仮拠点に戻ってきた時

 

「ハジメ、俺たちはこれから本格的な脱出をするわけだが」

「どうした急に?」

「まぁ聞け、それにあたって2つ問題がある...1つ目は、()の食糧問題だ...」

「あぁ...なるほどな...」

 

 俺の発言に、ハジメは納得する

 

「俺はハジメと違って魔物の肉は食えない、今はサポーターが持ってたリュックの中にあった携帯食糧で飢えを誤魔化してるが、それも時間の問題だ」

「あと何日ぐらい待つんだ?」

「神水のお陰で餓死はしないと思うが...空腹感で戦闘に弊害を出したくない...そうだな、どれだけ我慢しても...『2週間』それが俺のタイムリミットだ」

「2週間以内で100層を登るのか...けど遠征の時はあのペースで20層は行ったんだ、急げば何とかなるか...?」

 

 ハジメはぶつぶつと脱出までのペース配分を考えている。だが、その計画は無駄なものとなった。

 

「それで2つ目の問題は、恐らく...ここより上には登れない」

「は!?なんでだよ!」

 

 ハジメは声を荒げる、当然だろう、俺の発言はある意味『帰れない』と言ったようにも聞こえるからだ

 

「落ち着け、まだ話は終わってない」

「これが落ち着いていられるかよ!だって...帰れないんだぞ!」

「最後まで話を聞け、俺が言ったのは上には登れないだけで帰れないとは言ってない」

「なら...どうやって帰るんだよ...」

「さらに下へ行く」

「下に...?」

「あぁ、鉱石を集めてた時や、お前が訓練で魔物と戦っていた時、俺は脱出口がないか探していた。そしてあったのは、下の層へと行く道だけだった」

 

 俺の説明を聞いていたハジメは、1つ疑問を口にした

 

「下にしか行けないことは分かった...けど、何でそれが脱出に繋がるんだ?」

()()()だ。ここが攻略されることを前提としたものであるなら...外へ出るための魔法陣が最下層にあるはずだ」

「その根拠は?」

「七大迷宮は神代に作られたと言われている。作られた物であるなら作成者が外へ出るための方法もあるはずだ」

「なるほどな...待てよ、弓人!俺の『錬成』ならどうだ!壁を階段状にして登れば...」

「俺も考えたが多分無理だな。わざわざ上への階段を作らなかった奴がそれを対策してないわけがない」

「ちっ!」

 

 『錬成』に可能性を持ったが、一瞬で却下され苛立ちを抑えられないハジメ

 俺も正直に言って腹が立つ。此処の製作者の性格の悪さに

 

「はぁ...分かったよ、それしか道が無いんなら仕方ねぇ」

「最下層がどれほど深いかなんて想像できない。だから、必要最低限の攻略と行こう」

「了解だ」

「頼りにしてるぜ、ハジメ」

「こっちの台詞だよ、弓人」

 

 互いに拳を合わせ仮拠点から出る。

 2人だけの、迷宮攻略が始まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 暗い階段を下る。

 壁に緑光石が無いため、光源は手元のランタンだけだ。

 このような暗闇の中、ランタンといった光源を使うのは悪手だ。格好の獲物になってしまう。けれど、それ以上に暗闇で戦闘を行う方が分が悪いと感じたため俺たちは光を灯した。

 

 暫く歩みを進めると、暗闇で何かが光った。

 

「ハジメ!今すぐ横に飛べ!」

 

 俺が叫ぶと、ハジメは反射的に横へ飛んだ。

 ランタンを前に向けると、そこにはトカゲの魔物が壁に貼り付いていた。

 

「光の正体はこいつか!」

「ぐっ...!腕が...」

「ハジメ!?」

 

 ハジメの方を見ると、彼の左腕がまるで石のようになっていた。乾いた音を出しながら、その侵食は肩の方へと進んでいく。

 

「急いで神水を飲め!こいつは俺に任せろ!」

「す...すまん...」

 

 俺はハジメに指示を飛ばしトカゲと対峙する。くそ...まだ咄嗟の判断は出来てねぇか...

 トカゲは俺の方に目を向ける、恐らく石化の能力を使うつもりなのだろう

 俺は手に持っているランタンを全力でトカゲの顔に投げつける

 とてつもない速度で襲ってくるランタンに、トカゲは石化能力を中断し壁を這って回避する。そして今度こそ能力を使おうと目を見開くが、その時には、俺は既に弓矢を構えていた。

 

「馬鹿の一つ覚えみたいに使ってくれてありがとよ」

 

 一閃

 放たれた2()()の矢は、寸分の狂いもなく、トカゲの両目を撃ち抜いた。

 光を奪われたトカゲは、突如発生した痛みにより壁から落ちもがいていた。

 俺はその隙を見逃さず、即座に近づきナイフを額に突き立てトドメを刺した。

 

「ふぅ...ハジメ!腕は大丈夫か!」

「あ、あぁ...神水を飲んだら元に戻った...」

「それは良かった...あぁそうだ、咄嗟にランタンぶん投げちまったから新しいのを作って...ハジメ?」

「何も...出来なかった...」

「それは仕方ねぇよ、咄嗟の出来事だったんだしよ」

「けど!警戒していたらもう少し動けたはずだ!」

「実践経験が足りてないだけだ。次第に良くなる」

「こんなんじゃあ...()はまた足でまといだ...」

 

 口調と一人称が戻ってる...完全に自信を無くしてやがる...仕方ねぇ...

 

「もっと...もっと強くならないと...」

「おい、ハジメ」

「もっと強い武器を...強い魔物の肉を...」

「はぁ...この馬鹿野郎!」

「いだだだだだだだ!!!!」

 

 どんどん悪い方向へ傾いていったハジメにアイアンクローを決める

 

「な...何すんだよ!」

「あのなぁ...ハジメ、お前は強いよ」

「え?」

「爪熊を完封できてる時点でお前はクラスの中で1番強いんじゃねぇのか?」

「けど...さっき僕は...」

「それは実践経験がねぇからだろ?なら仕方ねぇよ」

「弓人...」

「無いもんは無い!それでいいじゃねぇか」

「ごめん...」

「謝んなよ、お前は何も悪いことしちゃいない、それより!こいつ食って強くなりな!」

「うん!」

 

 たく...手間かけさせやがってよ...

 

 

 

 

 

「あと口調戻ってんぞ」

「え...?.......あ゛ぁ゛!忘れろ!!!!」

 

==========================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:23

天職:錬成師

筋力:450

体力:550

耐性:350

敏捷:550

魔力:500

魔耐:500

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・風爪・夜目・気配感知・石化耐性・言語理解

==========================

==========================

 

三星弓人 Lv.5

 

  力: I : 87 → I : 90

 耐久: I : 46 → I : 46

 器用: I : 76 → I : 80

 俊敏: I : 81 → I : 82

 魔力: I : 65 → I : 65

 頑健: E

対魔力: G

千里眼: H

 

==========================





ここのハジメくんは、弓人がいるお陰もあり
戦術を考えたり連携をとるのは得意ですが
孤独で極限状態では無かったため
生への執着や魔物への殺意がそこまで無いため
咄嗟の判断といった危機察知能力、バーサーカー度合いが原作ほど高くないです

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。