ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか 作:クノスペ
今回から少しの間幕間を挟みます
基本的に作者のその場のノリで書いているため、時系列が滅茶苦茶になっているかもしれませんが、寛大な心で許してください
幕間:ある月女神の話
貴方と会うまで、退屈だなんて思ったこともなかった。
だって、それが当たり前だったから。
ここは、迷宮都市オラリオにある【アルテミス・ファミリア】
その主神であるアルテミスは、1人の眷属の帰りを...何年も待っている。
「ほんと...どこで道草食ってるんだか」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
彼との出会いは、はっきり言って最悪なものだった。
事故とはいえ、私の水浴び姿を見られたのだから当然とも言える。
そんな彼が、私が神だと分かった瞬間言った台詞は
『お前、神様なんだろ?【恩恵】?って奴くれよ!』
なんて図々しい男なんだ。当然私は断った。私にとっての初めての眷属がよりにもよって男なんて到底耐えられなかった。
『はぁ!?減るもんじゃ無いんだし良いだろ!?』
『お前みたいな男を誰が好んで眷属にするか!』
『そこをなんとか!』
『しつこい!』
ますます怒りを覚える私のことなど気づいていないのか、彼はどこまでも図々しく頼んできた。
そんな中、私は1つ妙案が浮かんだ。
『いいだろう、そんなに言うなら【恩恵】を授けてやってもいい...』
『マジか!いやぁ、分かってくれたか!』
『けど条件がある...私に狩猟で勝ったなら!授けてやらんこともない』
私の言葉に、彼は驚いたように目を見開いた。
当然だ、私は月と狩猟の女神アルテミス。
そんな私に狩猟で勝つなど不可能なのだから...
『え?そんなので良いのか?』
今、彼はなんと言った?
そんなの?私に狩猟で勝つことがそんなのと言ったのか?
『ふふふ...』
『どうした?急に笑い出して』
『私が誰か分かっていて言ってるの?』
『いや、自己紹介されたわけでも無いし知らん』
この瞬間、私がギリギリで抑えていたものが爆発した。
『許さん...お前だけは絶対に許さんぞ!』
『なんで怒ってんだ?それより、さっさと始めようぜ』
『良いだろう、二度とそんな態度を取れないようにしてやる!』
こうして【恩恵】を賭けた勝負が始まった。この時の私は、まさか自分が負けるだなんて欠片も思っていなかった。
『嘘...』
『良し、俺の勝ちだ!』
狩猟の腕には、絶対の自信があった。
それこそ、誰にも負けないと思っていた。
けれど、彼が勝った。
人の身で、【恩恵】すら授かっていない状態で、神である私に勝ったのだ。
そこから、私の毎日は刺激的になった。
『おーいアルテミス!冒険者登録して来たぞー!』
『様をつけなさい!後......おかえり』
『おう!ただいま!』
いつからだろう、彼の図々しさが気にならなくなったのは。
『ただいまー!聞いてくれよ!今日の稼ぎ。ドロップアイテムのお陰でこんなにもなったぞ!』
『すごい!なら今日はご飯食べに行こうよ!』
『あぁ!すぐに準備するから待っててくれ、アルテミス』
『早くしてね、オリオン』
いつからだろう、彼が様付けしないのが気にならなくなったのは。
『ねぇ、オリオン。貴方はなんで【恩恵】が欲しかったの?』
『どうした急に?』
『そういえば聞いてなかったな〜って思って。聞かないほうが良かった?』
『いや...言ったらお前笑うだろうしな...』
『笑わないわよ、よっぽど変じゃ無かったら』
すると、彼は少し恥ずかしそうに話し始めた。
『英雄に...なりたいんだよ』
『英雄?』
『...悪い怪物を倒して...みんなを笑顔にして...悲劇のヒロインなんて存在しない、そんな...物語に出てくるような英雄になりたいんだ...ガキっぽいだろ?笑っていいぞ』
そんな、少し恥ずかしげで...けれど、目を輝かせ英雄に憧れている彼が、とても愛おしく感じた。
『なれるわよ』
『えっ...』
『オリオン、貴方なら絶対になれるわ、だって...』
『だって?』
『...な、なんでもない!それより!女神の私が言うんだもの!間違いないわ!』
『なんだそりゃ?けど...ありがとなアルテミス』
あの時は恥ずかしくて言えなかったけど、今なら言える。
だって、貴方のおかげで私は救われたんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ねぇオリオン、貴方は気づいていなかったけど。
貴方は、沢山の人に慕われてたのよ?
ちょっと女性が多いのは気になるけれど...
ギルドでは、貴方は死んだ扱いにされている。
けど、【恩恵】という貴方との繋がりはまだ残っている。
貴方が生きているのを信じて、帰りを待っている人は沢山いるのよ?
貴方のいない日常は、退屈で苦痛だ。
だから
「だから...早く帰って来なさい。
あと数人幕間を挟むと思います。
おそらくですが幕間は全体的に文章量が少なくなる思われます。