ありふれない月の眷属がいるのは間違っているだろうか   作:クノスペ

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幕間4人目はまさかのあの人です。
案外予想できていた人も多いと思いますけど...

一応今回で幕間は一旦終了して、また気が向いたら書こうと思ってるつもりです。

前回のカレーネタに突っ込んで貰えて嬉しかったです



幕間:あるハイエルフの話

 

 ここは、『黄昏の館』

 現在、ハイエルフの女性が弟子であるエルフの少女に自身の知識を教え込んでいた。

 

「時間だな、今日はここまでにしよう」

「あ、ありがとうございました...」

 

 エルフの少女...レフィーヤは師の授業は、好きな時間であると同時に苦手な時間でもある。

 

 レフィーヤの師...リヴェリアはエルフ...いやオラリオで知らない者などいない存在だ。

 エルフの中でも王族のハイエルフであり、冒険者としても最強と言っても過言ではない魔導士だ。

 そんな人物からワンツーマンで指導してもらえるなんて、いくら(ヴァリス)を積んでも足りないだろう。

 

 しかし...いや当然と言うべきか、彼女の膨大な知識や経験を教え込まれる為。授業が終わる頃には、いつも頭がパンクしそうになる、その点だけレフィーヤにとっては苦手な部分だ。

 

「ふむ...今日は詰め込みすぎたか。レフィーヤ、片付けは私がやっておくから部屋に戻って休むと良い」

「い、いえ!リヴェリア様のお手を煩わせる訳にはいきません!」

 

 レフィーヤは飛び上がるように起きると、大急ぎで教材を片付け始める。リヴェリアは軽くため息した後、弟子を労うために紅茶の準備を始めた。

 

「これはここで...これはあっちで...あ、リヴェリア様!これも片付けておきますね!」

「私がやると言っているだろう...っ!」

 

 リヴェリアが振り返ると、レフィーヤが文章が途中で終わっているノートと、開いたまま置かれている教科書を片付けようと手を伸ばしていた。

 

「それに触るな!」

「え!?も、申し訳ございません!」

 

 予想外の鋭い声を出したリヴェリアに、怒られたと思ったレフィーヤは伸ばしていた手を仕舞い、反射的に謝った。

 リヴェリア自身も予想以上に強い口調で言ってしまったため、リヴェリアもレフィーヤに謝る。

 

「す、すまない...だが()()はそのままでいい。後は私がやっておくから部屋に戻ると良い」

「は、はい」

 

 今回は素直に部屋から出て行くレフィーヤ。それを見た後、リヴェリアはノートと教科書が置いてある机に近づき指で撫でた。

 

「早く帰ってこい...お前には、教えたいことが沢山あるんだ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はぁ...やっちゃった」

「やっほー!どうしたのレフィーヤ?」

「今日の授業、そんなにキツかったの?」

 

 気分を沈ませていたレフィーヤに、アマゾネスの姉妹...ティオナとティオネが話しかけてきた。

 レフィーヤは、先ほどあったことを2人に話した。

 

「そういえば...あれ、私たちが入団した頃からあるよね」

「えっと、おふたりが入団したのって...」

「大体5年前くらいね、アイズなら知ってるんじゃない?」

「呼んだ...?」

 

 その声に反応して3人が顔を向けると、偶然歩いていたレフィーヤにとって憧れの存在である...アイズがいた。

 

「ア、アイズさん!?」

「えっと...名前が聞こえたから。違った?」

「ねぇねぇ!アイズってあれについて知ってる?」

「あれ?」

「あんたねぇ、そんなんで分かるわけないでしょ?」

 

 そう言ってアイズにも先ほどあったことを説明する。

 アイズはしばらく考え込んだ後、何か心当たりがあったのかある単語を声に出した。

 

「もしかして、『じゃが丸お兄さん』かも」

「じゃが丸お兄さん?」

「うん。私がまだ入団したばかりの頃、リヴェリアの授業を頑張ったらじゃが丸くんくれるお兄さんがいたの」

「ふーん、そのお兄さんは今はどこにいるの?」

「えっと...「随分と懐かしい名前が出てるね」あっフィン」

 

 4人の下へ、【ロキ・ファミリア】の団長...フィンが話しかけてきた。

 

「団長!」

「えっと、3人がリヴェリアの所にある『あれ』が気になるって...」

「そっか...もう随分と経つんだね」

「フィンはじゃが丸お兄さんのこと知ってるの?」

「あぁ、よく知っているよ。君たちは【アルテミス・ファミリア】を知っているかい?」

「は、はい!アタランテさんが所属しているファミリアですよね?」

 

【アルテミス・ファミリア】は団員が1人なのにも関わらず【ロキ・ファミリア】と友好的な関係を続けているファミリアだ。

 

「昔は、団員ももっと居て団長も違ったんだ」

「あの、もしかして」

「あぁ、その団長の名前はオリオン。リヴェリアにとって一番最初の生徒さ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 彼との出会いは、アイズが入団する半年前ほどだ。

 

『なぁ、リヴェリアってあんたのことか?』

『...確かに、私の名はリヴェリアだが』

 

 初めて見た彼の印象は、良くも悪くもどこにでもいる男だと感じた。

 オラリオに来てから、私に話しかけてくる男はほとんど同じだ。

 

 同胞なら王族の私に畏まった態度をとり。

 それ以外の男は、私の容姿目的に口説こうとしてくる。

 

 彼も同じだと思って、適当にあしらおうとした所

 

『頼む!俺に魔法について教えてくれ!』

 

 驚いた、初対面の私にそんなことを言う男など居なかったからだ。

 王族のリヴェリアでも、エルフのリヴェリアでもなく。冒険者のリヴェリアとして話しかけられるのは、当時の私にとって新鮮だった。

 

『ふっ...良いだろう、ついてくると良い』

『マジか!ありがとう!』

『だが私も忙しい身だ。今回だけだぞ』

『十分すぎる!』

 

 こうして彼をホームへ連れて行くと、ロキや仲間たちにとても驚かれた。

 

『リ、リヴェリアが男連れてきたああああああ!』

『ははは、随分と珍しいことがあるもんだ』

『...こっちだ。ついてこい』

『お、おい。良いのか?』

『構わん。勝手に言わせておけ』

 

 こうして彼に『魔法』について教えた。と言っても教材に載ってあるような基本的なものだったが

 

『ーーーとなる。ここまでで分からない所はあるか?』

『...すまん、何一つ分からん』

『む、この程度も分からないか...』

 

 人によっては、喧嘩を売っているようにしか思えない私の言葉に対して

 

『本当に悪い...俺昔から要領が悪くてな』

 

 彼は怒るどころか、申し訳なさそうな表情を浮かべていた。

 

『もう1回最初から頼む、今度こそ理解するから』

『いや、今日はここまでにしよう』

 

 外を見ると、日は沈んでおり随分と時間が経っていた。

 

『そうか...ありがとな、後は自分で頑張ってみるわ』

『いや待て......明日、また来ると良い』

『けどあんた、今回だけだって』

『折角私が教えたんだ。分からないまま終わらすのは私のプライドが許さない』

 

 こうして、彼と私の奇妙な関係が始まった。

 

『はぁ...そこは前教えた所だぞ』

『す、すまん...』

『いや...私ももう少し分かりやすく教えるべきだったか...』

 

 どうすれば、分かりやすく教えれるか彼から学んだ。

 

『なぁリア、ここなんだけど』

『そこはだな......なんだそのリアとは』

『愛称。嫌だったか?』

『ふっ、勝手にしろ』

 

 随分と、気安い関係になった。

 

『やべ...結構遅くなったな』

『なんや?オリオン泊まらへんの?』

『いやいや、流石に悪いって。アタランテも飯作ってるだろうし』

『けどうち、アルテミスにオリオン泊まらせるからって言ってもうたで?』

『マジか、それならお言葉に甘えて...』

『な、なぁオリオン。良い果実酒が手に入ったんだ。だから『よっしゃロキ!今日は飲み明かすぞ!』

『その言葉待っとった!ガレスとフィンも巻き込むで!』

『......ふん!』

『痛ってぇ!』

 

 私だけではなく、ファミリア絡みで友好的になった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「へー、そんな人居たんだ」

「そ、それで...その人はどうしてるんですか?」

「.....死んだ、ギルドではそう報告されている」

 

 気まずい雰囲気が、周囲を包み込む。おそらくあのノートと教科書は、彼の遺品なのだろうと3人は考えた。

 

「けど...僕は生きていると思っている」

「団長...けどそれは」

「ギルドの報告だと、彼の遺体と武器は発見されてないんだ。だから僕は...いや、リヴェリア、ガレス、ロキも生きていると信じてる。そして...君もだろ?アイズ」

「うん、あの人は生きてると思う」

 

 ロキ・ファミリアの者たちから、ここまで言わせるオリオンという男に、レフィーヤたち3人は驚きを隠せなかった。

 

 こうして、彼の帰りを待つ者たちの1日は、また経過して行く。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

おまけ

 

「オリオン!またアイズにそんな物を与えて、夕飯が食べられなくなったらどうする!」

「大丈夫だって、こんくらいの子は食べ盛りなんだから夕飯だって余裕だ。な?アイズ」

「うん」

「お前はそうやってアイズを甘やかすな!たく...今日だけだぞ」

「それ3回目だぞ?」

「う、うるさい!このたわけ!」





投稿が遅くなってしまい申し訳ございません

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