ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

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31星:ブルックの町【下弦】

 俺たちは、金銭を工面するため。この町のギルドへと足を運んだ。

 この町のギルドは、オラリオとは違い飲食店と1つになっており初顔の俺たちを物珍しげに見ていた。

 

 俺は何処かガッカリしているハジメを他所に、受付にいる恰幅の良い女性の元へと近づいていく。

 

「見ない顔だね。ここに来るのは初めてかい?」

「あぁ。ちょっと懐が寂しくなってきたから買取して欲しくてな」

「可愛い子2人もいるのに文無しなんて何やってんだい...あと後ろにいるあんたも美人の受付嬢じゃなくて悪かったね」

「えっ?いや...そんなこと考えてないから」

「あはははは。女の勘を舐めちゃいけないよ」

 

 耳が痛い言葉にハジメと揃って苦笑していると、俺たちの様子を見ていた冒険者たちが何処か同情的な視線を向けていた。恐らく、ここにいる全員が言われているのだろう。

 

「あらやだ、年取るとつい説教臭くなっちゃってねぇ、素材の買取だったね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

「ん?買取にステータスプレートの提示が必要なのか?」

「あんたたち冒険者じゃなかったのかい?確かに、買取にステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ」

「そうだったのか」

「ちなみに登録に1000ルタ必要だよ」

「じゃあ、素材の買取額から...」

「おっとストップだ」

 

 買取額から引いてもらおうとしているハジメを止め。俺は魔物の素材の1つを取り出すと受付のカウンターに置いた。

 

「とりあえずこいつを見てもらってもいいか?」

「買取の素材かい?......こっ、これは!?」

 

 恐る恐る手に取り、隅から隅まで丹念に確かめる。息を詰めるような緊張感の中、ようやく顔を上げた。

 

「とんでもないものを持ってきたね。これは.........樹海の魔物だね?」

「正解。うちには優秀なナビゲーターがいてね」

 

 そう言って、シアの方に指を向けるとどこか納得したような表情を浮かべていた。やはり、亜人族以外は迷ってしまう樹海の魔物の素材は流通が少ないのだろう。

 シアは、軽くお辞儀をした後、何かを察したのかハジメに対して冷ややかな視線を向けていた。当のハジメは視線を逸らし冷や汗をかいていた。

 

「あんたも懲りないねぇ...」

「今のは俺にもわかったぞ...」

「何のことかわからない」

 

 姿は変わっても根本にあるオタクの業に、呆れればいいのか安心すれば良いのか考えていると。受付の女性が話を戻した。

 

「まぁとにかく、樹海の素材は良質なものが多いからね、売ってもらえるのは助かるよ」

「取引だ、これらを売る代わりに俺たちの冒険者登録の費用タダにしてくれ」

「お、おい弓人...それは流石に」

「あははははは!気に入ったよ!あんたたちの登録料タダにするよ!」

「ありがとよ」

 

 その後、無事に登録が完了し。冒険者について軽い説明を受けたのち、樹海の素材の買取が行われた。その結果478000ルタが俺たちの手に渡った。

 

「これでいいかい?中央ならもう少し高くなるだろうけどね。」

「いや、この額で十分だ。後この町の地図はあるか?」

「ああ、ちょっと待っといで...ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」

 

 手渡された地図は、中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来だった。正直、金を取れるレベルだ。

 

「こいつは凄いな...金を取ろうとは思わなかったのか?」

「それはあたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」

「そうか、それならありがたく貰ってくよ」

「いいってことさ。それより、金はあるんだから、少しはいいところに泊りなよ。治安が悪いわけじゃあないけど、その二人ならそんなの関係なく暴走する男連中が出そうだから」

「あぁ、早速この地図を使わせてもらうよ」

 

 そう言って俺たちはギルドから離れる。他の冒険者の何人かがコソコソと話し合いながら、最後までユエとシアの2人を目で追っている中、受付の女性はどこか面白いものを見る目をしていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 俺たちは、地図を見て『マサカの宿』という宿屋に泊まることを決めた。地図によると少々値は張るが料理と防犯が良いうえに、風呂まであるらしい。

 

「いらっしゃいませー、ようこそ『マサカの宿』へ!本日はお泊りですか?それともお食事だけですか?」

「宿泊だ。この地図を見てきたんだけど書いてる通りで合ってる?」

「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」

 

 どうやら、受付の女性の名はキャサリンらしい。どこか遠い目をしているハジメは放っておいて良いだろう。

 

「あぁ、1泊で頼む。4人いるんだが大丈夫そうか?」

「大丈夫ですよ。お食事とお風呂はどうなされますか?」

「両方頼む」

「はい。お風呂は15分100ルタです。今のところ、この時間帯が空いてますが」

 

 少女が時間表を見せてくる。久々の風呂のためゆっくり入りたい。男女で交代する時間も考えても2時間は欲しいことを伝えると。少女はかなり驚いていた。しかし、今世(いま)は日本人である俺には譲れないところだ。

 

「え、え~と、それでお部屋はどうされますか?二人部屋と三人部屋が空いてますが...」

「俺とハジメが2人部屋、ユエとシアが3人部屋で良いだろ?」

「あぁ、2人もそれで良いよな?」

「......ん」

「......え〜と...そのぉ...私はハジメさんと同じ部屋が良いなぁ〜...」

 

 シアの発言に周囲は騒がしくなる。少女も頬を赤くしている。ハジメは当然待ったをかけた。

 

「いやいやいや!んなもん無理に決まってんだろ!?」

「『叶えられる範囲で1つお願いを聞く』」

「うっ...」

「ふーん、ハジメさん嘘つくんですねー」

「い、いや...そうだ!ユエだって弓人と同じ部屋は嫌だよな!」

「......今更、ユミトと何度も寝てる」

「おい待てユエ!その発言は語弊があるぞ!?」

 

 ユエの発言に更に騒然とする。周囲の客達、特に男連中が俺たちに向かって嫉妬の眼差しを向け。少女は顔を真っ赤に染めチラチラと俺とユエを交互に見ていた。俺が誤解を解こうとするより先に口論をしていたハジメが叫ぶように言った。

 

「あぁ分かったよ!一緒に寝りゃいいんだろ!」

 

 少女はどこかトリップしていた。見かねた女将さんが少女を奥へ連れて行き。代わりに父親らしき男性が手早く宿泊手続きを行った。その際、何処か「分かっているよ」という嬉しくもない理解の色が宿っていた。

 

 何を言っても誤解が深まりそうなので、急な展開に呆然としている客達を尻目に、顔を真っ赤に染めたハジメ、満足気なシア、自分の発言の意味に気づいていないユエを引き連れ言われた部屋に行き。それ以降は特にハプニングも無いまま風呂に入り、食事をとって眠りについた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

おまけ(ボツ茶番)

 

「今、お風呂ではあの人たちがあんなことやこんなことを...」

「ようお嬢ちゃん、奇遇だな」

「え!?な...何でここに?」

「今は女性陣が入ってるからな...つまりそういうことだ」

「わ...私もご一緒してもよろしいでしょうか!」

「その歳で覗きの浪漫が分かるとは...いいだろう!着いてこい!」

「はい!師匠!」

「行かせる訳ねぇだろうが!!!!!」

 





深夜テンションって怖いですね(他人事)
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