ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか 作:クノスペ
いつからだ...読者の感想を楽しみに待つようになったのは?
一体いつからだ?読者からの評価にモチベーションが上がったり下がったりするようになったのは?
そんなんじゃねぇだろ!作者が求めた!作品作りは!
本編です。
「本当に、君たちにいくら感謝しても足りないよ」
現在、俺たちは三度目となる支部長室への訪問を行なっている。前回と違うのは、ハジメの膝に座ってイルワの出したお菓子を美味しそうに食べているミュウがいることだ。
「俺たちはミュウを助けるためにやっただけだ」
「それでもだよ。シアくんとハジメくんの体を張った本拠地の特定。ユエくんとティオくんによるオークション会場にいた奴らの現行犯逮捕。そして...」
イルワは一拍置いて俺の方を見る。
「ユミトくんのお陰で、捕まっていた被害者の解放と保護、更にはフリートホーフのボスの確保ができた」
「ユミト殿、暗躍とはそういうことじゃったか」
「こういうのは元締めをやらなきゃ意味ないからな」
俺は懐から紙束を取り出すと、イルワの前へ放り投げる。イルワはそれを見て怪訝な表情を浮かべた。
「ユミトくん、これは?」
「あいつらが使っていた人攫いの連絡網、それとオークションに来てた顧客のリストだ。奴さん後生大事に抱えてたぜ」
「な!?それは本当かい!?」
「見てみな、ご丁寧に各顧客の購入履歴も書かれてた」
イルワは食い入るようにリストの中身を見た後、何度目か分からない感謝の言葉を伝えてきた。
「本当にありがとう。これで今回のオークションにいなかった奴らも一網打尽にできるよ」
「なぁに、ハジメに頼まれたのもあるが...」
こういう時『あいつ』ならこう言うだろう。
「こんな小さな子供の笑顔を奪うあいつらを許すことは、俺の『正義』が許せなくてね」
そう言ってハジメの膝に座っているミュウちゃんの頭を撫でてやると、ミュウちゃんは不思議そうにハジメに尋ねた。
「ねーお兄ちゃん。『せいぎ』ってなーに?」
「おぉ...何とも難しいことを聞くな...そうだな、『いいこと』って事だな」
「じゃあお兄ちゃんやお姉ちゃんも『せいぎ』なの!」
「そうか、ありがとな」
純粋なミュウちゃんを見て、ハジメは表情を和らげながらミュウの頭を撫でる。ミュウちゃんは気持ちよさそうに目を細めており、どうやら俺よりハジメの撫で撫でがお気に召したようだ。
「ははは、随分と懐かれているようだね。それで、ミュウくんについてなんだが聞く必要はなさそうだね」
「あぁ、俺たちがミュウを連れていく」
「分かった。なら我々からの依頼という事で処理しよう」
ハジメとイルワの会話を聞いて、シアは嬉しそうにミュウちゃんに話しかける。
「ミュウちゃん。お姉ちゃんたちがお家に帰らせてあげるからね」
「お兄ちゃんも一緒なの?」
「あぁ、俺も一緒だ...けどミュウ、お兄ちゃんはやめてくれないか?ハジメでいい」
一人っ子のハジメは『お兄ちゃん』と呼ばれ慣れていないせいか、むず痒そうに呼び方を変えるよう要求した。そのことをよく分かっていないミュウちゃんはしばらく考えた後、全員の予想の斜め上を行く答えを出した。
「...パパ」
「は?」
「パパなの」
「なんで...パパなんだ?」
ハジメは目元を押さえて、理由を聞いてみるとミュウちゃんは寂しそうに話し始めた。
「...ミュウね、パパいないの...ミュウが生まれる前に神様のところにいっちゃったの...キーちゃんにもルーちゃんにもミーちゃんにもいるのにミュウにはいないの...だからお兄ちゃんがパパなの」
「理由は分かった...いや正直今でも分かってないけど。でもなミュウ、パパは勘弁してくれ...俺はまだ17だ」
「やー!パパはパパなのー!」
「いやほんと勘弁してください。お兄ちゃんでいいから...というかお兄ちゃんでお願いします」
「やーー!パーパーなーのー!」
ハジメの懇願も、ミュウちゃんはお兄ちゃんよりしっくりしたのかパパから変えようとしない。ハジメは困ったようにシアを見ると、シアは子供だからと困ったように笑っており、そして俺たちの方を見ると...
「はははははは!見ろお前ら!ハジメの奴結婚通り越して一児のパパになったぞ!」
「......頑張れ、ハジメパパ」
「は...ハジメ殿は...随分とその
指を刺して爆笑する俺と、口元を押さえてクスクスと笑っているユエ、そして笑いを堪えていたがとうとう吹き出してしまったティオがいた。
「この3馬鹿が!他人事だと思いやがって!」
「あぶねっ」
「『天征』」
「あう!」
俺たちにキレたハジメは、ドンナーでゴム弾を3連射してきたため、俺は咄嗟に掴み取り、ユエは『天征』により別方向へ反射、ティオは反応できずに額に直撃した。
その後、ハジメはあの手この手でお兄ちゃんに戻そうとしたが、とうとうパパから戻すことは出来なかったため、エリセンにいる母親に説得してもらうつもりのようだ。
「まぁ頑張れや、ハジメパパ」
「お前なぁ...そうだ、ミュウ。この人のことはなんて呼ぶんだ?」
「えっとね...おじちゃん!」
「そうかそうか、そっちも頑張れよ、おじちゃん」
その瞬間、ハジメはやり返しと言わんばかりに、いい笑顔を俺に向けてきた。
それに対して、俺は気にせずミュウの頭に手を置く。
「ミュウちゃん、おじちゃんがパパと一緒にお家に帰してやるからな」
「わーいなの!」
「お前、気にしてないのか?」
俺の予想外の反応に、ハジメは少し困惑した様子で問いかけてきた。
「前も言ったけど、前世合わせたら俺は40代のおっさんだぞ?それにミュウちゃんくらいの子には俺らの歳は十分おじちゃんだよ」
「くそ...なんか負けた気がする」
こうして異世界にて、一児のパパになったハジメの旅が始まった。
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おまけ
「くそ...ミュウの奴」
「あはは、良いじゃん子供の我儘なんだから」
「けどなぁ...」
「それとも...本当にパパになっちゃう?」
「ばっ!?お前ぇ!」
「きゃー!」
これにてミュウの部分が一段落ついたので次は幕間を挟みます。