三玖と一緒に作った昼食の後、皆に集まってもらった。
ちなみに風太郎は仕事中で、らいはちゃんは自分の部屋で宿題をしている。
「悪いね。ちょっと皆に話しておきたいことがあるんだよ。ちなみに一花は知ってるからここにいなくても問題ないよ」
そう言って、四葉と桜を見るとコクンと頷かれた。
「話しておきたいこと?……それはいいんだけど、なんでレイナちゃんはカズ君の膝の上に座ってるのよ?」
「いやー、兄妹のスキンシップだよ」
僕は今胡座をかいて、その足の上に僕が抱き抱えるように零奈が座っているのだ。
今から話す内容的に近くにいた方がいいと思ったからだ。
「ふぅ~ん...?」
ジト目で見てくる二乃。
「まあ兄妹なのですから問題無いんじゃないですか?」
「ま、まあ。そうなんだけど」
零奈の事情を知らない桜の反応はまっとうなので、これ以上二乃も何も言えないようだ。
「兄さん?いったいどういうつもりですか?」
「まあまあ」
僕にだけ聞こえるように零奈から質問されたが、零奈の方を向かず答える。
「むー……」
「そうだ。今から話す内容については他の人に極秘、てか風太郎やらいはちゃんにも内緒で頼みたいんだけど」
「?ということは、私たち家族に関係するもの?でも、桜がいるけど…」
三玖はそう言いながら桜の方を見る。
「五つ子と桜両方に関連することだよ。あ、零奈は小さいからいいかなって……それで最近だけど、お祖父さんと楓さんが前より仲良くなってるって思わなかった?」
「確かに…それが、今から話す内容に関係してくるのですね?」
「ああ。で、今から話す内容は一花以外に知ってるのは、四葉と桜だね」
「「「「え?」」」」
話の内容を知らない四人は驚き、四葉と桜を見た。
「まず、今から話すことを知ったのは、この間一花と四葉と三人でジョギングに行った帰り道で桜に会った時なんだけど。その時に防波堤で…………」
と、一通りを話してみた。
「え……つまり、桜のお祖母さんは……」
「お母さんの産みの親…」
「そして、私たちにとってもおばあちゃんということでしょうか……」
「……っ!」
二乃と三玖、五月は驚き僕を見ている。いや、僕ではなく零奈かな。
その零奈は、抱き抱えている僕の中で緊張している様子だ。
そんな零奈を少し強く抱きしめ、手を握ってあげた。
「あっ……兄さん…」
そして、小さな零奈の手が握り返してくる。どうやら、少しは動揺が和らいだようだ。
そんな様子を見て、姉妹達は僕が零奈を抱き抱えている理由を理解したようだ。
「しかし、これだけでも衝撃的ですが……」
「うん…まさか、桜とお祖母さんに血の繋がりがないのも驚き…」
「これ、下手すればゴシップとかになるんじゃない?」
「かもね。まあ、楓さんの事だから握り潰すと思うけどね」
二乃の発言にそう答えたものの、少しは心配ではある。
「それにしても、おじいちゃん再婚とかするのかなぁ」
「そうよねぇ…そうなると、なんだかロマンチックだわぁ~。何十年越しの恋。二人は他の人と結ばれることもなく、そして再会。二人の愛を引き裂く人はもういないんだろうし…」
四葉の言葉に、二乃が一人妄想に浸っている。こういうの好きそうだもんね。
「そうなると、私たちと桜は親戚になるね」
「そうですね。血の繋がりがあっても書類上では私たちの母は娘とならなかったですが、お二人が結婚すれば義理とはいえ、娘になります」
「そうなると、
「うーん…こんがらがってきたぁ…」
四葉の脳は限界のようだ。
その後も皆各々盛り上がっているようだ。
「零奈はどうする?」
「え?」
「
「そ、それは……果たして信じて頂けるでしょうか……」
「信じる、信じないの前に。名乗り出たいか、出たくないか。じゃない?」
ずっと前を見ていた僕は、そこで下の零奈を見る。
すると、見上げてきた零奈と目があったのでニッコリと笑ってあげた。
「まったく、貴方という人は…彼女以外の女性にこのように寄り添ってはいけませんよ。そうするとこんなことが起きてしまうのですからね…………ちゅっ」
次の瞬間僕の唇に、零奈の小さな唇が触れた。
「「「「なーーー!?」」」」
「あら」
「ちょっ!零奈!?」
突然の零奈の行動で、僕は口元を隠しながら顔を離した。
「えっと…これも、兄妹としてのスキンシップに含まれるのでしょうか?」
「含まれるはずないでしょ!何してんのよ、お母さん!」
「いくらなんでも、それは擁護できないよ、お母さん…!」
「そうです!やりすぎですよ、お母さん!」
「わー!みんな落ち着いて!みんなレイナちゃんをお母さんって呼んじゃってるよ!」
もうぐだくだだよ。
「えっと、先ほどの零奈ちゃんの行動にも驚きましたが…皆さんお母さんとは…?」
「「「「あ……」」」」
「「はぁぁ……」」
そこで零奈は僕から離れ、姿勢正しく正座で僕の前に座り直した。
「桜さん」
「は、はい!」
「改めまして、直江零奈こと中野
頭を下げながら自己紹介をする零奈。
「えっと…これはご丁寧に………え?
「はい、ここにいる…ああ、一花も入れた五つ子の母です。先日はお墓参りありがとうございました」
「え……えぇぇーー!?」
珍しい桜の大きな驚きの声が響き渡った。
「えっと…つまり、
「何でしたら、この子達のおねしょを卒業した年齢をお伝え出来ますよ?」
「「「「やめてっ!」」」」
おー息ピッタリ。五月も敬語が抜けてるよ。
「あはは...これは本当のようですね。でしたら、お婆様はその...
「はぁぁ...子どもの頃、父には母は私が生まれてすぐに亡くなったと言われていたのですが、こういう経緯があったのですね。なるほど、これは子どもには言えませんね」
「それで?どうするの零奈?楓さんに伝える?」
「............伝えてみようと思います。例え信じてくれなくても......」
「そっか...」
「ま、私たちも一緒にいくから問題ないわよ」
「ですね。一花が帰ってきたら行きましょうか」
「うん。そうしようよ!」
何とかまとまったようだね。そう安心をしていると、三玖が爆弾を落とした。
「ん...それよりもお母さん。さっきのキスは看過できない...」
「そうよ!あれはダメでしょ!」
「反省はしていますが、あんな風に優しく寄り添ってくれたら我慢できませんよ...」
いや我慢してよ。
「それは分かりますが...」
分かるんかいっ!
五月の零した言葉にツッコミを入れてしまうのだった。
その日の晩。一花が帰ってきたところで皆で楓さんのところに行ったそうだ。
そこで零奈は自分のことを楓さんに伝え、それを信じてくれたそうだ。そこで二人は涙を流しながら抱き合ったそうだ。
とても良い話である。良い話ではあるのだが…
「なんでこうなった?」
楓さんとのやり取りの話は、夜僕の部屋に来た零奈と一花から聞かされた。そこまでは良かったのだが、何故か今僕の両側で二人が寝ているのだ。
「なんでって、言ったではないですか。今日は兄さんと一緒に寝たい気分だったと」
「それで、お母さんとカズヨシ君を二人っきりにしたくない私たちでじゃんけんして私が来たの。皆で来ても良かったけど、どっちにしろカズヨシ君の隣は二つしか空いてないし」
「皆で来なかったことにはありがたく思ってるよ」
明日は早いのと、何を言っても無駄だと判断した僕は、二人がすることに文句を言わず今の状況になっている。
ちなみにだが、布団を並べているが二人ともほとんど僕の布団に入ってくっついている。
「それじゃあ、おやすみ」
そう言うと二人は目を閉じた。僕もまた目を閉じる。疲れていたのか、程なくして睡魔に襲われて眠りについた。
翌朝。まだ日が出る前に目が覚めた僕は、横にいるはずの一花の顔を覗き込んだ。彼女は穏やかな表情を浮かべていて、その顔はとても綺麗だと素直に思えた。
……ずっと見ていたい。そう思えるのは彼女だからだろうか。
なんて思っていたら、不意に彼女が瞼を開いてこちらを見た。一瞬、ドキッとしたがすぐに彼女の頬が緩んで笑みに変わる。
「おはよう、カズヨシくん」
「おはよう、一花」
朝起きて最初に見る人が一花だというのはとても幸せなことだなぁと思いながら挨拶を交わす。
「どうしたの? 私のことじっと見つめちゃって……もしかして見惚れちゃったとか?」
冗談めかして聞いてくる彼女に、「そうだね」と答えた。すると、彼女は驚いたように目を見開いて固まってしまった。
「あれ、違ったかな? でも、確かに君のことは可愛いと思ったし、それに綺麗だなって思ったから間違いじゃないと思うんだけど……」
首を傾げていると、突然抱きつかれた。
「ずるいよ! 私だってカズヨシ君に見つめられてドキドキしたんだよ?」
胸に押し付けられる形でいるため、彼女の鼓動が伝わってくる。いつもより少しだけ早く感じるのは気のせいではないはずだ。
「そっか。それは嬉しい誤算だね」
「もう……。そんなこと言ってるともっと好きになっちゃうぞ?」
上目遣いでこちらを見てくる一花。その姿に思わず抱きしめてしまう。
「わわっ!?」
「あー、うん。やっぱりこうしてると落ち着くかも」
腕の中で暴れるかと思っていたけれど、意外にも大人しくしている。なので、そのまましばらく彼女を抱きしめた状態でいた。
しかし、一花の背中に回した腕や手に肌の温かさをやけに感じる。
「ねえ一花?もしかしてだけど、服着てない?」
「あ、分かっちゃった?いやー、家以外ではこんなことそんなにないんだけどねぇ。カズヨシ君の近くが落ち着く証拠だよ」
「それは…嬉しいのか、そうでないのか判断に迷うね」
抱きしめているのを緩めながらそう伝える。
「別にカズヨシ君なら見てもいいんだよ?」
そんな僕に対して自分に被っている布団を剥がそうとしている一花。
「さすがにこれ以上はヤバいかも。色々と我慢できなくなりそうだし……」
「同感……」
二人でふふふっと笑っていると後ろから声をかけられる。
「おはようございます。お二人とも随分と朝から仲が良いですね」
声に振り返るといつの間にか零奈も起きていて、笑みを浮かべている。
笑顔ではない。笑みだ。
どこか怖いと感じるのは気のせいではないだろう。
「お、おはよう零奈…」
「おはようお母さん…」
「……」
挨拶をするも零奈からの返事がない。
返事はないがこちらに寄り添い、僕の腕に抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと
動揺を隠しきれず敬語に
「あら、私はただ和義さんのことが好きだという気持ちを表現しただけですが?」
「それを言うなら私だってカズヨシ君のことが大好きだよ!」
対抗するように今度は反対側の腕を抱き締められる。一花については服を着ていないので、柔らかいものが直に押し付けられていて理性を保つのがやっとである。
「「……」」
二人の視線が交わる。火花が散っているように見えるのは錯覚ではないだろう。
「二人とも落ち着いて。このままじゃ僕が遅れちゃうから…」
この場を収めるべく二人に声をかける。
「それもそうですね。そろそろ起きましょう」
「わかったよ…」
二人はあっさり離れてくれたので助かった。これでなんとかなりそうだと思ったのも束の間。
一花が起き上がろうとしたのだ。今の一花の状態に気づいた零奈はその行動を止め、僕にこちらを見ないように指示する。
「一花!なんて格好をしてるのですか!兄さんもこっちを見てはいけません!」
「えへへ、ごめんね。すぐに服着るから」
そう言って僕の後ろでゴソゴソと聞こえるので服を着ているのだろう。
危なかった。あと少し遅かったら大変なことになっていたかもしれない。
「全く。油断も隙もあったものではありませんね」
「それはお互い様だと思うけど?」
後ろでは二人が何か話している。
まったく朝から疲れるものだ。二人が部屋に戻っていった後、仕事着に着替えながらそう思うのだった。
本編『91.祖母と母』から削って今回は書かせていただいております。
五月と桜のシーンを今回も書けなかったので、次回には書きたいと思ってます。
投稿が週一ペースになっておりますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。