ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

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 皆さんお気づきでしょうけど、この作品に出てくるヒロインキャラの性格は作者の性癖によって変わっていることが多いです。




本編です


36.5星:押して駄目なら押し倒せ

 

 俺たちはあの後、ソーナたちが乗っていた馬車に乗せてもらい。ブルックの町へ帰還した。そして、マサカの宿に直行して風呂に入る手続きを行う。

 

 その後、レディーファーストという理由でユエとシアを先に入浴させて、俺たちは彼女たちが出るのを待っているのだが...

 

「なぁ...なんで鎖で俺を縛るんだ?」

「こうしてないと絶対に覗きに行くだろ」

「覗きは男の浪漫だと何度も...待て俺が悪かった。だからオルカンをしまえ宿が吹き飛ぶ」

 

 オルカンの銃口を向けてくるハジメに早口で謝罪するとハジメは呆れた表情を俺に向けてくる。

 

「お前の覗きへの執念はどこから来るんだよ...」

「そんなことよりも...お前どうすんだ?」

「覗きをそんなことで済ますな。...どうするっていうと?」

「シアのことだよ。結局お前はどう思ってんだ?」

 

 ハジメはしばらく黙っていたが、頬を赤くして頭を掻きながら答える。

 

「好き......何だと思う」

「ハッキリしねぇなぁ」

「仕方ないだろ...初めての経験なんだから」

「けど、好きなら付き合ったりしないのか?両想いなんだし」

 

 あの幼馴染のこともあるが俺は贔屓するつもりはない。ハジメもシアも大事な仲間だからこいつらの想いは尊重してやりたい。

 

「考えちまうんだよ...なんで俺なんかをって」

「あんまり自分を卑下すんなよ。そのお前を好きだって言ってるシアに失礼だ...けど、焦って答えを出そうとするなよ。これは持論だが流されて付き合うなんて長続きしないからな」

「......分かった。ちょっと考えてみる」

 

 俺の言葉に素直に従うハジメ。

 

 この異世界で様々な経験をしているが、ハジメはまだ思春期の男子高校生だ。恋愛関係で相談できる人がいるのは有難いのだろう。

 

「弓人ってやっぱモテたりしたのか?」

「やっぱってなんだよ?残念ながら天之河と喧嘩してばっかで女子からは嫌われてたよ」

「それにしてはこう言う話に詳しいな」

「単純に人生経験の差だよ。前世含めると俺は40代だしな」

「そういえばそうだったな...じゃあ前世でモテてたのか?」

「それも残念ながら。アルテミスは『恋愛アンチ』って言われるくらい潔癖症だったし」

「そんな女神の眷属なのになんで覗きをしようとすんだよ...」

 

 どこか馬鹿を見るような視線を向けるハジメに向けて、俺は断言する

 

「憧れは...止められねぇんだ!」

「世界一最低な名言の使い方をすんじゃねぇよ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 一方、入浴しているユエとシアは...

 

「本当、ユエさんの髪ってさらさらで綺麗ですよね〜」

「......シアの髪はふわふわで気持ちいい」

 

 ガールズトークに花を咲かせていた。先に入浴する際、弓人たちのことを考え早く出ると言ったのだが。ゆっくりで良いと言われたため、それに甘えさせて貰っている。

 

「はぁ...ハジメさんのいくじなし」

「......ハジメは照れ屋だから仕方ない」

「けどぉ...あんなファーストキスはあんまりですよぉ...」

「......よしよし」

 

 そして話題は先ほどの人工呼吸の件に変わっていた。シアも年頃の少女のためファーストキスには憧れがあったのだが、それがあんな色気もない状態で奪われるのには納得していなかった。

 

「それにハジメさんも、私があんなにアタックしてるんだから少しくらいデレてくれたって良いのに...私って魅力無いのかなぁ」

「......シアはかわいいよ」

「ありがとうございます...やっぱりアタックの仕方を変えた方が良いんでしょうか?」

 

 頭を悩ませるシアを見ていると、ユエは昔彼が言っていた言葉を思い出した。

 

「......昔ユミトが言ってた。『押して駄目なら押し倒せ』」

「お、押し倒せですか!?で、でもそれは大胆すぎるというか変態だと思われたら嫌というか...」

「......名前の呼び方を変えるとか?」

「あ、でもそれで上手くいったらその勢いで......って呼び方?押し倒すのに?」

「......押し倒すって誰を?」

「あ、ごめんなさい...私の心が穢れていたようです...」

「???」

 

 自己嫌悪しているシアに、どうしてそうなったか分からない様子のユエは首をかしげる。

 

 そして、自己嫌悪から回復したシアが先ほどのユエの言葉に再び反応する

 

「呼び方を変えるですか....ハジメ...くん。け、結構ドキドキしますね」

「......いっそ呼び捨て」

「呼び捨て!?えっと...ハジメ......〜〜〜!無理!恥ずかしい!」

「......頑張れ、これでハジメもイチコロ」

「い、いちころ...よ〜し、やるぞ私!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「んで、今後の予定はどうするよ」

「そうだな...迷宮の場所はミレディから聞いたし。暫くはここを拠点にして装備を整えたい。貰った鉱石でお前の剣も作りたいしな」

「了解。2人が来たら改めて言ってくれ」

 

 ハジメの恋愛相談もどきも終わり、今後の予定を話していると。風呂から上がってきたユエとシアが戻ってきた。

 

「......ほら、シア」

「は、はい...えっとぉ」

「ど、どうしたんだ?」

 

 先ほどの話で自身の恋心を言葉にしたことで、ハジメはシアを意識してしまい顔が見れていない。シアも風呂上がりとは違う理由で頬を染め、ハジメの前でモジモジとしている。そして、

 

「お、お風呂上がったよ...ハ、ハジメ...」

「〜〜〜!?」

 

 呼び捨て、更に素の口調で話しかけてくるシア、それによりハジメの顔が一瞬で真っ赤になった。

 

「あ...やっぱり嫌でしたか?」

「い、嫌じゃ無い!」

 

 顔が赤く染まったのを怒ったためと勘違いしたシアは、今にも泣きそうな顔でハジメに聞く。するとハジメは、顔を真っ赤に染めたまま即座に否定した。

 

「嫌じゃ無いから......いつもそうして欲しい...」

「〜〜〜うん!じゃあ」

 

 花が咲くような表情を浮かべたシアは、そのままハジメに近づきその耳元で

 

「ハジメ。大好きだよ」

「なぁ!?」

 

 そう囁くとハジメの顔は更に赤く染まる。それを見たシアは先ほどとは違い、どこか小悪魔じみた笑顔をハジメに見せていた。

 

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