現在、家のテレビ前の机を囲うように僕達は座っている。そんな中僕と四葉は正座である。
「じゃ、みんな集まったし始めましょうか」
「二人とも何しちゃったのさぁ?」
「うー…私には全然身に覚えがないよ~」
心配するように一花が聞いてきたが、もちろん四葉には身に覚えがないので答えられない。その四葉は泣きそうな顔である。
「はぁぁ…兄さんは何か心当たりでも?」
「うーん、僕はなにもしていないつもりなんだけどね。ただ……」
「ただ、何です?」
「いや、昼休みの風太郎の様子がおかしかった事や前田の言っていた噂。そして僕と四葉二人に対する対応を鑑みれば想像がつくかなって」
「なるほど。兄さんの今の言葉で私も想像が出来ました」
「えーー!?二人とも分かってるの?私は全然分かんないよー!」
僕と零奈がお互いに考えていることが同じのようで、二人でお互いの顔を見てニヤリと笑ってしまった。肝心の四葉はまだ分からないようで隣で泣き叫んでいる。
「ふーん。さすがカズ君、察しがいいわね」
「ならはっきりと聞こう」
「ですね」
「はい」
三玖の言葉に五月と桜が頷いている。
「あんたら、私たちの知らないところで付き合ってるって。本当?」
「……えーーー!?」
「へ?」
「はぁぁ…」
二乃の言葉に一花は驚きのあまり立ち上がってしまっている。四葉に関しては何を言っているのか理解していない様子だ。って、やっぱりそんな噂が流れてたか。
「ちょっ…ちょっと待ってよ二乃!え、何?どういうこと?」
立ち上がった一花は状況の理解が出来ないためか、片手で頭を抱えながら思案している。
「私だってこの話を聞いたときには驚いたもんよ」
「まったく…」
「まったくです」
「
風太郎は今のところ話に参加していないが、うんうんと頷いている。
「えっと…つまり、今学校ではカズヨシ君と四葉が付き合ってるって噂が流れてるってこと?」
「そういうことよ。上杉、あんたもこの噂を聞いたんでしょ?」
「ま、まあな…」
「……て、えーーーーー!?」
一花が状況整理をしてくれたお陰でようやく四葉は事の経緯を理解したようだ。
「待ってよ!なんでそんなことになってんの!?」
「それは私たちが聞きたい…」
「うっ…」
四葉は立ち上がりながら確認をしようとするが、三玖の一睨みで言葉が詰まりまた正座で座り込んでしまった。
「まあまあ三玖。四葉だって混乱してるんだから、そう怖い顔しないで」
「和義君は四葉の肩を持つのですね?」
「まあ、今の四葉には味方がいないようだしね。これくらいはするさ」
完全に下を向いてしまっている四葉の頭を撫でながら五月に伝える。
「直江さ~ん…」
「まったく。その行動で他の皆さんへの疑心暗鬼を駆り立ててしまってるのは分かっているのですか?」
「分かってるさ。それでも困ってる四葉を見捨てられないよ」
零奈の言葉も気にせず四葉の事を撫で続けていた。
「はぁ…まあいいわ。それで?校内に流れてる噂はホント?それとも嘘?」
「分かってて聞いてるよね二乃」
「あら。私たちのことやっぱり分かってくれてるわね」
「それでも、私たちは二人の口から直接聞きたいって思ってる」
真剣な眼差しでこちらを見る三玖。とは言え、こちらからの回答は決まっている。
「その噂はデマだよ。僕は四葉の事を大事な友人、親友とも思ってる。だから彼女なんてありえないよ」
僕の言葉に零奈以外はどこかホッとしている様子だ。
「そ、そうです!直江さんは私にとっても大切な人ではありますが、それは友達としてであって…って親友なんですか!?」
今日の四葉はワンテンポ遅くて少し面白い。
「うん。少なくとも僕はそう思ってるよ。親友である風太郎の彼女だし、僕の彼女達の姉妹でもある。もう僕にとって特別な存在だよ」
「直江さん…ありがとうございます!ししし、じゃあ私たちは親友ってことで」
そこで僕は拳をつき出すと、四葉はその拳に自分の拳でタッチしてきた。
「風太郎の事で困ったことあったらいつでも言ってきな。相談に乗るから」
「はい!なら私も。姉妹のことで困ったことがあれば相談してくださいね!」
そこでお互い笑顔になった。そこに一人驚きの声をあげる者がいた。
「ちょっと待ってください。四葉さんって上杉先輩と付き合っていたのですか!?」
「あれ?桜知らなかったの?」
「聞いてません!」
僕の言葉に抗議の声をあげる。僕からは言っていないが、五つ子の誰かが言ってるのだとばかり思ってたよ。
「ま、まあ。桜ちゃんに言えてなかったのは申し訳ないってことで…」
「そ、そうね。そこは私も抜けてたわ…」
一花と二乃は『あはは』、と乾いた笑い声を出しながら申し訳なさそうにしている。
「桜には悪いけど、それよりももう一つ片付けなければいけないものがある」
「そうですね。なぜこのような噂が流れてしまったのか、ですね」
五月の言葉に三玖は頷く。
「確かにな。俺が見ていた限りではおかしな行動はなかったと思うが」
「その割には結構必死に僕に問いただしてたけど?」
「そ、それは…し、仕方ないだろう。あの時は本当に気が動転していたんだ」
「まあ良いけどね」
焦った表情の風太郎。まあそれだけ四葉の事を好きでいるってことだろうしね。
そんな時に手を挙げた者がいた。桜である。
「その事なのですが。いくつか
桜の言葉に皆が桜に注目した。
「まず一つ目として……和義さん。最近の告白に対する断り方を変えられたと聞いてます」
「え?」
まさか僕に話が振られるとは思ってもいなかったのでビックリした。
「そうなのですか?」
「あ、ああ。告白される数を減らせないかなって思ってね」
「なんて言ってんのよ」
「えー!?それは……た、大切な人がいるから君を好きになれない、って」
めっちゃ恥ずかしいのだが。
「兄さん…それは…」
「あれ?何かまずかった?」
「うん。まずくはないと思うよ。カズヨシ君らしいなとは思うけどね」
「?」
なんだろう。何か間違っていたのだろうか。
「なるほどね。それで学級長としてとは言え、一緒にいる時間が多い四葉に目がいったってことね」
「でも、それだけだとまだ弱い…」
「ですね。それではクラスメイトまでも、とはいかないでしょう。クラスメイトの皆さんは二人が学級長であることを知ってるのですから」
「そこでもう一つの心当たりです」
皆が悩んでいるところ人差し指を立てながら桜が話を続ける。
「このお話は先日和義さんと零奈ちゃんにも話したのですが」
「僕達に?」
「この間うちに泊まったときに話された事でしょうか?」
「はい、その通りです」
「そういえば、あの時も噂話について話してたよねぇ。でもあれって結局僕に覚えがないってことで話が終わったんじゃなかったっけ?」
そうそう。確か二乃と日の出祭を回る約束をしていなかったかって聞かれたんだよね。んで、もちろん覚えがない事を伝えたんだよね。
「確かにそうです。しかし、あの時は私が解釈した噂話について覚えがないと言っていただいたんです」
「なるほど。そういう事ですか」
顎に手を当てて考え込んでいた零奈が分かったと言わんばかりに話す。何かあったっけ?
「ねえ桜ちゃん。差し支えなければその時のお話を聞いていいかな?」
「はい。
一花の質問に先日桜がうちに泊まったときの話を話し出した。
「内容というのは、二乃さんと日の出祭を一緒に回る話をしていたのか、というものです」
「私!?」
「二乃…抜け駆け…」
「いやいや。そりゃあカズ君と一緒には回りたいけど、そんな話してないわよ」
「だね。その時桜に聞かれたときも今の二乃と同じことを僕も伝えたよ。皆と回りたい気持ちはあるけど二乃とはまだ話してないって」
「ん?ならその話は終わりなんじゃないか?今回の騒動にどう関係してくるんだ?」
「たしかにそうですね…」
そこで風太郎が皆を代表したかのように桜に問いかけ、それに四葉も同意する。
僕もそう思っていた。あれ?でも何か他に話してたような…
「そうですね。しかし、
あ!そうだ。確かにそんな話をしていた。桜の友人が話していた内容はもっと別物で…
「じゃあ桜のお友達が言っていたのはどういう物なのです?」
「''リボンの着けた中野先輩''と直江先輩が中良さそうに話していた、と。その内容が『二人のペースでやっていこう』と『日の出祭を一緒に回ろう』、です。私の中ではリボンを着けた中野さんと言えば二乃さんと四葉さんが頭を過りました。そして、このような話をするのは二乃さんだと思い、先日和義さんに追及したのです」
五月の質問に桜は丁寧に説明した。
「たしかに。私が聞いても二乃だって思えてくる」
「だねぇ~。私たちの中ではカズヨシ君の恋人でリボンを着けてるのはって考えちゃうから」
「ま、待ってください。それで先ほど和義君と二乃からそんな話をしていないと出たじゃないですか。じゃあ……」
五月が僕と四葉に視線を持ってきながら話している。
「え?」「へ?」
「そうです。最初はリボンを着けた中野さんだったものが、今ではそれが四葉さんになっているのです」
ガシッ…
「そうなのか?やっぱりお前らはそうだったのか!」
「だぁー!落ち着けっ風太郎!」
「うわうわ!上杉さん、落ち着いてください!」
桜の話を聞いた途端風太郎に胸ぐらを掴まれたので落ち着くように言うが聞く耳を持ってくれない。四葉も僕から風太郎を必死に引き離そうとしている。
「やっぱり有罪。切腹」
「「三玖!?」」
「そりゃあそうでしょ。二人のペースでやっていこうって話しながら、学園祭を一緒に回る約束をするって。デキてるでしょ」
三玖に続いて二乃までが。これじゃあ振り出しに戻ったようなもんだよ。
そんな中一人だけ冷静にいた零奈が僕に目を合わせて聞いてきた。
「兄さん。もう一度聞きます。四葉さんとそのような話をしたのですか?」
「……していない。誓って…」
僕も零奈の目をまっすぐ見て答えた。
「ふぅ…どうやら兄さんは嘘を言っていないようですね。離してあげてください風太郎さん」
「零奈?」
風太郎の腕にそっと手を沿えながら伝える零奈に目がいった風太郎ではあるが、風太郎と目が合うとコクンと頷いた零奈に納得したのか胸ぐらからとりあえず離してくれた。
「しかし…和義君の言葉が本当であればなぜそのような噂が?」
「和義さんは最近、四葉さんと一緒に居たときに告白に呼ばれたことは無かったですか?」
「えーー…」
あったかなぁ。そんなの気にしたことないしなぁ。
「ありましたよ。ほら、先生に学園祭の出し物を決めるのをお願いされた後に」
「うーん…?あー…そういえば…」
「その時の告白された相手は一年生ではなかったですか?」
「あー…確かにそうだったかも。その子から新しい断り文句使ってたから」
「やはり。実はその生徒が今回の噂の元凶かもしれないのです。告白しようと近づくも四葉さんと仲良さそうに話している。そして、いざ告白すると大切な人がいると断られた。もしかして先ほどの人がその大切な人ではないか。そういえばそんな話をしていた、と」
桜が事細かに説明してくれた。なるほど、噂の経緯は分かった。けど……
「ただそうなってくるとあれね。カズ君が四葉と話していた内容が、てことでまた振り出しね」
そうなのだ。その告白してくれた女の子の言っていることが正しいのであれば、僕が四葉と話していた内容も正しいってことになる。でも、僕はそんな話を四葉とはしていない。どうなってるんだ?
「ねえねえ。その時ってカズヨシ君と四葉は何か話してはいたの?」
「え?そりゃあ何かは話してたけど何だったかなぁ…」
「学園祭の出し物について話してたのはたしかです!出し物は何にしようかなって感じで」
「だったね……ああ、そう言えば風太郎と四葉の事を聞いたんだった。何か変化はあったのかって。で、何もないようだったから自分たちのぺー……スで……やっていこう…って」
「それよ!」
こいつかぁ。自分で言っててある程度気付いたが、二乃の指摘で確信した。いや分かんないでしょ普通は。なるほど、話の途中から聞けばあたかも僕と四葉の二人のペースでいこう的に聞こえるのか。
「なるほどね。カズ君はあくまでも四葉と上杉の二人のペースの話をしていた。けど…」
「途中から話を聞いたのであれば、和義君と四葉の二人のペースと勘違いしてしまったのですね」
「じゃあ、学園祭を一緒に回るってやつは?」
三玖が前のめりに僕に聞いてくる。
えっと…何て話してたっけなぁ。
「たしかその流れで日の出祭は一緒に回るのかって聞かれた気がします」
「ああ、そうだそうだ。その時に風太郎の名前出さなかったんだ。四葉には誰との事を分かってるだろうしで、彼氏との時間を作るようにとも言ったっけ」
「「「「「「はぁぁ……」」」」」」
そこで僕と四葉以外の人間がため息をついている。
「つまりまとめると…」
「カズ君と四葉は普通に世間話をしていた…」
「で、内容がフータローと四葉の付き合い出したことについて」
「それで、二人のペースというのは、上杉君と四葉のことで…」
「一緒に回るという話も上杉先輩と四葉さんのこと、だったのですね」
「そりゃあ、こいつらにとっては何の話をしてるのか分からんわけだ」
「まったく蓋を開けてみれば、というものですね」
なんか皆納得してもらったみたいだし、とりあえず足は崩すか。
「私たちはこれで納得したから良いのですがこれからどうします?校内の噂は中々消えないと思いますよ」
「そうよねぇ。まあ、あくまでも噂だし色んな方面からデマだってことを流してもらえればなんとかなるかもね」
「………風太郎と四葉は恋人関係を皆には知られたくない?」
「「え?」」
五月と二乃が今後の事について話している中、不意に僕は風太郎と四葉に話しかけた。
「カズヨシ君、まさか…」
「うん。目には目を。噂には噂だね」
一花の言葉にニヤリと笑いながら答えるのだった。
前回まで続いていた和義と四葉の恋人疑惑はこのお話でようやく完結です。
自分で思ってたよりも大分長く掛かったのかもしれません。
さて誤解も解けたのでそろそろ日の出祭に入っていこうと思ってます。次回で入れるか分かりませんが……
では、また次回投稿も読んでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。