ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

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 とあるパンダの影響でローラー始めたんですが

 奇襲楽しいですね^^


 本編です


34星:迷宮最後の試練【上弦】

 

 「やほ~、はじめまして~、皆大好きミレディ・ライセンだよぉ~」

 

 その見た目から想像できないほど陽気な挨拶をしてくるゴーレム。さらにはオスカー・オルクスの手記には死んだと書かれていた【ミレディ・ライセン】だと名乗ってくる。

 

 俺たちはその情報量の多さから固まってしまい、背景が宇宙の猫みたいになっていた。

 

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者は...もっと常識的になりたまえよ」

 

 どこか挑発的な物言いに苛立ちを覚えながら俺は再起動する。俺はオスカー・オルクスの手記を取り出しながらコミュニケーションを図る。

 

「いや、すまない。このオスカー・オルクスの手記にはミレディ・ライセンは故人だと書かれててな。いきなりのことで混乱したんだ」

「おー!オーちゃんの迷宮を攻略したんだ。もしかして私の迷宮をそれで知った感じ?」

「まぁな、ここの神代魔法を貰いたいんだが...タダで貰えたりするか?」

 

 正直、戦わずに手に入るならそれに越したことはない、俺はダメ元で聞いてみる。

 

「あはは!それは無理!そんなんじゃ試練にならないでしょ〜?」

「ま、それもそうだな」

「じゃあ、今度は私が質問する番ね。君たちは何のために神代魔法を求める?」

 

 先程の陽気さが無くなり、真剣な声で問いかけてくる。適当なことを言ったらすぐにバレるだろう。俺は、嘘偽りなく答える。

 

「俺たち...正確には俺とハジメは、狂った神のせいで別世界からここに連れてこられた。故郷に帰るためには、神代魔法を集めるのが一番良いと思ってな...それでここまで来た」

「つまり...あのクソッタレな神の手先ではないけど、あの神と戦うために来たわけでもないと?」

「向こうから何かして来るなら戦うが...もし何もしてこないなら、あんたらには悪いが無視するつもりだ」

「そっか...」

 

 ミレディはそう呟くと、どこか納得したように大きく頷き最初の時のような陽気な雰囲気に戻った。

 

「ん~、そっかそっか。なるほどねぇ~、別の世界からねぇ~。うんうん。それは大変だよねぇ~よし、ならば戦争だ!見事、この私を打ち破って、神代魔法を手にするがいい!」

「いくらなんでも脈絡なさすぎねぇか?完全にこいつら置いてけぼりだぞ」

 

 俺がそう言って振り返ると、未だに宇宙猫だったハジメたちもようやく再起動した。

 

「あははははは!ごめんごめん、久々に人と会話したから浮かれちゃってたよ」

「なら、戦わずに話し合いでも良いんだぜ?それこそ喉が枯れるまで」

「う〜ん...とっても魅力的だけど遠慮するよ」

「そうか、ならしょうがないな」

「そうそう、しょうがないしょうがない」

「あ、そうだ。戦う前に名乗りとかしようぜ」

「おー!いいね!やろうやろう!」

「お前ら仲良いな!?」

 

 これから戦うとは思えない空気で会話する俺たちにツッコミを入れるハジメ。結局ハジメたちも名乗りに参加することとなった。

 

 しばらくして俺たちは真剣な表情で名乗りを上げる

 

「ライセン大迷宮最後の番人であり開放者ミレディ・ライセン!」

「アルテミスファミリア団長『三星の狩人(トライスター)』三星弓人!」

「オ...オルクス大迷宮攻略者、南雲ハジメ!」

「......同じく攻略者、ユエ」

「と、特にないです!シア・ハウリア!」

 

「「「「「いざ尋常に勝負!」」」」」

 

 海戦の火蓋を切ったのは、ハジメのオルカンによるロケット弾だ。放たれた弾はミレディに直撃し爆音を轟かせる。

 

「やりましたか!?」

「......シア、それはフラグ」

 

 煙の中から赤熱した腕が出てきて煙を払う。そこには、一部破損したミレディが出てきたが、すぐさま周囲のブロックを引き寄せ、それを材料に体の修復を行う。

 

「ふふ、先制攻撃とはやってくれるねぇ~、さぁ、もしかしたら私の神代魔法が君のお目当てのものかもしれないよぉ~、私は強いけどぉ~、死なないように頑張ってねぇ~」

 

 その言葉と共に、ミレディは自身の持っていたモーニングスターを俺たちに向かって射出する。俺たちは、それを難なく回避する。

 

 ライセン大迷宮最後の戦いが始まった。

 

 ここに来るまでに戦ったゴーレムたちが、俺たちに襲いかかって来るがユエが水の刃で切り裂いていく。その隙に、ハジメはモノクルからの情報でミレディの弱点を探り当てる。

 

「見つけた!心臓の位置に核がある!」

「げっ!?何でわかったの!?」

 

 まさか自身の弱点を見破られるとは思わなかったミレディは驚愕の声を上げる。弱点を知った俺たちは声に出さずとも自身のやることを理解する。

 

 それぞれ別々の足場に移動した後、シアがミレディに向かって飛びかかる。

 

 ドリュッケンを振りかぶり一撃を叩き込もうとするが、ミレディはモーニングスターで対抗してきた。

 鍔迫り合いが続く中、修復が完了したゴーレムたちがシアに向かって襲いかかって来る。

 

「あれれ?忘れてた?ゴーレムはいくらでも再生できるんだよ?」

「......大丈夫、シアの後ろには私がいる」

 

 シアの背後に移動していたユエが、再び水の刃でゴーレムたちを切断する

 

 

「これで武器は使えません!ユミトさん!」

「まかせろ!」

「武器は使えないけど、まだ右手が残ってるよ!」

 

 飛びかかってから俺に向かって、ミレディは使える右手で俺に向かって殴りかかって来る。それに対して俺は、全力で殴り返す。

 金属同士がぶつかり合う音を周囲に響かせる。本来であれば質量の差で俺は後方に吹き飛ばされるだろうが、そんなことは起きず拳同士がぶつかったまま拮抗する。

 

「はぁ!?君って本当に人間!?」

「最近仲間から化け物扱いされてるけど人間だよ!」

 

 最近気にしていることを叫びながら、俺は全力で拳を振り抜く。力負けしたミレディは後方へ仰反るような状態になってしまう。

 

「今だハジメ!」

「本命はこいつだぁ!」

 

 バランスを崩しているミレディに向かってハジメはアンカーを使いミレディに張り付く。そして、シュラーゲンを0距離でミレディの心臓部分へ叩き込む。

 

 胸部から煙を吹き上げながら弾き飛ばされるミレディ、ハジメも反動で後方に飛ばされるが、アンカーを飛ばし近くの浮遊ブロックに飛び乗る。そして、ミレディの様子を観察した。

 

 俺たちも、ハジメの下へと移動する。

 

「......いけた?」

「手応えはあったけどな...」

「これで、終わって欲しいですぅ」

「けど、これだと呆気なさすぎる...」

 

 ユエが手応えを聞き、シアが希望的観測を口にするが、希望は薄いだろう。案の定、胸部の装甲を破壊されたままのミレディが、何事もなかったように近くのブロックを手元に移動させながら、感心したような声音で俺たちに話しかけてきた。

 

「いやぁ~大したもんだねぇ、ちょっとヒヤっとしたよぉ。分解作用がなくて、そのアーティファクトが本来の力を発揮していたら危なかったかもねぇ~、うん、この場所に苦労して迷宮作ったミレディちゃん天才!!」

「ちっ...『アザンチウム鉱石』か」

「白髪くん大正解!世界一硬い鉱石で有名だね!さっすがオーくんの迷宮攻略者」

 

 どこか小馬鹿にした様子で話して来るミレディ。しかし、すぐに真剣な空気に戻る。

 

「さぁ、第二ラウンドと行こうか!」

 


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