ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

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つい先日スプラ3を買っちゃいました。
けど毎日投稿はサボらないよ
だからオニイサンユルシテ


本編です


29星:覚悟の引き金

 

 

「ああ、どうか罪深い私を許してくれぇ~」

「ごめんなさい!ごめんなさい!それでも私はやるしかないのぉ!」

「ふっ、これが刃を向けた私への罰というわけか...当然の結果だな...」

「族長!そんなこと言わないで下さい!罪深いのは皆一緒です!」

 

 何故、このような寸劇が繰り広げられているかというと。フェアベルゲンを出て、大樹に近い場所に仮拠点を作った際、ハジメがハウリアの戦闘訓練を行うことを提案した。

 

 霧が薄まるまでの10日間に、俺たちがいなくなった後も問題ないようにするためが目的だ。そして彼らも強くなりたいため、シアはユエに、残りは俺たち指導の訓練が行われた。

 

 そして、2日目が経過してこの様である。

 

「なぁ...そろそろキレてもいいか?」

「ま、こんなことになる気がしてたけどな」

 

 ハウリア達は、良く言えば優しく、悪く言えば甘い。

 魔物1匹殺すだけで、まるで最愛の者を殺めたような反応をする。

 そして、妙な動きをするため、注意深く見ていると花や虫を踏まないように細心の注意を払って動いていた。

 

 そのため、最初はため息で済んでいたハジメも、今は堪忍袋の尾が切れそうな状態へとなっている。

 

「...ハジメ、ちょっと向こうで頭冷やしてきな」

「...分かった。弓人はどうすんだよ?」

「ちょっとあいつらと話してくるわ...後ドンナー貸してくれ、弾を込めた状態でな」

「お前...何するつもりだ?」

「安心しろ、変なようには使わないさ」

 

 どこか訝しげな視線を向けてくるが、ドンナーを渡してくれ、この場から離れていく。

 俺はドンナーを持ったまま寸劇を繰り広げているハウリアたちの方へと近づく。

 

「お前ら、全員集合」

「ユミト殿?いかがされましたか?」

 

 カムを筆頭に、ハウリア全員が近づいていく。そして俺は彼らに質問をした。

 

「正直に答えてくれ。命を奪うことに迷っているか?」

「いえ...その......はい、魔物を殺すときに...『可哀想』だと思ってしまいます」

 

 カムの答えに、他のハウリアたちも同意する。

 

「まぁ...だろうな。『優しい』それがお前たちの美点なんだと思う...けどな、それをどんな時でも振り撒くつもりか?」

 

 俺の言葉に、誰も答えられない。俺は構わずに話し続ける。

 

「こいつが分かるか?」

「それは...ハジメ殿の...」

「そう、ハジメが使っている武器だ、ここん所を指で引くだけで」

 

ドパンッ!

 

 乾いた音と共に、俺の横にあった木がへし折られる。

 

「こんな風に、簡単に命を奪える威力の弾が出る」

「はい...でもそれが...?」

「例えばカム、シアが他の亜人族に殺されそうになった時、手元にこいつがあったら引き金を引けるか?」

「な!?」

「一瞬でも躊躇ったら殺される場合、お前は迷わず殺せるか?」

 

 そう言って、カムに無理矢理ドンナーを持たせる。カムは顔を青くしドンナーを持つ手を震わせる。その状況に耐えられなくなった兎人族の1人が声を上げる。

 

「ユ...ユミトさん!いくらなんでも...」

「俺たちは何も殺しを楽しめって言ってるんじゃない。そんな事をしたらあの帝国兵たちと同じだ...けどな、仲間や家族の命か、相手の命かで迷ってる時点で論外なんだよ」

「お前らが魔物に可哀想だと思ったり、殺した事に後悔するのはお前らの勝手だ。けどな、その勝手で助けることができた仲間や家族を見殺しにするな」

 

 そう言って俺はドンナーを奪い取ると踵を返す。

 

「30分やる。その間にどうするか話し合って決めろ」

「どうするかって...いったい...」

「覚悟を決めて訓練するか、それとも訓練をやめるかだ」

「や、やめるって!?」

「このまま訓練したって、その時が来たらお前たちは必ず見殺しにする。それなら訓練をする意味がない」

 

 俺はハジメの行った先へ歩いてゆく。その場には呆然とするハウリアたちと俯いて黙ったままのカムが取り残された。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ハジメ、落ち着いたか?」

「あぁ...まぁな」

 

 しばらく歩いた先に、倒木に腰掛けているハジメを見つけた。俺はドンナーを返すと、ハジメの正面に生えている木に寄りかかる。

 

「ドンナーの発砲音が聞こえたけど、何したんだ?」

「...あいつらの覚悟がどれくらいか聞いた」

「ふぅん...で?」

「論外だ...30分後再び聞いて覚悟ができてなかったら...まぁ...」

「......そうか」

 

 しばらく沈黙が続く、するとハジメからゆっくりと話しかけてきた。

 

「ユエから聞いたよ...弓人...お前」

「あぁ...俺は前世(むかし)...人を殺した」

「...理由を聞いても?」

「オラリオには...『闇派閥(イヴィルス)』って言うテロリストみたいな奴らがいた...仲間と、知人が所属しているファミリアがそいつらに襲われた」

「その時にか...」

「...少しでも躊躇ったら殺されていた......後悔はしていないさ」

 

 ハジメはそれ以降何も聞かない。あの時のことをあまり思い出したくない俺にとって、それがありがたかった。

 

 

 10分ほど経っただろうか、俺たちが来た道の方から複数の足音が聞こえていた。その方向を見ると、ユエと特訓中のシアを除いたハウリア全員がいた。

 

「...30分には早いと思うが?」

「話し合って...シアを除いた全員で決めました」

「そうか...お前らの答えは?」

「改めて...我々を鍛えて下さい!」

「「「「「お願いします!」」」」」

「覚悟は決まったのか?」

「正直...最初はハジメ殿に言われたから...と言う部分がありました...ですが!この答えは我々が選んだ選択です!」

「そうか...」

 

 彼らの瞳には固い決意が宿っている。恐らく、さっきのような事にはならないだろう。

 

「良いだろう、けどこれからの訓練は今までのような甘いもんじゃない...これはお前たちが選んだ道だ。覚悟を決めろ」

「「「「「「はい!!!」」」」」」

 

 こうして、真の意味でハウリアたちの特訓が始まった。

 

 


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