ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

28 / 119
17.5星:クラスメイトside 悪夢との対峙

 

 これは、三星達が蠍との戦いをしていた時

 

 勇者一行は、【オルクス大迷宮】に再び挑戦していた。

 しかし、参加していたものは、勇者一行、小悪党組、永山重吾を率いる5人組のパーティのみであった。

 

 理由は当然、2人の死がクラスメイト達の心に深い傷を残した。

 どこか、軽くみていた『死』を実感したことにより、戦争への不参加を選ぶ者達が大半であった。

 

 当然、聖教教会関係者はいい顔をしなかった。実戦を繰り返し、時が経てばまた戦えるだろうと、毎日のようにやんわり復帰を促してくる。

 

 しかし、それに猛然と抗議した者がいた。畑山先生だ。

 

 彼女は、遠征には参加していなかった。作農師という特殊かつ希少な天職のため、実戦訓練するよりも、教会側としては農地開拓の方に力を入れて欲しからだ。彼女1人で、糧食問題は解決する可能性が高いからだ。

 

 そんな畑山先生は2人の死亡を知るとショックのあまり寝込んでしまった。

 自分が安全圏にいる間に、生徒が死んでしまったという事実に

 彼と約束した、全員と日本に帰ることができなくなったということに

 責任感の強い彼女は強いショックを受けたのだ

 

 だからこそ、戦えないという生徒をこれ以上戦場に送り出すことなど断じて許せなかった。

 

 愛子の天職は、この世界の食料関係を一変させる可能性がある。

 その畑山先生が、戦闘訓練の強制に抗議したことに、関係の悪化を良しとしなかった教会側は、彼女の抗議を受け入れた。

 

 結果、自ら戦闘訓練を望んだ勇者パーティーと小悪党組、永山重吾のパーティーのみが訓練を継続することになった。そんな彼等は、再び訓練を兼ねて【オルクス大迷宮】に挑むことになったのだ。今回もメルド団長と数人のサポーター役の騎士が付き添っている。

 

 

 今日で迷宮攻略6日目。

 

 

 現在の階層は60層

 確認されている最高到達階数まで後5層

 

 しかし、勇者達は現在、立ち往生していた。

 正確には先へ行けないのではなく、何時かの悪夢を思い出して思わず立ち止まってしまった。

 

 彼等の目の前には何時かのものとは異なるが同じような断崖絶壁が広がっていた。次の階層へ行くには崖にかかった吊り橋を進まなければならない。それ自体は問題ないが、思い出してしまう。

 特に、白崎と八重樫は奈落へと続いているかのような崖下の闇をジッと見つめたまま動かない。

 

「雫ちゃん...多分そろそろだよね...」

「えぇ...香織、私も覚悟を決めたわ」

 

 それは、この先へと進む覚悟を

 それは、必ず2人を助ける覚悟を

 

 けれど、変わらず空気の読めない者が横槍を入れる。

 

「香織......君の優しいところ、俺は好きだ。でも、クラスメイトの死に、何時までも囚われていちゃいけない! 前へ進むんだ。きっと、南雲もそれを望んでいる!」

 

 そう、天之河である。

 彼の頭の中では、白崎がいつも気にかけていた南雲が死んだことを嘆いていると思ったらしい。

 因みに八重樫の方は、部屋から出た時点で三星の死を乗り越えたと思っている。

 

「香織、大丈夫だ!俺が傍にいる。俺は死んだりしない。もう誰も死なせはしない。香織を悲しませたりしないと約束するよ」

 

 いつもどおり格好だけの台詞を吐いている勇者を、八重樫は止めず無視した。

 覚悟は決めた。けれど、他の人間を気にするほどの余裕は彼女には無かった。

 それを感じた白崎は、適当に話を合わせて勇者を前線へ戻した。

 

 その後、谷口とその親友の中村が励ましに来たり

 谷口が暴走して中村がそれを諌めたりしながら先へ進む。

 

 

 遂に、歴代最高到達階層である65層にたどり着いた。

 

「気を引き締めろ!ここのマップは不完全だ。何が起こるかわからんからな!」

 

 付き添いのメルド団長の声が響く。光輝達は表情を引き締め未知の領域に足を踏み入れた。

 

 しばらく進むと、大きな広間に出た。何となく嫌な予感がする一同。

 

 その予感は的中した。広間に侵入すると同時に、部屋の中央に魔法陣が浮かび上る。赤黒い脈動する魔法陣。そして、とても見覚えのある魔法陣だった。

 

「ま、まさか……アイツなのか!?」

「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」

「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。気を引き締めろ!退路の確保を忘れるな!」

 

 驚愕の表情を浮かべる一行に、険しい表情をしながらも冷静に答えるメルド団長。いざという時のため退路の確保の指示に従うサポーター達。しかし、

 

「メルドさん。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ! もう負けはしない! 必ず勝ってみせます!」

「へっ、その通りだぜ。何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」

 

 勇者達の解答に、メルド団長は肩を竦め、確かに今の彼等の実力なら大丈夫だろうと、同じく不敵な笑みを浮かべる。

 

「グゥガァアアア!!!」

 

 そして、あの時の悪夢を生み出した者が咆哮する。

 ベヒモスは、対峙する者たちへ殺意に満ちた目を向ける。

 緊張が走る中、毅然とした表情で睨み返す2人の少女

 

「もう誰も奪わせない。あなたを踏み越えて、私は彼のもとへ行く」

「あなたを殺して...私は彼を助ける!」

 

 今、過去を乗り越える戦いが始まった。

 

 





この後の戦闘描写は原作とほとんど変わらない気がするので
割愛して、主人公サイドに戻します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。