五等分の奇跡   作:吉月和玖

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葛藤

~風太郎side~

 

(こいつらはいったい何を言っているんだ…?は?和義と四葉が付き合っている……?)

 

廊下で自分を呼び止めてきた女子生徒の言ったことを理解できずに風太郎は固まってしまった。

 

「上杉君?話聞こえてた?」

 

そんな風太郎の行動に疑問に思った女子生徒が声をかけた。

 

「わ、悪い。うまく聞き取れなかったんだが、和義がなんだって?」

「だからっ。直江君と四葉ちゃんが付き合ってるんだって聞いたの。それで、直江君と仲が良い上杉君に真相を聞こうと思って」

 

(くっ…聞き返しても変わらないか。何がどうなってそんな話が出てるんだ!)

 

風太郎は女子生徒の言葉に動揺してうまく頭が回らないでいた。

 

「ねえ?で、結局どうなの?やっぱり二人って付き合ってるの?」

「そ…それは……その噂はデマだ」

「え……?」

「ほ、本当に!?」

「あ、ああ…和義と四葉が付き合っているということは断じてない」

 

なんとか平静を保って風太郎は答えた。

 

(なにせ、四葉は俺と付き合ってるんだからな)

 

うんうんと腕を組んで自分を納得させている風太郎。

 

「デマかぁ……」

「でも、二人ってクラスでもすごく仲良いよね」

「うんうん。お似合いって感じがしたから噂の信憑性があったんだよね」

 

グサッ…

 

「だよねっ。学級長の仕事も息ピッタリって感じだし。なんて言うの?長年連れ添った間柄って感じでさぁ」

 

グサッ…グサッ…

 

「じゃあ、上杉君に隠してとかもありえるかなぁ」

 

(え……?)

 

女子生徒達は知らず知らずのうちに風太郎の心に少なからずダメージを与えて去っていった。そして、知らないうちに風太郎はその場にうなだれていたのだった。

 


 

~二乃side~

 

(ちょっと待ってよ!なんでそんな噂が発生してんのよ!)

 

こちらもこちらで二乃は動揺をしていた。

 

「いやー、まさか直江君が四葉ちゃんとだなんてねぇ」

「ねぇー。ああいう子が好みだったのかなぁ?」

 

二乃の友人はそんな二乃の動揺に露知らず噂話に盛り上がっていた。

 

「……て、二乃?どうかした?」

「えぇ!?な、何が?」

「いや、急に黙り込んじゃってたから…」

「ううん、なんでもない。それよりその噂誰から聞いたのよ?」

「誰も何もみんな言ってるよ?」

 

(はぁーー!?)

 

「それより二乃。直江君や四葉ちゃんから何か聞いてない?」

「え…えーっと…何も聞いてないかなぁ…」

「そうなの?」

「隠れて付き合ってるとか?」

 

二乃の言葉に残念そうに答えたが、友人達はあまり気にせずまた談笑に戻っていった。

 

(私以外の付き合ってる四人のうち誰かなら分かるけど、なんでよりによって四葉なのよ!え、何?もしかして私たちにも内緒で二人ができてるってこと?でもだって、四葉は修学旅行のときに上杉に告白して、それでこの前上杉からの告白を受け入れてたじゃない。もう訳分かんない!)

 

スマホを操作している二乃であるが画面の内容は全然入ってきていない。

 

(こうなったら本人に直接聞くしかないわね!)

 

そして二乃はメッセージを打ち込みだした。

 


 

~三玖・五月side~

 

「ちょっ、ちょっと待ってください。なぜそのような噂が?」

 

椿の言葉に五月がいち早く反応した。三玖はまだ固まっているようだ。

 

「あれ?五月ちゃんには知らされてなかったのかなぁ。校内では結構有名だと思ってたけど」

「そんな……」

 

(校内では有名な話。では本当に?私たちの知らないところで…)

 

五月は自分の意思とは別の方向に考えがいってしまっていた。

 

「おっと…じゃあ私はこれで。ごめんねお邪魔して」

いえ…

 

忙しなく別のところに行く椿に対して五月は小さな声で答えることしか出来なかった。

 

「そ…そんなわけない…!カズヨシが四葉とだなんて…!」

 

先程まで固まって何も言うことがなかった三玖が不意に声をあげた。

 

「だって四葉はフータローと付き合ってるんだよ…ありえないよ…」

「そ、そうですよね。それに和義君がそんな私たちに内緒でなんてありえません。しかし、どうしてこのような噂が……」

「むー…そこがわかんない…」

 

はぁぁ、と三玖と五月はため息をついた。

そこに二人のスマホにメッセージが届いた。

 


 

~桜side~

 

「へぇ~、四葉先輩ねぇ」

 

小林の言葉に川瀬はピンと来ない顔で答えた。

 

(なんで?なんで四葉さんが?二乃さんではないのですか?)

 

「うーん…美月?その四葉先輩?と直江先輩が付き合ってるってのはなんかネタがあるの?」

「ほらこの前言ったリボンを着けた中野先輩。あれが四葉先輩だったらしいの」

「え?」

「ん?どうかした諏訪さん」

「い、いえ…」

 

(噂の人物は二乃さんではなく四葉さん?確かにリボンと言えば四葉さんですが、まさか…)

 

この間話にあがった、リボンを着けた中野姉妹の誰かが仲良さそうにしていた。この話を聞いた段階で桜は二乃であると予想をしていたのだ。

確かに桜もそのリボンの人物が四葉である可能性も考えた。だが、その当の四葉本人は和義の彼女に含まれていない。だから勝手に候補から除外していたのだ。

 

(和義さんは日の出祭を一緒に回るという話を校内でしていないと言っていた。でもあの時は''誰とも''とは言っていない。あくまでも二乃さんとです。でもでも、『皆と回りたい』と言っていただきました。その''皆''とは四葉さんも入っているのでしょうか…)

 

頭の中で悪い方向に考えがいってしまいそうな桜。そんな桜に川瀬が声をかけた。

 

「桜ちゃん大丈夫?」

「え?」

「さっきから考え込んでるように見えたから…」

「ご、ごめんね。私の話が原因だよね。好きな人の付き合ってる話なんか聞いて悲しくないわけないよね」

 

自分の噂話が原因であると思った小林は申し訳ない気持ちで桜に謝った。

 

「大丈夫ですよ。少し驚きはしましたが、このお話はあくまで噂。本人から聞いたわではないので」

 

(そう。あくまでも噂。実際に和義さんから聞き出さなければ分かりません)

 

「大人な反応だ…」

 

桜の反応に川瀬が口にする。

そんな時、桜のスマホにメッセージが届くのだった。

 


 

昼休みに教師に呼び出された僕と四葉は頼まれたプリントを持って教室に戻っていた。

 

「てかこの量だったら僕一人でも良かったよね。まったく、二人も呼ぶ必要ないじゃない…」

「ま、まあまあ」

 

僕の愚痴を聞いている四葉は、そんな僕を宥めてくれている。

 

「四葉は優しいねぇ。あ、風太郎のことはあんまり甘やかせちゃ駄目だよ?」

「うーん…直江さんに言われてもって思います。直江さんは私たち姉妹に優しいですし甘やかせてもくれて、頼りにもなります!」

「そうかなぁ…」

「そうなんです!」

 

笑顔で言ってくる四葉。こう正面から言われるとなんともむず痒いものだ。

 

「でもそうやって思ってくれてるなら目的は達成出来てるかな」

「目的ですか?」

「うん。四葉は困ってる人に対して手を差しのべてるけど、そんな四葉の甘えられる場所を作りたかったんだよ」

「そんなことを…」

「まあ結局は自分本位なんだけどね」

 

そこまで話して隣に四葉がいないことに気付いた。後ろを振り返ると立ち止まって何かを考えている。

 

「どうしたの?」

 

そんな四葉に声をかけると僕の横に駆け寄ってきた。

 

「やっぱり直江さんって女たらしですよね」

「え?」

 

どこが?と聞き返すよりも先に四葉は僕から離れて先に行ってしまった。

まあすぐに確認するようなことでもないからいいか。

 

「あれ?上杉さんがいます」

 

先を進んでいた四葉がそんな言葉を発しながら廊下の先を指差している。

確かに風太郎である。だが様子がおかしいように見える。どこかうなだれているように見える。

 

「うっえすぎさん!」

 

そんな風太郎に四葉は元気に声をかける。が、こちらを向いた風太郎はどこか元気がない。

 

「ああ……四葉か……それに和義……」

「大丈夫ですか?」

「ああ…………って、和義!?」

「おお!?どした?」

 

急に目を見開いて名前を呼ばれたので少し驚いてしまった。

 

「なぜ四葉と一緒にいる」

「は?なんでって、職員室に学級長として呼ばれたからだよ。ほら」

 

何故か真剣な顔で聞かれたが、それを疑問に思いながらも持っているプリントを掲げて答える。何なんだいったい。

 

「先生にプリントを持っていくように言われたんですよ。まあ量が少なかったので全部直江さんに持ってもらってるんですけどね」

 

頭をかきながら申し訳なさそうに四葉が言う。

 

「そ、そうか…」

「何なんだよ。変だぞ風太郎」

「上杉さん?」

 

四葉もどこか変な風太郎に気付いたのか心配そうに見ている。

 

「いや…その……」

「おっと…すみません、着信みたいです」

 

そこで着信があったようで四葉はスマホの操作をしだした。

 

「……和義!」

「何?」

「お前、俺に隠してることないか?」

「は?……そりゃあ一つや二つ話してないこととかはあるでしょ」

 

零奈の事とか楓さんの事とかまあ色々あるよね。

 

「それは俺に関わることなのか?」

「何々?どうしたのさ。今日の風太郎おかしいよ」

 

僕の言葉に詰め寄ってくる風太郎。何か必死さが伝わってくる。どうしたのだろうか。

 

キンコンカンコーン…

 

そんな時に予鈴が鳴る。プリントを持っている手前遅れるわけにはいかない。

 

「風太郎。今は時間がないから後で話そう」

分かった…

 

はぁ、なんでこんなことに。

 

「ほら、四葉も行くよ」

「は、はい!」

 

着信があってからずっとスマホとにらめっこをしていた四葉に声をかけて教室に向かった。

 

・・・・・

 

四葉のスマホに届いたメッセージは姉妹間で使っているグループメッセージだった。

 

『今日、緊急会議をするから放課後は全員カズ君の家に集合。いいわね』

『わかった』

『問題ありません』

『え?何々、何があったの?』

『集まったときに話すわ。一花も来れそうだったらお願い』

『はーい。私はもう仕事終わりそうだから先に行ってるね』

『桜には私から連絡しといたから。四葉もいいわね?』

『うん』

 

この時の四葉には何があったのかは分からなかった。しかし、メッセージからは有無を言わせないような雰囲気が出ていたため、四葉はただ一言だけ返事をするのだった。

 


 

そして次の授業ではホームルームを使って日の出祭の出し物を決めることになった。クラスの出し物については、結局焼きそばとパンケーキまでは絞れたんだが……そこからが進まない。

 

「うーん、見事に二つに割れちゃったかぁ」

「パンケーキが絶対いいって。映えとか良さそうだしさ!」

「何言ってんだ!屋台だぞ。屋台と言えば焼きそばしかないだろ!」

 

はぁぁ…まさに二つの陣営でのバトルだな。平行線だけどね。

 

「三玖と五月は何か意見はない?それぞれの発案者でもあるわけだけど」

「ごめん、何もない…」

「すみません、私からも…」

「いや、ないなら良いんだ。うーん…」

 

なんだろう。三玖と五月はどこか上の空のように見えるんだが。

そしてもう一つこの授業の中で困っている事がある。

 

「………」

 

なんで二乃は僕を睨んでいるんだ?

授業が始まってからというもの凄い形相で二乃が僕を睨んでいるのだ。

 

四葉。何故か二乃がずっと睨んでくるんだけど

実は私もなんですよ…私たち何かしちゃいましたっけ?

 

プリントで口元を隠しながら四葉に話しかけると四葉も睨まれているそうだ。そしてもう一度二乃を見るとさらに凄い形相になっていた。もうわけが分からん。

風太郎は風太郎で一心不乱に勉強をしている。普段だったら声をかけるが様子もおかしいしこのままにしておこう。

結局この日も出し物は決まらないまま話し合いが終わった。そこで三条先生に相談してみた。

 

「先生。出し物は必ず各クラスから一つなのでしょうか?」

「そうですねぇ。必ずしもという訳ではないので、二つ出しても構いませんよ。ただ、管理が大変になるかもですね」

 

とは言ったものの、このままでは先に進まないのも事実だな。

 

「仕方ない。うちのクラスからはこの二つでいこう」

「大丈夫でしょうか。私たちも実行委員の仕事もありますし管理がすごく大変だと思いますよ?」

「まあそこは、二乃や三玖に五月。それに、前田と武田に風太郎もいるんだ。きっと大丈夫だよ」

 

まあ、今の二乃と三玖と五月と風太郎には話が通じそうにないが…そこら辺はこの後話してみよう。

 

「ですね!よーし、頑張っていきましょー!」

 

そこで四葉とハイタッチをする。出たとこ勝負。やってみますか!

そんな風に気合いを入れてると、ガバッと肩を抱かれた。

 

「なんだなんだ。二人は仲がいいじゃねぇか」

「前田…暑苦しいんだけど…」

「しっかし、噂は本当だったんだなぁ」

 

僕の言葉を無視して話を進める前田。

しかし噂とは?

 

「俺たちにくらい話してくれれば良かったのによぉ」

「全くだよ。僕達の仲だと言うのに、ね」

 

なんだ武田もいたのか。てか、まじで何の事を言っているのか分からんのだが。

 

「まさかお前ら二人が……」

「前田!」

 

前田の言葉を遮るように声がかかった。この声って…

 

「んだよ!人が喋ってる…とき…に…よ…

 

声のする方に向いた前田だったがそこに佇む二乃の雰囲気に語尾が小さくなっていった。まじで怖いです二乃さん。

 

「そこの二人借りていいかしら?」

「お、おう!」

 

二乃に圧倒された前田は僕を解放した。

 

「ほら、帰るわよ。あんたも一緒に来なさい上杉」

 

そしてつかつかと教室の入口に向かう二乃。僕達には拒否権は無いようだ。二乃に続いて僕と風太郎と四葉は教室を後にする。

 

「で?どこに行くのさ」

「あんたの家よ、和義」

 

僕の家ですか。まあ色々と聞きたいこともあるからちょうどいいか。そこに零奈からメッセージがきた。

 

『一花が家に来ています。二乃から全員集合の号令があったそうですが何かありましたか?』

 

チラッとスマホの画面から前を歩く二乃に視線を動かす。僕には身に覚えがないが意味もなくこんなことを二乃がするとは思えない。

そういえば前田が噂がどうのこうの言ってたな。それも僕に対してって言うよりも僕と四葉にって感じか?

少し冷静さを取り戻してきた僕は、僕なりに推理していく。

なるほど僕と四葉に関する何かしらの噂を聞いたってことであれば、風太郎の昼休みの行動も頷ける。ってことはだ。その噂っていうのは……はぁ、嫌な予感がするなぁ。

 

『僕には何の事なのか分からないかな。今から帰るけど、中野姉妹以外に風太郎と桜も来ることになるからよろしく』

 

零奈へメッセージを送りスマホをしまった。目の前では二乃と桜が合流をしている。

はてさて、どんなことが待ち受けているのやら。そんな事を胸に我が家へ向かうのだった。

 

 




今回のお話では和義と四葉の付き合っている疑惑の噂に翻弄される各々の心境を書かせていただきました。
全員が和義の事を信じながらももしかして、と疑心暗鬼してしまう。正に葛藤している状況ですね。
特に風太郎が右往左往してしまってましたね。いかに四葉の事を愛しているかという表れでもありますね。

では、次回の投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

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