五等分の奇跡   作:吉月和玖

102 / 137
第12章 その先へ...
101.夢


「ねぇ?ここまでする必要ある?」

 

ガタンガタン……

 

僕は今、一花と二乃、三玖に五月の五人で電車に乗っている。

べつにどこかに出掛けているという訳ではなく…

 

「何で風太郎と四葉のデートの尾行をしなきゃいけないの?」

「これは四葉の今後に関わってくることなのよ。上杉の奴をしっかり見定めとかないと」

「まあまあ、フータロー君がどんなデートを計画したのか気になるじゃん」

 

はぁぁ…重大な事が起きたから来てくれと言われて来てみればこれである。

一花も仕事休みなんだからどっかに行きたかったんだけどなぁ。

一花は一花でノリノリだし…

 

「カズヨシはあんまり気乗りしてない?」

「まあ、他人(ひと)のデートを観察するのは気が引けるって言うか……まさか、僕達のまで付いてこようとか考えてないよね?」

「それはないわよ」

「うん、ない」

「ありえませんね」

 

三人が何故か顔を赤くして僕の考えを否定した。

何で顔を赤くしてるんだ?

 

「あんなキスシーンを見せられたら、もう付いていけないわよ!」

「あんなのを見せられるなら教室まで付いていかなければよかった…」

「付いていったらまた見せられそうです!」

 

何かゴニョゴニョ三人で言ってるが、まあ付けてこないなら良しとしよう。

しかし……

別の車両にいる風太郎を見た後に隣の一花を見る。

そしてこの間風太郎と話した事を思い出していた。

 


 

「は!?まだ付き合ってないの!?」

 

日の出祭の次の日。振替休日だった為、僕の家に珍しく勉強に来ていた風太郎に四葉との関係を聞いてみたが、思いもよらない回答が返ってきた。

 

「え?だって、後夜祭を二人で回ったんだよね?」

「なぜそれを知っている」

「いや、一花から姉妹で回ってる時に四葉が誰かに呼ばれて抜けたって言ってて、で風太郎は誰かに会うって言って連絡してたから」

「お前のネットワークは凄まじいな」

「それで?何か気がかりでも?」

 

僕の質問に鉛筆を置いた風太郎が真っ直ぐ僕を見て話し出した。

 

「俺は四葉に告白された時は、少なからず学生の恋などと馬鹿にはしていなかった。ただ、あの時は自分の気持ちの整理がつかなかったからな。四葉には悪かったが先延ばししてもらった」

「まあ、そこは僕もおんなじだから僕からはなんとも…」

「だが、修学旅行を投げ打ってまで自身の気持ちの整理を行ったお前の姿を見て真剣に考えるようにした。俺は誰かを好きでいるのかと…」

「へぇ~」

「そこで……一花に惹かれていた自分もいたんだ」

「ぶーっ……ゴホッゴホッ…は!?」

 

飲み物を飲んでなくて良かったぁ。今何て言ったこいつは。

 

「だから一花に惹かれていた、と」

「いや、聞こえてたから!え?どゆこと?」

「……あいつは妹たちのことを想う優しさを持っている。同じく妹がいる俺には良く分かる。多分何かに悩んで妹たちから一歩引いてる時期があったんじゃないか?」

 

風太郎も勘が良い時があるからな。

僕と風太郎。二人の事を好きになってしまった頃の事だろうな。

 

「それに、夢や自分自身のために、強くあろうとする姿も持っている。まあ、そのせいで無理して自分自身を追い詰めてしまうようなところもあるがな。まさにさっき言った一歩引いている時期がそれだ」

「ホント、よく見てるよ。彼氏の僕が嫉妬するくらい」

「う、うるさいぞ!」

「なるほどね。それでか、僕が風太郎に一花との交際を報告に行った時に様子がおかしかったのは」

「本当にお前はよく見ている…」

 

まあ、あれだけあからさまだったら気付くよ。

 

「だから四葉とは付き合えないってこと?一花に惹かれている自分がいるから」

 

窓を開け外の景色を眺める。昼とはいえもう肌寒くなっている季節だ。

 

「ああ」

「だけど、後夜祭に四葉を誘ったんだよね。あれは?」

「……あいつとは学園祭を裏方業務で一緒に過ごす事が多かった。それに……あいつといると安心するんだ。家庭教師で苦労してた時も、学校行事で大変だった時も……いつもそうだった。和義とは別視点でずっと気にかけてくれていた。お前と四葉、二人の応援があったから今の俺はここにいるんだと思っている。まあ、京都での出会いがなければお前とだって今こうして同じ時間を過ごせていないだろうがな」

「……」

「そういうわけで、俺の今の気持ちを確かめるために二人で過ごしたんだ。四葉には悪いとは思っている」

「ふ~ん、四葉にはなんて?」

「もう少し待ってくれ、と別れ際に伝えてる。一花と四葉二人の女に惹かれている自分がいて、一花が和義と付き合う事になったから四葉、はなんか違うんじゃないかと思ってな」

 

まさか一花に続いて風太郎にまで同じような相談を受けようとは......

 

「うーん...それで?後夜祭楽しかった?」

「え?あ、ああ。楽しめたぞ」

「それは祭の雰囲気にあてられて?」

「あ...」

「ふっ、答えは出てるみたいだね」

 

そう伝えながら風太郎の横に座る。

 

「?」

 

パァン

 

「痛(いて)ぇ!?」

「男を見せる時だよ風太郎!一緒にいれば楽しい、それでいいじゃん。あんまりくよくよと考え込んでたら、四葉に嫌われちゃうよ」

「...だな。ありがとな和義」

 

風太郎の背中を叩き、言葉通りに背中を押してやった。

まったく同じ女の子に惹かれるなんて。どこまでも僕達は似ているよ。

 


 

「ん?どうしたの?私の顔に何かついてる?」

 

ちょっとの時間とはいえ見すぎていたようだ。一花に顔を見られていることに指摘された。

 

「いや。今日も可愛くて見とれてただけだよ」

「ふぇ!?」

 

僕の言葉に一瞬で顔を赤くしている一花。ホント可愛いなぁ。

 

「あんたらイチャつくのは他でしてくんない」

 

二乃の言葉に三玖と五月が『うんうん』と頷いている。もうどうしろと...

 

ガタッ...キィーーッ...

 

そんな時、乗っていた電車が急ブレーキをかけた。

 

「「「キャーー!」」」

「と...」

 

咄嗟に隣に座っていた一花を抱え込む。

 

「大丈夫?」

「う...うん...」

 

向かいの席に座っていた三人も大丈夫だったみたいだ。

どうやら線路上に何かが落ちているのに気付いて急ブレーキをかけたようである。

風太郎達は立っていたが大丈夫なのだろうか。

ふと思って二人の様子を見ると、風太郎がドアに寄りかかりそれを守るように四葉が覆いかぶさっている。いわゆる壁ドン状態だ。

 

「......逆じゃない?」

「だよねぇ...」

 

僕のツッコミに抱きかかえていた一花が同意する。

前途多難だが頑張れよ風太郎。

 

・・・・・

 

「さぁ、好きなものを好きなだけ頼んでいいぞ!俺のおごりだ!」

「わーい、ありがとうございます!」

 

風太郎の口から出る事はないと思っていた言葉が発せられた。

風太郎、成長したんだね。

そんな風に感激していると。

 

「もどかしいわ...なんで、デートの行き先がファミレスなのよ...」

「......」

 

二乃のツッコミが入る。風太郎にしては頑張ってる方だと思うんだが。

 

「初々しくていいと思う」

「フータロー君にしては頑張った方だよ」

「一花に同意」

「ご飯もおいしいです」

 

五月いつの間に頼んでたんだ。

皆ドリンクを頼んでいるなか、一人セットメニューを頼んでバクバクと食べている。

 

「あ、クーポン使ってる」

「さすが風太郎。抜かりないね」

「ダメなの?」

 

二乃の言葉に三玖が質問する。

 

「デートでクーポンとかNGでしょ。カズ君が前に四葉と食事してた時は使ってなかったでしょ?」

「たしかに」

「まぁ、あの時は僕が持ってなかったからってのもあったしね。五月、僕このデザート気になってるんだ。良かったら五月も何か頼まない?」

「本当ですか!じゃあ、これをお願いします!」

「了解」

 

五月の食べたいデザートの確認を取ってテーブルにあるボタンを押して店員を呼ぶ。

さっきからチラチラ見てたから多分食べたかったんだろうなと思ってたけど案の定だ。

 

「あと、今のカズ君みたいなさり気ない気配りができればねぇ」

「?」

「さっすがカズヨシ君」

 

二乃と一花にはさすがに感づかれてるか。当の五月本人は分かっていないからいいけど。

 

「それにしても、なんであの二人はあんなにぎこちないのよ」

「たしかに。付き合いだして緊張してるのかな?」

「三玖の言葉に訂正。風太郎はまだ返事してないから、二人はまだ付き合ってないよ」

「え、それホント!?てっきりフータロー君返事してると思ってたよ」

「上杉の奴ぅ、四葉のどこが気に食わないのよぉ」

「まあまあ。風太郎も四葉の事を意識してると思うよ。今回のデートだって風太郎から誘ったんだし。案外このデート中に返事するんじゃない?」

「だといいんだけど」

 

二乃は心配そうに呟きながら二人の様子を伺うのだった。

なんだかんだで、二人の事を本気で気にかけてくれてるよね二乃って。

 

・・・・・

 

次に風太郎達が移動してきた場所は図書館である。

どういうチョイス?しかも四葉をよそに風太郎は携帯を見てるし。何してんだ?

 

「何かお探しですか?」

「いやっ、えーっと」

 

携帯をしまいながら何か考え込んでいる風太郎。まさかとは思うけど、携帯に話題のメモが記載されていたとかないよね?

 

「進学の現実味を帯びてきて...なんか...目標とか...夢とか見えてきたんじゃねーかと思ってな。そこんとこどうなんだ?」

「なんだか急な話題ですね」

「そ、そんなことないだろ。お前と二乃には聞けずじまいだったからな!」

 

そういえば一花は女優。三玖は料理。五月は教師と希望する進路が決まってるけど、まだ二乃と四葉は聞いてなかったな。

チラッと二乃を見るが、二乃は二人の会話に集中しているようだ。

以前は僕と同じ道をいくとか言ってたから考えるように言ったけど、何かしらの指針はあるのだろうか。

 

「私は...やっぱり誰かのサポートをして支えることが自分に合ってると思います。諦めから始めたことでしたが、いまではそれも誇れることだと気づいたんです」

「そうか。お前らしいな」

「いえ。そう思えたのは上杉さんがそうだったから」

「そう...なのか...?」

「そうです!」

 

なんとも和やかなムードではあるが、一人だけこの雰囲気が合わない者がいる。

 

「あーっ!ムズムズする!」

「まあまあ」

 

二乃である。

本棚を掴み今にも飛び出しそうな勢いである。五月はそれを何とか宥めているが。

 

「それでも具体的な目標は合った方がいいんじゃないか?ほら、小さい頃はあっただろ夢とか」

「むー...あったと言えばあったけど...だけどあれは...」

「ん?なんだ?」

「もう忘れちゃいました!あははは」

 

あれは忘れたというよりも言わないじゃないだろうか。

 

「ねぇ、皆は四葉の子どもの頃の夢って知ってる?」

「んー...どうだったかな...」

「とくにそういう話はしてなかったわね」

「でも、どうして?」

「いや、何となく気になったっていうか...」

 

姉妹にも話していないか...

 

「思い出したらちゃんと言えよ。あいつはあったって言ってただろ。二乃の昔の夢」

「!」

「えーっと、なんだったか...確かあれだよな...日本一のケーキ屋さん」

「そこまで具体的に言ってないわよ!」

「風太郎も記憶力が良いのか悪いのか」

「それでも多少は覚えているようですね」

 

そんな感じで図書館も後にするのだった。

 

・・・・・

 

もう夕方になる時間。おそらく最後の場所になるだろうが、ここって...

 

「ここって...」

「懐かしいな。お前このボロブランコ好きだっただろ」

 

そう。四葉とのジョギングでよくゴールにしていた。以前、風太郎と四葉がデートをした公園である。

 

「今日は上杉さんの思い入れのある所に連れてってくれるはずじゃ」

「ああ。家族でたまに行くファミレス。よく勉強に使う図書館。お前と来たその日から、ここもその一つだ」

 

なるほど。それで今日のデートコースのチョイスがこんな感じなのか。風太郎らしいっちゃあらしいか。

風太郎と四葉はお互いブランコを立漕ぎで漕ぎながら話をしている。

 

「お前、ここからすげー跳んでたよな。また見せてくれ」

「えっはい。それならお安いご用です」

 

そう言い放つと四葉は見事な跳躍を見せてくれた。

 

「ふふん!どうです」

「四葉。もし俺がそこまで跳べたら聞いてほしい話がある」

「えっ。それは...」

「行くぞ」

「ま。待ってください!無理しないでください。今日は結構調子がよかったから...いつもはもう少し後ろで...」

「いいから。見ててくれ」

 

そう言って風太郎がブランコを漕ぎだした。

あー、勢いをつけすぎだよ。素人の考えでやってて結果が目に見えてくる。

そう思って見ていたが、僕の予想とは斜め上の結果となってしまった。

 

ガチャン

 

風太郎が乗っていたブランコの鎖が腐っていたのか切れてしまったのだ。

そんなブランコに乗っていた風太郎は宙を舞い、そのまま地上に一直線である。

 

ドサッ

 

地上に叩きつけられた風太郎は微動だにしない。

 

「...し、死ん...」

「四葉!こんなデート一つこなすことのできない未熟者の俺だが、それでもお前の横に立って並べる男になれるように精進する。俺は弱い人間だから、この先何度もこんな風につまずき続けるだろう。こんなだせぇ俺の勝手な願いなんだが。その時には四葉。隣にお前がいてくれると嬉しいんだ。安心すんだよ。お前は俺の支えであり、俺はお前の支えでありたい。正しい道も間違った道も一緒に歩いて行こう。返事が遅くなって申し訳ないが、お前がよければ...俺と...俺は...好きです。結婚してください」

 

風太郎は跪き、片手を四葉に差し出しながらプロポーズをした。

 

「「「「「はぁーーー!?」」」」」

「えっ......ええええっ、ビックリしました!私...てっきり...段階を飛ばしすぎです!」

「そ、そうだよな、早まった...」

「付き合う前からそんなこと言われたら引きますよ!」

「もう一回だけやり直させてくれ」

「私じゃなかったらの話ですけど!」

「じゃあ今のは聞かなかったことに...ん?え?」

「小さい頃の夢...思い出しました。皆が憧れるベタなやつ...お嫁さん、です」

 

今まで見せた事ないような笑顔で風太郎に手を差し出す四葉。

 

「なあ?四葉って、おまじないやジンクスとかを信じてたりする?」

「え?ど、どうだろう」

「でも、林間学校のキャンプファイヤーとか、そういうお話を持ってきてるから信じてるんじゃない?」

「そっか...」

 

僕の質問に一花と三玖が反応してくれたが、風太郎と四葉のやり取りに驚いてる方が強いようだ。

 

「いや、今それを聞く!?」

 

二乃が至極当然の問いを投げかけてきた。

 

『あったと言えばあったけど...だけどあれは...もう忘れちゃいました!あははは』

 

あれは忘れたんじゃなくて言(・)え(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)んだね。

風太郎と四葉の思い出の地である八坂神社。そこで二人はこれから勉強を頑張ることをお互いに誓い合った。それ以外に、風太郎の最後の所持金をお賽銭に使って二人で神様にお願い事をしたらしい。

 

『神様にお願いしたことを誰かに言ったら願いが叶わない』

 

真実味があるわけではないがよく言われるジンクス。

それをつい先ほどまで信じて四葉は言わなかったんだね。

だけど、風太郎からプロポーズをされてそれも解禁。

 

「上杉さん約束ですよ。いつかきっと、私の夢を叶えてください」

 

二人はしっかりと手を繋ぎ、四葉の夢を叶えるためにこれから共に歩んでいくだろう。

頑張れよ風太郎。お前ならこれから僕がいなくてもきっとやり遂げていける。

そう心の中で風太郎にエールを送るのだった。

 

 




今回の話で風太郎と四葉が付き合う、というか風太郎が四葉にプロポーズをしました。
まあ、原作通りですね。
原作とちょっと違うのは五人の間で迷うのではなく二人の間、しかも一花と四葉の間で迷うというものです。
一花は和義の彼女でもあるんですけどね...

さて、完結まであと少しではありますが、どうか最後まで読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

外伝的に他のヒロインのお話も書いた方が良いでしょうか?

  • 外伝はいらない
  • 二乃
  • 三玖
  • 四葉
  • 五月
  • 零奈
  • 桜
  • ハーレム
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。