いつの間にか100話まで投稿していたのですね。自分でも気づきませんでした...
これも皆さんが読んでいただいたからこそ頑張れたのではないかと思っております。
また、お気に入りも450にまで到達しました。
この場をお借りして登録していただいている方々に御礼申し上げます。
「前田、焼きそば追加出来たよ!」
「おう!
「はいよ!」
最終日の今日は朝から多くのお客さんがうちのクラスの屋台に押し寄せている。
どうにもうちの屋台の味が良いという評判が回っているようだ。
「やっほー、和義。来たわよ」
「おー、忙しそうだな」
「父さん、母さん」
そんな時、直江家のメンツがうちの屋台に顔を出した。
「忙しそうだけど、零奈ちゃん預けても大丈夫なの?」
「ああ、零奈が裏でじっとしててくれるなら問題ないよ」
「っす!お二人でゆっくり回ってきてください綾さん」
「あら、前田君ありがと。じゃあ、ほら零奈...」
「はい。皆さん、お忙しいところ申し訳ありません。邪魔にならないように隅にいますので、どうぞよろしくお願いいたします」
ペコリと頭を下げる零奈。
『か、可愛い~~』
「ほら零奈ちゃん椅子を用意したから座って」
「パンケーキすぐに作るから食べててね」
「ほら男子!飲み物買ってきなさいよ!」
零奈は見た目は可愛い小学生だからか女子受けが良いみたいだ。
歓迎されて良かった。
「じゃあ、何かあれば遠慮せずに連絡するのよ」
母さんはそう言いながら、二つの焼きそばを買って父さんと一緒に屋台から離れていった。
「零奈。もう少しで僕のシフトが終わるからもうちょっと待っててね」
「はい。ここで兄さんの格好良い姿を見ていますね」
「ははは...それは下手な姿は見せられないね」
そして、その後は集中して調理することができた。
「五月が来ていない!?」
自分のシフトが終わったので、零奈と二乃、三玖を連れて脇道に移動した。そこで、今日は五月が朝から学校に来ていない事を零奈に共有する。
「何があったのですか?」
「それが分かんないのよ。今日は最終日だってのに...」
「どうしたんだろう。昨日から五月、ずっと部屋に籠ったままなの」
「てなわけで、五月とはまだ話せてないんだよね。昨日、竹林と真田に会った時はどうってことなかったから、その後に何かあったんだろうけど...」
「五月...」
零奈が五月の心配をしていると、
「そうか、どうりで探してもいないはずだ」
「!」
「僕も五月ちゃんに会いに来たのに...」
横からアイスを食べながら無堂先生が話に加わってきたのだ。
この人...堂々と...
「カズヨシの知り合い?」
正体を知らない三玖の反応はしょうがない。
零奈は下を向きわなわなと震えているように見える。
「言伝があるならお聞きしますが」
「......五月に何か言いましたよね?」
「!」
僕は、二乃の言葉を気にせず無堂先生に直球で問いただした。
てか、こいつ今笑わなかったか?
「怖いなぁ。アイスあげるから許して。ただ、現実を教えただけだよ。それが僕の務めだからね」
その言葉に僕は一瞬で頭に血が上り、
「お前......何が現実だよ。何が自分の務めだよ。ふざけんな!」
「ちょっ、カズ君!」
「落ち着いて、カズヨシ!」
いつもと雰囲気が違う僕に、両脇から二乃と三玖が止めに入っているが止められそうにない。
「ぐっ......何だね君は......?」
「あんたには関係ないだろ。それより、五月に何言った!」
「ぐぅっ.........」
胸倉をつかむ力を強めて無堂を持ち上げるようにすると、苦しそうな顔をしている。だが関係ない。こいつが...こいつが五月を...
「兄さん!止めてください!」
「っ...!」
その言葉に我に返り、持ち上げている力を緩めると無堂は尻もちをついた。
「失せろ。あんたの顔を見るとまた襲い掛かりそうだ...」
「ぐ......何なんだいったい......」
文句を言いつつ一向にこの場から離れようとしない無堂にギロッと睨むと、
「で、出直すとしよう......」
捨て台詞を言うように去っていった。
それを確認した僕は、壁沿いに座り込み膝の上で手を組み、その手の上に額を当てるように俯いた。
「...ごめん。頭に血が上って......」
「いいのよ。ただ、ちょっとワイルド感が出てて惚れ直したかも」
何故かうっとりした顔をしている二乃。そういえば、チョイワル系が好みだったっけ...
「はい。これ飲んで少しは落ち着いて」
「ありがと三玖。後ごめんね。怖がらせたよね」
三玖から受け取ったペットボトルの水の蓋を開けながら話す。
「たしかにちょっと怖かった...けど、カズヨシも怒ることがあるんだって思ったら、ちょっと安心した」
「そっか...」
三玖の言葉を受け、ペットボトルの水をがぶ飲みする。
すると零奈から抱きつかれた。
「もう、昔の悪い癖ですよ。怒鳴りつけても解決することはないでしょう。冷静にです」
「悪い......助かったよ」
「はい...」
落ち着いているという意思表示も込めて、零奈を抱き返し頭を撫でてあげる。
「それで?結局あいつは誰なの?五月に関係ありそうだけど」
「……」
三玖は何も言わないがじっとこちらを見ているから気にはしているのだろう。
零奈を見るとコクンと頷いた。
「……五月だけじゃない。君たち姉妹全員に関係ある人だよ」
「「え?」」
僕の言葉に驚きの顔をする二人。
「
「なっ…」
「なんですって!?」
「どういう理由で帰ってきたか知らないけど、なるべく君たちと接触しないように勇也さんや下田さんと動いてたんだ。ただ、どうやら五月が接触しちゃったらしくて…」
「五月が昨日から部屋に籠ってるのは…」
「あいつが原因ってわけね」
「実際に見たわけじゃないから何とも言えないけど、十中八九奴が絡んでるだろうね」
「お母さんは知ってたの?」
三玖がずっと黙っている零奈に向かって質問する。
「私と五月が通っている塾に特別講師として来ていることはチラシで知っていました。学校に来ている、というのは盗み
やっぱりどこかで聞いてたか。
父さんと母さんと話していた時か、一花に電話してた時だろうな。
「それで?さっきカズ君を止めたのは?」
「もちろん兄さんのためです。あのまま手を出しても兄さんが負けることはまず無かったでしょう。しかし、経歴に傷がつきますから…」
「そういうこと……カズ君は?これからどうするの?」
「もちろん五月のところに向かうよ。五月に拒まれようともね」
「それでこそカズ君だわ。そんなところも好き。持っていきなさい」
「!」
二乃からはマンションのカードキーを渡される。
「助かる。一花がこの後来ると思うから合流しといて」
「分かったわ。こっちのことは任せて」
「五月をお願い」
「ああ……零奈は母さん達と一緒に。ここからバイクで行くから零奈は乗せられないよ」
「分かりました。それまでは二乃たちと一緒にいます。五月の事、お願いしますね」
「任せといて!」
「そうです。一つ、五月に伝言をお願いできますか?」
「............分かった。必ず五月に伝えるよ」
そして五月のところに向かうため、バイクの停めている駐輪場に向かって走るのだった。
~五月side~
五月は昨日から自分の部屋に籠り勉強に勤しんでいた。
今では気分を変えてリビングのテーブルで一人勉強をしている。
「私は学園祭を休んでまでいったい何してるんだろ...きっと和義君、心配してるだろうな...」
五月はそんな言葉を零しながらも勉強を続けている。
そんな中、昨日のある出来事を思い出していた。
竹林と真田の二人が帰った後、皆それぞれの場所に移動をしていった。
そんな中五月はトイレに寄って、屋台に戻るところである男に呼び止められた。
「なんのご用でしょうか」
「昨日はすまなかったね。赤の他人に突然あんなことを言われたって困惑するだけだろう」
無堂である。
「君にいつ打ち明けるか迷っていたんだ。君のお母さんは元教え子。さらに元同僚...そして元妻だ。つまり私は...君のお父さんだ」
「お父さん...?そんな...私たちが生まれる前に消息不明になったと聞いています。本当に無堂先生が...?」
信じられないといった顔で五月が確認をする。
「ずっと会いたかったんだ。講師として全国を回りながら、いつもどこかにいる君たちのことを想っていた。そんな時さ、テレビに映る一花ちゃんを見つけたのは」
「み、皆を呼びます」
「今は五月ちゃんと話をしているんだ」
他の姉妹を呼ぼうと五月は携帯を出すが、無堂はそれを許さず五月と二人で話したそうにしている。
「今、悩んでいるのだろう?聞かせてくれたじゃないか。今こそ父親としての義務を...」
「今更なんですか!あなたのことはお母さんから聞いていました。お腹の中にいる子供が五つ子だとわかった途端姿を消したと。その時お母さんはどんな気持ちだったか...私は...あなたを...」
「ごめんなさい!」
「!」
五月の言葉を遮るように無堂は謝り、頭を勢いよく地面に擦り付けるように土下座をしている。
「なんて情けない。ずっと後悔していたんだ。当時の僕に甲斐性があれば君たちに、こんなに迷惑をかけずに済んだのにと!そして、君たちの行く末を考えると心が張り裂けそうな思いだった」
「......」
「私の罪は消えることはない。しかし許されるのならば...罪滅ぼしをさせてほしい。今からでも父親として娘にできることをしたい」
頭を上げながら無堂が口にする。額からは先程の土下座で怪我をしたのか血が流れている。
「...もう私たちに関わらないでください。お父さんならもういます」
「中野君か。あの子は優秀な生徒だったが、父親としては不合格と言わざるを得ない。やはり血の繋がりが親子には必要不可欠。お母さんが死んだ時、彼が君に何をしてくれた?」
「!」
「娘が亡くなった母親の影を追い続け、母親と同じ間違った道に歩を進めようとしている。学校の先生が君に相応しくないということは君が一番よくわかっているはずだ。父として到底見過ごすことができない。君たちへの愛が僕を突き動かした」
無堂の言葉に今五月の頭の中はぐちゃぐちゃになってきている。
「僕ならばいくらでも違う道を用意してやれる。思い出してほしい。君のお母さんは言っていたはずだ」
『五月』
『なーにお母さん』
生前の
二乃から借りたカードキーを使って中野家にお邪魔すると、リビングのテーブルで一人勉強をしている五月の姿があった。
「五月......」
僕が声をかけるとピクッと反応はしたものの、こちらに振り向くことはなかった。
「和義君...こんなこと意味ないというのに...私は何をしているのでしょう...」
「無堂に何か言われた?」
「たしかに色々言われましたが、それだけではありません。生前のお母さんも言っていたんです。『五月、あなたは私のようには絶対にならないでください』、と」
なるほど。それであの伝言か。零奈、言葉足らずにもほどがあるよ。
「それなのに諦められない。未だにお母さんを目指してしまっている。そう願う私は間違っているのでしょうか?」
涙を流しながら自身の言葉を伝えてくる五月。
「五月。零奈から伝言を預かっている」
「え?お母さんから?」
「ああ。『あなたが小さかった頃、私のようにならないように、と伝えたと思います。あれは、私と同じになることを目指すのではなく、五月自身として進んでいきなさい、という意味です。もしあなた自身が決めた結果が私と同じ道になったのであれば、私は誰よりもあなたの事を応援しますよ』、だってさ」
「お母さん...」
勉強中はいつもかけている眼鏡を外し涙を拭う五月。
「...本当に、教師になることは私の夢なんでしょうか?私はお母さんになりたいだけ。以前下田さんに言われた事を、和義君も覚えていますよね?」
『母親に憧れるのは結構。だが...お嬢ちゃんはお母ちゃんになりたいだけなんじゃないのかい?』
以前REVIVALで下田さんが五月に言った言葉だ。
この言葉を五月はずっと引きずっているのか。
「五月。君にとって
その瞬間五月の目に力が戻ったように感じる。
「無堂が何言ったか知らないけど、君の方が
「お母さんは私の理想の姿です。強くて、凛々しく、優しくて...私は...お母さんのような先生になりたい!私は私の意思で母を目指します!」
今までの沈んでいた姿とは打って変わって、力強く天に向かってそう誓う五月。
そうこなくっちゃ。
「なら、家庭教師である僕達のやることは一つだけ。全力でサポートする、それだけだ」
笑顔を向けながら五月に僕は宣言した。
「...ふふ、いいこと思いつきました。和義君、勉強教えてください」
「勿論!」
『そうです!私、良いこと思いつきました。せっかく相席になったのですから、私に勉強を教えていただけませんか?』
出会った当初五月が風太郎にお願いした言葉。あれから一年しか経っていないがとても懐かしく感じる。
「...ありがとうございます。ですがその前に、やらなければいけないことがあります。私、あの人に会いに行きます」
「大丈夫?」
「はい!和義君にはとても感謝していますが、この件については手を出さないようお願いします。この問題は私たち家族で片をつけます」
本当は一緒に行ってあげたいけど、また僕は暴走しそうだしな。それに、こんなにしっかりとした眼差しで言われちゃ断れないか。
僕はそんな五月の提案に了承して五月をバイクの後ろに乗せ学校に向かった。
学校に着いた五月は僕に頭を下げるとまず姉妹に合流するために動いた。
それを見送りながら電話をする。
「ああ、母さん?五月は大丈夫だよ。零奈にもその旨伝えてくれる?」
『そう。ありがとう和義』
「それで、今から無堂先生と決着つけてくるんだってさ」
『ちょっと大丈夫なの?』
「姉妹でみたいなこと言ってたから多分大丈夫だと思うけど。ま、だから今連絡したんだけどね」
『まったく、あなたって子は…こっちは任せなさい』
「ああ、頼んだよ」
母さんとの電話を終えるとすぐさま着信がきた。
まったく、この人はいつもタイミング良すぎでしょ。
「もしもし……」
~五つ子side~
「こんにちは無堂先生。五月です」
ベンチに座りドーナツを食べていた無堂に五月は話しかけた。
「やぁ。まさか五月ちゃんの方から来てくれるとはね。僕の言葉に耳を傾けてくれるようになった…ということでいいかな?」
「もう一度聞かせてください。学校の先生になりたいという夢が間違っているのだとしたら、私はどうしたらいいのですか?」
「五月ちゃんが五月ちゃんらしくあってほしい、その手助けがしたいんだ。君は今もお母さんの幻影に取り憑かれている。学校の先生でなければなんでもいいんだよ。お母さんと同じ間違った道を歩まないでくれ」
「なぜ急に私の前に現れたのですか?」
「離れていた時もずっと気にしていたさ。罪の意識に苦しみながらね。それがどうだい。まさか、こうして父親らしいことをしてやれる日が来るとはね。この血が引き合わせてくれたんだ。愛する娘への挽回のチャンスを…」
「ガハハ、父親だって?笑わせんな!」
「君たちは…」
そこに現れたのは勇也と下田である。
「うーっす、先生ご無沙汰」
「つっても、用があるのはうちらじゃないんだけど」
「無堂先生、お元気そうで」
「だな。何年振りだ?」
「「………」」
勇也と下田の後ろからはマルオ。そして、和義以外の直江一家がいた。綾と零奈は手を繋ぎ黙って見守っている。
「皆さん…なんでここに…」
「和義に場所を聞いてな。家族でケリ着けるならこいつが必要だろ?」
マルオに親指でさしながら勇也が答える。
「直江先生たちは……まあオマケだ」
「誰がオマケだ!」
「中野君…それに、直江に樋口」
「今は私も直江ですので悪しからず」
「そう…だったね……中野君。君にも謝るきっかけができて良かった。君には苦労かけたからね。思い返せば、君は人一倍
「いえ、あなたには感謝しています。あなたの無責任な行いが、僕と娘たちを引き合わせてくれた」
「どうだろう。こと責任に関しては君も果たせていないように見える。だから五月ちゃん自らここに来た。頼りない君でなく、僕の所にね」
「五月君が...ここに...?」
マルオは無堂の近くにいる五月を見ながら疑問の声を投げかけた。
ほとんど黙って話を聞いていた綾は、無堂の近くにいる五月の姿に若干違和感を感じている。
「なるほど」
「?」
そんな時に零奈が発した言葉に、綾はさらに疑問を感じた。
「ああ、心中察するよ。親失格の烙印を押されたようなものだ。よければ僕が教えてあげようか、本当の父親のあり方を...」
「何を言ってるのですか」
ここぞとばかりに言葉を畳みかける無堂。
しかし、マルオは冷静に言葉を返した。
「よく見てください。ここに五月君はいない」
「何?」
「私はこちらです」
マルオの言葉に無堂は疑問の言葉が出たが、それに反応するかのように、少し離れた柱から本物の五月の姿が現れた。
そう。無堂の前にいる五月はただ星形のヘアピンをつけただけの三玖であった。五つ子の事をしっかりと見ていれば気付く程にずさんな変装である。
それを見た綾は違和感の正体にようやく気付くのだった。
「なるほどね...私もまだまだだわ」
「いえ、少しでも違和感を感じたのであれば上等かと」
「ありがと」
見抜けなかった無堂本人はというと何が何だか分かっていなかった。
「......なんのつもりだい?」
「騙してしまいすみません。ですが、こうなることはわかってました」
話しながら五月は柱からさらに前に出てくる。一花、二乃、四葉も五月の後ろに続く。
「それがどうした。ただ間違えていただけで...」
「愛があれば私たちを見分けられる。母の言葉です」
「また彼女の言葉か!いい加減にしろ!そんないい加減な妄言!いつまで信じてるんだ!」
興奮したように話す無堂の言葉をただただ聞いている零奈は、自然と綾と繋いでいる手に力が籠ってきた。
そんな零奈に綾が語りかける。
「大丈夫よ。あなたの子どもを信じなさい」
「綾先生...」
「今すぐ忘れなさい。お母さんだってそう言うはずだよ。思い出してごらん。お母さんがなんて言ってたか」
「お母さんが後悔を口にしていたことは覚えています」
「そうだ。君のお母さんは間違った!君はそうなるな!」
「五月...」
小さく零奈は五月の事を呼ぶ。それは近くにいた綾ですら聞き漏らすほどに。
しかし、何故かは分からないが五月には届いたのか、その瞬間ニッコリと笑みを五月は零した。
「私は、そうは思いません」
「君がどう思おうが関係ない
「ええ関係ありません。たとえ本当にお母さんが自分の人生を否定しても、私がそれを否定します。いいですよね。私はお母さんじゃないのですから。ちゃんと見てきましたから。全てをなげうって尽くしてくれた母の姿を。あんなに優しい人の人生が間違っていたはずがありません」
「五月...」
「うんきっとそうだよ」
五月の言葉に驚き言葉を漏らす四葉と、五月の言葉に同調する一花。そして、
「うっ...うっ...」
「零奈ちゃん...」
とうとう泣き出し口を押さえる零奈を綾は優しく抱きしめていた。
状況を理解できていない景はあたふたするしかなかったが。
「子供が知ったような口を...」
自分の手を強く握りしめ無堂は口にする。
「あなたこそ知ったような口ぶりで話すのですね」
「......どういうことだ中野君」
「恩師に憧れ同じ教師になった彼女の想いが、裏切られ見捨てられ傷ついていたのは事実。しかし、そこで逃げ出したあなたが知っているのもそこまでだ。その後の彼女が子供たちにどれほどの希望を見出したのかをあなたは知らない。あなたに彼女を語る資格はない」
無堂を睨みながら自身の言葉を伝えるマルオ。普段自身の感情を出さないマルオがここまで感情をむき出しにするのだ。相当怒り心頭なのだろう。
「お父さん」
「マルオ君...」
そんなマルオの姿に言葉を漏らす二乃と零奈。
「五月君。僕もまだ何かを言える資格を持ち合わせていないが...君が君の信じた方へ進むことを望む。きっとお母さんも同じ想いだろう」
「...はい」
五月を見ながらそう伝えるマルオは、誰にも気づかれずチラッと零奈の方を見た。
「無堂先生、最後まであなたからお母さんへの謝罪の言葉はありませんでしたね。私はあなたを許さない。罪滅ぼしの駒にはなりません。あなたがお母さんから解放される日は来ないでしょう」
「......っ」
五月の言葉に悔しそうに顔を歪めている無堂。
「僕がせっかく...」
「見苦しいですよ。無堂先生」
勇也が何か話そうとするところを零奈が言葉を発する。
「零奈ちゃん」
「五月さんがおっしゃった通りです。あなたはその罪を一生背負わなければならない」
「零奈、お前...」
驚きの目で綾と景が零奈を見る。零奈はその事にも気づいているが、それを気にせず前に出る。
「あなたは逃げた事にずっと罪悪感を持っていたのでしょう。そして、今回の五月さんへの行動はその罪悪感を少しでも軽くして解放されるため。五つ子のどなたかに娘のために何かした、という実績を得ることで解放される。そこで、唯一自分でも悩みを解消できそうな五月さんに接近した、というわけです。違いますか?」
「くぅっ...」
「
そんな零奈の姿を目にしたマルオはそう呟く。
「はぁー!?お前何言ってんだ?」
「いや上杉...中野の言わんとしてることも分からんでもないさ。あの立ち振る舞い、
勇也のマルオへのツッコミに対して、下田も零奈が
「そう。あくまでも罪悪感を軽くするため、つまり自分のため。だからすでにいない自分の元奥さんへの謝罪などが出てこなかった。いない人に謝っても罪悪感は軽くならないですからね。そんな人がこれ以上この子たちに近づかないでください!」
「お前ぇ...」
「はっ。小学二年生にここまで言われて見苦しいったらないぜ、おっさん」
「チッ」
「べー、です」
これ以上何を言っても無駄と悟った無堂は舌打ちをして、その場を去っていった。
そして無堂がいなくなった瞬間。
どんっ
五月の周りに姉妹が集まってきた。
「わっ」
「あんたやるじゃない」
「もーハラハラしたよ...」
「良かった!」
「五月かっこよかった」
「あはは...皆がいてくれたおかげです。下田さんに上杉君のお父様、そして和義くんのご両親もありがとうございます」
「立派だったぜ」
「うんうん」
五月のお礼にサムズアップで下田が感想を伝えると、綾もそれに同調した。
「お父さん。ありがとうございます」
「......」
マルオは五月の感謝の言葉には振り向かずその場から立ち去る。それに勇也と下田も続く。
「そして...」
バッ
「おっと...」
「レイナちゃん...ありがとうございます...」
「よく、頑張りました...」
「...うん!」
零奈に抱きついた五月は少し涙が流れた。
そんな五月の頭を撫でながら、零奈は親が子どもにするように優しく褒めてあげるのだった。
~校門近く~
「くそっ……」
五月との接触まではうまくいったが、その後が思い通りにいかず結局は五月本人から拒否された無堂。
自分の思い通りにいかなかったことで苛立ちを覚えながら歩いていた。
そんな時だ。そんな無堂に声をかける女性がいたのは。
「こんにちは。貴方が無堂仁之介さん?」
「ん?」
その女性は着物姿ではあるが日傘をさしていることもあり顔まで確認ができない。
「何だね君は?」
「あら、失礼いたしました。私のことは存じ上げているとばかり思っておりました」
女性はそう言うと、無堂に顔が見えるように日傘をずらした。
「あ、あなたは……諏訪楓さん!」
「ふふふ…やはり知ってましたか。私の孫がお世話になったようで」
ニッコリと笑いながら楓は話しているが、無堂には相当なプレッシャーがかかっている。先ほどのマルオの凄みの比ではない。
(これが諏訪楓……なんてプレッシャーだ。息が、もたない…)
「安心してください。別に何かするわけではありません……今のところは」
「っ…!」
一瞬、笑顔から覗かされた獲物を狩るような目が無堂を
それによって、無堂は蛇に睨まれた蛙状態である。
「そうそう。近々発表させていただくのですが、私今度籍を入れることになりましたの。この歳になっても結婚とは良いものですね」
「はぁ…お、おめでとうございます」
結婚の話になると、本当に嬉しいのか先程までのプレッシャーが嘘のように霧散して、当の楓本人はウキウキとしている。
「ありがとう。ちなみにお相手は貴方の良く知っている人…」
「え?」
「虎岩温泉のご主人です」
「!」
「ふふっ…良い顔をしていますね。そう、これで亡くなったとはいえ私は
「あ…あ…」
「聞かせていただきました。あの子がどのような人生を歩んだか……あの人が愛した娘に対する所業、断じて許すことはできません!」
コツコツと楓は固まってしまっている無堂に近づき帯に挿していた扇を持ち、開かずにそれを無堂の顎に当てクイッと上に上げる。
「先程もお伝えしましたが、私から今回は何もしません。しかし…………桜に五つ子といった私の孫に何かあれば……分かってますね?」
「は…はい…」
無堂は顎を上げられた上でそう返事をする他なかった。
「よろしい」
そこで扇を顎から離し、楓が無堂から離れた事で無堂は膝から崩れ落ちた。
楓はその後、その扇を開き口元に持っていき言い放つ。
「その恐怖と罪悪感と共にこれからの人生を歩んでいくのですね。行きますわよ」
『はい!』
楓はその言葉を残し、連れと共にその場から離れていくのだった。
「あら?」
先程の楓さんのやり取りを陰からそっと見守っていたのだが、楓さんが無堂から離れた事で姿を出した。
「和義さんではないですか、どうしましたか?」
「いやー、まあ気になったので様子見を。てか、気付いてましたよね?」
「はて?」
この惚け方…零奈そっくりだ。さすが本当の親子。
「はぁぁ…やはり怒らせたら恐ろしい方ですよ……これ、さっき僕が作った焼きそばです。お連れの方の分もあるんで食べてください」
「あらぁ、和義さんの手作りですかっ。ここまで来た甲斐があったというものです」
「屋台では学生向けに濃い目に作ってたのですが、これは楓さん用に少し薄味にしてますので食べやすいと思いますよ」
「まったく…連れの者への用意といい、流石の一言ですね」
お連れの方に焼きそばを渡しながら話すと誉められてしまった。
「…これであいつも接触してこなくなれば良いのですが」
「大丈夫でしょう。私が見たところ、かなりの小心者。この街にすら近づくことは無いですよ」
「そうですか」
そこで携帯に着信が入ったのでメッセージを確認する。
「すみません、ちょっと用事ができました」
「あら、和義さんとデートできると思ったのですが…」
「思ってもいないことを…早く帰ってお祖父さんに会いたいって、顔に出てますよ」
「え?」
指摘してあげると、顔を赤らめ触る楓さん。
「ご結婚おめでとうございます。お祝いの品などはまた改めて」
「ふふっ、ありがとうございます。桜や五つ子たち孫の事、これからもよろしくお願いしますね」
「もちろんです」
そう返事をして、その場を後にした。
記念すべき100話目は無堂との対決です。
ほぼ原作通りにはなりましたが、零奈がいる事もありましたので、ちょっとだけ付け加えています。
後、和義ってキレると怖いんですね。あのまま零奈が止めなければ殴っていたかもしれない勢いでした。
それだけ、五つ子のことを大事に想っているのかもしれません。
原作との違いと言えば楓さんの登場もですね。
楓さんのプレッシャー半端ないですね。少し無堂の事が可哀そうになってきました。
学園祭も次のお話で終わりを迎えると思います。
学園祭も終われば後は完結まで一直線ですかね。
そうなってくると、風太郎と四葉の関係性も気にはなってくるところです。
それでは次回も読んでいただければと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
外伝的に他のヒロインのお話も書いた方が良いでしょうか?
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外伝はいらない
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二乃
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三玖
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四葉
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五月
-
零奈
-
桜
-
ハーレム