ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

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町でのあれこれ(ユエのスマッシュやらシアの服)は割愛させていただきます
主人公やハジメがいなかったら同じようなことになるだろうしね

是非もないよネ!

こ本編です


32星:第2の迷宮

 

 ライセン大峡谷は今、『死屍累々』という言葉が似合う状態へ変貌していた。

 その理由は、迷宮攻略のため再び足を踏み入れた俺たちが作り出したからだ。

 

「一撃必殺ですぅ!」

 

 シアは、巨大な戦鎚アーティファクト『ドリュケン』により魔物を粉砕する。

 

「......邪魔」

 

 ユエは、大峡谷の魔法分解を意に介さず、魔法により殲滅する。

 

「うぜぇ」

 

 ハジメは、ドンナーにより電磁加速された弾丸で魔物を撃ち抜く。

 

「違いねぇ」

 

 俺は、弓矢で魔物の眉間を射抜く。

 

 こうして懲りもせず襲ってくる魔物を返り討ちにしながら探索して3日ほど経過しているが、未だに迷宮の入り口を見つけれていない。

 

「はぁ~、ライセンの何処かにあるってだけじゃあ、やっぱ大雑把過ぎるよなぁ」

 

 洞窟などがあれば調べようと、注意深く観察はしているのだが、それらしき場所は一向に見つからないため。ついつい愚痴をこぼしてしまうハジメ。

 

「まぁ、大火山に行くついでなんですし、見つかれば儲けものくらいでいいじゃないですか。大火山の迷宮を攻略すれば手がかりも見つかるかもしれませんし」

「まぁ、そうなんだけどな...」

「......ん、でも魔物が鬱陶しい」

「確かにユエとは相性悪い場所だしな...おれもステイタスの伸びが悪いし」

 

=====================

 

三星弓人 Lv.6

     

  力: I : 0 → I : 10

 耐久: I : 0 → I : 5

 器用: I : 0 → I : 7

 俊敏: I : 0 → I : 6

 魔力: I : 0 → I : 5

 頑健: E

対魔力: F

千里眼: F

 直感: I

 

=====================

 

 このステイタスの伸びも、ハジメとの模擬戦で増えたことがほとんどだ。やはり伸ばすには、奈落の魔物レベルじゃないと無理だろう。

 

 こうして更に3日ほど探索したが未だに手がかりも見つからない。夜空に上弦の月が浮かび始めた頃、俺たちは野営の準備をしていた。

 ハジメが作った野営テントを建て、最初の見張りのハジメを除いて、テントに入っていく。

 すると、見張り交代でもないのにシアがテントの外へと出たので、ハジメが訝しげにしていると、シアはすまし顔で言う。

 

「ちょっと、お花摘みに」

「そうか、気をつけろよ」

「ふふっ、ありがとうございます」

 

 心配してくれるハジメに嬉しさを覚えながら離れる、しばらくすると、

 

「ハ、ハジメさ~ん!ユミトさ〜ん!ユエさ~ん!大変ですぅ!こっちに来てくださぁ~い!」

 

 と、シアが、魔物を呼び寄せる可能性も忘れたかのように大声を上げた。何事かと、テントの中にいた俺は寝ているユエを起こすとテントから飛び出す。

 

 シアの声がした方へ行くと、そこには、巨大な一枚岩が谷の壁面にもたれ掛かるように倒れており、壁面と一枚岩との間に隙間が空いている場所があった。シアは、その隙間の前で、ブンブンと腕を振っている。その表情は、信じられないものを見た! というように興奮に彩られていた。

 

「こっち、こっちですぅ!見つけたんですよぉ!」

「分かったから引っ張るな!お前身体強化全開じゃねぇか!」

「......眠い」

「すまんな、一応起こした方が良いと思ってな」

 

 はしゃぎながらハジメの手を引っ張るシアに、ハジメは少し頬を赤くしながらツッコむ。ユエは寝起きのため目をこすらせながら俺の手に引かれる。

 

 シアに導かれて岩の隙間に入り、その空間の中程まで来ると、シアが無言で、しかし得意気な表情で壁の一部に向けて指をさした。

 

 其処には、壁を直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸字でこう掘られていた。

 

『おいでませ!ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪』

 

「えぇ...?」

「もしかして...ここが?」

「......頭悪そう」

 

 俺たちは、思わず脱力してしまった。【オルクス大迷宮】の過酷さを知っている身としては、威厳のないこの場所が本当にそうなのか疑ってしまう。

 

「でも、入口らしい場所は見当たりませんね?奥も行き止まりですし...」

 

 そんな俺たちの心理に気づくこともなく、シアは、入口はどこでしょう? と辺りを見渡したり、壁の窪みの奥の壁を叩いたりしている。

 

「シア。罠があるかもしれないから気をつけろよ」

 

ガコンッ!

 

「ふきゃ!?」

「シア!」

 

 ハジメが警告したが遅く。シアが触れていた壁が忍者屋敷の仕掛け扉のように回転しシアを奥へと連れ去った。ハジメは表情を変え、シアの入っていった壁の中へと入っていく。

 

「ユエ!」

「......ん!」

 

 俺たちもこのまま立ち惚けている訳にもいかないため、意を決して扉の奥へと入っていく。

 

 入った瞬間、矢が襲ってきたが難なく受け止める。シアの方を見ると、ハジメが前に出て全てを捌いたらしい。

 

「ハジメさん...ありがとうございます...」

「たく、気をつけろよ?......無事で良かった」

「え?ハジメさん何か言いましたか?」

「いや...なんでもねぇよ」

 

 最後の言葉は、シアには聞こえなかった様だ。

 

ふと、周囲の壁が光り出しこの部屋を照らし出す。中央にはまた石板があり、そこにはこう書かれていた。

 

『ビビった? ねぇ、ビビっちゃった? チビってたりして、ニヤニヤ』

『それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ……ぶふっ』

 

 うぜぇ...ここにいる全員が同じことを考えているだろう。

 

「ミレディ・ライセンだけは『解放者』云々関係なく、人類の敵で問題ないな」

「右に同じく」

「...激しく同意」

「です」

 

 どうやらライセンの大迷宮は、オルクス大迷宮とは別の意味で一筋縄ではいかない場所のようだった。

 

 

 

 

 

「あ、そうだ。シア、花摘みはもう良いのか?」

「あ!ちょっと待っててくださ〜い!」





シアは漏らしてないのでそこまでブチギレまで行ってないため破壊はしてません。

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