ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

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最近サブタイトルを考えるのが一番苦労してる...
場所の名前だけの時は.....そういうことです...


本編です


30星:生まれ変わったハウリア【上弦】

 

 樹海に凄まじい破壊音が響く。野太い樹が幾本も折られ、地面にはクレーターがあちこちに出来ており。更には、燃えて炭化した樹や氷漬けになっている樹まであった。

 

「でぇやぁああ!!」

「......『緋槍』」

 

 シアが巨大な樹を投げつけ、それをユエが炎の槍で焼き尽くす。直後、上空からユエに向けて丸太が落下し、轟音を響かせながら大地に突き刺さる。ユエはバックステップで回避して再度、炎の槍を放とうとする。

 

「まだです!」

 

 その瞬間、シアの飛び蹴りにより丸太は破壊され、破片が散弾の様に襲い掛かる。

 

「ッ!『城炎』」

 

 虚を突かれたユエは、『緋槍』を中断し炎の壁を作り出し防御する。だが、それもシアの想定通りだった。

 

「もらいましたぁ!」

「ッ!」

 

 炎の壁でユエの視界を制限し、気配を殺し後ろに回りこんでいた。そして、手に持っていた大縋を振りかぶり、全力で叩きつける。

 

「『風壁』」

 

 大縋と風の壁がぶつかり、辺りに衝撃が撒き散らされる。ユエは自身の作り出した風を利用し後方へ飛び退き。続けて魔法を放つ。

 

「『凍柩』」

「ふぇ!ちょっ、まっ!」

 

 シアの抑止の声も虚しく。足元から氷が一気に駆け上がり、首から下が氷漬けにされた。

 

「づ、づめたいぃ~、早く解いてくださいよぉ~、ユエさ~ん」

「......ごめん、やりすぎた...」

 

 ユエは謝罪と共に、氷を溶かし始める。現在、訓練開始から10日が経過しており、彼女たちは最終試験として手加減なしの模擬戦を行なっていた。

 内容は、かすり傷でもユエに一撃を与えたら合格となっている。

 

「いえ...手加減なしなので謝らなくても...て!ユエさんの頬っぺ!キズです!キズ!私の攻撃当たってますよ!」

「......ホントだ」

「な...なら、この試験は...」

「......ん、シア合格」

「〜〜〜〜!!!やりましたぁ!!!」

 

 ユエの合格宣言に、まだ氷が残っているのも構わず喜びを表すシア。そんなシアにユエは微笑んで見守っている。

 

「ユエさん!約束覚えてますよね!」

「......ん、覚えてる」

「もし、10日以内に1度でも勝てたら...皆さんの旅に連れて行ってくれるって。そうですよね?」

「......ん、少なくとも私は良いよ」

「後、2人に頼むとき味方してくれるんですよね?」

「......ん、けど...2人がダメっていったら...」

「はい...その時は私も諦めます...」

「......大丈夫、少なくともユミトは許してくれる......たぶん」

「ユエさん!?そこは断言してくださいよぉ!」

 

 そんなことを言いながら、少女2人は弓人たちの方へと行く。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「...やりすぎたか?」

「いや...多分俺だともっと酷くなってた」

 

 俺とハジメがそんなことをぼやいていると、ユエとシアが近づいてきた。シアは満面の笑みを浮かべており、ユエもどこか嬉しそうだ。

 

「よっ、二人共。勝負とやらは終わったのか?」

 

 俺とハジメも、2人が何かを賭けて勝負していることは知っている。彼女のために大槌を用意したのは他ならぬハジメだ。そのこともあり勝負の結果が気になったのだろう。

 彼女たちには内緒だが、俺とハジメはどっちが勝つか賭けており、俺はユエに、ハジメは大穴のシアに賭けていた。

 

「ハジメさん!ユミトさん!聞いて下さい!私、遂にユエさんに勝ちましたよ!」

「よっし!俺の勝ちぃ!」

「うわマジかよ...」

「......何の話?」

「あ...いや!なんでもない...なんでもないんだ!」

「「?」」

 

 俺たちが賭けていたことを知らない2人は首を傾げる。自分達の勝負を賭け事にされるのはあまり良い気分ではないだろう。俺は無理矢理話を変える。

 

「そ、それよりも!シアはどんなもんだった?」

「......魔法の適性は、ハジメくらい」

「まぁ、俺よりはマシだ。身体能力は?」

「......正直、化物レベル」

「俺たちと比べたら?」

 

 ユエの高評価には、ハジメも興味があるため耳を傾けている。ユエは、少し考え込んでから質問に回答した。

 

「.....強化してないハジメの...6割くらい」

「それは最大値としてか?」

「......ん...でも、鍛錬次第でまだ上がるかも」

「そいつは確かに化物レベルだ」

「......そのハジメよりやばいユミトはもっと化け物...それより、シア」

「は、はい!」

 

 ユエに促され、どこか緊張した顔つきのシアは俺たちの方を向く。そして、何度か深呼吸を繰り返すと、意を決して口を開く。

 

「ハジメさん!ユミトさん!私をあなたの旅に連れて行って下さい。お願いします!」

「「断る」」

「即答!?しかもユミトさんも!?」

 

 まさか俺にも断られると思っていなかったのか、驚愕の面持ちで目を見開いた。

 

「いや...だってそうなるとカムたち(あいつら)も来るじゃん...」

「それは大丈夫です!父様達には修行が始まる前に話をしました!」

「そうか、なら良いぞ」

「弓人!?」

「いやだって...こいつがついて行きたい理由大体わかるし」

「あん?あいつらに迷惑かけたくないだけじゃないのか?」

「あ...いや、そのぉ...」

 

 何やら急にモジモジし始めるシア。指先をツンツンしながら頬を染めて上目遣いでハジメをチラチラと見る。ハジメは理由を話そうとしないことに訝しげな視線を向けていたが。シアは思いの丈を乗せて声を張り上げた。

 

「ハジメさんの傍に居たいからですぅ!しゅきなのでぇ!」

「...は?」

 

 ハジメは何を言っているのか分からなかったのか、鳩が豆鉄砲を食ったように呆然としている。そして、脳が理解したのか顔を真っ赤にしてツッコミを入れた。

 

「いやいやいや!おかしいだろ!?一体、どこでフラグなんて立ったんだよ!?自分で言うのも何だが、お前に対してはかなり雑な扱いだったと思うしどっちかというと弓人の方に行きそうだろ!?」

「あ、いえ。ユミトさんは良い人だとは思いますけどそういうのは一切無いです」

「...なんで何も言ってないのに俺はいきなりフラれたんだ?」

「......よしよし」

「やめてくれ...なんか惨めになる...」

 

 俺がダメージを食らったことを他所に、2人は言い争いに近いものが始まっている。正直、シアがハジメに好意を向けているのは知っていた。幼馴染のアイツには悪いが、だからといって止める気はない。

 

「と、とにかくだ!お前がどう思っていようと連れて行くつもりはない」

「そんな!さっきのは冗談ですよ?ちゃんと好きですから連れて行って下さい!」

「あのなぁ、お前の気持ちは……う、嬉しいけど...だからといって連れて行くかの話は別だ!」

「こんなこともあろうかと!命懸けで外堀を埋めておいたのです!ささっ、ユエ先生!お願いします!」

「え?ユエ?」

「......ハジメ、シアが付いてくのを許可して?」

 

 まさかのユエからの援護射撃に、驚愕の表情を浮かべる。そして、何か合点がいったのか照れや呆れを通り越して感心した様子を見せていた。

 

「なるほど...勝負の賭けはそういうことか...」

「......ん、そういうこと」

「ハジメ、お前の負けだ。シアを連れて行こう」

「はぁ...」

 

 ハジメは観念した様子でシアと向かい合う。そして、最終確認の様にゆっくりと話しかける。

 

「付いて来たって応えては...やれないかもしれないぞ?」

「知らないんですか?未来は絶対じゃあないんですよ?」

「危険だらけの旅だ」

「化物でよかったです。御蔭で貴方について行けます」

「俺の望みは故郷に帰ることだ。もう家族とは会えないかもしれないぞ?」

「話し合いました。〝それでも〟です。父様達もわかってくれました」

「俺の故郷は、お前には住み難いところだ」

「何度でも言いましょう。〝それでも〟です」

 

 ハジメの言葉に、即座に返す。彼女の決意は決して揺らぎそうにない。

 

「......」

「ふふ、終わりですか?なら、私の勝ちですね?」

「勝ちってなんだ...」

「私の気持ちが勝ったという事です。...ハジメさん」

「......何だ」

「...私も連れて行って下さい」

 

 見つめ合うハジメとシア。ハジメは真意を確認するように彼女の瞳を覗き込む。そして

 

「......はぁ~、勝手にしろ。物好きめ」

「はい!物好きなので勝手にします!」

 

 その瞳に何かを見たのか、やがてハジメは溜息をつきながら事実上の敗北宣言をした。

 

 そんな2人を見て、ユエは笑い、俺はため息を吐く。

 

 

 

 

 シアに...カムたち(あいつら)の変化...どう説明しよう...

 






この作品でもシアはハジメのヒロイン枠です
まぁ、原作でも恋人がいる状況でアタックし続けてたので主人公1人が増えた程度で変わるわけないよね!

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