ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

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43星:彼女の本音

 

 北の山脈地帯

 

 標高千メートルから八千メートル級の山々が連なるそこは、どういうわけか生えている木々や植物、環境がバラバラという不思議な場所だ。そのお陰で、気候に左右される事なく森の恵みを手に入れることができるため。ウルの人たちの生活には欠かせない場所となっている。

 

 麓に車を停めると、ハジメはミレディから譲ってもらった『感応石』を利用して作成した鳥型の偵察機を数機取り出すと上空へ飛ばす

 

「バイクや車に続いてドローンかよ...」

「俺...銃とか出てきても驚かないと思うわ」

「銃どころかレールガンやロケラン、おまけにパイルバンカーもあるぞ」

「「マジかよ!?」」

 

 俺が相川と玉井に教えてやると、ロマンのある武器たちに思春期男子の琴線に触れたのか羨望の眼差しをハジメに向けている。日本では向けられなかった視線に、ハジメは照れ臭そうに顔を晒し偵察機の準備をしている。

 

「とにかく...とりあえずこれを山頂に飛ばして、俺たちは登っていこう」

「ハジメ、ちょっといいか?」

「ん?どうした弓人」

「ここの探索、俺だけ別行動でもいいか?」

 

 俺の提案に、ハジメは怪訝な顔を向けてくる。

 

「弓人のことだから理由はあると思うが...何でだ?」

「単純に固まって動くよりバラけた方がいいと思ってな。お前らはここみたいに広がった道を歩けばいい」

「じゃあ、弓人は?」

「俺はあっちの雑木林の方を探す。もしかしたらあんな場所で身を隠してるかもしれないからな」

 

 俺の言葉にハジメは納得したようだが。俺たちの話を聞いていた畑山先生が、心配した様子で近づいてきた。

 

「けど、危ないですよ。慣れていないと怪我をするんじゃ...」

「大丈夫ですよ先生。俺()()()は山育ちだったんで」

「あ、そうなんですね。けど!気をつけてくださいね」

「心配ありがとうございます。ハジメ、どこで合流する?」

「そうだな...なら、ここにしよう」

 

 ハジメはそう言うと、地図を取り出しこの山の6合目を指差していた。

 

「了解。地図は持っていくぞ」

 

 俺はハジメから地図を受け取ると。近くの雑木林へ入っていく。こうして二手に分かれての探索が始まった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 しばらく1人で探索しているが、遺品どころか手がかり1つ見つからない。しかし、1つ気づいたことがある。

 

 これほどまで自然が豊かなのにも関わらず、生物の気配が全くない。

 

 俺の直感もこの山脈に来てから危険信号を発し続けているため。俺は1人での探索を切り上げ、ハジメと決めた合流地点への移動を開始した。

 

 

 合流地点へ到着すると、ハジメたちは先に到着していたようで休憩していた。しかし、女性陣が見当たらない。

 

「悪い、遅くなった」

「おお、気にすんな」

 

 俺が声をかけると、ハジメは俺の方へ近づいてくる。相川と玉井は、息を切らしており随分とバテているようだ。

 

「あいつら随分と疲れてるな」

「あ〜...いつものペースで動いてたらああなった」

「なるほどな。そういえばユエたちは?」

「あいつらは近くの小川で涼みに行った」

 

 小川...涼みに......なるほど

 

「水浴びか」

「「!?」」

 

 俺の言葉に、さっきまでまともに喋れないほど疲れていた2人が反応する

 

「よし、いくぞ同志よ!『桃源郷』はすぐそこだ!」

「「おぉ!」」

「お前らがいくのは『桃源郷』じゃねぇ...『あの世』だ!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 女性陣は小川で水浴び...は当然してる訳もなく。靴を脱ぎ足を水に入れて涼んでいた。ハイペースで探索していたこともあり、水の冷たさが心地いい。

 

「はぁ...」

 

 女子生徒の1人、園部は疲労とは違った溜息を吐いていた。その視線の先にはシアがいた。そして、その視線に気づいたシアは、園部の下へ近づいていく。

 

「あの...どうかされましたか?」

「え?...あっ、何でもないの...ごめんね?」

「い、いえ...気にしてませんよ」

 

 気まずい空気が2人を包む。しばらく沈黙が続いた後、シアは園部の隣に座り問いかける。

 

「あの...ソノベさん...でしたっけ?」

「う、うん...園部優花。優花で良いよ」

「では...ユウカさんは、ハジメの方が好きなんですか?」

「うぇ!?な、なんでわか...って私は別に南雲のことなんて!」

「良いですよ、好きだって言っても」

 

 シアの質問に、園部は狼狽えながら否定しようとするが。その直後、シアの言葉に固まってしまう。そして、つぶやくように口を開いた。

 

「........なんで分かったの?」

「えっと...女の勘って奴ですね」

「....そっか、ごめん...」

「何で謝るんですか?」

「え...だって、あんたも南雲のこと...」

 

 園部は申し訳なさそうにシアを見ると、シアは何処か困ったように笑っていた。

 

「確かに私はハジメのことが好きです。ハジメにも私だけを見て欲しいです」

「なら「けど...」

「誰かを好きになる気持ちは...すごく分かりますから」

 

 同姓である園部ですら見惚れる微笑みを見せるシアに、園部は俯きながら自身の本音を話した。

 

「......うん、私は南雲が好き」

「はい」

「あの時、骸骨に殺されそうになった時...助けてくれた時に好きになった」

「はい」

「けど...言える訳ないじゃない」

「何でですか?」

「だって...私は南雲が王国にいた時...内心馬鹿にしてた...そんな私が好きって言える訳ないじゃない」

「それは違いますよ」

 

 園部の吐き出した言葉に、シアは優しく否定する。そして、とても優しい声で語りかける。

 

「確かにユウカさんはハジメの事を馬鹿にしてたかも知れません...けど、好きになったんですよね?」

「......うん」

「私も...ハジメと出会った時、最初の印象は『怖い』でした」

 

 シアが思い出すのは、ハジメと出会った時。予知で見たとはいえ、ダイヘドアを1撃で殺したり、同族である帝国兵を殺した時。彼女はハジメに恐怖した。

 

「けど...ハジメが私たちを守ってくれた時...『好き』になりました」

 

 シアが思い出すのは、フェアベルンにて処刑すると宣告された時。必死に懇願しても撤回されなかった時、どこか照れ臭そうに守ってくれたハジメに恋をした。

 

「だから...好きになるっていうのは仕方のない事だと思うんです」

「......良いのかな?南雲のことを好きになっても」

「それを決めるのは、ユウカさんです」

「そっか...ありがと」

「なら...故郷にいた時のハジメを教えてくれませんか?」

「良いよ。シアさんも南雲のこと教えてよ」

「良いですよ。後、呼び捨てで良いですよ」

「分かった。よろしくねシア」

 

 こうして2人は、自身の知らない彼について話し合った。

 

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