ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか 作:クノスペ
今回で3人目になります。
続きを早く見たい人には申し訳ありませんが、
これと後1人挟んでから本編に戻ろうと思います。
アタランテのステイタスが気になるとの声がありましたので、最初の部分に記入させていただきます。
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アタランテ Lv.4
力: D : 504
耐久: C : 615
器用: C : 687
俊敏: A : 843
魔力: B : 732
狩人: F
対異常: G
追込: I
【魔法】
【ポイボス・カタストロフェ】
・広範囲攻撃魔法
・炎・光属性
・
・詠唱式『今こそ狩りの時』
『天に放つは、二大神へ奉る矢文』
【アグリオス・メタモローゼ】
・狂化呪詛
・発動対象は術者本人限定
・発動中【ポイボス・カタストロフェ】使用不可
・狂化に伴い、理性低下
・詠唱式『神罰の野猪よ、我を呪え』
【タウロポロス・スキア・セルモクラスィア】
・付与魔法
・闇属性
・【アグリオス・メタモローゼ】発動中使用可能
・詠唱式『燃ゆる影、裏月の矢』
『我が憎悪を受け入れよ』
『闇天蝕射』
【スキル】
【
・異性との戦闘時におけるステイタス補正
・誓いが続く限り効果持続
・魅了・呪いに対する耐性
【
・走行速度強化
・荒地走行時、器用・俊敏に補正
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ここは、オラリオにある『豊穣の酒場』
酒場故に昼は夜ほど忙しくないのだが、今日は違ったようだ。
「はぁ...疲れたニャ」
「確かに...昼なのにいつも以上に忙しかったよね」
「というか、リューの奴はなんでいないニャー!」
「そういえば...シル、リューがどこにいるか知ってる?」
「えっと...多分あそこに行ったんだと思う...今日は
薄鈍色の髪をした女店員...シルの言葉に他の店員たちは思い出す。
彼女は、毎年この日になると休みを取り、ある場所に向かうことを。
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ここは、西のメインストリートの外れにある古ぼけた鐘楼。
ここに、1人のエルフの女性がバスケットを持ってオラリオを見ていた。
「貴方は、この時間になると...いつもここにいましたよね」
彼は、この時間に吹く風が好きだと言っていた。
エルフの女性...リューは俯き、自身が持ってきたバスケットの中身を見る。
「料理...あの時から上達したんです...」
後悔と悲しみから、声が震えてしまう。
あの時、彼に取り返しのつかない事を言った私は...ずっと後悔している。
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彼との出会いは、ある意味で忘れることはないだろう。
あれは、私が『あるファミリア』に入団して間もない頃、
土地勘を養うため、オラリオを歩いていた時だ。
『えっと...ここが...きゃっ!』
『おっと、悪い!』
手に持っていた地図と、周囲ばかりに気を取られていた私は、横の路地から出てくる彼に気づかずぶつかってしまった。
私が転ばないよう咄嗟に手を取ってくれた彼に対して私は
『わ、私に触れるな!』
『うおおおおお!?』
彼を思いっきり投げ飛ばしてしまった。
その後、私は反射的に投げてしまった事を謝罪すると、彼は笑って許してくれた。しかし、私は申し訳なさから、どうすればお詫びができるか仲間に相談した。
そして、私は『それ』を持って彼を探していると。
運良く彼と会うことができた。
『あ、あの...』
『ん?って君は昨日の』
『はい...その節ではご迷惑を』
『ははは、昨日も言ったけど気にしてねぇよ』
『いえ...もしよろしければ...これを』
私は気恥ずかしさから、少し押しつけるように渡してしまう。
彼はいきなりのことのため、不思議そうに受け取った。
『えっと、これは?』
『お、お弁当です...』
『弁当?なんで?』
『輝夜...仲間から聞きました。殿方へお詫びをする時には手料理を振る舞うのが良いと』
『え、そうなの?』
この時、彼の反応から輝夜に揶揄われていた事に気づいた。
羞恥から顔が熱くなりこの場から消えてしまいたくなる。
『すみません...どうやら私は揶揄われていたようだ...』
『いや待て!もしかしたら君の仲間の故郷ではそうだったかもしれないだろ?』
『いえ...多分、いや絶対揶揄われていただけです...』
なんともいえない空気が、2人に流れる。この場から逃げようかと考えていた時、彼が話しかけてきた。
『まぁ、くれるってんならありがたく貰うよ。腹減ってるしな』
『そうしていただけると...有難いです』
『どこで食うかな....そうだ。なぁ、この後暇か?』
『え、えぇ...一応予定はありませんが』
『ならついて来てくれ。いい場所を知ってるんだ』
怪しい、普通に考えれば罠だ。
しかし、彼の人の良さを何となく感じていた事もあり。彼について行った。
『ここが?』
『そう、俺のお気に入りの場所。この時間になるといい風が吹くんだ』
確かに、吹く風が頬を撫で気持ちがいい。彼が気に入るのも納得だ。
『いい場所ですね』
『だろ?それじゃあ早速』
そう言って彼は壁に寄りかかるように座り込むと、バスケットの中身を確認する。
そして
『......なにこれ?』
固まった
『...サンドウィッチです』
『え?サンドウィッチ?炭じゃなくて?』
『...私はいつもやり過ぎてしまう』
『やり過ぎというか...焼き過ぎというか...というかサンドウィッチに焼く工程あったっけ?』
恥ずかしくて死にたくなる。殿方に...というかそもそも料理自体初めてだった私が作ったものは、料理とは到底言えない物体だった。
『あの...それは処分しますので後日『まぁ良いか』
彼は私の言葉を無視して、
明らかに食べ物を咀嚼しているとは言えない音を出しながら黙々と食べている。
『な!?吐き出してください!そんな物食べたら...』
『断る、女に作ってもらった物を粗末にはできない』
『......貴方は馬鹿だ』
けれど、嬉しかった。
下手くそな私の料理を食べてくれたことが、嬉しかった。
『ふぅ...美味かったよ』
『顔...真っ青ですよ』
『け、けど気持ちは伝わったから!』
よっぽど酷かったのか、歪んだ笑顔を向けてくる彼が、どこか可笑しくてつい笑ってしまった。
『笑うことはねぇだろ...』
『すみません...貴方が宜しければ、また作ってきてもよろしいですか?』
『え...なんで?』
『そんな顔をしなくても...流石に傷付きます』
こんな料理と言えない物がお詫びだと、私のプライドが許せなかった。
だがこれは、彼に会うための言い訳だったのではないかと今の私は思っている。
『まぁ、良いけど。俺はいつもこの時間にここに居るから勝手に来い』
『そうですか、なら勝手に来ます』
こうして、この時間になると彼に弁当を渡すのが日課になった。
『...なにこれ?大砲の弾?』
『輝夜から聞いた、おにぎりという物です』
『待って、これ本当に食べ物?鉄叩いた感触するんだけど』
彼は、私の料理を怒らず食べてくれた。
『...なんだよこれ?』
『えっと...カレーです』
『カレーって普通辛いとか甘いだろ!これくせーんだよ!』
嘘です、何度か本気で怒ってました。
けれど、彼は一度も残したことはなく、全て食べてくれた。
こんな日常が、毎日続けば良いと思っていた。
けれど、それは叶わない。
その日常を壊してしまった私には、願う権利などあってはいけない。
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おまけ
「ふむ、汝がオリオンの言っていた者か」
「えっと、貴方は?」
「すまない、自己紹介が先だったな。アルテミス・ファミリア副団長のアタランテだ」
「彼と同じファミリアでしたか。私はアストレア・ファミリア所属のリオンと申します」
「...汝とは仲良くなれそうだな」
「奇遇ですね、私もそう思ってました」
「汝とは」
「貴方とは」
「「他人の気がしない」」