ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか 作:クノスペ
そういえば主人公の見た目なのですが...
何も考えてなかったなぁ...どうしよう...
FGOの彼を参考にしようにも...
男子高校生であの超人ボディは...流石にねぇ...
本編です(思考放棄)
それから三日後、遂に帝国の使者が訪れた。
現在、勇者一行、迷宮攻略に赴いたメンバーと王国の重鎮達、そしてイシュタル率いる司祭数人が謁見の間に勢ぞろいし、レッドカーペットの中央に帝国の使者が5人ほど立ったままエリヒド陛下と向かい合っていた。
「使者殿、よく参られた。勇者方の至上の武勇、存分に確かめられるがよかろう」
「陛下、この度は急な訪問の願い、聞き入れて下さり誠に感謝いたします。して、どなたが勇者様なのでしょう?」
「うむ、まずは紹介させて頂こうか。光輝殿、前へ出てくれるか?」
「はい」
陛下に促され、勇者である天之河が前へ出る。それに続くよう、メンバーたちの紹介が行われた。
それに対して使者は、彼らに対して疑いの眼差しを向けていた。
「ほぅ、貴方が勇者様ですか。随分とお若いですな。失礼ですが、本当に六十五層を突破したので? 確か、あそこにはベヒモスという化物が出ると記憶しておりますが...」
「えっと、ではお話しましょうか? どのように倒したかとか、あっ、六十六層のマップを見せるとかどうでしょう?」
天之河は、信じてもらえるよう何個か提案をするがそれに対して使者は首を横に振る。
「いえ、お話は結構。それよりも手っ取り早い方法があります。私の護衛一人と模擬戦でもしてもらえませんか? それで、勇者殿の実力も一目瞭然でしょう」
「えっと、俺は構いませんが...」
天之河が戸惑いながらではあるが了承したことにより急遽、勇者対帝国使者の護衛の模擬戦が始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「この戦い、光輝の負けね」
「え?何でそう思うのシズシズ?」
模擬戦が開始される前から天之河の負けを確信する八重樫に、疑問をぶつける谷口。天之河と対峙している使者の見た目は平凡で、構えもとらず大剣を無造作にぶら下げているだけでお世辞にも強そうとは思えない。
「あんな隙だらけで...すぐにやられそうだけど」
「まぁ...見ていたらすぐに分かるわ...」
そうして目線を天之河たちの方へ向けると、天之河は『縮地』を使い使者へと肉薄し剣を振り下ろしていた。だが、その剣は届くことはなく。使者の振り上げられた大剣により天之河は後方へ吹き飛ばされていた。
「え!?何で!?」
「あれは構えをワザと取らないことで攻撃を誘って、突っ込んできた相手にカウンターをぶつけるのよ」
「へぇ〜...シズシズよく分かったね...」
「弓人がよく使ってたのよ...光輝の奴、何度か食らったことあるのに忘れてたわね」
八重樫は呆れを含んだ視線を天之河へ向ける。彼はもう一度と言っているが、これが試合では無かったらこの時点で死んでいる。それに対して彼は無意識に避けていることに。
結局、本気になった彼でも使者には勝つことができず。イシュタルの障壁により模擬戦は終了した。そうすると、使者はおもむろに自身の右耳に付けていたイアリングを外した。
すると、まるで霧が晴れるように使者の姿を変えてゆく。
そして、姿が変わりきった時には、周囲は喧騒に包まれた。
「ガ、ガハルド殿!?」
「皇帝陛下!?」
そう、ヘルシャー帝国現皇帝ガハルド・D・ヘルシャーその人だったためだ。まさかの事態にエリヒド陛下が眉間を揉みほぐしながら尋ねた。
「どういうおつもりですかな、ガハルド殿」
「これは、これはエリヒド殿。ろくな挨拶もせず済まなかった。ただな、どうせなら自分で確認した方が早いだろうと一芝居打たせてもらったのよ。今後の戦争に関わる重要なことだ。無礼は許して頂きたい」
「はぁ...もう良い」
謝罪すると言いながら、全く反省の色がないガハルド皇帝。それに思わず溜息を吐くエリヒド陛下。
天之河は、完全に置いてけぼりになっている。
「まぁ、勇者殿のお手並は大体分かった...それよりも」
すると、ガハルド皇帝は八重樫の方を向く。
「模擬戦が始まる際、其方だけが俺を油断しなかった。理由を聞いてもいいか?」
「......皇帝陛下と同じような戦いをする人物を知っていたので」
「なるほどな...其方、名は?」
「八重樫...雫です」
「そうかそうか...気に入った!雫!俺の愛人になれ!」
突然の告白に周囲は驚愕する。女子たちは八重樫の解答に興味津々なようだ。
そして、八重樫の解答は。
「お断りします。私には心に決めた人がいますので」
即答で断った。それに対してガハルド皇帝は周りの男子たちを見渡しこの中にいないと思い問いかける。
「そいつは強いのか?」
「はい、誰よりも強くて誰よりも頼りになる人です」
断言する八重樫に、ガハルド皇帝は笑みを浮かべる。
「そいつは是非会ってみたい。今回は引こう、だが気が変わったらいつでも来な!俺はいつでも大歓迎だぜ!」
そう言い謁見の間から出て行くガハルド皇帝、天之河とすれ違う際鼻で笑ったことで、天之河はこの男とは絶対に馬が合わないと感じ、しばらく不機嫌だった。
八重樫の溜息が増えたことは言うまでもない。