ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか 作:クノスペ
この作品のヒロイン誰にしようか...
まずヒロイン必要かなぁ...?
そんなことを考えながら本編4話です。
「なぁアルテミス。ここの【Lv】ってどうやったら上がるんだ?」
「様をつけなさい。【ランクアップ】のことね。それには大きく2つの条件があるわ」
「条件?どんな?」
「一つは任意のアビリティが6段階以上、つまりD以上が必要よ」
「つまりある程度強くなってないと駄目ってわけか。もう一つは?」
「
「偉業だぁ?」
「分かりやすい例としては自身より格上の相手に勝つ【ジャイアントキリング】ね」
「そうか...なら当分ランクアップはできそうにねぇなぁ...」
「あら?なんでそう思うの?」
「だって無理しねぇって約束したからなぁ...」
「...!コホンっ、ランクアップした際にはその時点の基礎能力値は一旦リセットされてまた0からスタートするわ。その際通常とは異なる、特殊なものか一芸に特化した【発展アビリティ】が手に入る場合があるわ。」
「んじゃあひとまずの目標は、『無理せずステイタスを上げる』と『眷属になってくれるやつを探す』だな」
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晩餐会の翌日、早速座学と訓練が始まった。
集まった俺たちに銀色のプレートが渡された。不思議そうにしている俺たちに騎士団長メルド・ロギンスからの説明が始まった。正直なところこんな待遇で良いのか気になったが〝勇者様一行〟の指導のためという対外的な理由もあるのかもしれない。
メルド団長本人は、むしろ面倒な雑事を部下に押し付ける理由ができて助かったと豪快に笑っているのを見て副団長に同情してしまった。
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは【ステータスプレート】と呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
気楽な喋り方をするメルド団長に対して、俺は正直有難いと感じている。
年上の男性達に畏まった喋り方をされるよりも、指導者としていてくれる方が助かるからである。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。‶ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
そのまま説明を続けるメルドに対して、聞き覚えのない単語に反応した天之河は質問をした。
「あぁ、アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔道具の総称だ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだな。普通は、アーティファクトと言えば国宝レベルになるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。まぁ身分証として便利だからな」
それを聞きながら俺は、針の痛みで顔を顰めながら指から浮き出て来た血を魔法陣に落とした。するとステータスカードが淡く光り表示された内容には想像もつかないものが書かれていた。
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三星弓人 Lv.5
力: I : 0
耐久: I : 0
器用: I : 0
俊敏: I : 0
魔力: I : 0
頑健: E
対魔力: G
千里眼: H
【魔法】
【オリオン・オルコス】
・弓射魔法
・魔性・獣系に対する防御無視補正
・詠唱式『放たれしは必中、我が矢の届かぬ獣はあらじ』
【■■■■■・■■■■】
・■■昇華
・発動対象は術者本人限定
・発動後、術者本人に反動あり
・詠唱式『 』
【】
・対■魔法
・詠唱式『 』
【スキル】
【月■■慕】
・■■する
・■の強さで自身の能力に補正
・魅了・洗脳の無効
【
・効果範囲内における獣・鳥系の探知及び隠蔽無効
・獣・鳥系に対する攻撃強化
・一部の武器に器用補正
【
・精神力を消費しストック可能(最大3つ)
・発動時ストックの消費量に比例して詠唱式の破棄が可能
・ストックは一定時間で消滅
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これは、あの時の夢で男に刻まれていた【ステイタス】じゃないのか?
そして数々の疑問が俺の頭を埋め尽くした。
なぜ【
仮に何かしらの方法で【ステイタス】が刻まれたと想定しても。ここに書かれている俺の【Lv】は5、つまり最低でも
更には【魔法】や【スキル】に関しては夢ですら語られていないものの上に文字化けして読めないものもあるため俺には予想のしようがない。
頭を悩ませている俺をよそに、メルド団長からステータスの説明がなされた。
「全員見れたか? ステータスの説明をするぞ、まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
え?【Lv】は偉業を成して上がるものじゃないのか?
「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」
モンスターを倒して【
「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないがまぁ、百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」
天職?技能?俺にはスキルと魔法しかないぞ?
「後はそうだな、各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! 後ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
ステイタスは0からスタートして増えてくものじゃないの?さらにステイタスは他人に見せるのは駄目なのではないのか?
こうして俺の混乱をよそにクラスメイト達はメルド団長へステータスプレートを見せにいく、俺はどうしようかと悩んでいた時後ろから雫が声をかけて来た。
「ねぇ弓人?あなたのステータスってどうなったの?私はこうなんだけど」
「へぇ、普通はそんなふうに表示されてんだ」
「はぁ?それじゃああなたのは普通じゃないみたいじゃない」
「まぁ見てみればわかるさ、ほれ」
「えっ...なにこの表示...しかもステータス0ってこれ壊れてるんじゃないの!?」
おお、夢の男と似た反応だ。そんなことを考えていると天之河の番になった時メルド団長の反応が大きかった。そんな彼のステータスはこうだ。
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天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か...技能も普通は二つ三つなんだがな...規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」
「いや~、あはは...」
メルド団長の称賛に照れたように頭を掻く天之河。ちなみに団長のレベルは62。ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。それに対して天之河はレベル1の時点で3分の1はありレベルの上昇次第ですぐに追い抜きそうである。
その後のクラスメイト達も様々な戦闘織についており天之河ほどではないにしろ十分強力な戦力になるらしい。そしてステータスプレートの表記は俺だけがおかしい。
そしてハジメの番になった時に強力な戦力の誕生に喜んでいたメルド団長の笑顔が固まった。そして見間違えたと言わんばかりにプレートを軽く叩いたり光に翳していたが、最終的に微妙そうな顔をしながらハジメへ返却した。
「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか...」
歯切れ悪くハジメの天職を説明するメルド団長。なるほど、ハジメの天職は非戦闘員の生産織だったのか。
だがメルド団長の反応に小悪党達が食いつかないわけもなく、案の定ニヤニヤと笑いながらハジメに近づいていく。
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦闘系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」
「...いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」
檜山が、実にウザイ感じでハジメと肩を組む。見渡せば、周りの生徒達――特に男子はニヤニヤと嗤っている。
「メルド団長にプレート渡してくるわ」
「えっ?わかっ...って早!?弓人って敏捷0じゃなかったの...?」
「ぶっはははっ~、なんだこれ! 完全「後が支えてるからどいてくれ」
「いって!って三星!?またてめぇか!」
「そもそも戦争は志願制で戦力にならない奴は参加しなくて良いはずだぞ」
「...ならてめぇはどうなんだよ!おい!」
「まぁすぐにわかる、メルド団長、俺のステイタスです」
「あ、あぁ........は?」
俺のステイタスを見たメルド団長は素っ頓狂な声をあげ、そのせいでクラスメイト達の視線がメルド団長に集中した。
「なっ、なんだこの表記は!?...現時点でレベル5なのにすべて数値が0!?しかも天職もない...技能はこの3つか?...その横のEやGはなんだ?...魔法も見たこともないものに一部読めないものもある...この【スキル】とは何だ...?...わからない...何もわからない...」
思わず出てしまったであろうメルド団長の言葉はここにいる全ての人に聞こえた。そしてしばらく静寂が包んだ後、誰かが堪えきれずに出した声が発端となり爆発した。
「ぎゃははははははは、0って!0ってなんだよ!」
「一般人レベルの南雲ですら10あるのに0ってある意味すげーよ!」
「まって...お腹痛い...笑いすぎてお腹いたい...」
確かにメルド団長の説明を受けたら0なんて数字は想像もつかなかっただろう。この状況に対して、思わず叫んでしまったメルド団長は後悔した顔で俺を見つめ、俺の前に馬鹿にされていたハジメは俺を心配した眼差しをむけていた。
「ひぃ...ひぃ..はぁ〜笑った。おい三星よぉ、ステータス0のお前なんてすぐ死んじまうんじゃねぇの?こんな風に蹴られたらよぉ!」
「おい!やめろ!」
日頃俺に煽られていた檜山は日頃の鬱憤を晴らすかのように俺に蹴りを入れて来た。メルド団長が止めようとしてももう遅く、俺の脛に強めの蹴りがぶつけられた。
「......いってえええええええ!」
「は!?なんで蹴った方のお前が痛がってんだよ!?」
「なっ!?...どういうことなんだ...」
まさかの蹴りを入れた檜山が痛みで声を上げ跳び上がらながら足を抑えていた。それを見たメルド団長は想定外の場面により驚き硬直してしまった。
俺も内心ではかなり驚いている。なぜなら全く痛くなかったからである。そしてその状況にクラスメイト達は笑うのをやめ、困惑した眼差しを俺にむけていた。
「えっ!?弓人大丈夫!?」
「おぉ...ハジメ、大丈夫だ...」
「でも弓人はステータス0なんじゃないの!?」
「あぁ、俺のステイタスはすべて0だ...」
心配して来たハジメに、表面上は冷静に返事をしていると、大慌てで走って来た畑山先生と硬直から解放されたメルド団長の指示の下今日は解散となり明日から本格的な訓練が始まることになった。
これも夢が変わった理由が関わるのだろうか?そんな俺の疑問に答えてくれるものは誰もいない。