ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

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23星:旅立ちとランクアップ

 

 オスカー・オルクスの住居を拠点にしてから2ヶ月ほど経過した

 現在、俺とハジメは武器を持たず対峙している。

 

「それじゃあ、この弾丸が地面に落ちたら開始だぞ」

「あぁ、技能や魔法は禁止、勝敗はいつも通り生殺与奪の権を先に手に入れた方だ」

 

 短い掛け合いを済ませると、ハジメは右手に持っていた弾丸を指で弾く。弾かれた弾丸は回転しながら上へと跳び、次第に地面へ落ちて行く。

 

 そして、弾丸が地面へと落ちた瞬間。ハジメは俺の方へと飛び出した。

 

 一瞬で目の前へ近づき俺に一撃を加えようとする。だが、それより俺の拳がハジメの腹へと突き刺さった。

 

「かはっ...」

「いくら速くてもお前のは直線的すぎる。何度も戦ってたら猿でも要領は掴めるぞ」

 

 拳を振り抜いたことでハジメは後方へ飛ばされる。肺の中の空気が全て吐き出すことになり、ハジメは膝を突き咳き込む。

 俺は追撃を加えるため、ハジメに近づき顔面を蹴り上げる。それをハジメは地面を転がり紙一重で回避する。

 ハジメは立ち上がり、()()で俺の頬を殴り飛ばす。口全体に血の味が広がっていく。

 

「ぶほっ!」

「どうだ、俺の作った義手は。効くだろ」

「いっつ〜...お前!それは卑怯だろ!」

 

 ハジメの失った左腕には、オスカー・オルクスの工房にあった希少な鉱石を大量に使った義手を装着している。そこにハジメが『生成魔法』で様々な改造を施したことで国宝級アーティファクトとなっている

 

 俺は文句を言っているが正直、そこまで卑怯だとは思っていない

 自身の持てる部分で最大の攻撃をすることは当然のことだからだ

 

 暫く体術のみの攻防が続いていく

 すると、ハジメが右手で俺の右手首を掴んだ。

 

 その瞬間、電撃が俺を襲った。

 

「この野郎...『纏雷』使ったな...」

「なんのことかな?俺は掴んでるだけだぜ」

「そうかそうか...ならしっかり掴んでてくれよぉ!」

 

 俺は手首を捻り、ハジメの右腕を掴み返す。そして、全力でハジメを地面に叩きつけた

 思わぬ反撃に、ハジメは受け身を取れず。そのまま気を失ったらしい。

 

「ふん!ざまぁみろ!」

「......ユミト、やりすぎ」

「うっ...でもよぉ、ハジメが反則したから...」

「......言い訳、め!」

「分かった!分かったから!」

 

 こうして観戦していたユエから説教を受けていると、気を失っていたハジメが目を覚ました。

 

「いててて...なんで『纏雷』使ったのにびくともしねぇんだよ...」

「やっぱり使ってんじゃねぇか!」

「.....ハジメも、め!」

「うっ...すまん...」

 

 こうして2人ともユエからの説教を受け。拠点へと戻っていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なぁハジメ、そのモノクルはどうしたんだ?」

「これか?これはな...」

 

 ハジメの右目に、普段着けていないモノクルがあったため聞いてみると、前回ヒュドラとの戦闘で右目尻を光弾が掠め、ヒュドラの毒の影響で右目の視力が落ちてしまったため使ったらしい。

 その際、ただ眼鏡を作るだけなのも芸がないため、神結晶を加工して、『魔力感知』と『先読み』を付与した物となっている。

 

「こいつを使えば魔物の核や使う魔法の属性が見えるから戦闘がかなり楽になる」

「それは良いんだが...『白髪』『義手』『モノクル』って属性盛り沢山だな」

「ぐふぅっ!」

 

 こうして俺の何気ない言葉がハジメを傷つけたりしながら

 

 さらに10日ほど...経過した

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 今俺たちは、地上へ出る魔法陣の前にいた。

 魔法陣を起動すると、ハジメが口を開いた。

 

「弓人、ユエ...俺の武器や俺達の力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」

「だろうな」

「ん...」

「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい」

「そうだな」

「ん...」

「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれん」

「まぁ、ありえるだろうな」

「ん...」

「世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」

「そんなもん今更だ。な?ユエ」

「ん...今更...」

「...ははっ!本当に今更だな」

 

 俺たちの解答に苦笑するハジメ、そこに俺は自身の考えていたことを伝えた。

 

「簡単なことだ。ハジメが俺とユエを、ユエがハジメと俺を、そして俺がユエとハジメを守る。そうすれば...俺たちは最強だ!だからよ...行こうぜ!日本に帰るために!」

「あぁ!」

「ん!」

 

 こうして魔法陣は輝きを大きくする。まもなく地上へと転移するだろう。

 その前に俺はステータスカードを取り出して、【ランクアップ可能】と書かれていた部分を触る。

 

【発展スキル】が1つ手に入るらしい...当然選択する。

 ステータスカードが光り、背中が熱を持つ。

 俺たちは覚悟と共に、地上へ転移した。

 

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三星弓人 Lv.6

     

  力: I : 0

 耐久: I : 0

 器用: I : 0

 俊敏: I : 0

 魔力: I : 0

 頑健: E

対魔力: F

千里眼: F

 直感: I

 

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