五等分の奇跡   作:吉月和玖

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こちらは、本編の『89.血の繋がり、そして...』内の途中から分岐した形のお話です。




外伝 あったであろう別の物語
決められない


ある日の夜、一人考え事をしたくていつもの屋根の上に来て夜空を眺めていた。

月も綺麗に見え、星もキラキラと輝いている。

 

「お前に任せるって言われてもなぁ…」

 

あの日、お祖父さんから聞いた話を結局まだ零奈には言えていない。五つ子を見る限りだと、一花と四葉も他の姉妹には言っていないようだ。

 

「どうしたもんかねぇ...」

「何が?」

「おわっ...!」

 

急に横から声をかけられたので、ビックリして危うく屋根から落ちそうになってしまった。

 

「一花!?心臓に悪いよぉ...」

「ふふん。前に私もやられたからね、お返しだよ。隣良いかな?」

「どうぞどうぞ」

 

『ありがと』と言いながら僕のすぐ横に座った。

 

「はいこれ、サービスだよ」

「さっすが一花。気が利くねぇ」

 

一花から差し出されたお茶を受け取ってそれをそのまますぐに飲みだした。

 

「夜とはいえまだ夏だから冷たいお茶は助かるよ」

「それは良かったよ。それで何に悩んでるの?」

 

回りくどく言っても無駄だと悟った一花は直球で聞いてきた。

 

「あー......ほらこの間防波堤でお祖父さんと楓さんが話してた内容。あの後お祖父さんと話す機会があったから、その時に零奈に話すかはお前に任せるって言われてさ...」

「なるほどねぇ...私と四葉も他のみんなに伝えるか迷ってるよ。まさか、桜ちゃんのお祖母さんが私たちのおばあちゃんだったなんてねぇ」

「「うーん...」」

 

二人腕を組んで唸っている。

 

「......でも、私は話してもいいかなって思ってるんだ。姉妹間で共有しておきたいし、ね...」

「そうだよね......うん、僕も零奈に話してみるよ」

「うんうん。うーーん、やっぱりこっちの星空はキレイだね」

「ああ。一花と前に話した時に気に入っちゃって、一人で頑張ってた時は良くここにきて夜空を見上げてたんだ」

「そっかそっか...」

 

一花は体操座りで膝の上に自分の顔を置き満足そうに答えた。

 

「ねぇ……カズヨシ君はもう決めた?」

「ん?何を?」

「…………誰が一番好きか、だよ」

「!」

 

一花の急な問いかけにビックリしてしまった。

 

「何で急に?」

「うーん……本当はもうちょっと早めに相談しようと思ってたんだけど…私ね、女優の仕事を本格的にしていこうと思ってるんだ。だからね、この夏休みで自分の気持ちに決着つけようと思ってるんだよ」

「それって……学校を辞めるってこと?」

「うーん…どうだろう……もしかしたら、辞めなくちゃいけないかもね…」

「そうか…」

「だから私は決めたの!どっちと付き合いたいのか!カズヨシ君は?どう?」

「……」

 

一花のそんな問いかけに考え込んでしまった。

僕は皆の事が好きだ。僕にとって特別な存在だって思っている。だけど、彼女達の中から一人選ぶということがいまだに出来ていなかった。

これなら一層『誰も選ばない』という手もありなのではないだろうか、と考える時もある。

 

「あちゃー、その様子だとまだ決めれてないか…」

「面目ない。一花にはあんなに偉そうな事言ってたのに、自分の事となるとこれだよ…」

「ふーん…ねえ?君は私たちのこと好き?」

「え?」

「いや、修学旅行の時に君が私たちのことを好きだって気づけたけど、君自身の口からは聞けてなかったからさ」

 

そういえばそうだ。僕の口からは僕の気持ちを伝えられていない。

 

『あんた、どんだけ私たちの事好きなのよ』

 

修学旅行の三日目、皆と再会した時に二乃に言われた言葉。

このおかげで自身の気持ちに気付けてはいたが、その気持ちを言葉にしていない。

 

「………僕は君たち五つ子の事が好きだよ。それに桜や零奈も」

「そっか…」

「だからこそ、『選ばない』という選択も考えてる」

「え……?」

「選べないなら、期待させて待たせるのも悪いと思ってさ…彼女を作らないのもありなんじゃないかなって思ってる。まあ、これは最終手段になるだろうけどね」

「カズヨシ君……」

 

ホント、情けない男だね僕は。

そんな思いを胸に夜空に輝く月を見上げた。

 

「……カズヨシ君は私たちを同じくらい好きだってことでいいんだよね?女子として」

「え?う、うん…」

「分かった。これは一旦お姉さんが預かるね」

 

そう言って立ち上がる一花。

え、預かるとは?

 

「あ、そうだ。うやむやになってたけど私はカズヨシ君が好きだよ」

「は!?」

「だから、さっきの答え。どっちと付き合いたいかって話」

 

え、待って。こんな状態の僕を選ぶの?風太郎じゃなくて?

混乱状態の僕に一花はさらに追い討ちをかけてきた。

 

「ん……」

「……っ」

 

僕の唇が一花の唇で塞がれている。

 

「ふふっ」

「な、何で……」

「だって、言葉よりもこうした方が私の気持ちが伝わるでしょ?」

「そ、そうだけど…」

「ちなみに、ドラマでの男の人とのキスは今はまだNG。だから君が初めて。で、どうかな?私のファーストキスだったんだけど………嬉しかった?」

「そ、それは…まあ…」

 

目を反らしながら呟く。きっと今の僕は顔が真っ赤だろうな。

 

「うん!その反応が見れただけで満足だよ。じゃあ私は部屋に戻るね。おやすみ」

 

そんな言葉を残して一花は中に戻っていった。

一方の僕は、何がなんだか分からずしばらくその場で放心状態で残ったのだった。

 


 

次の日の朝。あまり眠れずに朝を迎えてしまった。

昨日の一花のキスが頭を過りとても眠れなかったのだ。

 

『私のファーストキスだったんだけど………嬉しかった?』

 

「はぁぁ…」

 

一花の考えが分からない。そういえば、預かるとかなんとか言ってたけどあれはなんだったんだ。

どっちにしろ今日は仕事が休みで良かったぁ。こんなんじゃ失敗ばかりしそうだったし。

布団を片付け、自らのお茶を用意して一服する。

 

ドンッ…ドンッ…ドンッ…

 

そんなゆっくりの時間を過ごしていると、凄い勢いで部屋のドアが叩かれた。

こんな朝から何事?

 

『私よ!起きてるんでしょ?開けなさい!』

 

二乃?

 

ガラッ…

 

「おはよ二乃。朝っぱらからどうしたの?」

「入るわよ」

 

え、無視?てか……

 

「「「お邪魔します」」」

 

二乃に続いて三玖と五月と桜も入ってきた。

え?え?

 

「おっはよー、カズヨシ君!よく眠れた?」

「おはよう一花。これはいったい…」

「まあまあ。今日はカズヨシ君は仕事休みなんでしょ?てことで、私もおじゃましまーす。ああ、おじいちゃんには朝食遅めでって言ってあるから」

 

一人だけいつも通りの一花も部屋に入ってくる。

本当になんなのだろう。

とりあえず全員分のお茶を用意して座る。

 

「えっと…それで今日はどうしたの?」

「一花から昨日のこと聞いたわよ」

 

僕の質問に二乃が答える。

昨日のっていうと…どれだろう?色々ありすぎて分からないんだけども。

 

「カズヨシが誰も選ばないかもって...」

 

あ、それ。

 

「いや、現状でって訳じゃなく最後の手段ってことだし...」

「その言い方では、その可能性もある、と言っているようなものです!」

 

少し興奮気味に五月が反論する。

まあ確かにそこは否定できない自分がいる。

 

「でも、もう夏休みも終わりを迎えようとしている。こんな時期になっても誰を選ぶこともできない。夏休みが終われば、文化祭が始まりそして受験へと突入していく。それなのに、こんなうやむやな状態で君達と接していけないよ」

「「「「「......」」」」」

「それなら...いっそ...」

「待って!」

 

僕の言葉に一花が待ったをかけた。

 

「昨日カズヨシ君が私に言ったことがもう一つあるよね?」

「え?」

「私たちを同じくらい好きでいてくれているってこと」

「あ、ああ...」

「私のわがままで申し訳ないんだけど、もう一度カズヨシ君の口からみんなに言ってもらってもいいかな」

「ここで!?」

「ここで」

 

真剣な表情で言ってくるのでちょっと圧されてしまった。

だから、僕も真剣な表情で伝えた。

 

「.........僕はここにいる皆の事が好きだ。同じくらい、女性として惹かれている」

「「「「......っ!!」」」」

 

なんだろうこの新手の羞恥プレイは。めっちゃ恥ずいんだが。

 

「これでいいの?」

「うん♪よくできました!どうみんな、あの話本気で考えてみない?」

 

あの話?

 

「むー...今のカズ君の表情から本気だってことは感じたわ」

「うん。ドキッとしちゃった」

「し、しかし...あれはいくら何でも荒唐無稽と言いますか。あまりに無理があるのではないでしょうか」

 

何やら女性陣で話しているようだが僕を置いて行かないでほしい...

 

(わたくし)は一花さんの案に賛成いたします」

「桜!?」

 

そんな時、堂々と言葉を発した桜に五月が驚いたように反応する。

 

「あんた分かって言ってんのよね?」

「一花の案でいくと独り占めが出来なくなる」

「分かっています。それでも今はこの方法が良いと思うのです」

「「「......」」」

 

桜の言葉に二乃と三玖と五月が何やら思案の顔になって黙ってしまった。

僕はまだいた方が良いのだろうか。

お茶を飲みながらそんな彼女達を眺めている。

 

「あーーもーー!分かったわよ!三玖!五月!あんた達も覚悟決めなさい!」

「うん。私は覚悟決めてる」

「五月は?」

「うー...」

「五月ちゃん...」

「あーー、分かりました!私も一花の案で問題ありませんっ」

「よし!じゃあ満場一致ってことで......カズヨシ君いいかな?」

 

何やら話し合いが解決したようで一花から声をかけられた。

 

「何かは分かんないけど話し合いは終わったみたいだね。それで、僕はどうすればいいの?」

「話が早くて助かるよ.........カズヨシ君、私たち皆と付き合ってください」

「............は?」

「だ、か、ら。ここにいる私たちと付き合って、て言ってんのよ」

「私たち皆カズヨシの事が好き」

「和義君も先程私たちみんなを同じくらい好きと言ってくれました...」

「なので、ここは皆でお付き合いしていこうと先程決まったのです」

 

五人の言っている意味を理解することが出来ず思考がフリーズしてしまった。

 

「もしもーし。カズヨシくーん?」

「完全に固まってるわね」

「仕方ないかと。こんなことは前代未聞ですから」

「......っ」

「三玖さん?」

 

え?何?私たちと付き合って、て言った?

つまり......どういうこと?やばい、全然考えがまとまらない。

そんな思考の深いところに潜っていると、不意に顔が固定され唇が何かに塞がれた。

 

「......んっ!?」

「ん......ちゅ......どう?気がついた?」

 

気が付くと目の前に三玖の顔があるのだ。

え?もしかして、今......

 

「み、み、み、三玖!?あんた何やってんのよ!」

「何ってキスをした」

「はぁーー!?」

 

こっちも『はぁーー!?』だよ。

 

「これが私の本気」

「三玖...」

「本当はカズヨシを独り占めしたいよ。けど、このままだとカズヨシが離れていっちゃうような気がして...そうなるんだったら、みんなで付き合った方がいい」

「それはいいから、まず離れなさいよ!」

 

僕の顔を持って自身の気持ちを伝えてくれた三玖は、二乃の手により離されていった。

だが...

 

「ん......」

「んーっ......!」

 

僕の唇はまた違う相手に塞がれてしまったのだ。

 

「「桜!?」」

「んっ......はぁー......」

「ぷはっ......さ、桜?」

「ふふっ、(わたくし)も三玖さんと同じ気持ちです。どうか(わたくし)達とお付き合いしてください」

 

ニッコリと微笑む桜。

 

「もぉー我慢できないわ!カズ君っ!」

「はい!」

「んっ......」

「んむっ!?」

 

顔をがっしりと腕で抱いてきた二乃に無理やり唇を奪われた。

 

「んっ......ちゅっ......ん、カズ君......」

「......二乃」

「私たちがここまでしてるのよ。あんたも覚悟しなさい」

「......」

 

彼女達にここまでさせているのだ。僕も覚悟を決めないといけないのかもしれない。

そんな考えをしながら周りの彼女達を見ていると不意に五月と目が合った。

そこで彼女はごくっと息をのんだように感じる。

 

「あ...あの...わた、私は......私たちの事をもし受け入れてくれるのであれば、和義君から私にキスをしていただけないですか?」

「え?」

「おー...五月ちゃんも言うねぇ」

「むー...その手があった」

 

驚いている僕をよそに、一花と三玖がそれぞれ口にする。

この娘達は本当に肝が据わっている。

 

「私たちもそれなりの覚悟をしているのです。和義君にも覚悟が出来ているのであれば、お願いします」

 

ふざけている訳ではない。それは、まっすぐにこちらを見ながら話している五月の雰囲気から感じ取れる。

ならば僕がとる行動は。

少し離れた場所にいる五月のそばまで寄り、五月の顔にそっと手を添える。

その瞬間ビクッと震える。

 

「嫌なら言って。五月が嫌がることはしたくない。雰囲気に流されて言ってるのであればここで止めるから」

止めないで...私だって和義君と、キスしたいの...

 

僕の言葉に小さな、でも力強く五月は答える。そして目が閉じられた。

五月が震えているが、かく言う僕も実際には手が震えていると思う。何せ自分からキスすることは初めてだし、他の姉妹や桜が見ている前なのだから。

それでも意を決して自分の唇を五月の唇に当てがった。

 

「ん...」

 

唇が触れ合ったのはほんの数秒かもしれない。でも自分からするのとされるのとでは体感時間が違うように感じる。

顔を離して五月の顔を覗き込む。

 

「あ......」

 

ツーっと目から涙が一粒流れる。

 

「五月!?」

「あ...す、すみません。これは違うんです。嬉しくって...」

「そ、そっか...」

「「......」」

「もしもーし」

「二人の空気醸し出しちゃってるけど」

「私たちもいることを忘れないでほしい」

「そうです」

「す、すみません」「ご、ごめん」

「息ピッタリ...」

 

四人からの言葉に五月と同時に謝ると、三玖がさらにジト目でこちらを見てきた。

ホントごめん。

 

「まあ、なんにせよ。カズヨシ君からもOKってことで。これからも私たちのことよろしくね♪」

 

一花の一言によりこの奇妙な六人の関係がスタートするのだった。

 

 




アンケートで取らせていただきました外伝です。

第一弾目は、回答数が多かったハーレムを作成しました。
とはいえ、ハーレムって半端なくご都合主義で書いちゃいますね。その辺りはご了承いただければと思います。
後、四葉はハーレムから抜かせていただきました。そうしないと風太郎の相手がいないので...

以前よりも投稿が遅れると思われますが、今後もよろしくお願いいたします。

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