ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

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いつも感想、評価、誤字脱字指摘ありがとうございます

私事で申し訳ございませんが、リアルな方で忙しくなってきたので
投稿ペースが更に落ちる可能性があります。

いつもこの作品を見てくれている皆様に深くお詫び申し上げます。

本編です


20星:女神の無垢な加護【下弦】

 

 淡い光が、俺の体を包む。

 月の光が、祝福するかのように。

 体の奥底から、力が湧き上がる。

 頭はどこまでも冷静に、脳が冴え渡る。

 ヒュドラに向けて、俺は地を蹴る。

 今度こそ、約束を果たすために。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「くそっ!近づけねぇ!」

「.....受け止めるだけで...精一杯...!」

 

 現在ハジメとユエは、攻めあぐねていた。

 新たに生えてきた頭は、7本の時と比にならない強さを持っている。

 無尽蔵に放たれる光弾により受けに回され、隙を付き、ドンナーの弾丸を放ってもかすり傷にしかならない。

 シュラーゲンを使おうにも、ヒュドラはその身で受けた経験からハジメに使わせまいと更に弾幕を張る。

 ユエも攻撃をしようにも、弾幕を寄せ付けない様受け止めるので精一杯の様だ。

 ユエの魔力は、ハジメの血を吸う事でどうにかなるが、ハジメの方は別だ。

 神水は弓人の回復にありったけ使ってしまったため。体力と魔力の回復ができない。

 

 そして、その時が来てしまった。

 

「がっ!?」

「ハジメ!?」

「大丈夫だ!掠っただけだ!」

 

 ハジメの右目尻を光弾が掠めた

 血が流れ込み、右目が赤く霞む

 その結果、遠近感が狂い被弾が増えてしまい、ハジメは距離を取るため後方へと跳躍する

 しかし、それを予測していたと言わんばかりに、ヒュドラは口を開け、極光を溜めていた。

 

「しま...」

 

 弓人を一撃で戦闘不能にした極光。

 回避は不可能。

 ユエは弾幕の処理で手一杯。

 ハジメはせめてユエだけでもと、背中に手を伸ばそうとした瞬間

 

 一筋の閃光が横切った。

 

「お前はさっさと...寝てろおおおおおおおおおお!!!!!」

「弓人!?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「お前はさっさと...寝てろおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 俺は、ヒュドラの目の前へと飛び出すと。ヒュドラの額を全力で殴り抜いた。

 不意の攻撃に反応できなかったヒュドラは、地面へ顔を突っ込み、口内に溜め込んだ極光は放たれる事なく、ヒュドラの体内で爆発した

 

魔力暴発(イグニス・ファトゥス)

 体内で行き場を失った魔力が、暴走し爆発する現象。それが今起きたのだ

 口内を自らの光で焼いたヒュドラは、絶叫を上げ暴れ回る

 

 俺はヒュドラが暴れている間に、ハジメたちの方へ跳ぶ

 

「すまん!気を失ってた!」

「それより弓人!お前傷は大丈夫なのか!?」

「あぁ!お前たちが神水を飲ませてくれたんだろ?おかげでもう動ける!」

「.....それより...ユミト...なんで光ってる?」

「それはなユエ...偉大な男とは輝いて見えるものだからだ」

「お前...ふざけてる場合じゃねぇだろ...」

 

 ハジメは呆れているが、笑みが浮かんでいる。どうやら2人には、かなり心配させた様だ。

 

「こうして起きたのはいいが、この状態もそこまで持たない...ハジメ、あいつに勝てるプランはあるか?」

「...なんで俺に聞くんだ?」

「そんなん決まってるだろ、こういう時はお前を頼った方が良いからな。な?ユエ」

「...ん、ハジメに任せれば安心」

「お前ら...あぁ、あるぜ!とっておきのプランが!」

 

 俺たちは、ハジメから作戦を聞き、開始するために動き始めた。

 

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『いいか?この作戦の肝はユエだ。ユエ、お前にドンナーを渡す。こいつでヒュドラの気を引いて、俺の合図で蒼天を使ってくれ』

『...ん!』

『弓人、お前はユエを背負って全力で回避に専念してくれ』

『了解した...ハジメ、お前は?』

『俺は...下準備だ』

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 俺はユエを背負うと、ヒュドラの前へ再び立ち塞がった

 ヒュドラは、極光の妨害を行った俺に対して憎悪に満ちた目を向けており喉が焼けたせいで、しゃがれた咆哮と共に弾幕を放ってきた

 

 1つ1つの光弾を、紙一重で回避する

 ただ回避すれば良いだけではない。ユエがヒュドラに向けてドンナーを向けれる様に、ハジメの方へヒュドラが意識を向けない様に、冷静に対処する

 ユエはヒュドラに向けて、ドンナーを発砲する。ヒュドラは、弾丸を煩わしそうに頭を振って回避した

 

 この攻防が終わりを迎えるのには、そう時間は掛からなかった

 ハジメからの『念話』が俺たちに届く

 

(準備完了だ!ヒュドラから離れてくれ!)

 

 ハジメの指示に反応し、後方へと跳躍する

 その瞬間、天井に強烈な爆発と衝撃が発生した

 崩落する天井は、落下の速度により勢いを増しヒュドラへと落ちてゆく

 そして、ヒュドラに落とした岩盤を更に錬成させ拘束具へと変えてゆく

 身動きが取れず、もがくヒュドラに最後の仕上げと焼夷手榴弾の入ったポーチを放り投げ、全力で叫ぶ

 

「ユエ!!!今だ!!!」

「んっ!『蒼天』!」

 

 青白い太陽が出現し、身動きの取れないヒュドラを融解させていく。中に放り込まれた爆薬の類も連鎖して爆発し、ヒュドラの硬い装甲を貫き致命傷を与えた

 

「グゥルアアアア!!!」

 

 ヒュドラは断末魔の絶叫と共に、光弾を乱れ撃つ

 壁が撃ち崩されるが、ハジメが錬成で片っ端から修復し妨害してゆく

 極光は自身の喉が焼けてしまっており撃つことができない

 叫び声が小さくなっていき、完全に沈黙した

 

「ハジメ...」

「今度こそ大丈夫なはずだ...『気配感知』に反応はない...」

「......お疲れ様」

 

 俺はユエを下ろすと共に、体の輝きを失っていき...そして大の字に倒れ込んだ

 

「あ゛〜!!!しんど!!!」

「俺も...もう限界だ...」

「......疲れた......」

 

 2人もその場にへたり込んでしまう

 どうやら動くのには、少し時間が必要そうだ

 

 

 

 

 

 

 

 ありがとう...君のお陰で守れたよ

 

 アルテミス

 

 

 


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